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令和元年9月15日
法教育推進協議会教材作成部会委員 大 山 敏
(東京都立豊島高等学校長)
法教育授業実施者 山 川 幸 伸
(台東区立御徒町台東中学校教諭)
法教育授業実践報告
(中学生向け法教育視聴覚教材「私たちのくらしと憲法」)1 実施日時
令和元年9月6日(金)午後1時25分〜午後2時15分(第5時限)
2 実施校等
(1) 実施校
台東区立御徒町台東中学校
(2) 学年
第3学年
(3) 教科等
社会科「公民的分野」
(4) 指導者
同校教諭 山 川 幸 伸
3 単元等
(1) 単元(学習指導要領における位置付け)
日本国憲法の意義は何か
中学校学習指導要領「社会科(公民的分野)」の大項目「C 私たちと政治」
の中項目「(1)人間の尊重と日本国憲法の基本的原則」
(2) 目標
ア 日本国憲法の基本的な考え方や政治の仕組みに対する関心を高め,意欲的
に追究させる。
イ 民主主義と立憲主義という現代の民主政治の基本概念を,身近で具体的な
例から考えさせ,基本的人権の尊重と民主政治の仕組みを主な内容としてい
る憲法の意義を理解させる。
ウ 日本国憲法が近代に制定された各国の憲法と同じ考え方に立っていること
を,主要な条文や「章立て」から理解させる。
エ 資料などを基にしながら,自分の考えをもち,論理的に意見を述べ,討論
し,合意形成できる能力を育成する。
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(3) 指導計画
1時間目 国の政治の在り方は誰が決めるべきか
2時間目 みんなで決めるべきこと,みんなで決めてはならないこと
3時間目 憲法とは何か
4時間目 日本国憲法の意義は何か(本時)
4 本時
(1) 目標
ア 日本国憲法が,
民主主義と立憲主義の考え方に基づいてつくられたものであ
り,国民の権利や生活を守るものであることを理解する。
イ 日本国憲法の章・条文を通して,日本国憲法の意義について多面的・多角的
に考察し,適切に表現する。
(2) 展開
進行
(所要)
内容 指導上の留意点
導入
(5分)
しろまる本時の課題
「日本国憲法の意義は
何か」を知る。
展開
(35分)
しろまる日本国憲法の前文〜第3章と第
4〜8章の内容について考え,
発表する。
「日本国憲法の前文〜第3章まで
の部分は何を定めているでしょ
うか。また,第4〜8章は何を
定めているでしょうか。章立て
の資料等を参考にして考え,ワ
ークシートに記入しなさい。」
・第3章までのところで,日本国
憲法の三原則である,国民主
権,平和主義,基本的人権の尊
重について定めている。
・第4〜6章は国会・内閣・裁判
所について定めている。
・三権分立を定めている。
・第8章の地方自治は地方の政治
の仕方について定めている。
・第4〜8章は,国の統治の仕組
みを定めている。
しろまる前文から第3章までの部分は民
主主義の基礎となる国民主権と
・各章の名称からおおよそ
の内容を想像させ,これ
までの学習と関連させな
がら,憲法が定めている
ことの概要をつかませ
る。
・「第7章 財政」は,政府
の予算とそれを支える租
税に関する規定であるこ
とを説明する。
・近くの席の生徒と話し合
い,考えさせる。
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平和主義,基本的人権の尊重に
ついて定め,第4〜8章はこれ
らを保障する国の統治の仕組み
を定めたものであることを確認
し,理解する。
「前文と第1条,第9条,第11
条で定めていることは何でしょ
うか。教科書等の資料を参考に
して考え,ワークシートに記入
しなさい。」
・前文と第1条は国民主権につい
て定めている。
・第9条は平和主義について定め
ている。
・第11条は基本的人権について
定めている。
しろまる第10章 最高法規にある3つ
の条文の内容について考え,発
表する。
「第10章 最高法規にある3つ
の条文が意味することは何でし
ょうか。教科書等の資料を参考
にして考え,ワークシートに記
入しなさい。」
・第97条は,日本国憲法が国民
に保障する基本的人権は,永久
の権利である。
・第98条は,日本国憲法が最高
法規である。
・第99条は,天皇,国務大臣,
国会議員,裁判官,その他の公
務員は憲法を守る義務がある。
しろまる日本国憲法は基本的人権を保障
する国の最高法規であり,これ
に違反する法令や政治的な行為
は認められないこと,そして,
裁判官のほか,行政に携わる
人々はこの憲法を守る義務があ
ることを理解する。
・第3章までは国民主権・
平和主義・基本的人権の
尊重を定め,第4〜8章
