1第1回 商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究
会 議事概要
1.日時 令和2年4月24日(金)10:00〜12:00
2.開催方法 ウェブ会議により実施
3.出席者
(有識者)
座長 岩原紳作
委員 阿部耕一
委員 片山 達
委員 加藤貴仁
委員 角田美穂子
委員 内藤 卓
(法務省)
民事局長 小出邦夫
商事課長 篠原辰夫
官房参事官 竹林俊憲
民事局付 福永 宏
民事局付兼登記所適正配置対策室長 竹下 慶
4.議事概要
(次のとおり) 2議事概要
しろまる篠原商事課長 第1回研究会を開催する。
しろまる小出民事局長 法人の実質的支配者情報の把握は,法人が,資金洗浄・テロ資
金供与等に悪用されることを防止する等の観点から,
重要な課題であり,
実効
性のある取組を行うことが,FATF 等の国際機関や国内の金融機関から求めら
れていると承知している。
この課題に関し,民事局では,平成30年に公証人法施行規則を改正し,同
年11月30日以降,
株式会社等が設立される際に,
公証人が行う定款認証の
手続において,起業者(嘱託人)は,設立される株式会社等の実質的支配者と
なるべき者及びその者の暴力団員等への該当性について申告を行うものとさ
れている。
この取組は,令和元年10月に FATF のベストプラクティスとして取り上げ
られるなど,国際的にも評価されており,また,公証人の発行する「申告受理
及び認証証明書」は,金融機関が顧客の実質的支配者を確認する際に使用され
ていると承知している。
他方で,
法人設立後の継続的な実質的支配者の把握については,
課題として
残っている。この点に関し,国際的には,EU 加盟国等において,公的機関に
おいて設立後の法人の実質的支配者を登録するという取組が行われているよ
うである。
我が国では,
設立後の法人の基礎的な情報は,
商業登記所に登記されており,
当該業務を担う登記官は,
商業・法人登記の分野において高度な専門性を有し
ているところ,法人の実質的支配者情報の把握促進のために効果的な役割を
果たし得る。
そこで,
法務省民事局では,
商業登記所における法人の実質的支配者情報の
把握促進について,
研究を行い,
今後の新たな取組につなげていきたいと考え
ている。
もちろん,
法人の実質的支配者の把握は,
非常に大きな問題であると承知し
ており,
民事局が取り組むことができるのはその一部ではあるが,
精力的に進
めてまいりたい。
しろまる篠原商事課長 本日の研究会では,1商業登記所において実質的支配者情報
に関する証明書を発行する制度の必要性及び証明制度の対象となる範囲,2
申告された法人の実質的支配者情報の正確性確保の方法,3想定される証明
書の通数,
集積したデータの管理・活用等長期的な課題の三つに分けて議論し
ていただきたい。 3しろまる岩原座長 それでは,まず,一つ目のテーマである,商業登記所において実質
的支配者情報に関する証明書を発行する制度の必要性及び証明制度の対象と
なる範囲について,事務局から説明いただきたい。
しろまる竹下室長 (法人の実質的支配者把握に関する国内外の要請,欧州の動向,会
社数概況及び商業登記事件数,今回の議論の対象となる制度である法人の実
質的支配者証明制度(仮称)案について説明。)法人の実質的支配者証明制度(仮称)案の概要は次のとおり。
・ 法人の申請により法務局が「実質的支配者情報証明書(仮称)
」を発行
・ 申請する法人は,
「実質的支配者情報一覧」の保管及び同一覧の写し(実
質的支配者情報証明書)
の交付を申請,
実質的支配者該当性を裏付ける添付
書面を提出
・ 「実質的支配者情報一覧」が保管されていることは,登記簿の付記事項と
して記録(実質的支配者情報を届け出ている信用性の高い会社と評価され
得る)
・ スキャンした「実質的支配者情報一覧」は,データベースとして管理
・ 制度の対象は株式会社・特例有限会社,
証明の対象となる実質的支配者は
犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項第1号の
