第38回全国中学生人権作文コンテスト中央大会における入賞作品概要(12作品)
1 内閣総理大臣賞 学ぶことは生きること
岡山県・岡山県立岡山操山中学校 2年 小西 珠生
こ にし たま き
夏休みに,夜間中学に学習ボランティアとして通った筆者は,そこで出会った人々
との交流を通じ,学ぶことの意味について考える。筆者の祖母よりも年上である生徒
の勉強を手伝った際,
「今日習ったことを忘れたくないので宿題を出してほしい」と頼
まれ,夜間中学に通う生徒の学びに対する情熱がまっすぐでとても眩しく感じるとと
もに,自分がいかに恵まれていて甘えているかを痛感する。不登校など様々な事情に
より義務教育を修了できず,困難な状況に追いやられて生きている人がいることを忘
れてはならない。これからも夜間中学の学習ボランティアの一員として,学びの場を
守り,共に学んでいきたい。
2 法務大臣賞 弟が教えてくれたこと
熊本県・天草市立本渡中学校 1年 松本 華英
まつもと は な
ダウン症の弟を持つ筆者は,
「出生前診断によって赤ちゃんを中絶した」という記事や,「アイスランドでダウン症の子供が生まれてこない社会を目指している」という記
事に衝撃を受ける。筆者の家族にとって,弟が生まれて良いことばかりが起こってい
る。筆者は,みんなと一緒にスポーツを楽しみ,マラソンで最下位であっても周りの
人に笑顔で手を振っている弟の姿を見て,スポーツの目的は,決して優勝することだ
けではないと考えさせられた。それぞれが個性を出し合うことで社会が明るくなり,
人や国が豊かになると考える。
3 文部科学大臣賞 待つ
山口県・防府市立桑山中学校 3年 澁澤 佳奈実
しぶさわ か な み
筆者は,祖母と生活をする中で,自分の心に余裕を持って,急かすのではなく「待
つ」ことが大切であると学ぶ。相手の気持ちをよく考え,お互いに気持ちよく支え合
うことが大切である。また,相手に感謝の言葉をかけたり,挨拶をしたりするという
ことが,相手の人権を尊重する第一歩ではないか。人権の尊重と聞くと,難しいこと
のように感じるが,祖母からもらった人権を大切にするヒントを無駄にしないよう,
自身にできることを少しずつ実践しようと決意する。
4 世界人権宣言70周年記念賞 「自分の種類とその性別」
佐賀県・白石町立白石中学校 3年 小川 一花
お がわ いち か
自分が女の子であることに少し違和感があった筆者は,
「LGBT」をいう言葉を知
り,深く調べていくうちに,
「Xジェンダー」の例に自身が当てはまる部分があること
に気付く。
「普通ではない」と判断されることにより偏見や差別が生じるため,心に秘
めたままの生きづらい世の中になってしまう。セクシャルマイノリティーが特別で異
質なものという認識ではなく,ごく自然なあたりまえで人それぞれのものという認識
をしてほしい。筆者自身も自分のことを深く理解し,今後の行動に活かそうと強く思
う。
5 法務副大臣賞 "ダイバーシティ"の推進力に!
東京都・八王子市立加住中学校 3年 瀬戸 秀 一
せ と しゅういち
右手にハンディキャップがある筆者には,職場体験で訪れた鉄道会社において,ハ
ンディキャップを持ちながら職場の第一線で活躍する職員が輝いて見えた。その会社
で,多様な人材を活用し,それぞれの力が最大限発揮されることに組織は留意するべ
きであるとする"ダイバーシティ"という言葉を教わった。差別のない世の中を目指
して,
"ダイバーシティ"という企業理念を推進していく一人になり,ハンディキャッ
プを持つ人が職場の第一線で働ける環境が整っていくように貢献していきたい。
6 法務大臣政務官賞 差別や偏見は無知から始まる
滋賀県・滋賀大学教育学部附属中学校 1年 中村 燎
なかむら かがり
ハンセン病の訴訟に関する新聞記事を目にした筆者が,ハンセン病について調べて
いたところ,母から古いビデオテープを手渡された。筆者はビデオを見て,ハンセン
病患者が様々な迫害と差別を受けてきたことを知り,怒りを感じたが,ビデオに出て
きた元患者の方は,差別は受けたけれど,自分の運命への恨みつらみがなかった。筆
者は,自分の中にかわいそうだという偏見がなかったか,心の中を整理し,
「思い込み
や無知が偏見や差別を生み出す」ことを強く感じる。誤った知識によりハンセン病患
者への人権侵害が長く続いた。同じ間違いを繰り返さないために,正しい知識を活用
し,人々を助けられる人間でありたい。
7 全国人権擁護委員連合会会長賞 「知る」努力と人権侵害
