後藤委員発言補助資料

1法務・検察行政刷新会議での論点案
後藤昭 2020 年8月6日第2回会議に提出
1.私たちに問われているもの
私たちに問われている問題を大きく見れば、
「検察の独立」という要請と「検
察に対する民主的コントロール」という要請とをどのように両立させるか、と
いう問題である。その解決は、非常に難しい。しかし、その両立を可能とする
ためには、少なくとも検察官たちの仕事が高い透明性をもち、事後的な検証が
可能であることが必要である。
2.検察官の倫理について
1 「検察の理念」は、心構えを説くに止まる。より具体的な行為規範が必
要ではないか?(その項目の例として、後藤「法科大学院における検察
官倫理の教育方法」法律時報 87 巻 1 号(2015 年)86-92 頁)
2 検察官とマス・メディアとの関係について倫理規範が必要ではないか?
黒川弘務氏の行動は、賭けマージャンのみならず記者との関係が大きな
問題。
3.法務行政の透明化について
1黒川弘務前東京高検検事長の勤務延長人事の決定過程。
この人事を私たちが今から覆すことはできない。しかし、この人事は、そ
れまでの法解釈を変更してまで行った極めて特殊な人事であった。
その決定
に至る過程を確認することは、
法務
・検察行政の透明性を考える前提となる。
4.刑事手続について
C.ゴーン被告の国外逃亡は、日本の刑事裁判権からの逃避であり、それを
正当化することはできない。
その一方で、
この事件後の国際世論が彼の主張に
味方しているという事実、
すなわち日本の刑事手続が国際的な信用を得ていな
いという事実を私たちは直視すべきである。
すでに示された論点案にある
「国
際的な理解が得られるようにするための方策」
とは、
単に広報活動を改善すれ
ば良いという問題ではない。
日本の刑事手続を諸外国から見て、
たしかに公明
正大な手続であるという高い信頼を得られる透明度の高いものに変えること
が必要である。近年、証拠開示制度の導入や被疑者取調べの録音・録画制度な
どによって、刑事手続の透明度は向上した。しかし、国際的な信頼を得るため
には、まだ不十分である。 2具体的な方策として、
次のようなものが考えられる。
なお、
これらの方策は、
立法を待たずに検察官の自発的な運用としても可能な部分が少なくない。
1 取調べの可視化をさらに進めるべきではないか?
取調べの録音録画が法律上必要な事件や範囲は限定されている。これをさ
らに広げるべきではないか。また、日本の刑事手続に対する批判のなかで、
もっとも反論しにくいのは、取調べに弁護人の立ち会いを許していないこと
である。弁護人立会は、アメリカ合衆国でもヨーロッパでも、また韓国、台
湾でも認められていて、今や国際標準となっている。
2検察官がもつ証拠を弁護側に開示する証拠開示制度をさらに広げるべき
ではないか?
現在の証拠開示制度は、
公判前整理手続に付される事件に限って適用され
る。これを一般的な制度に広げるべきではないか?また、再審請求審にも、
証拠開示制度を設けるべきではないか?
3 伝聞例外としての刑訴法 321 条1項2号を見直すべきではないか?
この条文は、
検察官が作成した供述調書を証拠として特別に優遇している。
それは当事者対等の原則に反している。またそれによって、法廷での証言よ
りも調書が重視されることになり、刑事手続の透明度を下げている。2号を
削除するあるいは、少なくとも要件をより厳格にするべきではないか。
5.ヒアリングの対象者について
1 黒川氏勤務延長の決定に至る経過を語れる方
2 村木厚子氏
村木氏は、
「検察の在り方検討会」でも経験を語っており、その記録はあ
る。しかし、村木氏が巻き込まれた事件は、この 10 年間の検察改革の出
発点であった。生の声を聴くことよって、その出発点を共有したい。ま
た、同氏がこの 10 年間の変化をどう観ているかを聴くことは、重要な参
考となるであろう。

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