紀藤副座長発言補助資料

1「法務・検察行政刷新会議」の議題
令和2年8月6日
紀藤正樹
1 法務大臣及び法務省より示唆された本会議で議論すべき議題について、私なりに整理
しますと、次のとおりになると考えています。
(1)法務・検察は、他の行政庁と異なり、国民の権利、安全・安心な生活に関わる司法
関係の行政に携わることから、日ごろから国民の大きな期待を担っている。
そのためゴーン被告の海外逃亡においては、我が国の刑事司法の在り方が広く議論と
なったほか、検察官の定年延長問題でも国民の大きな関心を呼んだ。
このような法務・検察の在り方への国民の関心傾向は、今後、ますます大きくなり、
減少することはないものと思われる。これは、国民の法務・検察への期待が、ますます
強くなっていることの裏返しでもあり、法務・検察は、こうした国民の批判を否定的に
とらえるのではなく、国民の声として前向きにとらえ、刷新に向けて、国民の期待に応
える義務がある。
他方、法務・検察の現状や現行の刑事手続は、国民や国際社会からわかりにくく、犯
罪の複雑化、国際化にも対応した広報や情報公開の重要性も増しており、法務・検察の
透明性のある広報や情報公開の在り方が問われるところである。
そこで、まずこうした現行の法務・検察の問題点と課題を洗い出したうえで、犯罪の
複雑化、国際化に即応して、国際社会の信頼に値する刑事司法を構築し、国民の安全安
心を十分に確保して、国民の期待を担う次世代に向けた新しい「法務・検察」を目指す
ために、今回の「法務・検察刷新会議」があるというべきである。
(2)過去、法務省において、
「検察の在り方検討会議」
(平成22年11月10日か
ら平成23年3月31日まで。以下「在り方会議」
)が開催され、平成23年3月31日
付けで「検察の再生に向けて」と題する提言がなされている。この点、時間が有限であ
ることを考慮すれば、議論の蒸し返しは可能な限り避け、在り方会議での議論や審議経
過、そしてその成果は、本会議では、すべて既に得られた知見として当然の前提とすべ
きである。そうすると、本会議は、在り方会議の提言後の検察の在り方については、検
証の意味合いを持つことになり、見直しに不十分な点があれば、その洗い出しと新たな
提言が必要となる。
他方、本会議の課題は、法務行政という在り方会議の議題から、はみ出した部分があ
ることから、在り方会議で議論されていない点、すなわち法務省及び法務行政の在り方 2については、本会議において、別途、新たな議論と提言が必要となろう。
(3)そのうえで法務大臣から具体的に本会議に示唆された課題として、3点がある。
第1に、
「検察の綱紀粛正」の問題については、在り方会議でも話題にされた、時代の
変化に応じた検察官の倫理の徹底などの問題と関係する問題でもある。この点、提言後
の平成23年9月に検察庁において策定された「検察の理念」が十分に機能しているの
かが問題となるほか、法務省にも検察官出身の職員が多数いることから、同様な議論は
法務省内の倫理としても検討されるべき問題である。
その際、検察庁と法務省において、
「綱紀粛正」や「倫理」の在り方において異なると
ころがあるのか、すべての課題に共通する問題であるが、政治と検察の距離の問題など
についても、議論されてしかるべきである。
第2に、
「検察のみならず法務行政の透明化」
の問題、
すなわち在り方会議でも話題に
された検察官人事、法務省人事をめぐる問題のみならず、法務・検察行政文書の作成・
保管に関する問題、国民や国際社会からわかりにくい検察・法務行政に関する広報や情
報公開の在り方などが、検討されるべきである。
捜査情報が不透明かつ不正規な過程でマスコミに流出するという、
いわゆる
「リーク」
の問題については、第1の問題とも当然にからむ問題であるが、第2の正規な広報の在
り方としても検討されるべきである。
第3に、
「刑事手続全般の在り方の問題」
については、
細部にわたり在り方会議で議論
をされているところだが、身柄拘束の在り方、捜査の可視化、調書主義の問題点など、
なお積み残しとなっている課題がいくつかあり、犯罪の複雑化、国際化にも対応した、
国際社会の信頼に値する刑事司法の在り方について、提言後の検証と新たな提言が必要
だろうと思われる。
2 以上、
本会議の議題として、
抽象的ではありますが、
私からの意見を申し上げました。
議題の具体化のためにも、本会議の活性化のためにも、私自身も意見を積極的に申し上
げる予定ですが、委員の皆様の積極的かつ活発な議論も強く期待しております。そのう
えで副座長の立場を踏まえ、委員の皆様、そして座長を支え、最終的に本会議の提言と
してまとめ、現在及び次世代の国民の期待に応えられるよう、最大限の努力をする所存
としています。
以上

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