配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身又は
一定期間,配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(配偶者居住
権)を新設する。
1.見直しのポイント
2.現行制度
配偶者の居住権を長期的に保護するための方策(配偶者居住権)
配偶者が居住建物を取得する場合には,他の財産を受け取れなくなってしまう。
配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになる。
例: 相続人が妻及び子,遺産が自宅(2000万円)及び預貯金(3000万円)だった場合
妻と子の相続分 = 1:1 (妻2500万円 子2500万円)
1 遺産分割における選択肢の一つとして
2 被相続人の遺言等によって
配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようにする。
遺産
2000万円
3000万円
自宅(2000万円)
預貯金500万円
預貯金2500万円
住む場所はあるけど,
生活費が不足しそうで
不安。
3.制度導入のメリット
遺産
3000万円
配偶者居住権(1000万円)
預貯金1500万円
負担付の所有権(1000万円)
預貯金1500万円
住む場所もあって,生活費
もあるので,生活が安心。
負担付き所有権
(1000万円)
2000万円
配偶者居住権
(1000万円)
建物敷地の現在価値 負担付所有権の価値(注2)
配偶者
居住権
の価値
配偶者居住権の価値評価について(簡易な評価方法)
簡易な評価方法の考え方
(事例)
同年齢の夫婦が35歳で自宅(木造)を新築。
妻が75歳の時に夫が死亡。
その時点での土地建物の価値4200万円(注)。
(注)東京近郊(私鉄で中心部まで約15分,駅徒歩数分)の実例(敷地面積90平米,木造2階建て,
4DK+S,築40年)を参考に作成
平均余命 平成28年簡易生命表より抜粋
(単位:年)
男 女
50歳 32.54 38.21
55歳 28.02 33.53
60歳 23.67 28.91
65歳 19.55 24.38
70歳 15.72 19.98
75歳 12.14 15.76
80歳 8.92 11.82
85歳 6.27 8.39
評価の具体例
終身の間(平均余命を前提に計算)の配偶者居
住権を設定したものとして計算(注)
この場合,配偶者居住権の価値は1500万円と
なり,約35パーセントにその価値を圧縮すること
ができる。
(注)この事例では,配偶者居住権消滅時の建物の価値
が0円となるため,土地の価格(4200万円)を法定利率
年3%で15年分割り戻したもの。
建物敷地の現在価値 負担付所有権の価値
配偶者
居住権
の価値
4200万円 2700万円
1500万円
法制審議会民法(相続関係)部会において事務当局が示した考え方(注1)
(注記)平成29年3月28日第19回部会会議資料より
(注1)相続人間で,簡易な評価方法を用いて遺産分割を行うことに合意がある場合に使うことを想定したもので
あるが,不動産鑑定士協会からも一定の合理性があるとの評価を得ている。
(注2)負担付所有権の価値は,建物の耐用年数,築年数,法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅
した時点の建物敷地の価値を算定した上,これを現在価値に引き直して求めることができる(負担消滅時まで
は所有者は利用できないので,その分の収益可能性を割り引く必要がある。)。

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