諮問第103号に対する答申案
第1 議論の経過
法制審議会は,法務大臣から発せられた諮問第103号を受けて,少年法に
おける「少年」の年齢を18歳未満にすること及び非行少年を含む犯罪者に対
する処遇を一層充実させるための法整備の在り方等について調査審議を行うた
め,平成29年2月9日の第178回会議において,少年法・刑事法(少年年
齢・犯罪者処遇関係)部会(以下,単に「部会」という )を設置した。。以後,部会においては,三つの分科会における検討を含め,計58回(うち
分科会は計29回)の会議を開催して,調査審議を重ね,令和2年9月9日,
その取りまとめを行った。
第2 結 論
1 18歳及び19歳の者は,選挙権及び憲法改正の国民投票権を付与され,民
法上も成年として位置付けられるに至った一方で,類型的に未だ十分に成熟し
ておらず,成長発達途上にあって可塑性を有する存在であることからすると,
刑事司法制度において,18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取扱い
をすべきである。
, , 「 ( )」そこで 罪を犯した18歳及び19歳の者について 別添1の 要綱 骨子
に従って法整備を行うべきである。
その上で,18歳及び19歳の者の位置付けやその呼称については,国民意
識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み,今後の立
法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である。
2 犯罪者に対する処遇を一層充実させるため,別添2の「要綱(骨子 」に従)。 , 「 ( )」って法整備その他の措置を講ずるべきである また 別添3の 要綱 骨子
の施策が講じられることを期待する。, ,別添2及び3に記載された制度及び施策は 18歳及び19歳の者に限らず
より広く一般的に,罪を犯した者の改善更生及び社会復帰に有効に機能するこ
とが期待されるものであるから,それ自体としても,再犯防止対策の観点から
その整備及び実施が推進されるべきである。
第3 附帯事項
別添1から3までの制度及び施策のほか,再犯を含む犯罪防止の観点から,
以下の事項の実施が望まれる。
○しろまる 18歳及び19歳の者については,罪を犯した場合に別添1の「要綱(骨
子 」のとおりの取扱いをするほか,犯罪の防止に重要な機能を果たしてい)ると考えられる行政や福祉の分野における各種支援についても充実した取組
が行われること。
○しろまる 再犯を防止する上で就労の確保は重要であり,罪を犯した者の改善更生及
び社会復帰を促進するため,前科があることによる就業や資格取得の制限の12
在り方について,再犯防止推進計画(平成29年12月15日閣議決定)に
基づいて検討が行われているが,早期に必要な措置が講じられること。
第4 今後の課題
1 別添1において示した制度は,18歳及び19歳の者に対する刑事司法制度
上の取扱いの変更を伴うものであり,施行後,一定期間の運用の実績が蓄積さ
れた段階で,よりよい制度とするための検討を行うことが相当である。その場
合には,制度の運用状況はもとより,成年年齢引下げに係る改正民法の施行後
における社会情勢や国民意識の変化等も踏まえつつ,多角的な検討がなされる
ことが望ましい。
2 部会において相当程度具体的な検討を行ったものの 「要綱(骨子 」には, )掲げられていない事項のうち,以下に掲げるものについては,今後,必要に応
じて,更に検討を行うことが考えられる。
改善更生及び社会復帰を促進するためには施設内処遇に
○しろまる 自由刑受刑者の
引き続いて社会内処遇を効果的に行うための期間・機会を確保することが
重要であるとの観点から,残刑期間の短い仮釈放者について,釈放後の一
定期間,保護観察に付すことができる制度等を検討すべきであるとの意見
行為責任に応じて決定された刑
があった一方,制度の枠組みによっては,
を事後的に不利益に変更することとなる可能性を排除し得ず,責任主義との
問題性が低いために刑期が短く,その
関係で問題が残るとの意見のほか,
仮釈放期間が短い者まで一律に一定期間の保護観察に付すことになる
ため
のは問題であるとの意見や,社会内処遇の更なる充実のための環境整備等を
優先し,社会内処遇に必要な期間の確保のための制度は,その進捗・効果を
意見があったところである。
踏まえた上で検討するのが現実的であるなどの
○しろまる 刑の執行猶予中
