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令和元年12月2日
法教育推進協議会教材作成部会委員 大 山 敏
(東京都立豊島高等学校長)
法教育授業実施者 三 枝 利 多
(目黒区立東山中学校主任教諭)
法教育授業実践報告
(中学生向け法教育視聴覚教材「私法と消費者保護」)
1 実施日時
令和元年11月27日(水)午前9時45分〜午前10時35分(第2時限)
令和元年11月29日(金)午前9時45分〜午前10時35分(第2時限)
2 実施校等
(1) 実施校
目黒区立東山中学校
(2) 学年
第3学年
(3) 教科等
社会科「公民的分野」
(4) 指導者
同校主任教諭 三 枝 利 多
3 単元等
(1) 単元(学習指導要領における位置付け)
契約とは何だろう
(中学校学習指導要領「社会科(公民的分野)」の大項目「(2) 私たちと経済」
の中項目「ア 市場の働きと経済」,「イ 国民の生活と政府の役割」)
(2) 目標
ア 身近な経済活動に対する関心を高めるとともに,
具体的な事例を通じて,
契約成
立の要件や,
いったん成立した契約が例外的に解消できる場合があることについて
理解する。
イ 契約は,
対等な個人の自由な意思に基づいて結ばれ,
その結果,
法律上の権利と
義務が発生することを理解する。
ウ 消費者が不利な条件の下で契約を結んだ場合,後に契約を解消できる仕組みを
作るなど,国や地方公共団体が消費者を保護するための施策を実施していること
を理解する。
- 2 -
エ 消費者保護行政や法律の意義を理解するとともに,消費者自身も自立した消費
者を目指す必要があることについて考える。
(3) 指導計画
1時間目・・・契約とは何だろう,契約を解消できるとき・できないとき(本時)
2時間目・・・契約が解消できる特別な場合(本時)
4 本時
(1) 目標
(1時間目)
ア 身近な経済活動に対する関心を高めるとともに,具体的な事例を通じて,契約成
立の要件や,いったん成立した契約が例外的に解消できる場合があることについて
理解する。
イ 契約は,対等な個人の自由な意思に基づいて結ばれ,その結果,法律上の権利と
義務が発生することを理解する。
(2時間目)
ウ 消費者が不利な条件のもとで契約を結んだ場合,
後に契約を解消できる仕組みを
作るなど,
国や地方公共団体が消費者を保護するための施策を実施していることを
理解する。
エ 消費者保護行政や法律の意義を理解するとともに,
消費者自身も自立した消費者
を目指す必要があることについて考える。
(2) 展開
(1時間目)
進行
(所要)
内容
指導上の留意点
導入
(8分)
(凡例 ◇:学習内容 123・・・:学習
活動)
◇契約のイメージをつかむ。
1ワークシート1
【別紙1】
を使って,
「契
約という言葉で思いつくこと」
を記入す
る。〈個人〉
2ワークシート1を使って,
「契約書を見
たことがあるか,見たことがある場合
は,どのような契約書か」を記入する。
〈個人〉(12で約3分)
31と2の内容を何人かに発表してもら
う。
その際,
同じような意見の人がいな
いかを挙手で確認する。
〈一斉〉
(約3分)1契約の漠然としたイメ
ージを思い起こさせ
る。
2実生活の場面で契約書
を想起させる。
3挙手がない場合など
は,12の作業中に,
机間巡視によってチェ
ックしておく。
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4教師も朝から契約をしてきたことを告
げ,買ってきた「おいなりさん」をおも
むろに取り出す。〈一斉〉(約1分)
5「これください。」,「かしこまりまし
た。」というやりとりを経て購入したこ
とを伝え,
これも売買契約であることを
教える。〈一斉〉(約1分)
4意外性を持たせ,生徒
の関心を高める演出と
する。
5契約の基本を確認す
る。
展開1
(13分)
◇契約とは
◇私法とは
◇民法
1「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー1「導入 身近な契約事例」【〜2:
43】)を視聴する。
〈一斉〉
(約3分)
2私法や民法の基本的な考え方やそれら
に基づく契約が日常の生活から切り離
せない大切なものであることを理解す
る。〈一斉〉(約1分)
◇いつ契約は成立するのか
◇契約が成立する要件
◇契約自由の原則
3「私法と消費者保護」の映像(チャプター2「問題提起1 契約の成立時期」【2:43〜3:56】)を視聴して,契約
が成立するのはいつかを考え,
ワークシ
ート1に記入する。〈個人〉(約3分)
4「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー3「解説1-1 契約自由の原則」