実質的支配者(株主が外国会社の場合は制度の対象外)
・ データベースの外部機関との連携は,将来的な課題
〇岩原座長 続いて,
阿部委員から,
金融機関における顧客の実質的支配者情報
の確認の実務について説明いただきたい。
しろまる阿部委員
(実質的支配者の確認に係る銀行の実務対応に関して,
実質的支配者
の確認に関する法令の規律及び金融庁ガイドラインの定め並びにこれらに関
する金融機関の実務的対応,定款認証において実質的支配者の申告を求める
制度に関する加盟行のアンケート結果等について説明)
しろまる岩原座長 自由に御議論いただきたい。
しろまる阿部委員 国内外から求められているAML/CFT対策として,実質的支
配者の確認というのは非常に重要である。
銀行界としても,
今回の制度の導入
により,信頼性のある実質的支配者の確認につながることを期待したい。
しろまる片山委員 法人や信託の透明性確保というのは世界的な潮流であり,銀行は
実質的支配者の審査を義務づけられているのに,それに利用できる信頼に足
る資料が今存在しないということで,しわ寄せが銀行に来ているという状況
ではないかと思う。
その点からも,
今回の取組は必要性が高いと考えている。 4参考までに,弁護士の業務上も実質的支配者を知る必要性がある。
第1に,弁護士は事件を受任する前に利益相反の有無のチェックを行うが,
その利益相反の有無というのは形式判断ではなくて,
実質判断になるので,依頼者又は相手方が法人又は信託である場合には,当該法人又は信託だけを見
ていても判断できず,その背後に誰がいるのかということを知っておく必要
がある。
第2に,
海外では,
弁護士に顧客の実質的支配者の確認を義務づけるという
国が増えてきており,それが世界の潮流であると承知している。
〇角田委員 公的機関に登録された実質的支配者情報へのアクセスに関して,
ドイツでは最近制度改正がされて,アクセス権者が拡大している可能性があ
る。
〇篠原課長 今回,
民事局で考えている制度については,
利用者が申請をして,
法務局が証明書を発行し,
その証明書の利用については,
会社が自分の判断で,
その証明書を金融機関等に提出して,実質的支配者の確認をしていただくと
いうような運用も考えられると思っている。
〇加藤委員 犯罪による収益の移転防止に関する法律上,実質的支配者の確認
については,通常の特定取引とハイリスク取引で区別されているようである
が,今回の制度は,ハイリスク取引を念頭に置くものなのか,それとも,通常
の特定取引の確認について手続を円滑にするというものなのか。通常の特定
取引とハイリスク取引では,実質的支配者を確認する際の困難さが違う気が
する。
〇篠原課長 通常の特定取引についても制度の対象に含めて,議論をお願いし
たい。
〇岩原座長 イギリスなどでは,登録された実質的支配者情報は誰でも見られ
るという形の制度にしている。
今回の制度では,
登記事項にして誰でも見られ
るとするのではなく,
商業登記所が証明書を出すこととされているが,
その理
由は何か。
〇竹下室長 実質的支配者の情報というのは,ある種の個人情報であるところ,
今回は,
法律の改正ではなく,
商業登記規則の改正による行政的な取組により
対応することを考えており,
当該法人に対して証明書を交付し,
その証明書を
どこに出すかは法人に決めてもらうとすることが限界であると考えられる。
〇岩原座長 法改正をしないと登記事項にできないという制度的な問題のほかに,実質的支配者情報を登記事項にして一般に公開するということが,
プライ
バシーの点からも問題があり得るので,
今回の制度では,
飽くまで商業登記所
が申請を受けて証明書を出すという範囲で対応しようということか。
〇竹下室長 御指摘のとおり。 5〇内藤委員 我々司法書士も,定款認証における実質的支配者の申告制度の開
始等を通じて実質的支配者に関する理解が進んできた。
今回の制度についても,制度ができて,周知されることで,一般に,法人の
実質的支配者に関する理解,周知が進む重要なきっかけになると考えている。
〇岩原座長 次に,
二つ目のテーマである,