保護観察付執行猶予者の更生意欲を促進する観点から,
の保護観察について解除制度を設けるべきであるとの意見があった一方,判
決後の事情により裁判内容を変更して保護観察を解除することが許容される
か否かについては更に検討が必要であるとの意見や,まずは保護観察の仮解
運用状況を踏まえた上で検討すべ
除の活用を促進する制度を導入し,その
きであるなどの意見があったところである。
【別添】
要綱(骨子)3別添1
要綱(骨子)
罪を犯した18歳及び19歳の者に対する処分及び刑事事件の特例等
一 家庭裁判所への送致
検察官は,18歳又は19歳の者の被疑事件について捜査を遂げた結果,犯
罪の嫌疑があるものと思料する場合には,事件を家庭裁判所に送致しなければ
ならないものとする。
二 手続・処分
1 対象者
罪を犯した18歳及び19歳の者を対象とするものとする。
2 検察官送致決定
(一) 家庭裁判所は,調査又は審判の結果,罪質及び情状に照らして刑事処分
, 。
を相当と認めるときは 検察官送致決定をしなければならないものとする
(二) (一)にかかわらず,家庭裁判所は,次に掲げる事件については,検察官送
致決定をしなければならないものとする。ただし,調査又は審判の結果,
犯行の動機,態様及び結果,犯行後の情況,本人の性格,年齢,行状及び
環境その他の事情を考慮し,刑事処分以外の措置を相当と認めるときは,
この限りでないものとする。
イ 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって,その罪
を犯すとき16歳以上の者に係るもの。
ロ 死刑又は無期若しくは短期1年以上の新自由刑(別添2の1( 自由「刑の単一化 )に記載の「新自由刑」をいう )に当たる罪の事件であ
」 。
って,その罪を犯すとき18歳又は19歳の者に係るもの(イに当たる
ものを除く 。。)
3 不処分決定
家庭裁判所は,審判の結果,処分に付することができず,又は処分に付す
, 。
る必要がないと認めるときは 不処分決定をしなければならないものとする
4 処分の決定
(一) 処分は,犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において行
わなければならないものとする。
, , ,
(二) 家庭裁判所は 2又は3の場合を除いて 審判を開始した事件について
決定で,次に掲げる処分をしなければならないものとする。ただし,罰金
以下の刑に当たる罪の事件については,ロ又はハの処分に付することがで
きないものとする。
イ 保護観察所の保護観察(仮称。以下,6までにおいて同じ (ロに。)
当たるものを除く )に付すること。。ロ 保護観察所の保護観察であって,遵守事項違反があった場合に6の処4遇施設収容をすることができるものに付すること。
ハ 処遇施設に送致すること。
(三)イ 家庭裁判所は,(二)ロの処分をするときは,その決定と同時に,6(二)に
該当する場合に処遇施設に収容することができる期間として,犯情の軽
重を考慮して,1年以下の期間を定めなければならないものとする。
ロ 家庭裁判所は,(二)ハの処分をするときは,その決定と同時に,処分の
期間として,犯情の軽重を考慮して,3年以下の期間を定めなければな
らないものとする。
5 保護観察
とする。
(一) 4(二)イの処分の期間は6月とし,4(二)ロの処分の期間は2年
(二) 保護観察所の長は,鑑別施設の長に対し,鑑別を求めることができるも
のとする。
(三) 保護観察所の長は,保護観察を継続する必要がなくなったと認めると
きは,保護観察を解除するものとする。
6 遵守事項違反があった場合の処遇施設収容
(一) 保護観察所の長は,4(二)ロの処分を受けた者が遵守事項を遵守せず,そ
の程度が重いと認めるときは,(二)の決定の申請をすることができるものと
する。
(二) (一)の申請があった場合において,家庭裁判所は,審判の結果,4(二)ロの
処分を受けた者がその遵守事項を遵守しなかったと認められる事由があ
り,その程度が重く,かつ,処遇施設に収容しなければ本人の改善更生を
図ることができないと認めるときは,これを処遇施設に送致する旨の決定
をしなければならないものとする。
(三) (二)の決定により対象者を処遇施設に収容する期間は,通じて4(三)イによ
り定めた期間を超えることができないものとする。
(四) 保護観察における指導監督及び補導援護によってその改善更生を図るこ
とができる状況に至ったと認めるとき又は4(三)イにより定めた期間が満了