は国の統治の仕組みを定
めたものであることを理
解させる。
・4人グループをつくり,話
し合わせ,考えさせる。
・生徒からの意見を適宜ま
とめながら,日本国憲法
が第10章において,基
本的人権の保障,最高法
規,憲法遵守義務を明記
していることを確認させ
る。
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まとめ
(10分)
しろまる「中学生向け視聴覚教材,解説
3【4分46秒(18:58
〜)】」を視聴して,日本国憲
法は,近代に成立した憲法と同
じように,民主主義と立憲主義
に基づくものであることに気付
く。
しろまる日本国憲法の意義について考
え,発表する。「日本国憲法の
意義についてワークシートにま
とめなさい。」
・民主主義のもととなる国民主権
を定めている。
・基本的人権の保障とそれを基底
で支える平和主義を定めてい
る。
・三権分立に基づく政治の仕組み
を定めている。
しろまる日本国憲法は,民主主義と立憲
主義の考えに基づき,基本的人
権の保障とそれを基底で支える
平和主義,民主主義のもととな
る国民主権を定めていること,
そして,三権分立に基づく政治
の仕組みを定めることで,国民
の自由・平等と平和を守るもの
であることを理解する。
・日本国憲法と近代に成立
した憲法との共通性に目
を向けさせる。
・日本国憲法の章・条文を通
して,日本国憲法の意義
について多面的・多角的に
考察し,適切に判断して表
現することができる。
・日本国憲法が,民主主義と
立憲主義の考え方に基づ
いてつくられたものであ
り,国民の権利や生活を守
るものであることを理解
している。
・日本国憲法が,民主主義
と立憲主義の考え方に基
づいてつくられたもので
あり,国民の権利や生活
を守るものであることを
理解させる。
(3) 実践報告(成果と課題など)
ア 生徒の様子・変容など
1 導入
本時のテーマ
「日本国憲法の意義は何か」
について確認し,
意識付けを行
った。また,「意義」について,意味・内容・価値・役割・位置付け等の意
味合いがあることを説明することで,日本国憲法の意義についてしっかり
考えられるようにした。
2 展開
日本国憲法の各章の名称から憲法の定めている内容を読み取らせる場面
では,これまでの既習内容から憲法の三本柱である「国民主権,基本的人権
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の尊重,平和主義」に思い当たる生徒も多かった。時間をあまりかけずに発
言を求め,後の話合いの時間を確保できるように配慮した。
前文から第1,9,11条の内容について考えさせる場面では,隣の生徒
と話合い学習を進めるペア学習を行った。
公民の教科書にある
「日本国憲法」
の全文資料を基に,
互いの考えを発表し合った。
前文と第1条についてはそ
の内容の多さから国民主権だけでなく,
平和主義や民主主義の在り方,
国民
の自由の確保,天皇の地位について答える生徒も多かった。
第97,98,99条について考えさせる場面では,4人グループをつく
り話合いを行った。意見交換をしつつ考えを進めることで多様な角度から
条文の内容を捉えるよう指導した。
3 まとめ
中学生向け視聴覚教材を視聴し,
日本国憲法が基本的人権の保障・平和主
義・国民主権を定めていること,
そして三権分立に基づく政治の仕組みを定
めることで国民の自由・平等と平和を守っていることを確認した。
ホウリス
君というキャラクターが分かりやすく説明することで,今日の話合い学習
の振り返りを進めることができた。その後,
「日本国憲法の意義は何か」に
ついて各自生徒が意見をまとめ発表した。
イ 成果と課題
〇成果
本授業の目標は日本国憲法が民主主義と立憲主義の考えに基づいてつく
られており,
国民の権利や生活を守るものであることを理解することにある。
その過程でペア学習や4人グループによる話合い学習を取り入れることで,
生徒が日本国憲法について多様な意見に触れながら主体的に考え,
理解を進
めることができた。また,少人数で話し合うことにより,日頃,発言する機
会が少ない生徒も自分の意見を発表しやすくすることができた。
生徒同士が
意見交換することにより,視野を広げて多面的・多角的に憲法について理解
を進めることができた。
中学生向け視聴覚教材をまとめで使用することで,
日本国憲法の内容につ
いて整理して確認することができ,その意義について考えることができた。
〇授業のワークシートの記述より
・日本国憲法の意義とは,国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の三つを
中心として平和を維持するための国の決まりをまとめたもの。