【3:56〜6:14】)を視聴して,
契約が成立するのはどの時点かを理解
する。〈一斉〉(約2分)
5契約に必要な要件は,
互いの意思の合致
があり,
互いの合意があった時であるこ
とを理解する。〈一斉〉(約1分)
◇契約自由の原則
◇契約の拘束力(権利と義務の発生)
◇損害賠償
6「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー4「解説1-2 契約の拘束力」【62映像(チャプター1「導
入 身近な契約事例」)
を視聴した内容を,教師
が整理して説明する。
3短い時間で現在の感覚で
決断させる。
5映像(チャプター3「解
説1-1 契約自由の原
則」)を視聴した内容
を,教師が整理して説明
する。
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:14〜8:49】)を視聴して,「契
約自由の原則」,
「契約の拘束力」につ
いて理解する。〈一斉〉(約3分)
展開2
(25分)
◇契約は解消できるのか
◇契約自由の原則
◇契約の拘束力(権利と義務の発生)
1「私法と消費者保護」の映像(チャプター5「問題提起2 契約が解消できるか
否か」【8:49〜11:58】)を視
聴する。〈一斉〉(約3分)
2ワークシート1を使って,
ハプニングカ
ードA・B・Cのそれぞれのケースにお
いて,契約が解消できるか,できないか
について根拠とともに考え,
ワークシー
ト1に記入する。〈個人〉(約5分)
3個人が考えた予想をグル-プで発表し
合い,話合いによってグループとして
の考えをまとめる。
〈グループ〉
(約1
2分)
4グループごとの考えを発表する。
〈一斉〉
(約3分)
5「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー6「解説2-1 契約が解消できな
いケース」
【11:58〜13:18】)を視聴して,契約が解消できないケー
スについて理解する。
〈一斉〉
(約1分)
◇詐欺
6「私法と消費者保護」の映像(チャプター7「解説2-2 契約が解消できるケ
ース」【13:18〜14:32】)を
視聴して,
契約が解消できるケースにつ
いて理解する。〈一斉〉(約1分)
2個人で、根拠を持って
考えさせるようにする。
3班長を中心に、時間配
分を考えながら話合いを
まとめさせる。
4他の班の考えを聞くこと
で考えを広げさせる。
5知的好奇心を持って視聴
させる。
6知的好奇心を持って視聴
させる。
まとめ
(4分)
◇振り返り
1教師による振り返りを行い,
授業の流れ
に沿って内容を確認する。(約2分)
2ワークシート1を使って,
今日の授業で
分かったこと,
気付いたこと,
疑問点を
まとめる。(約2分)
1効率的に授業の振り返り
を行う。
2場合によっては,次時
までの課題とする。
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(2時間目)
進行
(所要)
内容
指導上の留意点
導入
(2分)
(凡例 ◇:学習内容 123・・・:学習
活動)
◇契約とは
◇私法(代表が民法)
◇契約自由の原則
◇契約の拘束力(権利と義務の発生)
◇契約を解消できないケースとできるケ
ース
1教師の整理によって,
前時の振り返りを
行う。〈一斉〉(約2分)
1効果的に前時の振り返り
を行う。
展開1
(20分)
◇契約自由の原則の例外
1「私法と消費者保護」の映像(チャプター8「問題提起3 契約自由の原則の例
外(消費者保護)」【14:32〜18
:09)】)を視聴する。〈一斉〉(約
4分)
2ワークシート2【別紙2】を使って,ハ
プニングカードDのケースにおいて,契約が解消できるか,
できないかについて
根拠とともに考え,
ワークシート2に記
入する。〈個人〉(約3分)
3個人が考えた予想をペアで発表し合い,
話合いによってペアとしての考えをま
とめる。〈グループ〉(約4分)
4いくつかのペアの考えを発表する。
〈一
斉〉(約3分)
◇情報の非対称性
(私人間が対等とは言え
ない)
◇クーリング・オフ
5「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー9「解説3-1 クーリング・オフ制
度」【18:09〜20:29】)を視
聴する。〈一斉〉(約2分)
6実際の社会には,情報の非対称性があ
り,契約する個人の間で対等とは言え
2個人で,根拠を持って
考えさせるようにす
る。
3ペアで時間配分を考えな
がら話合いをまとめさせ
る。
4他のペアの考えを聞くこ
とで考えを広げさせる。
5知的好奇心を持って視聴
させる。
6映像(チャプター9「解
説3-1 クーリング・