したときは,対象者を退所させる仕組みを設けるものとする。
(五) (二)の決定により対象者が処遇施設に送致されたときは,対象者が処遇施
設から退所するまでの間,保護観察は停止するものとする。
7 処遇施設送致
処分を継続する必要がなくなったと認めるとき又は4(三)ロにより定めた期
間が満了したときは,対象者を退所させる仕組みを設けるものとする。
8 審判のための身体拘束の措置,検察官関与の制度,裁量的な国選付添人の
制度及び犯罪被害者等の権利利益の保護のための制度について,少年法と同
様の規律を設けるものとするほか,その他の事項について,性質に反しない
限り,少年法,更生保護法,少年院法及び少年鑑別所法と同様の規律を設け
るものとする。
三 刑事事件の特例等51 検察官送致決定後の事件の取扱い
検察官は,家庭裁判所から送致を受けた事件について,公訴を提起するに
足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは,公訴を提起しなければならない
ものとする。ただし,送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足
りる犯罪の嫌疑がないとき,犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を
発見したため,訴追を相当でないと思料するとき,又は送致後の情況により
訴追を相当でないと思料するときは,この限りでないものとする。
2 勾留
(一) 検察官は,18歳又は19歳の者の被疑事件(二2の決定があった場合
を除く )においては,勾留に代えて,家庭裁判所調査官の観護に付する。こと又は鑑別施設に送致することを請求することができるものとする。
(二) 18歳又は19歳の者の被疑事件(二2の決定があった場合を除く )。においては,やむを得ない場合でなければ,勾留の請求及び勾留状の発付
はできないものとする。
(三) 18歳又は19歳の者を勾留する場合には,鑑別施設にこれを拘禁する
ことができるものとする。
3 取扱いの分離
(一) 18歳又は19歳の者の被疑事件(二2の決定があった場合を除く )。の被疑者は,他の被疑者又は被告人と分離して,なるべく,その接触を避
けなければならないものとする。
(二) 刑事施設,留置施設及び海上保安留置施設においては,18歳又は19
歳の者の被疑事件(二2の決定があった場合を除く )の被疑者を20歳。以上の者と分離して収容しなければならないものとする。
4 家庭裁判所への移送
刑事裁判所は,事実審理の結果,18歳又は19歳の被告人を二4(二)の処
分に付するのが相当であると認めるときは,事件を家庭裁判所に移送する旨
の決定をしなければならないものとする。
5 推知報道の制限
18歳又は19歳のとき罪を犯した者については,当該罪により公判請求
された場合を除き,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該
事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙
その他の出版物に掲載してはならないものとする。
四 その他
その他所要の規定の整備を行うものとする。6別添2
要綱(骨子)
1 自由刑の単一化
一 新たな自由刑(以下「新自由刑」と仮称する )の創設。1 刑の種類
死刑,新自由刑,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする
ものとする。
2 新自由刑(懲役及び禁錮の単一化)
懲役及び禁錮を,新自由刑として単一化する。
(一)
新自由刑は,無期及び有期とし,有期新自由刑は,1月以上20年
(二)
以下とするものとする。
(三) 新自由刑は,刑事施設に拘置するものとする。
(四) 新自由刑に処せられた者には,改善更生を図るため,必要な作業を行
わせ,又は必要な指導を行うことができるものとする。
3 新自由刑等の加重減軽
死刑又は無期の新自由刑を減軽して有期の新自由刑とする場合には,
(一)
その長期を30年とするものとする。
有期の新自由刑を加重する場合には30年にまで上げることができ,
(二)
これを減軽する場合には1月未満に下げることができるものとする。
新自由刑に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免
(三)
除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において,その者を有期
