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法務大臣養育費勉強会取りまとめ
〜我が国の子どもたちの未来のために〜
令和2年5月29日
第1 はじめに
我が国においては、ひとり親世帯の貧困率が50.8%1
となっているところ、母子
世帯において離婚した父親から現在も養育費を受けている割合は24.3%2
にとどま
っている。
そのため、
父母の離婚後、
別居している親から養育費の支払を十分に受けて
いないことが、ひとり親世帯の貧困の要因の一つとなっていると指摘されている。
養育費の支払確保は、
子どもの健やかな成長、
子どもの未来のために、
非常に重要な
課題であり、
これまでも、
法務省や厚生労働省等で必要な取組を進めてきた。
今年 4 月
からは改正民事執行法が施行となり、法務省では、養育費の重要性に関する広報啓発
にも努めてきた。
しかしながら、
養育費不払いの解消に向けてはなお検討・解決すべき課題は多く、養育費の支払確保のためには、その取決めの促進のみでなく、いったん取決めがされた
養育費が確実に支払われるようにすることが喫緊の課題である。
そこで、
養育費の支払確保のため、
特に、
既に債務名義のある養育費債権の履行確保
のための公的な支援の枠組みに関して必要な検討を進めるべく、本年1月、法務大臣
の下に直轄の私的勉強会として、「養育費勉強会」を立ち上げた。
本勉強会においては、合計7回にわたり、地方自治体や諸外国における養育費履行
確保に向けた先進的取組について自治体、研究者等からのヒアリングを実施し、養育
費問題に関する現状や課題、解決可能性について現場の支援団体や相談機関等からの
ヒアリングを行うなどして、
幅広い検討を進めてきた
(開催経過等は別紙のとおり。)。
本取りまとめは、本勉強会におけるヒアリング等の結果を取りまとめるとともに、
今後の検討のアプローチ・方向性を提案するものである。
今後、以下のアプローチ・方向性を検討するに当たっては、
(1) 既存の制度の運用改善や、必要な予算措置の下で実現可能な事業など、現行制度
の下で対応可能な方策について、順次、速やかに取り組むこと
(2) 法改正など制度面の検討が必要となる方策についても、制度的な課題や問題点に
も留意しつつ、優先順位をつけて、スピード感をもって検討を進めること
(3) 法務省としては、
厚生労働省など関係省庁はもちろん、裁判所、法テラス、民間団
体など関係機関と連携して、現場の声を十分に聴きながら、取り組んでいくこと1厚生労働省・平成28年国民生活基礎調査2厚生労働省・平成28年度全国ひとり親世帯等調査、母子世帯において現在も相手方から養育費を
受給している世帯の割合
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が特に重要と考えられる。
法務省として、関係省庁、関係機関等とともに、本勉強会の取りまとめを踏まえ、引
き続き、一層の取組を進めるべきである。
第2 養育費履行確保のためのアプローチ・方向性についての意見
以下では、本勉強会で取り上げられた養育費履行確保のための方策について、ひと
り親世帯が直面する段階に応じて、
指摘・提案された具体的アプローチや方向性、
課題
等を各別に掲げている。
すなわち、
養育費問題については、1離婚時における養育費の取決めの確保(後記1)
がまず、問題となる。その後、2養育費が不払いとなった場合の支援・相談(後記2)
が必要となり、取立て・回収のために、3裁判手続・ADR(後記3)を進めることに
なる。そして、この取立て・回収を効果的に行う観点から、4サービサーの活用(後記
4)や、5公的な取立て支援(後記5)が問題となる。それでもなお不払いとなる事案に
ついては、6悪質な不払いとして制裁が問題となるとともに(後記6)、最終的な砦と
して、7公的立替払(後記7)も検討されることになる。
併せて、養育費問題の解決については、8自治体と国との連携(後記8)、9国民へ
の周知・広報(後記9)など、関連する取組も並行して進められる必要がある。
1 養育費取決め等の促進
〇 養育費支払の前提となる取決めがなければ、養育費を回収することができな
いので、
離婚時の養育費に関する取決めの徹底と、
その内容の定期的見直しが必要
である。
しろまる 特に養育費に関する取決めを書面で交わさずに離婚する夫婦が相当数に及んで
おり、
ここを重点対象に、
債務名義ある取決めの支援を進める必要がある。
養育費
に関する公正証書作成の支援・無料法律相談のニーズが高く、
十分な対応をしてい
くべきである。
〇 養育費の取決めを促進するため、ひとり親であっても簡単に利用することがで
きる養育費算定表を作成したり、標準的な養育費のルールを明確化すべきである。