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ないケースが多いことや,
クーリング・
オフのような消費者を保護する制度が
あることを理解する。
〈一斉〉
(約1分)
◇消費者契約法
◇未成年者の保護
7「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー10「解説3-2 その他の消費者
保護の制度」
【20
:29〜22
:21】)を視聴する。〈一斉〉(約2分)
8さらに実際の社会には,
事業者の不当な
勧誘については
「消費者契約法」
により
解消できるケースがあったり,契約者
が未成年であった場合に保護する制度
があるなど,様々な消費者を保護する
制度や法律があることを理解する。
〈一
斉〉(約1分)
オフ制度」)を視聴した
内容を,教師が整理して
説明する。
7知的好奇心を持って視聴
させる。
8映像(チャプター10
「解説3-2 その他
の消費者保護の制
度」)を視聴した内容
を,教師が整理して説
明する。
展開2
(24分)
◇いつ契約は成立するのか
◇契約が成立する要件
◇契約自由の原則
◇契約の拘束力(権利と義務の発生)
1「私法と消費者保護」の映像(チャプタ
ー3「解説1-1 契約自由の原則」・
4「解説1-2 契約の拘束力」)をも
う一度視聴して,契約の基本的な内容
を確認する。〈一斉〉(約5分)
◇契約とは
◇私法(代表が民法)
◇契約自由の原則
◇契約の拘束力(権利と義務の発生)
◇契約を解消できないケースとできるケ
ース
◇情報の非対称性
(私人間が対等とは言え
ない)
◇クーリング・オフ
◇消費者契約法
◇未成年者の保護
◇消費者基本法
◇消費者保護行政
◇自立した消費者
2教師の板書(内容は【別紙3】の項番2 2効果的・効率的に内容
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を参照)
による講義を通して,
2時間の
内容を整理し,まとめる〈一斉〉
(約1
9分)。
を振り返る。
まとめ
(4分)
◇振り返り
1ワークシート2を使って,
今日の授業で
分かったこと,
気付いたこと,
疑問点を
まとめる。(約2分)
1場合によっては,次時
までの課題とする。
(3) 実践報告(成果と課題など)
ア 趣旨
本実践は,法教育研究会教材作成部会(法務省)において平成16年度に作成さ
れた「はじめての法教育」の「私法と消費者保護」
(3時間配分で帰納と演繹の2
パターンの指導計画案を作成)
のうち,
第1時
「契約と何だろう」
(P83,84),
第2時「契約が解消できるとき,できないとき」(P84,85),第3時「契約
が解消できる特別な場合」
(P86〜88)の指導計画案を,1時間配分でも行う
ことができることを念頭に,
法教育推進協議会(法務省)
において平成26年度に
作成された冊子教材「法やルールって,なぜ必要なんだろう?」(P50〜54)
及び視聴覚教材を組み合わせたものである(いずれの教材も法務省ホームページ
に掲載)。
視聴覚教材は全てを視聴させることもできるが,必要と思われるチャプターを
教師が組み合わせて活用しながら授業を進めることも可能とすることによって,
1時間配分でも実践できるように工夫されたものである。
しかしながら,
視聴覚教
材の内容は,
各チャプターともに有意義なものが多く,
教師が説明するよりも効果
的と思われる内容が多いと考える。
このようなことから,
効果的に視聴覚教材を活
用しつつ1時間扱いで行うよりも,視聴覚教材の効果を生かすためには2時間扱
いがより有効と考え,単元の時間配分は2時間で実施(第1時に「契約とは何だろ
う」,「契約が解消できるとき,できないとき」,第2時に第1時の振り返り及び
「契約が解消できる特別な場合」を実施)した。
イ 成果
授業観察やワークシートの記述を見ると,
グループでの話合いにおいて,
生徒の
思考の広がりや深まりが見られた。
あるグループでは,契約が解除できないケース(映像のチャプター5「問題提起
2」の事例1及び事例2)においても,未使用品であれば契約が解消できるのでは
ないかという意見があり,
実際に返品ができたという生徒の体験談もあって論議が
活発となった。
映像のチャプター6
「解説2-1」
を視聴して正解を知るとともに,
お店のサービスによっては解消できる場合があるという結論を理解するまで,
知的
好奇心を膨らませていた。
また,あるグループでは,契約が解除できるケース(映像のチャプター5「問題
提起2」の事例3)においても,本人が商品を手に取って見て,お互いが合意して
契約したのであるから,
本人にも過失があり,
店が契約解消に応じなければ契約を