の新自由刑に処するときは,再犯とし,再犯の刑は,その罪について定
めた新自由刑の長期の2倍以下とするものとする。
死刑を減軽するときは,無期の新自由刑又は10年以上の新自由刑
(四)
とするものとし,無期の新自由刑を減軽するときは,7年以上の有期の
新自由刑とし,有期の新自由刑を減軽するときは,その長期及び短期の
2分の1を減ずるものとする。
4 各則の罪の法定刑
無期懲役及び無期禁錮は,無期新自由刑に改め,有期懲役及び有期禁錮
は 「懲役 「禁錮 「懲役又は(若しくは)禁錮」のいずれの場合にお
, 」
, 」,いても,長期及び短期を現行のものと同じくする有期新自由刑に改めるも
のとする。
二 拘留に関する規定の整備
1 拘留は,1日以上30日未満とし,刑事施設に拘置するものとする。
, , ,
2 拘留に処せられた者には 改善更生を図るため 必要な作業を行わせ
ものとする。
又は必要な指導を行うことができる72 若年受刑者に対する処遇調査の充実
鑑別施設の長が刑事施設の長の求めにより行う鑑別の対象となる受刑者の年齢,「 」 「 」 。
の上限を 20歳未満 から おおむね26歳未満 に引き上げるものとする
3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等
一 若年受刑者に対する処遇原則の明確化
若年受刑者(おおむね26歳未満の受刑者をいう )に対しその者の資質及。び環境に応じた処遇を行うに当たっては,その者の年齢,精神的な成熟の程度
その他若年であることに伴う個々の事情を踏まえ,その者の問題性の改善に資
する手法及び内容とするように努めるものとする。
二 受刑者に対する社会復帰支援の明確化
1 刑事施設の長は,受刑者の円滑な社会復帰を図るため,釈放後に自立した
生活を営む上での困難を有する受刑者に対しては,その意向を尊重しつつ,
次に掲げる支援を行うものとする。
(一) 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住するこ
とを助けること。
(二) 医療及び療養を受けることを助けること。
(三) 就業又は修学を助けること。
(四) (一)から(三)までのほか,受刑者が健全な社会生活を営むために必要な援助
を行うこと。
2 1の支援は,その効果的な実施を図るため必要な限度において,刑事施設
の外の適当な場所で行うことができるものとする。
3 刑事施設の長は,1の支援を行うに当たっては,保護観察所の長と連携を
図るように努めなければならないものとする。
4 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度
一 刑事施設の長又は少年院の長(以下「刑事施設の長等」という )は,受刑。者又は少年院在院者(以下「受刑者等」という )に被害者及びその親族の心。情等を理解させることの重要性に鑑み,被害者その他の者から申出があったと
きは,その心情等を聴取するものとし,ただし,その聴取をすることが相当で
ないと認めるときは,この限りではないものとする。
二 聴取した心情等については,矯正処遇・矯正教育にいかすほか,刑事施設に
おける処遇要領又は少年院における個人別矯正教育計画を策定・変更するに当
たっては,必要に応じ当該心情等を参酌するものとし,仮釈放等の申出・審理8を行うに当たっては,そのようにして行われた矯正処遇等の状況・結果を踏ま
えるものとする。
三 刑事施設の長等は,一で聴取した心情等のうち,申出をした者が希望するも
のは,受刑者等に伝達するものとし,ただし,その伝達をすることが相当でな
いと認めるときは,この限りではないものとする。
四 刑事施設の長等は,一の聴取又は三の伝達について,地方更生保護委員会及
び保護観察所の長と連携を図るように努めなければならないものとする。, ,五 更生保護法第38条第1項に基づき 地方更生保護委員会が聴取する内容に
生活環境の調整及び仮釈放等の期間中の保護観察に関する意見が含まれること
を明らかにするものとする。
5 刑の全部の執行猶予制度の拡充
保護観察付執行猶予中の再犯についての執行猶予一刑の全部の執行を猶予されて保護観察に付せられた者が,その期間内に更
場合であっても,情 再
に罪を犯した 状に特に酌量すべきものがあるときは,
度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができるものとする。ただし,再度
