第三回会議発言補助資料(オブザーバー:小林りん)
第2回会議(欠席となり申し訳ありませんでした)における委員の皆様方の御発言等を踏まえ、
今後の議論の方向性について、私自身の問題意識を共有するようにご要請を頂きました。
そこで、初回の事前配布資料ならびに第2回会議に配布されたペーパーなどを拝読した上で、法
曹界の外にいる一⺠間人として、また、比較的海外のメディア報道に触れる機会が多い一般市⺠と
して、特に国際的見地から課題を指摘されることの多い日本の刑事手続の在り方について、以下の
各点を含め、本会議で検討すべき具体的事項として挙げさせていただければ幸いです。
前回は、本会議の議論を行政関連(人事や省内手続き)に絞るべきとの太田委員からのご意見も
あったようですが、鵜瀞委員からは「国⺠や社会の期待値とずれているのはどこか」を議論してい
けば自ずと結論が見えてくるとのご発言もございましたので、一人の国⺠として素朴な疑問を感じ
た点を以下に挙げさせて頂きます。
1) 取調べへの弁護人立ち会いについて
事前資料として配布いただいた「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想(p.21)」(http://www.moj.go.jp/content/001324363.pdf)の中で、以下のように述べられています。
被疑者取調べの適正を確保するとともに,被疑者において供述するかどうか,あるいは供述調書に
署名押印するかどうかを弁護人と相談の上で判断できるようにして,弁護人による援助を十分なも
のとする必要があり,また,諸外国でも被疑者取調べへの弁護人の立会い制度を導入しているとこ
ろが多いことから,被疑者取調べへの弁護人の立会いを認めるべきとの意見があった。
これに続いて、以下のようにも記してあります。
これに対しては,被疑者の取調べに弁護人を立ち会わせることを被疑者の権利として認める以上,
どのような事情であれ弁護人が立ち会えなければ取調べを行うことができないこととなるし,何よ
りも,取調べという供述収集手法の在り方を根本的に変質させて,その機能を大幅に減退させるこ
ととなるおそれが大きい,取調べの機能や取調べ以外の証拠収集手段の在り方等の相違を無視して
諸外国と比較するのは相当でないなどの反対意見もあり,一定の方向性を得るに至らなかった。
法曹界の外の一⺠間人としての私見を述べさせて頂くと、
弁護人を立ち会わせることが取調べの
「機能を大幅に減退させる」という論拠は理解しにくく、被疑者の当然の権利として認められるべ
きであるように思えます。
本件については、前回の会議でも、後藤委員の発言補助資料にも以下の記述がありました。これ
が事実であれば、一度改めて、我が国における取調べへの弁護人立ち会いについて議論しておく余
地があると感じました。
「日本の刑事手続きに対する批判の中で、最も反論しにくいのは、取り調べに弁護士の立ち合いを
許していないことである。弁護人立会は、アメリカ合衆国でもヨーロッパでも、また韓国、台湾で
も認められていて、今や国際標準となっている」
2)取り調べの可視化について
会議開始前に事務局から頂戴した各種資料、また前回の議事録を拝読すると、取り調べの可視化
(録音・録画)については、少しずつ進めていらっしゃるとのご説明でした。対象を限定して、一定
の条件を満たした場合に、徐々に実現しているとの書き振りでしたので、簡易的に調べてみました
ところ、各種記事では刑事事件の 2-3%しか可視化が進んでいないとの報道が複数ありました。
本件について、2016 年に刑事訴訟法の改正が行われて 4 年が経とうとしていますが、今後、い
つ頃までにこの可視化を完全に実施しようと考えていらっしゃるか、法務省の現時点でのご見解を
教えて頂きつつ、もし可視化の促進を妨げる要因があるのであれば、それについて本会議で議論し
ておく価値があると感じます。組織的な犯罪や共犯犯罪の場合に、自白を引き出しにくくなるとの
指摘等もあるようですが、それは情報管理を徹底して頂くことで回避できるように思えます。
上記は、強く「こうあるべき」とする意見ではなく、あくまでもこれまでに頂戴した資料を拝読し
た上で、純粋に疑問に感じた部分です。本会議の主眼は、検察の倫理、人事、法務省の行政手続き、
などを改めて考えることにあるのかも知れませんが、法曹界の外の人間を敢えてお招きいただいた
背景には、冒頭にありましたように「一般的な国⺠の目線からみて不思議に思うこと」を、この機会
に議論すべきというご趣旨であるようにも理解致しました。
よって、冒頭に大臣からご説明のあった「3本の柱」の3つ目である"我が国の刑事手続と国際的
な理解"についても、本会議の趣旨から大きく離れない範囲で、ぜひ今後の議題の一つとしてご検討
いただければ幸いです。また、日本の刑事法は独仏とも英米とも異なる、独自の進化を遂げて今に
至っていると理解しています。こうした日本の法体系の独自性などにつき、国際社会に正しく理解
されていないという事実認識があるのであれば、その状況を改善する方法についても、あわせて議
論できれば幸いです。

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