解消できないのではないかという生徒がおり,議論となっていた。
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これらのことから,
ワークシート1に示したハプニングカードは,
平成16年度
に作成したものを基本的に引き継いでいるが,カードの設定が適切であることが
分かった。
契約するそれぞれの当事者の立場から,
多角的に考えることができるよ
うに設定されていると考える。
(ア) 量的分析
さらに,授業後アンケートは以下のような結果となった。
この授業アンケートの結果から,
具体的な事例を題材とした視聴覚教材が,契約に関して,
主に目標のアである
「身近な経済活動に対する関心を高めるととも
に,具体的な事例を通じて,契約成立の要件や,いったん成立した契約が例外的
に解消できる場合があることについて理解する。」と,
目標のイである
「契約は,
対等な個人の自由な意思に基づいて結ばれ,
その結果,
法律上の権利と義務が発
生することを理解する。」ために十分に有効であったと考えられる。
(イ) 質的分析
また,授業のワークシートの記述や授業アンケートの自由記述には,以下の
ような内容が見られた。それぞれの目標について,質的に報告したい。
1目標 ア 「身近な経済活動に対する関心を高めるとともに,具体的な事例を
通じて,
契約成立の要件や,
いったん成立した契約が例外的に解消で
きる場合があることについて理解する。」について
【生徒A】
あまり,契約や私法に興味がなく,気にしていたことがなかったが,今回様
々な事例や,
私たちの生活にいかに密接に関係しているかを知って,
改めてち
ゃんと学ばないといけないと思わせられました。
これから社会に出て行く中で
困らないよう,様々なことを意欲的に学び,慎重に行動したいです。また,契
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約を解除できるケースなど,
くわしく分かりやすい説明で,
よく理解できまし
た。
【生徒B】
今まで,契約といったら契約書が思い浮かんでいた。けれど,契約は様々な
契約のしかたがあることを知れた。
その中でも,
口約束でできる契約は少しこ
わいなと思った。
口約束でも契約となることを知れたので,
今後は気をつけよ
うと思った。他には,一度購入した商品を返品する時に,不正がなくても返品
できるのは,
お店のサービスだということも知った。
自分は一度返品したこと
があり,
今までお店のサービスだということを知らずに,
どこでも返品できる
ものだと思っていたので,今回知れて良かったと思う。
【生徒C】
意外と身近にある契約について,しっかり学ぶことができた。最近,色々な
ものが発達しているからこそ,
契約にも悪影響が出てきているのだと思う。だからこそ,
政府に頼ってばかりでいるのではなく,
自分で考えてから契約した
い。しかし,そのケースであっても,自分に害を及ぼした時には近くにある目
黒区の消費生活センターを利用したい。
今回の授業で学んだことは,
一生の知
恵として,頭に残していきたい。
しろまる分析
生徒A・B・Cともに,授業を通してあまり関心がなかった契約についての
関心を高め,
消費者として自覚をもつ態度が芽生えたことが分かる。
このよう
な記述をする生徒が見られたことからも,
目標アについて,
今回の授業の成果
があったと考えられる。
また,
関心を高めるという点では,
視聴覚教材の設計や授業の進め方につい
ても効果的であったことが分かる,以下のような記述をする生徒もいた。
【生徒D】
動画などを見ながら勉強したので,
すぐ理解することができて,
さらに班で
の話合いもあるので,他の意見などが聞けて自分の考えが生まれた。
【生徒E】
授業ではグループで発表し合える機会がたくさんあり,
さまざまな視点から
考えることができました。スクリーンも一人一人の進行に合わせてくれるの
でとても授業がしやすいです。契約については個人の勝手な希望によって解
除できないということ。
そして,
レンタルショップでも契約が発生することを
学べて,自分のためになりました。
【生徒F】
契約を一度したら,お互いに約束を守らないといけないと改めて分かった。
契約は,
解消できる時,
できない時,
その場によって色々と異なることもある
ので,
気をつけたいです。授業はワークシートで進んでいくので,
とてもわか
りやすく,
細かく説明してくれるので,頭にも入りやすく,とてもよい授業で
す。社会のことをこれからも沢山学んでいきたいと思いました。
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2目標 イ 「契約は,対等な個人の自由な意思に基づいて結ばれ,その結果,