申告された法人の実質的支配者情報
の正確性確保の方法について,事務局から説明いただきたい。
〇福永局付 実質的支配者情報証明書の交付フローは,次のものを想定してい
る。
(申請)
・ BO情報証明書の交付を希望する者が
「法人の実質的支配者情報一覧」の保管及び同一覧の写しの交付を申請する(任意の制度)。・ 申請の際には添付書面を提出する。
(登録)
・ 「法人の実質的支配者情報一覧」をスキャンして登録する。
・ 「法人の実質的支配者情報一覧」
が保管されている旨を登記簿に記録する
(希望する場合のみとするか否かは要検討)。(証明書交付)
・ 認証文を付した,登録した「法人の実質的支配者情報一覧」の写し(証明
書)を交付する。
今回の制度の対象とする実質的支配者の類型については,形式的審査が可
能である,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項
第1号の実質的支配者のみとし,同項第2号及び第4号の実質的支配者は対
象としない。
申請時の添付書面に関しては,二つの案を考えている。
【案1】
1 実質的支配者が法人の株式を直接保有している場合
・ 株主名簿の写し
(本店に備え置かれた株主名簿の写しである旨の代表者
の証明付き)及び
・ 公証人の発行する申告受理及び認証証明書
(初年度の法人税確定申告ま
での間)又は法人税確定申告書別表二の明細書
2 実質的支配者が法人の株式を間接保有している場合
1の添付書面に加えて次の書面
(上位会社の協力が得られるとき)
・ 上位会社の株主名簿の写し
(本店に備え置かれた株主名簿の写しで
ある旨の代表者の証明付き)及び 6・ 上位会社の申告受理及び認証証明書
(初年度の法人税確定申告まで
の間)又は法人税確定申告書別表二の明細書
(上位会社の協力が得られないとき)
・ 株主名簿記載事項を記載した書面
12の場合共通
・ 実質的支配者本人の実在性・本人特定事項を証する書面(免許証の写
し・在留カードの写し等)
【案2】
1 実質的支配者が法人の株式を直接保有している場合
・ 株主名簿の写し
(本店に備え置かれた株主名簿の写しである旨の第三者
(株主名簿管理人,弁護士等)の証明付き)
2 実質的支配者が法人の株式を間接保有している場合
1の添付書面に加えて次の書面
(上位会社の協力が得られるとき)
・ 上位会社の株主名簿の写し
(本店に備え置かれた株主名簿の写しで
ある旨の第三者(株主名簿管理人,弁護士等)の証明付き)
(上位会社の協力が得られないとき)
・ 株主名簿記載事項を記載した書面
12の場合共通
・ 実質的支配者本人の実在性・本人特定事項を証する書面(免許証の写
し・在留カードの写し等)
実質的支配者情報の真実性確保の仕組みについては,次のとおり。
・ 添付書面により真実性を確保
― 虚偽記載には過料の制裁が科される株主名簿の提出を求める。
― 実質的支配者の実在性担保等の観点から実質的支配者の身分証明書
の写しの提出を求める。
― 間接保有の場合において,
上位会社の協力が得られないときは,
株主
名簿記載事項を記載した書面の提出を求める。
・ 書面審査により実質的支配者の認定が可能な類型を制度の対象とするこ
とにより真実性を確保
今回の制度については,商業登記規則に規定を設けることを想定している。
飽くまでも任意の制度とすることを想定しており,会社法等の実体法の改
正は想定していない。
また,法人の実質的支配者情報証明制度(仮称)は,商業登記制度とリンク
させることを考えている。
「法人の実質的支配者情報一覧」が保管されている
場合には,
その旨を登記簿に記録する
(希望する場合のみとするか否かは要検 7討)ことを考えている。
〇岩原座長 自由に御議論いただきたい。
〇加藤委員 実質的支配者情報証明書の交付のフローに関して,
申請の際に,法人が特定の者が実質的支配者であることを証明してほしいという申請をする
という理解でよろしいか。
それとも,
登記所が自分で株主名簿や確定申告書な
どを見て,誰が実質的支配者を探すというものか。
〇篠原課長 申告に基づいて,その申告された内容を添付書面で確認をいたし
