土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人に対する懲戒処分の考え方
(処分基準等)
法務省民事局
土地家屋調査士法(昭和25年法律第228号。以下「法」という。
)第4
2条又は第43条第1項の規定に基づき土地家屋調査士又は土地家屋調査士法
人(以下「土地家屋調査士等」という。
)に対して懲戒処分を行う場合の基準
及び法第46条の規定に基づく懲戒処分の公告については,次のとおりとする。
第1 総則
1 法務大臣による懲戒処分
法務大臣による土地家屋調査士等に対する懲戒処分は,不動産の表示に
関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として,不動産に
関する権利の明確化に寄与し,もって国民生活の安定と向上に資すること
を使命とする土地家屋調査士等の業務の適正を保持するために行われるも
のであり,この基準に基づいて公正に行う。
2 懲戒事由
(1) 土地家屋調査士等が法又は法に基づく命令に違反したときは,法務大
臣は,当該土地家屋調査士等に対し,懲戒処分をすることができる(法
第42条,第43条第1項)。(2) 土地家屋調査士会及び日本土地家屋調査士会連合会の会則は自治規範
であるが,土地家屋調査士等はその所属する土地家屋調査士会及び日本
土地家屋調査士会連合会の会則を守らなければならない(法第24条,
第41条において準用する第24条)ことから,別表の違反行為の欄に
掲げるものに該当する会則違反については,特に懲戒処分による必要性
が認められるものとして,法違反(会則遵守義務違反)を理由として懲
戒処分をするものとする。
(3) 土地家屋調査士等は,常に品位を保持しなければならない(法第2条,
第41条において準用する第2条)ことから,土地家屋調査士等の行っ
た行為がその業務に関連しない場合であっても,その行為が土地家屋調
査士等の品位を害した場合には,法違反を理由として懲戒処分をするこ
とができる。
3 懲戒処分の種類
(1) 土地家屋調査士に対する懲戒処分(法第42条)
ア 戒告
イ 2年以内の業務の停止
ウ 業務の禁止
(2) 土地家屋調査士法人に対する懲戒処分(法第43条第1項)
ア 戒告
イ 2年以内の業務の全部又は一部の停止
ウ 解散
第2 処分基準
1 違反事実の認定
懲戒処分は,客観的資料等により認定することができる違反事実を対象
となる事実とし,当該違反事実,考慮要素及び情状等による加重又は軽減
の理由を明らかにして行う。
2 懲戒処分の量定
土地家屋調査士等が行った行為が別表の違反行為の欄に掲げるものに該
当するときは,同表の懲戒処分の量定の欄に掲げる処分を基準とした上で,
考慮要素の欄に掲げる事項等を考慮した上で量定を決定し,懲戒処分を行
う。ただし,土地家屋調査士法人に対して懲戒処分を行う場合には,同表
の懲戒処分の量定の欄中「2年以内の業務の停止」とあるのは「2年以内
の業務の全部又は一部の停止」と,
「1年以内の業務の停止」とあるのは
「1年以内の業務の全部又は一部の停止」と,
「業務の禁止」とあるのは
「解散」と読み替えるものとする。
3 情状等による加重及び軽減
(1) 土地家屋調査士等が行った行為が別表の違反行為の欄に掲げるものに
該当する場合において,土地家屋調査士等が行った行為の態様が極めて
悪質であること,又はその行為の回数が多数であること等の特段の情状
等が認められるときは,同表の懲戒処分の量定の欄に掲げる処分より重
い懲戒処分を行うことができる。
(2) 土地家屋調査士等が行った行為が別表の違反行為の欄に掲げるものに
該当する場合において,当該対象行為の態様,当該対象行為をするに至
った過程において酌むべき事情の内容,発生した経済的損失等の程度及