の刑の全部の執行猶予の言渡しを受け,保護観察に付せられた者が,その保護
観察の期間内に更に罪を犯したときは,この限りでないものとする。
二 再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期
再度の刑の全部の執行猶予を言い
執行猶予の期間内に更に罪を犯した者に
渡すことができる新自由刑の刑期の上限を2年に引き上げる。
三 猶予期間経過後の刑の執行
猶予の期間内に更に罪を犯し,その罪について猶予の期
1 刑の全部の執行
間内に公訴を提起されて,新自由刑以上の刑に処せられ,その刑の全部に
ついて執行猶予の言渡しがない場合は,その刑に処せられたのが猶予の期
であっても,刑の全部の執行を猶予された当初の刑を執行するこ
間経過後
とができる仕組みを設けるものとする。
2 1の場合において,刑の全部の執行を猶予された当初の刑を執行するため
の手続は,更に犯した罪について刑に処せられた後一定の期間内に開始しな
ければならないものとする。
3 刑の一部の執行猶予についても,1及び2と同様の仕組みを設けるものと
する。96 刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進
一 保護観察を仮に解除する処分は,保護観察所の長が,健全な生活態度を保持
している保護観察付執行猶予者について,遵守事項又は生活行動指針の遵守状
況その他法務省令で定める事項を考慮し,保護観察を仮に解除しても,当該生
活態度を保持し,善良な社会の一員として自立し,改善更生することができる
と認めるときにするものとする。
二 保護観察所の長は,保護観察を仮に解除されている保護観察付執行猶予者に
ついて,その行状に鑑み再び保護観察を実施する必要があると認めるときは,
仮に解除する処分を取り消さなければならないものとする。
7 新たなアセスメントツールを活用した保護観察処遇の充実,特別遵守事項の類
型の追加
一 保護観察所の長は,保護観察対象者の犯罪又は非行に結び付く要因及び改善
更生に資する事項について分析し,その結果に基づき保護観察の実施計画を定
めるとともに,必要に応じ関係機関等との緊密な連携を確保して,当該実施計
画に則した処遇を行うものとすることを明らかにする。
二 更生保護法第51条第2項各号に定める特別遵守事項の類型に,次のものを
加えるものとする。
更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者その他適当な者が行う援
助であって,特定の犯罪的傾向の改善を目的とするもの(法務大臣が定める基
準に適合するものに限る )を受けること。。8 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実
一 地方更生保護委員会及び保護観察所の長は,更生保護法第3条の規定により
保護観察等の措置をとるに当たっては,措置の内容に応じ,被害者等の被害に
, 。
関する心情 被害者等が置かれている状況その他の事情を考慮するものとする
二 被害者等の被害に関する心情,被害者等の置かれている状況その他の事情を
理解し,その被害を回復すべき責任を自覚するための保護観察官又は保護司の
指導に関する事実について,保護観察官又は保護司に申告し,又はこれに関す
る資料を提示することを保護観察における遵守事項の類型に加えるものとす
る。109 保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用
保護観察所の長は,おおむね26歳未満の仮釈放者又は保護観察付執行猶予者
について,鑑別施設の長に対し,鑑別を求めることができるものとする。
10 更生保護事業の体系の見直し等
一 更生保護事業の体系の見直し
1 「継続保護事業」を「宿泊型保護事業」とし,更生保護施設に宿泊させて
行う社会生活に適応させるために必要な生活指導に「特定の犯罪的傾向の改
善を目的とする援助」が含まれることを明らかにする。
「 」 「 」 , ,
2 一時保護事業 を 通所・訪問型保護事業 とし これが金品を給与し
又は貸与することに加え,通所又は訪問による継続的な保護を行い,地域定
着を助ける事業でもあるとともに 「社会生活に適応させるために必要な生,活指導(特定の犯罪的傾向の改善を目的とする援助を含む 」を行うこと。)
ができることを明らかにする。
3 「連絡助成事業」を「更生保護連携拠点事業」とし,現行の連絡助成事業
の内容に,更生保護に係る連携の拠点としての新たな役割を加える。