まして,それが正しい,整合性があるということであれば,その申告された内
容に基づいたものを証明書として申請された方にお渡しするフローを考えて
いる。
〇篠原課長 虚偽申告に関する制裁は,制度の信頼性向上に向けて重要な論点
かなと考えている。
仮に,
登記所を経由して裁判所に過料の発動を促すという
ような制度を想定すると,
例えば,
金融機関等において出された証明書に何ら
か不審な点があるというような形で法務局にお知らせいただくような,金融
機関において,この過料発動のプロセスのトリガーを引いていただけるとい
うようなことというのは可能か。
〇阿部委員 加盟行のヒアリングをした上で回答した方が正確だと思うので,
現時点では回答は保留させていただきたい。
〇角田委員 過料の事件というのはどれくらいあるのか。
〇篠原課長 現在は,株主名簿の虚偽記載に関しての過料の通知を登記所から
裁判所にするという実務はない。多いのは,役員の変更の登記がされない,あ
るいは役員の選任を怠ったという事実が登記所において把握された場合に,
裁判所に過料の通知を行っているというのが実務の現状である。過料通知の
件数は相当数ある。
〇加藤委員 株主名簿の過料のトリガーを銀行からの情報提供で引いてもらう
という話であるが,
銀行の方で法務局が発行した証明書を見て,
その証明書を
見たにもかかわらず,銀行の方でまたチェックしなければいけないというよ
うなことになると,二度手間になるような気がする。むしろ,この制度の対象
になるかどうかを問わず,
銀行の窓口などで,
BO関係で株主名簿の記載に疑
いが生じた場合には,
それを法務局の方に通知するような,
何かそういった仕
組みをお考えなのかなという気がした。
〇竹下室長 商業登記規則第118条の過料の事件の通知については,登記官
が職務上知ったときに管轄地方裁判所に通知するということになっており,
世の中の株主名簿の虚偽記載について,登記所がまとめてそれを引き受けて
通知するというようなことにはなっていないというのが前提である。
その上で,
銀行が証明書を受け取ったときには,
法務局の証明書ということ 8でそのまま受け入れるのかと思うが,その後も継続的に顧客と取引が続く中で,実態と違うということを銀行が把握する可能性もあるのではないか。
その
際に,
銀行から登記所に資料を提供いただくといった形で,
登記所が裁判所に
通知するきっかけを作っていただくことが可能なのかどうかという問題意識
である。
〇岩原座長 実際には,
正にマネーロンダリングが問題になって,
証明書を出し
てもらっていたけれども,それが虚偽記載だったということが金融庁の方か
ら問題にされて,
そういうときには,
もう裁判所に過料を科してもらって示し
をつけざるを得ないというような事態になったときに過料が科されるのでは
ないか。
〇竹下室長 座長御指摘のとおりであり,登記所には外に出て実質的な調査を
するという権限がないので,
登記所は,
金融庁や銀行において調査報告書みた
いなものを作っていただければ,それを受けて裁判所に通知することが可能
であるというところである。
〇岩原座長 私も,
登記所が自主的に動くということは余りなくて,
実際には金
融庁や銀行から問題にされて,
虚偽記載だということになったとき,
制度の示
しをつけるために過料を科さざるを得ないということになるのではないかと
いう気がする。
〇竹下室長 座長御指摘のとおり,
示しをつけるために,
銀行等に動いていただ
ければ,それを受けて登記所も動くことができるということかと思う。
〇内藤委員 制度の対象については,定款認証の場面で,現在,株式会社以外に
も一般社団法人と一般財団法人の申告が求められている。
また,
合同会社の最
近における設立件数は,新設法人の20パーセントを超えるという状況にあ
る。
こういった状況に鑑みると,
制度の対象は株式会社以外にも拡大する必要
があるのではないかと考えられる。
また,1点確認であるが,実質的支配者情報証明書のイメージであるが,現
在公証人が発行している申告受理及び認証証明書については,公証人の一枚
ものの証明書の次に申告書のコピー,それから実質的支配者該当性の根拠資