公表されている現行のものは、
法律専門家のためのもので利用が難しく、
自動計算
ツールの提供なども期待される。
〇 離婚届出用紙に養育費の金額や支払方法等を具体的に記入する欄を追加し、離
婚時の書面による取決めをさらに進めるべきである。
また、
諸外国と同様、
養育費
の取決めを協議離婚成立の要件とする法改正を検討していくべきである。他方で、
DVによる離婚などがしにくくなるなどの声も踏まえた検討が必要である。
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しろまる 離婚時では葛藤が大きいので、そもそもの婚姻時に、養育費の内容や定め方等
を記載した婚前契約を締結することを促進していってはどうか。
2 支援・相談体制の充実・強化
〇 養育費の不払い解消のためには、様々な法律問題の解決や法的手続が必要とな
るため、
法律専門家が主体となった更なる支援が必要である。
法律相談から強制執
行までの様々な場面に応じて、
法律専門家による支援が必要である。
法テラスの機
能強化など、法律専門家の関与した法的支援の充実を図るべきである。
〇 養育費の相談・支援体制において重要な役割を果たしている養育費相談支援セ
ンターについて、その体制や機能の拡充を検討すべきである。
〇 現状では、
ひとり親にとって、
養育費問題に関する法律相談を受けること自体が
容易でない。例えば、託児付きで法律相談を受けられるような環境や、土日・平日
夜でも養育費に関する無料法律相談が可能になる仕組みが必要である。
しろまる 養育費回収のための経済的負担を軽減することが重要であり、裁判手続費用の
無償化、養育費に関する公正証書作成費用の無償化、法テラスの償還猶予・減免規
定の柔軟運用等による実質無償化、
無料法律相談の回数制限の緩和・免除などを実
現すべきである。
また、養育費回収のための強制執行手続の書類作成援助など、法
テラスにおける手続支援や無料法律相談を拡充してほしい。
しろまる 利用者から見て、
相談する弁護士に関する情報は重要であり、
養育費の問題に詳
しい専門弁護士の認定制度の創設が考えられる。仮に専門弁護士認定制度の実現
までは難しいとしても、
養育費問題の研修・実務経験などを認定する制度が考えら
れる。
3 民事執行など裁判手続の改善、ADRも含む紛争解決手続の充実
〇 今回の民事執行法改正により改善が図られたが、
現行制度では、
強制執行のため
に、
1債務名義の取得が前提となること、
2強制執行の対象となる財産を債権者側
で特定する必要があることから、
手続の利用のハードルが相当高い。
養育費債権者
がより簡易迅速に手続を利用することができるよう改善を検討すべきである。
〇 特に、
低収入層のひとり親の債務名義保有率は低く、
債務名義を有していない場
合に、裁判所で調停から開始すると、支払開始までの期間が長期化することにな
る。
強制執行手続も、
養育費債権者本人が個人で行うには手続負担が重く、長期の
未払い期間が生じることになるのが現状であるから、更なる見直しを検討してい
くべきである。
〇 養育費を巡る裁判手続を見直し、養育費を請求する手続・事務を簡略化してほ
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しい。また、裁判手続では、遠方の相手方との場合の配慮(交通費援助、管轄裁判
所の見直し、テレビ会議など)や、住所秘匿(調停での非開示)、ひとり親への手
続支援を実施してほしい。
〇 家庭裁判所による養育費の履行勧告には強制力がなく、また、履行命令に違反
した場合の制裁は10万円以下の過料にとどまるため、養育費の不払いに対する
対策として十分ではなく、家庭裁判所による履行勧告・履行命令制度の強化が必
要である。
〇 養育費問題に関する民間ADR、離婚前の即決調停・審判制度等の紛争解決制
度を拡充し、
その利用を促進すべきである。
また、
養育費問題に関する行政型AD
R制度を創設することも考えていくべきである。
4 サービサーの活用の可能性
〇 養育費債権者による取立て・回収を行政が代替ないし支援する場合、債権を効
率的に回収する必要があり、債権の回収をサービサー等の民間機関に担わせるこ
とが考えられる。例えば、自力での請求・回収が困難なひとり親のために、国・自
治体等の公的機関からの委託により、サービサーが債務者の情報把握や債権回収
に貢献するスキームが考えられる。
〇 養育費債権は大量・小口で、所在不明、担保不存在など、回収難度が高い。サー
ビサーの強みとして、
整備された体制やシステムを活用し、
回収ノウハウに精通し
た人材・ノウハウを活かすことが可能である。
法的手続について全国対応が可能で
