井上委員発言補助資料


本会議において議論すべき事項について
2020年8月6日
井上 宏
1.検察官の倫理(綱紀の保持)
〇 大阪事件との相違
大阪事件では、
刑法犯として検挙された偽造事件、
隠避事件いずれも職務上の非行で
あり、
行為者個人の資質の問題に加え、
検察の組織運営上の問題をも含む一連の不祥事
であったが、
今回の元検事長の事案は、
私生活における賭けマージャンという職務外の
非行である。
検察幹部の非行が検察に対する信頼を棄損したことを重く受け止め、
検察
全体で再発防止の誓いを新たにすることは大切であるが、
今回の事案をもって、
組織と
しての検察一般の倫理の問題ととらえることについては、検察庁の現場の感覚として
違和感がある。検察官の犯罪行為を含む不祥事であるからといって大阪事件にならっ
た措置を議論するのではなく、本件に見合った善後策を検討するべき。
〇 私生活領域における非行防止の方策
地検検事正、高検検事長、入管局局長、最高検監察指導部長などの職務を担当し、組
織の運営に携わり、
職員の職務内外の非行撲滅に努めてきたが、
職員の職務外の非行を
ゼロにすることは極めて困難。
このことは、
他のどの組織の経営者等においても共感さ
れるはず。
私生活領域での非行は、組織の信用に傷をつけるという意味で組織人としての責任
は免れないとしても、職務上の監督権は私生活領域には基本的には及ばないと思われ、
私生活領域につき詳細な規律を設けることには慎重であるべきと思う。
特に、
ワークラ
イフバランスが重要となった今日において私生活の充実は益々重要性を高めているか
ら、私生活領域の行動については、基本的には本人の自覚に委ね、その中での再発防止
を図るべきものと思う。
その方策については、
この会議で公私の組織団体等における参
考となる取組を紹介していただくなどし、その内容も踏まえ、法務・検察において、研
修の在り方を含め、再発防止策を真摯に検討してもらいたい。
2.法務行政の透明化(未来志向)
〇 組織的な(重要な)意思決定に関する文書の作成、保管の在り方
意思決定過程の文書をどの程度作成・保管すべきかは、
政府における共通の方針に従
うべきこと。もし、現在の法務行政で政府基準に足りないところがあるのなら、是正す
べきであるし、より国民の理解を得られるようにするため改善すべき部分があるので
あれば、政府における共通の方針も踏まえ、適切に対応すべき。
3.我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにするための方策
〇 検察改革の進捗状況(提言の履行状況)
提言のメニューについては、
「3年間の取組」で総括されているように、検察では、
その趣旨に沿って対応してきたが、
その後数年が経過した現在において、
その趣旨がど
のように生かされているかを確認することは意義のあることと思われる。
なお、提言を受け、新時代の刑事手続とするため、録音録画を含むパッケージとして
の刑事訴訟法改正が行われて施行されたところである。
そして、
同改正法の附則で三年
後の見直しが要請され、法曹関係者等による準備的な検討も始まっているとのことで
あるので、
刑事手続の改正にかかわる本格的な議論は、
同改正法の見直し手続に委ねる
ことが相当と思われる。
〇 「国際的な理解」を深めるための情報発信の在り方
民事手続と異なり、刑事手続は、各国において大きな違いがある。我が国の刑事手続
は、仏独法のベースにアメリカ法が接ぎ木され、それを日本風に運用したので、国際的
にみれば独自のものとなっており、
その全体像を正しく、
手っ取り早く国際的に理解し
てもらうことは困難であろう。
しかし、
我が国の刑事手続の実際について、
この10年、
15年でどれほど変わったかも含めて、対外的に正確な理解を得るための努力は惜し
むべきでない。
本会議の委員の方々の知見もお借りして、
国際的な広報の在り方を改良
することは重要だと思う。

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