料のコピーを何点か,これをとじ合わせるような形で一体としての証明書と
いう形になっているが,今回の実質的所有者情報証明書もそのようなイメー
ジでよいか。
〇篠原課長 制度の対象とする法人については,広く考えることについては将
来的な課題と認識しており,
法務局のマンパワー等の問題もあるので,
最初は
株式会社,
特例有限会社に限って行い,
様子を見てというような方向で考えて
いきたいと思っている。 9証明書の様式等については,今後,具体的な制度設計をする中で,公証人が
発行している申告受理及び認証証明書も参考にし,そういったものを踏まえ
て今後考えていきたい。
〇阿部委員 実質的支配者情報証明書は,法務局が添付書面を確認して証明書
を出すというものであるから,銀行取引における実質的支配者の確認の手続
では,信頼に足る証跡として,非常に有益なものであるという前提になる。そ
の上で,
銀行取引では,
その証明書の内容が実は真実ではないというような場
面は基本的に想定していない。
〇角田委員 今回の制度では,添付書面に関して,案1と案2があるところ,案
1は,現在の実質的支配者確認の実務を踏まえたものであると伺っているが,
現在の実務にはどのような問題があるのか。
〇阿部委員 実際には,
確定申告の別表二の明細書等についても,
お客さまから
すぐに提出していただけるケースとそうではないケースもあり一様ではない
ようである。現在の実務が案1で全てうまくやることができているという前
提でないことは御理解いただきたい。お客さまにとって負担のある手続は避
けたいと考える。
その上で,
案1と案2について,
銀行界でどちらかという議論はまだしてい
ないが,
必要な添付書面というのは,
正確性が担保できるものであると同時に,
制度として実行できるものでなければならない。
そういう意味では,
案1は現
行実務をベースとしているが,先ほどのとおり現在の実務の状況を踏まえて
も,十分に円滑にやっていけるかという観点では議論があると考えている。
〇角田委員 協力を得られるかが問題なのか,信頼性が問題なのか。
〇阿部委員 信頼性の問題もあるが,手続としてお客様から円滑に添付書類を
提出いただけるのかという実行性について非常に問題意識が高い。
〇岩原座長 添付書面の点に関して,
案2の第三者による証明というのは,
具体
的に弁護士等を一例として考えているようであるが,
実際,
うまく機能するの
か。弁護士はどうやってこれを証明するのか。
〇竹下室長 現段階で具体的なイメージがあるわけではないが,
例えば,
一定の
書式などを決めて第三者に審査をしていただき,審査の費用は顧客の方に負
担いただき,第三者には,一定の専門性を有し,精通している専門職になって
いただくというようなスキームを創設することや,公証人の宣誓認証の制度
を利用することなどが考えられる。もし,無料で行うということになると,別
の公的機関が審査を行うことができるかという議論になるか。
〇岩原座長 その場合,
第三者の弁護士等が証明するのは,
単に本店に備え置か
れた株主名簿の写しであるということだけなのか。
それ以上に,
株主名簿の真
正等を証明するわけではないのか。 10〇竹下室長 今回の案では,本店に備え付けたことのみが証明の対象になって
いる。ただ,本店に備え付けたことだけを証明して,信頼性がどこまで上がる
のかといった議論が出てくるかと思うし,
そこまでやるのであれば,
実体的な
誰が株主かということについても証明してもらうべきではないかという議論
も,当然出てくるのかとは思っている。
〇岩原座長 そうであろう。弁護士がどうやってそれを確認するのかというこ
とになるであろう。
〇岩原座長 三つ目のテーマである,
想定される証明書の通数,
集積したデータ
の管理・活用等長期的な課題について,事務局から説明いただきたい。
〇竹下室長 法務局で保管することになる実質的支配者情報へのアクセスにつ
いては次のとおり考えている。
・ 基本的に,
当該法人が実質的支配者情報証明書を取得し,
必要な機関に提
出することを想定
・ 例外的に,
捜査機関や裁判所からの法令に基づく照会,