あるし、厳格な行為規制の下で債権回収の適正も確保される。
〇 サービサーが養育費債権の管理・回収を行うことができるようにするためには、
法改正が不可欠である。
また、
養育費債権の回収をサービサーに担わせるには、そ
の委託費用の公的負担・補助も含めた全体的な制度設計が必要となる。
5 強制徴収制度の創設をはじめとする公的な取立て支援
〇 公的機関による強制徴収
・ 養育費の強制徴収制度は、諸外国でも広く用いられている履行確保施策であ
り、
立替払よりはハードルが低いのではないか。
公的機関による給与天引き等の
代理強制徴収制度の導入を検討すべきである。
・ 行政による強制徴収は、
費用や時間面での養育親の負担軽減を図るメリットが
あるが、
あらかじめ養育費の取決めがないと使えず、
非養育親に定期収入や還付
金がないと使いにくいというデメリットがある。
・ 養育費の取立てのために、
いわば公的なサービサーを設け、
国等の公的機関が、
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養育費債権者から回収業務の委託を受け、
代わって徴収を行うというスキームも
考えるべきである。
・ 国民健康保険料や介護保険料の徴収手続に準じた制度設計も、
選択肢の一つで
はないか。さらに、源泉徴収制度類似の制度や、各種還付金・公的給付との相殺
などの手段が考えられるが、法制面の整理・検討がまずは必要である。
〇 行政・司法による履行勧告、行政による履行状況の監督
養育費不払いの事案について、行政や司法が支払義務者に対して養育費の履行
を促して求めるだけでも、支払義務者にとっては強い支払のインセンティブとな
る。
行政が、
養育費の履行状況を継続的に監督し、
不履行の場合に請求書を送付す
るなどの督促を行う支援も検討すべきである。
〇 債務者の財産情報の取得の支援
・ 改正民事執行法に基づく支払義務者の財産に関する情報取得手続について、
その支援とともに十分な周知が必要である。
・ 諸外国では、行政や司法が主体となって非養育親の住所、連絡先、財産の調査
を行う仕組みを採用している国があり、
我が国においても、
債務者の財産情報の
取得支援を検討すべきである。
・ (マイナンバー制度を活用するなどして、)逃げ得を許さない制度が必要であ
り、非養育親の居所・財産(勤務先)等の情報を行政が探索して、回収・執行を
容易にする方策を講ずることが考えられる。その場合の要件や具体的方法を検
討するに当たっては、個人のプライバシーにも配慮する必要がある。
・ 夫婦の婚姻届の提出時にマイナンバーを提出させ、離婚後の養育費の請求時
に利用することを認めるなどして、離婚後の養育費支払義務者の財産調査を可
能・容易にする仕組みも考えられる。
6 悪質な不払い者に対する制裁
〇 養育費不払いの防止のためには、親の子に対する扶養義務や養育費の支払義務
を法律で明確に規定するとともに、悪質な養育費不払いには制裁を科すことが効
果的である。
養育費不払いについては、海外と同様、不作為による子どもへの経済
的虐待と位置付け、悪質な不払い者に対する罰金・罰則などを検討すべきである。
〇 罰則以外のアプローチとして、
養育費不払いについて、
賃金不払いの場合のよう
な法定の付加金制度を設けることや、法定利息を超える法律上の遅延損害金を定
めること、
養育費債権の消滅時効期間を10年に延ばすことなどを、
支払のインセ
ンティブ措置として考えるべきである。
〇 養育費の不払いについて、諸外国では、氏名公表や、運転免許・パスポート等の
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資格を停止したりする例もあり、養育費不払いを許さないという強いメッセージ
になることから検討を進めるべきである。
もっとも、
対象とすべき事案の選別や立
法措置を講じた場合の合憲性の検討など、検討課題も多い。
7 公的な立替払制度の創設
〇 養育費の不払いが生じた場合に、北欧諸国や韓国等では、立替払制度が採用さ
れているが、
北欧諸国では、
その支給対象を幅広く認め、
支払期間も長期に及んで
いるのに対し、韓国では、支給対象や期間を相当程度限定するなど、その態様は
様々である。我が国でも、諸外国の例を十分に調査・分析し、また、自治体の取組
を参考にしつつ、立替払制度の創設を検討していくべきである。
〇 特に、
韓国のように、
非常救済的に、
資力要件も設けた上で一時的な臨時的給付
を行う立替払制度であれば、
我が国でも検討に値する。
そのような一部の立替えで
あっても、養育費の不払いに対する公的支援を設けることには大きな意義がある。
〇 立替払制度の導入を検討する場合には、その目的・対象を明確にし、FPIC、