愛知県・愛知県立一宮特別支援学校中学部 3年 佐々木 杏 夏
さ さ き きょう か
障害を持つ筆者は,小学校の特別支援学級に在籍していたときに,クラスメイトか
ら掛けられた言葉にやり場のない気持ちになっていたが,その後,特別支援学校に入
学して環境が変わり,人と関わるために初めて「知る」努力をした。筆者は,小学生
の時に傷ついたのは,筆者とクラスメイトとの間に「知らない」という壁があったか
らであると考える。差別や偏見は,お互いを十分に知らないことで生まれる。知ると
いう努力をするだけで,少し距離を近づけるだけで,差別や偏見をなくし,人権侵害
を防ぐことができると考えている。
8 一般社団法人日本新聞協会会長賞 「大切なこと」
高知県・須崎市立朝ケ丘中学校 3年 寺村 優奈
てらむら ゆう な
障害者に対するレストランの対応についての母との会話をきっかけとした,皆が共
存していく社会についての考察。これまで色々な場面で人権教育を受けてきた筆者は,
障害者にとって障害は「個性」なのだと考えるようになっていたが,障害者には,様
々な生活のしづらさがあり,相手を思う心が必要だという母の思いを受け,本当に大
切にしなくてはいけない部分を見落としていたと感じる。障害者は障害がある人であ
って特別ではない。皆が共存していく社会の中では助け合う心が大切である。筆者は,
10年先,20年先にまたこの出来事を考えたときに,自分がどんな答えを出すのか
楽しみにしている。
9 日本放送協会会長賞 障がい者が生活しやすい社会
神奈川県・横浜市立早渕中学校 3年 神谷 綾音
かべ や あや ね
聴覚障がいを持つ筆者は,音楽の時間に皆と歌うときや,大勢の人と会話をすると
きにうまくいかないことがある。障害者差別解消法が施行されたが,社会にあまり浸
透していないのではと感じる。来春には受験を控えているが,受験したい高校全てが
筆者のような生徒に対し,特別措置の配慮をしてくれるだろうか。障がい者差別を解
消するために筆者ができることは,多くの人に聴覚障がいについて伝えることである。
デフリンピックのバドミントン選手になるという夢を叶え,障がいのある人が活躍し
ているのが当たり前の社会になってほしい。そのために,日々努力を重ねていこうと
思う。
10 法務事務次官賞 『良い学校』って?
岐阜県・恵那市立恵那北中学校 3年 纐纈 ほのか
こうけつ
筆者は中学2年生のとき,悪口を聞こえるように言われるなど,辛い思いをしてい
たが,いじめではなく軽い嫌がらせと考え,我慢して過ごしていた。道徳の授業を通
じて自分のされていることもいじめであると認識した頃,教師の「この学校はいじめ
のない良い学校です。
」という言葉は,筆者にとって信じがたいものであった。受けて
いる側がいじめられていると感じた時点でいじめになるのである。周りの人が,いじ
めがないと決められるものではない。
『良い学校』とは,一人ひとりの気持ちを尊重し,
いじめをなくそうと努力している学校だと思う。
11 法務事務次官賞 境界線のない社会へ
大分県・大分市立原川中学校 2年 熊谷 一輝
くまがえ かず き
筆者は小学生の頃,ひまわり学級に在籍する3名の友人と仲が良く,同じ委員会や係
活動をすることも多かった。テレビで取り上げられていたある会社は,全従業員の七割
が知的障がい者であり,従業員一人一人に合わせた工夫をしている。その会社の社長は,
必要とされることが人間を幸せにすると語った。筆者は,障がいがある友達とない友達
の違いはなく,皆大切な友達だと思う。筆者は,いろいろな人がいるのが社会であり,
大切なのは,理解することであると思い,境界線のない社会になることを目指し,自身
に出来ることを考え,行動していくと決意する。
12 法務事務次官賞 心をつなぎ 伝えたい
福島県・福島大学附属中学校 1年 橋本 花帆
はしもと か ほ
小学生の頃,アメリカに住んでいた筆者は,外国人として差別されることの悲しみ
を知り,人は同じ痛みを知ることで,心から相手を理解できることがあると感じる。
日本へ戻り,中学生になった筆者は,新聞やテレビなどから,日本で「外国人」と呼
ばれる人々の差別や痛みを知る。筆者は,差別をなくすためには,相手を知り,痛み
を知ることが大切であると考え,自分の痛みを分かち合い,恐れずに発信することを
決意する。人種や国を越えてつながる温かさを,平等がもたらす幸せと平和を,日本
中,世界中に伝えたい。

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