-少年院長会同・少年鑑別所長会同レポート-
法務省矯正局
少年矯正NOW
-少年院長会同・少年鑑別所長会同レポート-
CONTENTS
はじめに ..................... 1
少年院とは ..................... 2
少年鑑別所とは ..................... 4
少年院の取組(少年院長会同レポート) ..................... 6
・ 支援教育課程III
人吉農芸学院
広 島 少 年 院
・ 短期義務教育課程及び短期社会適応課程
月 形 学 園 .................. 12
・ 特色ある教育 .................. 14
(専門的職業指導・通信制高校・高校卒業程度認定試験等)
東 北 少 年 院
喜連川少年院
新潟少年学院
・ 心理技官と連携した矯正教育
岡 山 少 年 院 .................. 18
・ 就労と結び付く職業指導・社会復帰支援 .................. 20
沖縄女子学園
小田原少年院
・ 処遇ケース検討会
交野女子学院 .................. 24
少年鑑別所の取組(少年鑑別所長会同レポート)............... 26
・ 鑑別の在り方
八王子少年鑑別所
名古屋少年鑑別所
・ 法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)
津 少 年 鑑 別 所 ............... 30
・ 健全育成に資する観護処遇
京 都 少 年 鑑 別 所 ............... 32
・ 少年鑑別所が実施する地域援助業務(1)
和歌山少年鑑別所 ............... 34
・ 少年鑑別所が実施する地域援助業務(2)
千 葉 少 年 鑑 別 所 ............... 36
参考
・ 全国の少年院一覧 ............... 38
・ 全国の少年鑑別所 ............... 40
(注記) 本レポートに掲載している写真には,
職員が少年役を演じているも
のもあります。
はじめに
少年院・少年鑑別所においては,現在,平成27年(2015年)6月1
日に施行された新法1
の下で,様々な新しい施策に取り組んでいます。
これらの取組は,法務省を含め関係府省で取り組む再犯防止対策を推進す
る原動力の一つになることを目指すとともに,我が国における青少年育成の
一翼を担う施設として,
国民からの信頼にしっかりと応え続けられるように,
その機能強化を図ろうとするものです。
新法施行直後に法務省で開催された本年度の少年院長会同及び少年鑑別所
長会同(年に一度全国の施設長が集まって,諸問題を話し合う会議)では,
それらの取組の具体例が現場施設長から数多く発表されました。
本レポートは,それらの現場報告の中から,新法下における少年院・少年
鑑別所の現状をご理解いただく上で参考になると思われるものを取り急ぎ取
りまとめたものです。青少年の「育て直し」のため,少年院・少年鑑別所が,
今後一層,地域社会,関係機関,民間協力者等の皆様方との連携を強化する
ことが求められています。本レポートが,新法の下で少年院・少年鑑別所が
どのように変わり,また,どのような取組をしているかについてご理解いた
だく一助となり,連携が更に強化されることを切に念願しつつ,編集しまし
た。
本レポートでは,会同での報告を紹介するのに先立って,少年院・少年鑑
別所の概要やそれぞれの報告の前提となる新法における取扱い等について簡
単な解説を置いています。これを併せて読んでいただくことで,少年院・少
年鑑別所の取組の全体像を把握していただけるのではないかと思います。
これからも,子ども・若者の健全育成,その再犯・再非行防止に力強く貢
献できるように,
「社会に開かれ,信頼の輪に支えられる少年院・少年鑑別所
へ」2