法テラス等の既存リソースを適切に活用し、
民間保証も併用するなど、
立替払いに
とどまらない、多様な複層的選択肢を提供すべきである。
〇 国による立替払の法的性格については様々な構成が考えられ、まずは制度的観
点から、譲渡性、処分可能性、第三者弁済の可否も含めた整理を行う必要がある。
また、
国による取立ての手続や、
支払義務者から異議があった場合の法的問題も考
えるべきである。
〇 行政による立替払は、
養育者が不払いリスクを負わないメリットがあるが、
行政
の財政負担が大きくなるデメリットがあり、
一律立替えとした場合には、
事後の回
収のハードルが高く、財政面の考慮が不可欠である。
〇 立替払制度の導入により、支払義務者の支払意欲が減退するおそれがあること
や、この制度を悪用した新たな逃げ得の発生といったモラルハザードの問題にも
留意する必要がある。
〇 立替払制度の導入については、
法的問題や体制・財政措置にも配慮する必要があ
り、国民のコンセンサスを得ながら、検討・実現を図っていくことが必要である。
〇 立替払制度と類似のアプローチとして、養育費不払いの場合に、支払義務者を
対象とした無利子の貸付金制度を設け、
かつ、
その貸付金は養育費債権者が直接受
け取ることができる制度を創設することが考えられる。
8 自治体における先進的取組の横展開と国による支援
〇 養育費確保の取組が一部の自治体にとどまっており、それを拡充するためには、
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例えば、
養育費に関する専門知識を有する相談員の配置を進め、
全国担当者会議を
開催するなど、より多くの自治体で養育費確保の取組を開始するための契機や働
きかけが必要である。
〇 自治体が養育費の履行確保等に資するものとして先駆的に実施する事業に対す
る財政補助や、自治体が法律専門家等と連携して養育費に関する法的問題の解決
に取り組むモデル事業に対する国の支援・連携が必要である。
9 養育費問題に関する周知・広報の拡充、社会啓発
〇 これまでの取組として、養育費問題に関するリーフレットや参考書式を離婚前
の者に一律に配布することにより、
養育費の取決率が向上した自治体もあり、
国と
しても、情報発信を一層進めるべきである。
〇 養育費問題に関する分かりやすいリーフレット、
養育費の取決めや請求・回収の
ために必要となる書類の書式や記載マニュアル、FAQや相談機関一覧表の作成
など、
養育費問題に関して当事者が必要とし、
問題解決に有益な信頼できる情報の
ワンストップ提供が必要である。ウェブでのサービス提供も考えていくべきであ
る。
〇 養育費の重要性に関する社会認識を高め、養育費を支払うのが当たり前だと皆
が考える意識涵養、
社会啓発が必要である。
学校教育における養育費等に関する法
教育や、
幅広い親に対するガイダンスなどの教育啓発も必要であり、
TVCMやイ
ンターネットを通じた啓発活動も検討すべきである。
〇 養育費問題に関する意識啓発として、養育費の取決めに関する子どもと親の体
験などが聞けるような相談グループの創設等を検討すべきである。
10 その他、併せて検討すべき課題
(1) DV・虐待等の被害者に対する配慮
〇 DV被害者が相手と接触することなく養育費を請求することができるための
支援など、
DV・虐待等の被害者が、
安全に、
安心して養育費を受け取ることが
できるようにする支援等が必要である。
(2) 面会交流との関係
〇 大原則として、養育費と面会交流は法的に別問題であり、養育費の支払を求
める代替として、面会交流を強制される関係にないことの確認が必要である。
〇 面会交流支援を実施して適切な面会交流を実施・継続することによって、
養育
費の履行が促されることがある。自治体の取組も進んでいるので、面会交流に
対する公的支援の検討も必要である。
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(3) 養育費の履行・受け取りのインセンティブを高める施策の充実
〇 養育費を支払う側に養育費支払分の扶養控除や所得控除
(税制上の措置)
を認
めるなど、
支払義務者の支払意欲を促進することで、
不払い解消の効果が期待で
きる。
〇 養育費を受け取る側への支援として、
児童扶養手当の算定時に、
受け取った養
育費額を収入として考慮しないようにしてほしい。
(4) 養育費履行確保のための専門的体制の整備や専門機関の創設
〇 イギリスやオーストラリアの養育費庁、韓国の養育費履行管理院のように、
政府の中に、相談から支援までのワンストップサービスの司令塔となる組織を
設けることが有効である。
今後、
関係省庁が連携して、
政府に養育費専門部署を