法律上の権利と義務が発生することを理解する。」について
【生徒G】
契約はいかなる時も対等でないといけないのだと知った。
また,
その契約を
対等にするために不正を起こしたりしないために法が存在しているのだと考
えた。
また,
契約をする時はしっかりその契約が公正か確認してから契約を結
ぼうと思った。
【生徒H】
契約はいつでも簡単にできてしまうので,
私たちは十分に考えて契約する必
要があると感じた。
18歳で成人してしまうかもしれない私たちは,
早くから
自分たちで契約できるようになってしまう。法律で守られないような場合は,
契約を解消できなくなってしまう。
契約する時はしっかり考え,
必ず発生する
権利と義務を守れるようにしたい。
【生徒I】
僕はこの授業で法は人を対等にするためにあると思った。
身近な体験で,お店でクレームをつけている人がいた。その時,その人は,自分のもっている権
利を主張していた。
僕はその時,
消費者としての義務をもっていることを知ら
ないのかなと思った。消費者には,権利だけでなく,義務が発生することを実
感した。
今回の授業で契約を結ぶ時はしっかり考えてから,
しないといけない
と学んだので,大人になってもできるようにしたい。
しろまる分析
生徒G・H・Iともに,
授業を通して契約の原則について理解するとともに,
権利と義務が発生することを自覚したことが分かる。また,生徒Gは既習して
いる公正という概念を生かしている。
生徒Hは18歳での選挙権や成人に近づ
くことを自らの問題として捉えている。そして,生徒Iは実際の体験とも結び
つけながら考えている。このような記述をする生徒が見られたことからも,目
標イについて,今回の授業の成果があったと考えられる。
3目標 ウ 「消費者が不利な条件の下で契約を結んだ場合,
後に契約を解消で
きる仕組みを作るなど,国や地方公共団体が消費者を保護するため
の施策を実施していることを理解する。」について
【生徒J】
契約と聞くとすごく重くかたくとらえてしまう自分がいました。
でも,
口約
束で契約は結ばれると知り,
そんな簡単に?と思いました。
口だとうっかり言
ってしまったりする事があるから怖いと思いました。
でもそれが,
詐欺や対等
でなかった場合に,
その事例に合わせて保護してくれる法律がある事を知りと
ても安心したのと同時に,
この法律が作られたということは悪い人達も上手だ
から法を作らなければならなくなったということではないかと思い,
気をつけ
て契約しようと思った。
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【生徒K】
契約を結ぶことは自分に決定権があるから,
それを守り通さなければいけな
いことを知った。しかし,例外もあり,相手側に詐欺などがある場合,それは
解除することができた。クーリング・オフ制度もその一つだ。家庭科で実際に
書いたことがあったから,理解することができた。
【生徒L】
授業を通して契約は常に買う人と売る人が対等でなければならないといけ
ないが,消費者(買う人)の方が情報が少なく権力がないということが分かっ
た。
そのため,
消費者を保護する消費者契約法や消費者基本法が存在すること
も分かった。また契約や法は「権利」や「義務」をつくり,社会の混乱を防ぐ
ためにできるのだなと思った。
それによって法に拘束力が生まれたり,
やぶる
と賠償金が発生する場合があると思った。
しろまる分析
生徒J・K・Lともに,授業を通して消費者が不利な条件の下で契約を結ん
だ場合,
国や地方公共団体が消費者を保護する施策を実施していることを理解
していることが分かる。また,生徒Jは契約の重要性について意識が高まって
いる。生徒Kは家庭科での学習と結びつけながら考えている。そして,生徒L
は対等であることの大切さや社会における法の意義をも考えている。
このよう
な記述をする生徒が見られたことからも,目標ウについて,今回の授業の成果
があったと考えられる。
4目標 エ 「消費者保護行政や法律の意義を理解するとともに,
消費者自身も
自立した消費者を目指すことの必要性について考える。」について
【生徒M】
今回の授業で契約の原則や法の意義について知ることができた。
契約の原則
を守ることがいかに大切かを知ることができた。また,契約によって「権利」
「義務」が発生し,守らなければいけないことも知ることができた。私法など
は将来自分がかかわっていくことなので,しっかりと理解していきたいと思
う。
また法律は常識的で対等な私人間の契約は守られるが,
うっかり者は保護
されないので気をつけていきたいと思う。
【生徒N】
契約は自分の責任の内にあり,
よく考えてから結ぶことの大切さを理解する
ことができた。私は今までは詐欺などのトラブルに巻き込まれたことはない