向けてまい進してまいりますので,皆様方の一層の御支援,御協力をよ
ろしくお願いします。
平成27年8月吉日
1 少年院法(平成26年法律第58号)及び少年鑑別所法(平成26年法律第59号)
2 平成22年12月に法務大臣宛て提出された「少年矯正を考える有識者会議提言」の副題(サブタイトル)1 少年院 とは
働く意欲を高め,職業生活に必要な知識・技能を習得するための指導です。
少年院の生活・矯正教育
少年院では,少年の性格,将来の希望,心身
の状況,非行の傾向など考慮し,少年一人一人
の特性に応じた教育を行っています。
教育活動
は,地域の方々の協力を受け,施設ごとに特色
のあるものとなるように工夫しています。
教育
内容は,右の5つから成り立っています。
(1)生活指導
(2)職業指導
集会指導 SST(ソーシャル・スキ
ルズ・トレーニング)を
用いた社会適応訓練
溶接実習 自動車整備実習
自立した生活を営む上での基礎知識や生活態度の指導です。
非行に関する問題の改善
を図るとともに,将来の進路を選択する能力を身に付けさせるための指導を行います。
(3)教科指導
社会生活の基礎になる学力が身に付いていない在院者に,学力に応じた指導を
行います。義務教育を修了していない在院者には,学校教育に準じた指導を行い,
所定の課程を修了すれば,卒業式を行い,卒業証書を授与します。
授業 卒業式
生活指導
体育指導
職業指導
特別活動指導
教科指導
薬物非行防止指導 被 害 者 の 視 点 を 取 り
入れた教育2 (4)体育指導
(5)特別活動指導
スポーツや各種トレーニングを通じて体力の向上を図り,健全な心身を培います。
ボランティアや野外活動,音楽・演劇などの活動を通じ,自主,自立及び協同
の精神を養います。
サッカー 水泳
演劇
社会貢献活動
社会復帰支援
出院後に自立した生活を行うことが難しい者に対し,修学・就業の支援,帰住
先の確保,医療・福祉機関との連携による継続的な支援などを行います。
少年院では,ハローワークの見学,ハローワーク職員による講
話,キャリアカウンセラーによる面接指導(インターネット上の
就職情報を活用)など,出院後の就業に向けた支援を行っていま
す。
就労支援
【マメ知識】少年院で働く「法務
ほ う む
教 官
きょうかん
」を知っていますか?
法務教官は,
専門的な知識と情熱をもって,
少年たちの個性や能力
を伸ばし,
健全な社会人として社会復帰させるために,
きめ細かい指
導・教育を行っています。3 少年鑑別所とは 鑑別・観護処遇・地域援助
少年鑑別所は,主として家庭裁判所から観護措置の決定によって送致された少
年を収容するとともに,非行の原因を解明して処遇方針を立てるための施設です。
このほか,非行及び犯罪防止の専門機関として,青少年が抱える悩みについて,
ご本人やご家族,学校の先生などからの相談に応じています。
少年たちが落ち着いた気持ちで審判を受けることができるように配慮しています。
また,少年たちの自主性を尊重しつつ,学習の支援,一般的教養の付与,情操の涵
養等の支援を行っています。
(2)観護処遇
少年たちが非行に至った原因や,今後どうすれば健全な生活に立ち戻れるのかを,
医学,心理学,社会学,教育学などの専門的知識及び技術によって明らかにしていま
す。
(1)鑑別
運動 学習支援
心理検査
面接4 少年たちの1日
少年たちは,規則正しい生活を送っています。
非行に関する専門的知識を幅広く活用し,一般の方々からの相談に応じたり,
地域における青少年の健全育成を支援する活動を行っています。
また,学校や青少年関係機関が主催する研修会,講演会などで,非行や子育て
の問題について説明したり,学校などにおいて,法や司法制度について分かりや
すく説明する法教育を行っています。
(3)非行及び犯罪の防止に関する援助
講演会 法教育
【マメ知識】少年鑑別所で働く「心理技官」を知っていますか?
