泉 南 学 寮
当学寮は,家庭裁判所において,第1種少年院送致
決定のうち,短期間又は特別短期間の処遇勧告が付さ
れたおおむね17歳未満の男子少年を収容し,矯正教
育を実施する施設です。
昭和32年に日本初の短期処遇実施施設として開設
されて以来,地域の皆さんの協力を得て,立ち直りに
必要な教育活動を多面的に実施しています。
施 設 紹 介
規則正しい生活を送りながら,基本的生活習慣を身に付けさせるとと
もに,被害者の心情を理解することを通じて健全な価値観を養い,規範意識を高めるため,
「責任を考える時間」の科目(全8コマ)を設けるとともに,少年犯罪被害者の講座(講話及
びグループミーティング)を実施しています。また,不良交友の再開を防止するためのSNS
指導や社会生活に必要な基礎知識を向上させるための生活力アップ講座などを実施し,社会生
活への適応力向上を図っています。
生 活 指 導
責任を考える時間 ゲストスピーカー講話(被害者講話) SNS指導(親子及び
保護関係機関参加型)
長年の地域社会の支えにより,学寮内での職業指導のほか,社会
福祉施設などへの院外委嘱指導を積極的に行っています。また,特別活動では,地域貢献活動
の一環として,老人ホームの清掃や阪南市が実施しているコットンプロジェクトへの協力を行
い,地道に仕事に取り組む姿勢や自律する気持ちをかん養するとともに,社会の一員として社
会に貢献することの意義を学ばせています。
職業指導及び特別活動
職業指導・職業体験
(農園芸実習) 院外委嘱指導 阪南市長へのコットン贈呈式
海が近く,自然環境に
恵まれた当学寮は,野外活動として,近隣の
海洋センターでカッター訓練を体験します。
親子カッター訓練では,保護者と一緒にカッ
ターを漕ぐことで,親子で協力して物事に取
り組む体験をします。また,院外での矯正教
育として,個別にハローワークに出向いて雇
用情報検索を行い,出院後の就労など生活設
計を具体的に考えさせています。
院 外 活 動 矯正教育の院外実施 親子カッター訓練 泉南学寮の教育目標集団生活や各種の矯正教育を通じて,基本的生活習
慣を身に付けさせ,健全な価値観,規範意識及び社会生活を送る上での望ましい態度・言動を
養うとともに,再非行防止のための具体策を構築させる。
1 健全な価値観,規範意識の養成
→ アンケートでは,特定生活指導・責任を考える時間・ゲストスピーカー講話が高評価
課題作文等を通じて,自分自身と向き合うことにより,自己の特性
や問題点を認識させるとともに,面会,保護者参加型教育活動等を通じて,親子間の相互理解
を促し,家族関係を再構築させる。
2 家族関係の再構築
→ 親子交流会,特別面会を積極的に実施
職業生活設計指導や自主的活動を通じて,学校や職場での生活に
必要な知識・技能を身に付けさせるとともに,自己の適性に応じた出院後の生活設計を明確化
させる。
3 社会適応力の向上
→ 施設外における社会復帰支援への取組,退院者の相談制度の積極的活用
母子家庭のA君は,出院後,中学校復学を考えていたため,少年院から学校教諭
に連絡を取り,学校での態度などについて,聞き取りを行った。学校教諭からは,A君は学校内で
不良交友と問題を起こすが,母親もA君に甘く,監護力が不十分であり,予後を不安視していると
のことであった。少年院として,少年への指導を行うとともに,母親にも働き掛け,養育態度につ
いても変化を促した。また,学校教諭の不安を低減するため,保護関係機関,学校関係者,保護者
等を含めたケース会議を実施し,出院後問題が起こった際の対応方法について協議した。
取組事例1
母子家庭のB君は,出院後は就労を考えていたため,ハローワークから求人票を
取り寄せ,自宅近くのアルバイト可能な会社を探した。出院直前に,実母に交際相手ができたこと
を知らされ,不安が高じていたため,職員を伴って自宅で実母,実母の交際相手との面談を実施し
た。B君は,交際相手がどのような人物か分かり安心した様子であった。また同日,ハローワーク
で探したアルバイト可能な会社まで車で行き,車内から所在地,自宅までの経路を確認した。
取組事例2
入院者の特性について見ていくと正式
に診断結果として示されてはいないがADHDやASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害の
疑いがある者が見られる。また,家族関係についても一人親の家庭が散見されており,少年との関
係においても不仲ではないが,仕事の都合等で家にいることが少ないなど監護力の弱い家庭が見ら
れる。このような入院者の特性や社会情勢の変化に対応するため,泉南学寮では出院時にアンケー
トを実施し,当院での教育内容について処遇効果の検証をしており,その結果等も勘案し,下記の
ような教育目標に重点を置いて指導している。なお,近年,少年院入院者の数は減少傾向にあり,
泉南学寮においても同様の傾向にあることから,個々の少年に手厚い指導が行える環境となってい
る。
再非行防止,新たな被害者の発生防止のために
泉南学寮では,再犯再非行防止のため,対象者の特性・環境に
寄り添った処遇を行います。87%13%
診断なし 診断あり
(注記)グラフは平成30年の入院者30名のデータ
発達障害60%37%3%両親 母親のみ 父親のみ
保護環境10%21%41%14%14%非行別
性犯 傷害 窃盗 その他 道路交通法違反

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