嘱託があった場合
には実質的支配者情報を直接提供
・ 将来的な課題として考えられる事項
- 他の機関との連携
- オンラインによる実質的支配者情報の管理
施策の実施体制等に関して,実施庁は,法務局の商業登記所(84箇所)を
想定している。
想定される申請数に関しては,
令和元年12月末現在の株式会社・特例有限
会社数が約345万5000社であることや,
これらの会社が数年
(2〜3年)
に1回利用することが想定され得ること等を基に考えていくことになる。な
お,平成30年の株式会社・特例有限会社の登記事件数は,約116万800
0件である。
施策実施の見通しに関しては,実質的支配者情報証明制度(仮称)の開始は
令和3年度中を目途とし,制度開始までに,関係機関との調整,省令改正,体
制整備,システム開発等が必要となる。
さらに,長期的な課題としては,他機関との連携,オンラインによる情報の
管理等が考えられる。
〇岩原座長 自由に御議論いただきたい。
〇内藤委員 申請件数に関しては,
大多数の中小企業においては,
社長イコール
実質的支配者であり,株主名簿を見れば実質的支配者が一見明らかであるケ
ースが恐らく8割から9割はあるかと思う。
そういった事案について,
金融機 11関が株主名簿で足りると判断するのか,新しい証明制度を要求するのかとい
ったところによっても,証明書発行の通数というのは大きく変わってくるの
ではないかと思う。
〇加藤委員 金融機関が実質的支配者を確認する中で,ほとんどの事案におい
て,直接又は間接に25パーセントを超える議決権を保有する者を実質的支
配者と認定しているのか。
〇阿部委員 今回の証明書を活用し得る場面としては,一つは新規の取引を始
める場面である。
もう一つは,継続的顧客管理の中で,リスクベースアプローチに基づき,ハ
イリスク先について証明書の提出を求める場面が考えられる。ローリスク先
など,どこまで求めるかは運用の問題だと思う。
〇岩原座長 要するに,
今でも,
金融機関が取引をするときには株主名簿などは
提出してもらっているが,
それにとどまらず法務局,
登記所の証明書を添付す
るという形で,
より信頼性を高める必要がどれほどあるのかということか。それは,金融庁あるいは FATF の関係で,より信頼性を高めるためにこの証明書
が要求されることになるかということにかかっているのではないか。実務的
な感覚としてはいかがか。
〇阿部委員 座長御指摘のとおり,今回の証明書が信頼に足る証跡としてどの
ように位置づけられるかという問題である。
〇岩原座長 今回の制度に関して,
実質的支配者情報について,
証明書を出すと
いうだけではなくて,
登記事項,
登記の付記事項にするということの意味は,
具体的にどういうところにあるのか。
〇篠原課長 今回は,
登記の付記事項という形を考えている。
登記事項という形
になると,
法律によらざるを得ないということになるので,
なかなか難しいと
ころがある。
付記事項というような形で,
この会社については今回の制度の申
請があったというようなことを登記事項証明書で明らかにするということで
あれば,何とかなるのではなかろうかという見通しである。
登記事項証明書にそういう付記事項が掲げられると,当該会社については
信頼性のおける会社である,取引においても安心できると受け止められるこ
とが間接的な効果として期待できるのではなかろうかと認識している。
〇岩原座長 事実上の信頼性を期待してのことだということか。
〇篠原商事課長 付記事項につきましては,そういうことかと思っている。
〇篠原商事課長 金融機関からみて,
実質的支配者情報について,
最新の情報を
法務局で保有しておけば足りるのか,あるいは一定の過去の情報も利用され
る場面が想定されるのか。
〇阿部委員 まず法務局の集める実質的支配者情報が最新の情報であるという 12ことは,大前提となる。その上で,そこに至る過程の情報の取扱いをどうする
かは,加盟行の意見を聞いてみないと分からない。

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