委員等発言補助資料(篠塚委員)


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テーマについて〜響き合う審議を〜2回の審議を踏まえて
2020年8月19日
委員 篠 塚 力
1.はじめに〜根底にある文化と土壌
前回の審議において、金指委員の「実際に携わっている人たちの風土や体質が
変わらなければ、なかなか定着していかない。」旨の発言を聞き、目から鱗が落ち
る思いがしました。
現在、検察官の倫理、法務行政の透明化、刑事手続(海外からの批判)の3テ
ーマをどう扱うかが検討されていますが、さらに根底には、良い面でもそうでない面で
も、3テーマに共通する法務検察の風土と体質,いいかえると、組織としての文化
や土壌があるのではないかとの思いに至りました。
2.3テーマに共通する法務検察の文化と土壌
(1) 検察官の倫理と刑事手続(海外からの批判)
「検察官に話せば分かってくれると思ったが、違っていた。」、これは、えん
罪被害者である村木厚子さんの声です。
検察官は有罪立証に傾斜した当事者ではなく、検察官には、被疑者被告人
の言葉に耳を傾け、被疑者被告人に有利な証拠も提出して公平公正な審理を
実現する役割があるというのが、多くの国民が期待するところであり、検察官に求
められている倫理ではないのでしょうか。
そして、そうした規範に反すれば、検察官は懲戒され、そのことによって、公
正な刑事裁判や再審の審理が進行することにより、
検察の信頼は一層高まること
になるのではないでしょうか。
審判者となる可能性のある市民に向け間違った判断を導くような検察官のコメ
ントを規制する倫理規範が存在する国があります(注1)。
検察の文化と土壌から考察していくことで、検察官の倫理と刑事手続(海外か
らの批判)を、両者が響き合う議論となるのではないでしょうか。
(2) 法務行政の透明化と刑事司法(海外からの批判)
第1回の審議において、冨山委員は、「実は遡ると組織構造的なところに根
っこがある場合が少なくない」,「民主政治の統制下にある法務省」と「政治か
らの独立性がなきゃいけないという側面」をもつ検察とでは、「幹部として求めら
れている能力が異なるのではないか」「やっぱりどう見ても構造矛盾がある」と
の指摘がありました。
このことは、検察と法務の文化や土壌が一体化しているが、そこに問題がある
と理解することができると思います。
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検察官の勤務延長問題は,政治が検察の独立という土壌に踏み込んだので
はないかということで世間や検察 OB からの批判を浴びました。
同時に、法務省の文書作成と管理が民主政治の事後検証に耐えうるものとし
て制度化されているのかという疑問が生じました。
そして、検察と法務の文化や土壌が一体化していることは、法務行政が、捜
査権限の拡大強化に比重が置かれ、
被疑者被告人の権利擁護への比重が軽く
なっていることにより、刑事手続における海外からの批判を招いているように思い
ます。
(3) まとめ
村木厚子さんのえん罪事件から10年が経過し、数々の改革改善が試行さ
れた中で、検察法務行政の文化と土壌がどこまで変わったかを見据えて審議し
提言を行うことが本会議の任務であると考えました。
そういう意味で、予め審議対象を制限するのではなく、委員の良識を信じて、
議論が検察法務行政の文化と土壌に達して,議論が自ずと収斂していくことが
できるよう、絞り込みすぎないテーマ設定をお願いしたいと思います。
注1 指宿信成城大学教授「検察官倫理を考える 国際的な倫理規定の動向とわ
が国の現状(後半)」自由と正義 2011 年 2 月号・vol62No2 79 頁
「審判者となる可能性のある市民に向けた不適切な陳述
TDRPC3.06 条(d)は、陪審員として奉仕する可能性のある市民に向けて、自分の
思いどおりにさせようとしたり(harass)、当惑させる目的で(embarrass)、あるいは、
影響を行使する目的で(influence)、間違った判断を導くようなコメントをすることを禁
じている。これは、事件の起訴時の検察による記者会見や、陪審裁判の選任手続
で行われる危険性がある。わが国においても、しばしばマスコミが検察幹部のコメント
などとして出所不明な報道がなされることが多いが、こうしたコメントの内容は当然禁
止事項の射程に含まれよう。」
TDRPC:Texas Disciplinary Rules of Professional Conduct(テキサス州専門
職規範)
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弁護士規律とそれを支える制度
2020年8月26日
法務検察行政刷新会議 御中
委員 篠 塚 力
1 規律
弁護士法
第1章 弁護士の使命及び職務
1条 弁護士の使命 2条 弁護士の職務の根本基準
第4章 弁護士の権利及び義務 20条〜30条
会則を守る義務,秘密保持の権利及び義務,職務を行えない事件,
汚職行為の禁止,非弁護士との提携の禁止,係争物の譲受の禁止,
依頼不承諾の通知義務,営利業務の届出義務等
日弁連会則
第1章 総則 第3条 日弁連の目的-弁護士の品位の保持
第2章 弁護士道徳 10条〜16条
職責の自覚,非違不正の是正,学術の研究と人格の錬磨,公私混同の
禁止,弁護士会役員の選任方法,弁護士の本質,会規への委任
弁護士職務基本規程(会規) 全13章 82条
第1章 基本倫理 1条〜8条
5条 信義誠実(真実の尊重,誠実義務)
6条 名誉と信用(弁護士は,・・・ 常に品位を高めるよう努める)
第2章 一般規律 9条〜19条
14条 違法行為の助長の禁止
15条 品位を損なう事業等への参加の禁止
第3章 依頼者との関係における規律 20条〜45条
20条 依頼者との関係における自由と独立
21条 依頼者の正当な利益の実現
22条 依頼者の意思の尊重
23条 秘密の秘匿
第4章 刑事弁護における規律 46条〜49条
46条 刑事弁護の心構え(最善の弁護活動に努める)
47条 接見の確保と身体拘束からの解放に努める
48条 防御権の説明と不当な制限に対する対抗措置の努力義務
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第5章〜9章 組織内弁護士における規律,事件の相手方との関係におけ
る規律,共同事務 所 における規律,弁護 士法人における規律 ,他の弁
護士等の規律
第10章 裁判の関係における規律 74条〜77条
74条 弁護士は裁判の公正及び適正手続の実現に努める。
75条 偽証のそそのかしの禁止
76条 裁判手続の遅延の禁止
77条 裁判官等との私的関係の不当利用の禁止
第11章 弁護士会との関係の規律,第12章 公官署との関係の規律
第13章 解釈指針 実質的解釈 努力目標の条文の特定
2 制度
弁護士法
第8章 懲戒 56条〜71条の7
56条 懲戒事由 会則違反,その他職務の内外を問わず品位を失うべき
非行があったとき
57条 懲戒の種類 戒告,2年以内の業務の停止,退会命令,除名
綱紀委員会(単位会・日弁連)弁護士,裁判官,検察官,学識経験者
懲戒委員会(同上) 同上
綱紀審査会(日弁連) 非法曹関係者11名による
日弁連会則
第8章 懲戒 68条〜73条
懲戒の公告・公表,公官署への通知,懲戒委員会・綱紀委員会の委員構成
3 苦情窓口
4 弁護士倫理研修
倫理委員会規程及び同規則により,現在は,登録初年度,登録後満3年,登録
後満5年及びその後5年毎の年次に達した会員に倫理研修への参加義務を課し
ている。2017年度の対象会員は9857人,義務履行者は9737人,義
務履行率は98.8%。
以上

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