創設することを検討すべきである。
〇 養育費の不払いの理由は様々であり、
不払いの理由・態様に応じて、
養育費の
履行確保のために講ずべき支援は異なる。養育費不履行の様々な要因に対し、
履行のインセンティブを確保しつつ効率的な回収に関するワンストップかつ重
層的支援サービスを設けていくことが必要である。
〇 例えば、関係省庁、法テラス、FPIC、家庭裁判所、地方自治体、弁護士会
等、
養育費問題に関係する機関が連携を強化し、
将来的には、
一体となった相談
支援体制のネットワークを構築することが考えられる。
〇 将来的には、
養育費・面会交流支援センターを設置し、
養育費の相談支援や養
育費紛争を取り扱うADRの機能とともに、
面会交流の支援を、
民間団体とも連
携しながら、公費により行うことも考えられる。
(5) その他、子どものための総合的な施策の充実
〇 児童扶養手当の増額やひとり親の就労支援など、子どもに関する他の制度・
施策を充実化することも必要である。
〇 離婚前の別居後の対応も検討してほしい。児童手当の監護親への移動措置、
世帯分離制度の簡便化、
婚姻費用に関する裁判所の速やかな決定と支払確保、離婚調停・裁判中の夫婦の子どもへの手当の創設など、
夫婦の別居中の経済的な困
難を緩和する措置を講ずることが必要である。
第3 終わりに
本勉強会において示された養育費の支払確保に向けた意見は、上記第2のとおりで
あり、養育費について問題となる様々な場面や課題について、多種多様なアプローチ
と具体的提案が示されている。
いずれも傾聴に値するものであり、
今後、
これらを参考
にしつつ、
その可否や実施方策を検討し、
総合的・重層的な対応を進めていく必要があ
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る。
養育費の支払確保は、
我が国の子どもの未来のための課題である。
すべてのひとり親
が、
当然のこととして養育費の支払を適切に受けることができ、
また、
離婚した場合に
は養育費の支払を自発的に継続することが当然であるとの認識を共有する社会を実現
していくことが重要であることを、改めて付言しておきたい。
以 上
別紙110法務大臣養育費勉強会に御協力いただいた方々等
森 まさこ 法務大臣(議長)
赤 石 千衣子 様 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長
生 田 秀 様 弁護士法人ナビアス・弁護士
泉 房 穂 様 明石市長 ほか
今 津 綾 子 様 東北大学大学院法学研究科准教授
海 野 惠美子 様 一般財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会理事長
金 亮 完 様 山梨学院大学法学部法学科教授
熊 谷 信太郎 様 熊谷綜合法律事務所・弁護士
桑 原 豊 様 株式会社イントラスト代表取締役社長 ほか
駒 崎 弘 樹 様 認定NPO法人フローレンス代表理事
設 楽 あづさ 様 日本司法支援センター第一事業部長
棚 村 政 行 様 早稲田大学法学学術院教授・弁護士
山 﨑 朋 亮 様 公益社団法人家庭問題情報センター理事・養育費
相談支援センター長 ほか
山 田 晃 久 様 一般社団法人全国サービサー協会理事長 ほか
【五十音順】
別紙211法務大臣養育費勉強会・開催状況について
第1回 令和2年1月27日(月)
〇 養育費の履行確保等に関する各方面からの要望について
〇 今後の進め方について
第2回 令和2年1月31日(金)
〇 自治体における養育費の履行確保に向けた取組について
第3回 令和2年2月25日(火)
〇 諸外国における養育費の履行確保のための制度・運用等について
第4回 令和2年3月9日(月)
〇 ひとり親支援の現場から見た、養育費の履行確保に向けた現状の課
題と必要な方策について
〇 フィンランド・スウェーデンにおける養育費の履行確保のための取
組に関する法務省現地調査について
〇 厚生労働省における養育費問題に対する取組について
第5回 令和2年3月23日(月)
〇 養育費の履行確保のための民間活用スキームや、効果的取立て、債
権回収の方策等について
◇ 令和2年4月27日(月)
法務大臣と韓国養育費履行管理院院長との電話会談
〇 韓国における養育費の履行確保のための最新の取組状況について
第6回 令和2年5月11日(月)
〇 養育費に関する相談支援・サポートを行う立場から見た、養育費の
履行確保に向けた取組と課題等について
第7回 令和2年5月18日(月)
しろまる 養育費の履行確保に関する総括的意見交換

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