心理学の専門的な知識・技術等を活かし,科学的で冷静な視点と人
間的な温かい視点とを持ちながら,非行や犯罪の原因を分析し,対象
者の立ち直りに向けた処遇指針の提示等に携わっています。5 平成27年6月25日に,少年院長会同が開催されました。全国から少年院長が集ま
り,各施設の取組や今後の展望について,協議を行いました。
ここでは,少年院長会同で報告のあった各施設の取組の一部を紹介します。
少年院では,在院者の特性に応じ,さまざまなメニューを組み合わせ,体系的・組織
的に矯正教育を行っています。旧法下においても,少年院ごとに,長期・短期の別や処
遇課程を指定し,これに基づいて,各少年院で,具体的な処遇計画を定めていました。
新法においても,まず,法務大臣が,矯正教育課程として,対象となる少年の類型,
矯正教育の重点的な内容,標準的な期間を定め(院 30)
,各少年院について,実施する矯
正教育課程を指定し(院 31)
,各少年院において,具体的な実施方法等を定めることにし
ています(院 32)。新法下における新たな矯正教育課程と各少年院が実施する矯正教育課程は,別表 1 及
び 2(10 頁,11 頁)のとおりです。
少年が入院するときには,家庭裁判所の審判や少年鑑別所の鑑別において,どのよう
な矯正教育が必要か意見が示されますので,少年院では,これを踏まえて,どの矯正教
育課程を履修すべきかを指定し(院 33)
,個人別矯正教育計画を作り(院 34)
,これに基
づいて矯正教育を実施することにしています。
矯正教育課程は,少年にどのような矯正教育を施すかの大枠を定めるものですが,新
法の制定を機に,従来の処遇区分・処遇課程等を見直し,大幅な組み換えを行いました。
支援教育課程III6 主要な点として,以下のようなものがあります。
2 早期改善の可能性が高い少年については,従来,処遇区分として,特修短期処遇と一
般短期処遇に分けていましたが,この区分をやめて,短期義務教育課程(SE)と短期
社会適応課程(SA)に整理し,標準的な収容期間を 6 月とした上,家庭裁判所で特別
短期間の勧告が付された少年は,原則として 4 月以内で矯正教育を行うことにしまし
た。
3 従来は,特殊教育や医療措置が必要な少年を除く一般の少年は,矯正教育の主な目的
に応じ,生活訓練課程,職業能力開発課程,教科教育課程に分けていました。しかし,
少年の多くは多面的な育成が必要なことから,このような区分をやめ,個々の少年の
問題性に応じた柔軟かつ多角的な矯正教育ができるように,社会適応課程と整理し,
その中で課程を I〜V(A1〜A5)に分けることにしました。
このように,矯正教育課程が大幅に組み換えられたことから,各少年院においては,各
矯正教育課程を具体的にどのように実施するかが大きな課題となっています。
今回の会同でも,この点についてどのように取り組んでいるかについて,多数の少年院
から報告がありました。
まず,新設された支援教育課程III(N3)について,人吉農芸学院,広島少年院から報告
がありました。
1 従来の特殊教育課程を支援教育課程と改めた上,知的障害あるいは情緒障害・発達障
害とまではいえないものの,いわゆるボーダーラインにある少年を対象とした支援教
育課程III(N3)を新設しました。7 人吉農芸学院は,社会適応課程I(A1)と支援教育課程III(N3)の指定を受けていま
す。別表2(11頁)のとおり,この両課程,あるいは,この両課程を含む複数の課程の指
定を受けている施設は多数あります。
これらの施設では,
N3の課程を具体的に定めるに当たって,
A1との差異をどのように
設けていくかが,重要な課題です。
人吉農芸学院では,まず,処遇寮について,N3の対象少年の人数が現時点ではっきりし
ないこと,N3少年は指導上かなり手の掛かることが予想され,独自の処遇寮を設けると,
職員の負担が他の寮と較べて非常に大きくなる懸念があることから,
当面,
A1少年とN3
少年を同じ寮で処遇し,
日課の中にN3少年向けの教育プログラムを用意することで,
独自
色を出すこととしました。
次に,
N3少年の特性を考慮した特色ある教育について,
1潜在的な能力を伸長させるこ
とを目的とした補習教育指導,
2社会性を伸長させ,
対人関係技能を習得させるための基本
的生活訓練,3社会的承認欲求を充足させ,自己有用感を涵養するための社会貢献活動を,
3つの柱としました。
そして,1については,漢字・数学等の
ドリル学習のほか,必要に応じて個別指導