二 参入の要件
1 国及び地方公共団体以外の者で宿泊型保護事業を営もうとするものは,法
務大臣の認可を受けなければならないものとする。
2 国及び地方公共団体以外の者で通所・訪問型保護事業又は更生保護連携拠
点事業を営もうとするものは,法務大臣に届け出なければならないものとす
る。
三 その他
更生保護法第58条第6号に定める補導援護の方法及び同法第85条第1項
に定める更生緊急保護の方法について,社会生活に適応させるために必要な生
活指導に「特定の犯罪的傾向の改善を目的とする援助」が含まれることを明ら
かにする。1111 更生緊急保護の対象の拡大等
一 検察官において直ちに訴追を必要としないと認める者に対する更生緊急保護
保護観察所の長が,刑事上の手続による身体の拘束を解かれた被疑者であっ
て,検察官において直ちに訴追を必要としないと認める者について,更生緊急
保護を行うことができるようにするものとする。
二 勾留中の者に対する生活環境の調整
保護観察所の長が,勾留されている被疑者について,身体の拘束を解かれた
後の改善更生のために必要であると認められるときは,その者の同意を得て,
その者の家族その他の関係人を訪問して協力を求めることその他の方法によ
り,釈放後の住居,就業先その他の生活環境の調整を行うことができるように
するものとする。
三 釈放後に自立した生活を営む上での困難を有する受刑者について,満期釈放
後直ちに必要な更生緊急保護の措置を受けられるようにするための手続を整備
するとともに,保護観察所の長が,満期釈放者等への援助や関係機関等に対す
る専門的知識に基づく助言等を行うことができるようにするものとする。12別添3
要綱(骨子)
1 若年受刑者を対象とする処遇内容の充実
刑事施設において,次のように少年院の知見・施設を活用して,若年受刑者
(おおむね26歳未満の受刑者をいう。以下同じ )の特性に応じた処遇の充。実を図るものとする。
1 少年院における矯正教育の手法やノウハウ等を活用した処遇を行う。
2 特に手厚い処遇が必要な者について,少年院と同様の建物・設備を備えた
施設に収容し,社会生活に必要な生活習慣,生活技術,対人関係等を習得さ
せるための指導を中心とした処遇を行う。
2 若年受刑者に対する処遇調査の充実
次のように若年受刑者に対する処遇調査の充実を図るものとする。
1 刑執行開始時に行う精密な処遇調査の対象者を拡大する。
2 精密な処遇調査の実施要領を見直すなど,調査内容を充実させる。
3 外部通勤作業及び外出・外泊の活用等
刑事施設内から社会内に向けて円滑な移行を図るため,以下の取組を行う。
1 矯正施設と更生保護官署との連携を強化するとともに,更生保護施設や雇
用主の協力を得て,外部通勤作業及び外出・外泊の環境を整備し,これらの
活用を促進する。更生保護施設が受刑者等の外出・外泊を受け入れることに
ついて,更生保護事業法上の収益事業の収益を充てることができる「公益事
業」として更生保護事業法施行規則(平成8年法務省令第25号)に規定す
る。
2 職員の監督の下で行う刑事施設外処遇を拡大するとともに,受刑者の状況
に応じて施設や居室区画を変更するなど,刑事施設内の開放的な処遇の拡大
に向けた取組を推進する。
4 保護観察における新たなアセスメントツールを活用した処遇手法の推進
保護観察処遇における新たなアセスメントツールを活用し,保護観察におけ
る処遇を充実させるため,以下の取組を行う。131 保護観察処遇の充実のため,対象者の犯罪又は非行に結び付く要因及び改
善更生に資する事項についてより適切に分析するために新たに開発されたア
セスメントツールを活用し,評価結果を踏まえ,罪種や問題性に応じて効果
的な処遇を推進する。
2 新たなツールを用いたアセスメント結果を含めた処遇の状況について,前
刑から後刑に引き継がれるための方策を充実するとともに,施設内処遇と,
社会内処遇における新たな処遇手法として開発したガイドライン又はプログ
ラムとが連続性ある内容にするなど,施設内処遇と社会内処遇とで一貫性あ
る指導内容とする。
5 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実
具体的な賠償計画を立て,賠償に向けて就職活動を行うことや,就労により
貯蓄した一定額を被害者に送金することを含め,被害者等に対して慰謝の措置
を講ずることについて,生活行動指針に設定し,これに即して生活し,又は行
動するよう指導を行うための運用に関する規律を規則等で設け,当該指導の充
実を図る。