・国民の人権や平和を守るためにある。国民の生活を豊かにするもの。
・日本国民が平和に安全に暮らせるようにする決まり。
・国民全員が平等に過ごせるようにするもの。
一部の権力者が勝手なことを
しないような仕組み。
・国全体が平和であるために国民の権利を尊重し,
日本国の在り方を定めた
もの。
・国民の自由・権利を守るため,憲法で政治権力を制限したもの。
・国民みんなに国の在り方を決められる権利があり,戦力を持たず,平和を
実現し,基本的人権の享有を妨げられないとしたもの。
・国の在り方を示し,豊かな国をつくるという理想を掲げ,宣言したもの。
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ウ 課題
社会的事象等について多面的・多角的に考察する際に,ペア学習や少人数の
グループによる話合い学習が有効である。しかし,話合いのテーマが資料や文
章の単純な読み取りに始終するものでなく,広範囲な解釈ができ,歴史的背景
や様々な要因,内在する問題や予想される展開等について考察できる発問にし
ていく必要がある。授業の目標に合わせて,生徒に何をどのように話し合わせ
て考えさせるのか十分に検討・準備し,話し合いに耐えうる発問の工夫をして
いきたい。
(4) 参考資料(使用教材・資料、授業の様子・板書など)
ア 配布資料(ワークシート)
別紙のとおり。
イ 当日の板書
本日のテーマ
日本国憲法の意義は何か1.1前文〜第三章までの部分は主に何を定めているか。
国民主権、平和主義、基本的人権の保障を定めている。2第四章〜八章は主に何を定めているか。
前記のことを保障する国の統治の仕組みを定めている。2.1前文:・・・ここに主権が国民に存することを宣言しこの憲法を確定する。
・・
第1条:・・・主権の存する日本国民・・2第9条: 日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を希求し,国権の発動た
る戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手
段としては,永久にこれを放棄する。3第11条:国民は,すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に
保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及
び将来の国民に与えられる。3.1第97条:この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由
獲得の努力の成果であって,これらの権利は,過去幾多の試練に堪え,現
在及び将来の国民に対して,
侵すことのできない永久の権利として信託さ
れたものである。2第98条:この憲法は,国の最高法規であってその条規に反する法律,命令,詔勅
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及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,
その効力を有しない。3第99条:天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官,その他の公務員は,こ
の憲法を尊重し擁護する義務を負う。
4.日本国憲法の意義は何か
日本国憲法は,民主主義と立憲主義の考えに基づき,基本的人権の保障とそれを基底で支える平和
主義,民主主義のもととなる国民主権を定めていること,そして、三権分立に基づく政治の仕組みを
定めることで,国民の自由・平等と平和を守るものである。
ウ 授業の様子
5 参考:新学習指導要領における位置付け
新学習指導要領 社会科「公民的分野」
大項目「私たちと政治」
中項目「人間の尊重と日本国憲法の基本的原則について,対立と合意,効率と
公正,個人の尊重と法の支配,民主主義などに着目して,課題を追求し
たり解決したりする活動を通して,
次の事項を身に付けることができる
ように指導する。」 3年 組 番 氏名
日本国憲法の意義は何か
しろまる日本国憲法の章立て
前文、第一章 天皇、第二章 戦争の放棄、第三章 国民の権利及び義務、
第四章 国会、第五章 内閣、第六章 司法、第七章 財政、第八章 地方自治、
第九章 改正、第十章 最高法規、第十一章 補則
1.1前文〜第三章までの部分は主に何を定めているか。
2第四章〜八章は主に何を定めているか。
2.1前文 :
第1条:
2第9条:
3第11条:
3.1第97条:
2第98条:
3第99条:
4.日本国憲法の意義は何か
別 紙

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