ため,「大丈夫だろう」,「間違って契約してしまっても,政府が守ってくれ
るだろう」
と甘く考えていたが,
今回の授業で自分でもしっかり責任をもつこ
とが大切だと感じた。日常生活で疑いもなく行う契約。身近なものだが,あま
り深く考えたことはなかったため,
とても役に立った。
これからは他人事でな
く,自分の事としても捉え,契約を安全に結んでいきたい。
【生徒O】
契約でトラブルが起きてしまった場合,
全てを政府や法律に頼りきるのでは
なく,消費者自身もしっかりと動かなければならないと分かった。また,法律
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は私たち消費者を保護するためというよりは,トラブルを起こさないために
あると思った。自分のまわりでも小さなことから損害賠償などの大きなトラ
ブルへ発展してしまう可能性が高いため,消費者の意識と自覚をもって生活
していこうと思う。
万が一トラブルにあってしまったら,
自分だけでかかえこ
まず,
消費生活センター等の窓口を利用するようにしようと思う。
普段から何
も考えず,買い物をしてきたが,
「売買契約」をしているということを理解し
て,消費生活を送ろうと思う。また,成人したら更に,契約の種類が増えるた
め,しっかり今から理解しようと思う。
しろまる分析
生徒M・N・Oともに,授業を通して消費者保護行政や法律の意義を理解す
るとともに,
消費者自身も自立した消費者を目指すことの必要性について考え
ていることが分かる。また,生徒Mは法律が常識的であるため,自分自身にも
注意が必要であることを認識している。
生徒Nは政府ばかりを頼りにしていた
自分の甘さに気付き,
自分の事として捉えて契約していくことの重要性につい
て考えている。そして,生徒Oは全てを政府や法律に頼りきるのではなく,消
費者としての意識と自覚を持つことの必要性を考えている。
このような記述を
する生徒が見られたことからも,
目標エについて,
今回の授業の成果があった
と考えられる。
ウ 課題
一方で,2時間目の後半に,内容面での確認のためにも,振り返りの時間を設定
していた。2つのチャプターについて,視聴覚教材を再度視聴させた後に,教師に
よる解説を行い板書にまとめる設計であった。
そのため,
1時間目のグループでの
話合いが,
やや忙しくなってしまった。
もっと十分に時間を確保する必要を感じた。
授業は生き物なので,
生徒の反応を見て,
時間を延長することも必要であると改め
て感じた。それによって,更に生徒の考えを広げたり,深めたりすることができた
可能性がある。その際,板書としてまとめる内容については,生徒に板書させるの
ではなく,
実物投影機やプレゼンテーションソフト等を使って説明した後,
同じ内
容の印刷物を生徒に配布して,ワークシートに貼らせる方法もあったと考える。
(4) 参考資料(使用教材・資料,授業の様子・板書など)
ア 使用教材・資料
(ア) 冊子教材「法やルールって,なぜ必要なんだろう?」を基に作成したワークシ
ート
別紙1及び別紙2のとおり。
(イ) 冊子教材「はじめての法教育」(法教育研究会)
私法と消費者保護(P76〜97)
(ウ) 教科書「新編 新しい社会 公民」(東京書籍)
P122〜123,P124〜125
イ 板書 (別紙2のワークシートに板書例を記載したもの)
別紙3(公民ワークシートNO,8S―2)のとおり。
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5 参考
(1) 新学習指導要領における位置付け
新学習指導要領 社会科「公民的分野」
大項目B「私たちと経済」
中項目(1)「市場の働きと経済」
(2)「国民生活と政府の役割」
「身近な消費生活を中心に経済活動の意義について理解する。」
「消費者の自立の支援を含めた消費者行政を取り扱うこと。」
(2) 冊子教材「法やルールって,なぜ必要なんだろう?」における本時該当箇所
・契約とは何だろう:教材P50,51指導計画「展開1」
・契約が解消できるとき,できないとき:教材P51,52指導計画「展開2」
・契約が解消できる特別な場合:教材P52,53指導計画「展開3」
公民ワークシート NO,7S 3年( )組( )番( ・ )班)(契約って何だろう(経済活動の基盤)
1 契約という言葉で思いつくことをあげてみましょう。
2 契約書を見たことがありますか。それはどのような契約書ですか。
3 DVDを視て、契約の成立時期はどれだと思いますか。しろまるをつけましょう。
A:店員さんが「1万円です。いかがですか」と言い,佐々木さんが「じゃあ,こ
れください」と言った時
B:佐々木さんが代金を支払った時
C:店員さんが商品を手渡した時
、 。