びその回復の内容,既に受けた社会的な制裁等の内容,所属する土地家
屋調査士会による自治的処分の内容その他の一切の事情を勘案して懲戒
処分の量定を軽減することが相当である情状等が認められるときは,同
表の懲戒処分の量定の欄に掲げる処分より軽い懲戒処分を行うことがで
きる。
(3) 土地家屋調査士等の行った行為が別表の違反行為の欄に掲げるものに
該当する場合において,(2)に掲げる事情を勘案して懲戒処分を行わな
いことが相当であると認められるとき(特段の事情のない限り同表の懲
戒処分の量定の欄に掲げる処分に戒告が含まれているときに限る。
)は,
懲戒処分を行わないことができる。
(4) 土地家屋調査士等に懲戒処分歴があることは懲戒処分を加重する情状
とすることができ,土地家屋調査士等に懲戒処分歴がないことは懲戒処
分を軽減する情状とすることができる。
(5) 別表の違反事実の欄に該当する行為が複数ある場合における懲戒処分
の量定は,それぞれの違反行為について同表の懲戒処分の量定の欄に掲
げる処分が最も重いものを基準としつつ,複数の違反行為全体を勘案し,
必要に応じてこれを加重するものとする。
(6) 土地家屋調査士等が行った行為が法又は法に基づく命令に違反する場
合において,別表の違反行為の欄に掲げるもののいずれにも該当しない
ときは,同欄に掲げる違反行為のうち当該行為に最も類似するものに準
ずるなどの方法により当該行為に対する懲戒処分を行うものとする。
(7) 土地家屋調査士法人における特則
土地家屋調査士法人における量定の判断に当たっては,(1)から(6)ま
でに加え,当該法人の内部規律及び内部管理等を勘案する。
4 業務停止の期間
土地家屋調査士等の業務の停止期間は,年,月,週を単位とする。
第3 公告
法第46条に基づく公告をする場合は,土地家屋調査士等の個々の懲戒処
分について,懲戒処分を受けた者の氏名又は名称,所属する土地家屋調査士
会の名称,登録番号及び事務所の所在地並びに処分の年月日及び処分の量定
を公表するものとする。
別表(第1の2(2),第2の2,3関係)
番号 違 反 行 為 懲戒処分の量定 考慮要素
1 公文書偽造又は私文 刑法(明治40年法律第45 偽造行為の態様・
書偽造等 号 ) 第 1 5 5 条 , 第 1 5 7 回数
条 , 第 1 5 8 条 , 第 1 5 9 経済的損失等の程
条,第161条又は第161 度
条の2の規定に該当するもの 経済的損失等の回
復の程度
2 名義貸し又は他人に 自己の名義において,故意に 違反行為の態様・
よる業務の取扱い 他人に業務を行わせたもの 回数
3 業務停止期間中の業 故意に,業務停止期間中に業 2年以内の業務の 業務停止期間中に
務行為 務を行ったもの 停止 行った業務の態様
又は ・回数
4 報酬又は費用の不正 故意に,報酬の不正請求又は 業務の禁止 違反行為の態様・
請求 費用の架空請求や水増し請求 回数
をしたもの 経済的損失等の程度経済的損失等の回
復の程度
5 虚偽の登記名義人確 不動産登記法(平成16年法 違反行為の態様・
認情報提供で実害が 律第123号)第23条第4 回数
生じたもの(故意) 項第1号の規定による情報の 不実の登記の内容
提供を行う場合において,故 経済的損失等の程
意に虚偽の情報を提供し,か 度
つ,不実の登記,経済的損失 経済的損失等の回
等の実害が生じたもの 復の程度
6 虚偽の登記名義人確 不動産登記法第23条第4項 違反行為の態様・
認情報提供で実害が 第1号の規定による情報の提 回数
生じたもの(注意義 供を行う場合において,相当 不実の登記の内容
務違反) な注意を怠って虚偽の情報を 経済的損失等の程
提供し,かつ,不実の登記, 度
経済的損失等の実害が生じた 経済的損失等の回
もの 復の程度
7 現地確認義務違反又 不動産の表示に関する登記の 違反行為の態様・