4 DVDを視て それぞれのハプニングカードの事例は契約が解消できると思いますか
根拠(理由)を 示して自分の考えをまとめてみましょう。
「ハプニングカードA」の事例
【自分の考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)【グループの考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)別紙11 「ハプニングカードB」の事例
【自分の考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)【グループの考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)「ハプニングカードC」の事例
【自分の考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)【グループの考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)5 今日の授業を通して 「契約」について、気付いたことやわかったこと、疑問に思っ、たことをまとめてみましょう。
別紙12 公民ワークシート NO,8S 3年( )組( )番( ・ )班)(契約って何だろう(経済活動の基盤)
1 DVDを視て、この事例は契約が解消できると思いますか。 根拠(理由)を示して
自分の考えをまとめてみましょう。
【自分の考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)【グループの考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)2 契約の授業を通して 「契約の原則」や「法の意義」などについて、学んだことを整、理してみましょう。
【ノート】
別紙21 3 契約の授業を通して 「契約」や「法の意義」について、気付いたことやわかったこ、と、疑問に思ったことをまとめてみましょう。
別紙22 公民ワークシート NO,8S 3年( )組( )番( ・ )班)(契約って何だろう(経済活動の基盤)
1 DVDを視て、この事例は契約が解消できると思いますか。 根拠(理由)を示して
自分の考えをまとめてみましょう。
「ハプニングカードA」の事例
【自分の考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)【グループの考え】 解消できる ・ 解消できない
【根拠(理由 】)2 契約の授業を通して 「契約の原則」や「法の意義」などについて、学んだことを整、理してみましょう。
【ノート】
◇個人と個人の関係を定める法律=私法 →その代表が民法
◇契約とは
しろまるコンビニエンスストアーでものを買うこと=売買契約
しろまるレンタル店でCDを借りる=賃貸借契約
しろまる家計シミュレーションゲームで一戸建てを買う=売買契約、建築請負契約
しろまる家計シミュレーションゲームで賃貸住宅を借りる=賃貸借契約
しろまる牛丼屋経営シミュレーションで銀行から資金を借りる=金銭消費貸借契約
◇契約はいつ成立するか?
=自分と相手の意思が合致して、自分と相手が合意した時
◇契約書は必要なのか?=重要な書類だが、契約の成立に必ず必要なものではない
*口約束でも契約は成立する
◇契約自由の原則(私法の大原則)
→「契約するかどうか 「誰と契約するか 「どのような内容の契約にするか」な
」 」
ど、契約する人どうしが自由に決めることができる
◇契約はなぜ守られなければならないのか
→いったん成立した契約はお互いに守らなければならない。それは契約によって
「権利」と「義務」が発生するから
→契約が守られなかったら、人権が守られず社会は混乱する。
→契約によって権利と義務が発生して、その義務を法的に守らなければならなく
なる=「契約の拘束力」
別紙31 →実際に社会では契約が守られないと損害賠償が発生することもある
*十分に考えて契約する必要がある
◇契約を解除できるケースもある
→法律は常識的=対等な私人間契約は守られる
(ただし、うっかり者は保護されないが)
しかし、詐欺や情報の非対称性があることなど、対等とはいえない契約につい
ては解消でき、保護される→消費者契約法(2000年、2007年改正)
◇政府に頼るばかりでなく、自立した消費者を目指す
→消費者基本法(2004年)
◇相談する窓口
消費生活センター(目黒区にも東京都にもある)
3 契約の授業を通して 「契約」や「法の意義」について、気付いたことやわかったこ、と、疑問に思ったことをまとめてみましょう。
別紙32

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