は筆界確認義務違反 申請をする場合において,現 回数
地確認又は筆界確認を怠った 経済的損失等の程
もの 度
戒告 経済的損失等の回
又は 復の程度
8 職務上請求用紙の不 不正な目的で戸籍謄本等職務 2年以内の業務の 違反行為の態様・
正使用等 上請求用紙を使用したもの又 停止 回数
は戸籍謄本等職務上請求用紙 不正使用等の目的
を用いて取得した戸籍謄本等
を不正な目的で使用したもの
9 不当誘致行為 故意に,不当な手段を用いて 違反行為の態様・
業務の誘致を行ったもの 回数
10 受任事件の放置 受任した事件を正当な事由な 放置した回数・事
く故意に履行しないもの 件の内容
放置の期間・程度
被害の内容・程度
被害等の回復の程度11 秘 密 保 持 義 務 違 反 故意に,業務上取り扱った事 他に漏らした秘密
(故意) 件について知ることのできた の内容
秘密を正当な事由なく他に漏 被害の内容・程度
らしたもの 被害等の回復の程度12 本人確認義務違反又 本 表 に 別 に 定 め る も の の ほ 違反行為の態様・
は依頼者等の意思確 か,故意に又は相当の注意を 回数
認義務違反で実害が 怠って本人確認等の義務に違 不実の登記等の内
生じたもの 反し,かつ,不実の登記等, 容
経済的損失等の実害が生じた 経済的損失等の程
もの 度
経済的損失等の回
復の程度
13 虚偽の登記名義人確 不動産登記法第23条第4項 違反行為の態様・
認情報提供で実害は 第1号の規定による情報の提 回数
生 じ て い な い も の 供を行う場合において,故意 社会に対する影響
(故意) に虚偽の情報を提供したが, の有無・程度
不実の登記,経済的損失等の
実害が生じなかったもの
14 職務上請求用紙の管 戸籍謄本等職務上請求用紙若 戒告 違反行為の態様・
理懈怠等 しくは戸籍謄本等職務上請求 又は 回数
用紙を用いて取得した戸籍謄 1年以内の業務の 管理懈怠の態様・
本等の管理を怠り,又はその 停止 程度
使用方法を誤り,実害が生じ 被害の内容・程度
たもの 被害等の回復の程度15 調査拒否 正当な事由なく土地家屋調査 拒否行為の態様
士法施行規則(昭和54年法 調査の対象となっ
務省令第53号)第40条第 た違反行為の疑い
1項又は第2項の調査を拒ん がある事実の態様
だもの ・回数
16 補助者の監督責任 補助者の監督を怠り,本表の 違反行為の内容
違反行為に該当し,又はこれ 補助者に対する監
に準ずる行為をしたもの 督の懈怠の態様・
程度
17 預り金等の管理懈怠 依頼者又は依頼者のための預 管理懈怠の対象と
等 り金を他の金銭と区別せずに なった預り金等の
保 管 す る な ど そ の 管 理 を 怠 金額・内容
り,経済的損失等の実害が生 管理懈怠の態様・
じたもの 程度
経済的損失等の回
復の程度
18 秘 密 保 持 義 務 違 反 相当な注意を怠り,業務上取 他に漏らした秘密
(注意義務違反) り扱った事件について知るこ の内容
とのできた秘密を他に漏らし 被害の内容・程度
たもの 被害等の回復の程度19 受任拒否 正当な事由なく依頼された事 違反行為の態様・
件の受任を拒否したもの(民 回数
間紛争解決手続代理関係業務
に関するものを除く。
)のう
ち,悪質なもの
20 その他会則に違反す 本表の違反行為に該当しない 戒告 違反行為の態様・
る行為 土地家屋調査士会の会則の不 回数
遵守であって,土地家屋調査
士会による自治的処分を複数
回受けた場合,実害が生じた
場合等悪質なもの
21 業務外行為 業務外の違反行為で刑事罰の 戒告,2年以内の 違反行為の態様・
対象となる行為に該当するも 業務の停止又は業 回数
の 務の禁止

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