の機会を設け,2については,対人場面に
おける適切な自己表現方法を学ばせるアサ
ーショントレーニングを中心としたプログ
ラムを新たに設け,3については,使用済
みの封筒から切手を切り取る作業,老人介
護施設で使用している車椅子の清掃作業,
地元の保育所や幼稚園の花壇に植える花の
苗の栽培等の活動を用意しました。
なお,3については,従前から,老人ホームでの介護体験実習や公民館の清掃などの院外
活動を長年行ってきた実績があるものの,院外活動は基本的に1級生が対象で,2級生・3
級生には院内でできる活動を準備する必要があったことから,
地元のボランティアセンター
に相談し,その積極的な協力を得て実現したものとのことです。
本会同の時点で人吉農芸学院に入所したN3少年は1名であり,
独自教育の本格実施は少
し先となる見込みのようですが,社会貢献活動など,できるものから実施し,N3教育の充
実化に取り組んでいるとのことでした。
人吉農芸学院8 広島少年院も,A1とN3(これに加え義務教育課程II)の指定を受けている施設です。
同少年院も,寮編成については,N3少年だけで編成するのは困難であること,生活訓練
の場としては平均的な能力を有する少年と集団生活を送らせることが望ましいことから,他の課程の少年と同じ寮に編入することにしています。
N3少年の教育については,
1様々な活動の中で努力を評価し自信を身に付けさせること
で自己肯定感を高めること,
2集団生活を通じて共感性・協調性を育み対人スキルを伸長さ
せること,3社会的自立に必要なスキルを向上させること,を大きな方針としています。
具体的には,
生活指導では,
A1少年達との共同生活の中で基本的な生活態度を立て直し,
社会常識を身に付けさせ健全な人とのつながりを学ばせること,
職業指導領域では,
資格取
得を推奨し,社会人としての基礎的マナーや対人スキルを伸長させること,教科指導では,
基礎的な学習能力の底上げを図ることなどを行います。
また,生活指導では,新たに「対人訓練講座」の受講を予定しています。
これは,コミュニケーションを学ばせることを目的としたもので,話す・聞くことの基本
スキル,
1対1の話し合いのスキル,
集団での話し合いや協働作業のスキルの習得などを内
容としています。
さらに,
特別活動指導において,
車椅子清掃などの社会貢献活動や園芸作業にも取り組ま
せることにしています。
今後,少年鑑別所や同課程を持
つ他の少年院と情報交換を行うと
ともに,教育効果を適正に評価し
ながら,着実に内容の充実を図っ
ていく方針とのことです。
広島少年院9 少年院
の種類
矯正教育課程 符号 在院者の類型 矯正教育の重点的な内容
標準的
な期間
短期義務教育課程 SE
原則として14歳以上で義務教育を終了しない
者のうち,その者の持つ問題性が単純又は比
較的軽く,早期改善の可能性が大きいもの
中学校の学習指導要領に準
拠した,短期間の集中した教
科指導
6月以内
の期間
義務教育課程I E1
義務教育を終了しない者のうち,12歳に達す
る日以後の最初の3月31日までの間にあるもの小学校の学習指導要領に準
拠した教科指導
義務教育課程II E2
義務教育を終了しない者のうち,12歳に達す
る日以後の最初の3月31日が終了したもの
中学校の学習指導要領に準
拠した教科指導
短期社会適応課程 SA
義務教育を終了した者のうち,その者の持つ
問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可
能性が大きいもの
出院後の生活設計を明確化
するための,短期間の集中し
た各種の指導
6月以内
の期間
社会適応課程I A1
義務教育を終了した者のうち,就労上,修学
上,生活環境の調整上等,社会適応上の問題
がある者であって,他の課程の類型には該当
しないもの
社会適応を円滑に進めるため
の各種の指導
社会適応課程II A2
義務教育を終了した者のうち,反社会的な価
値観・行動傾向,自己統制力の低さ,認知の
偏り等,資質上特に問題となる事情を改善す
る必要があるもの
自己統制力を高め,健全な価
値観を養い,堅実に生活する
習慣を身に付けるための各種
の指導
社会適応課程III A3
外国人等で,日本人と異なる処遇上の配慮を
要する者
日本の文化,生活習慣等の理
解を深めるとともに,健全な社
会人として必要な意識,態度
を養うための各種の指導
支援教育課程I N1
知的障害又はその疑いのある者及びこれに準
じた者で処遇上の配慮を要するもの
社会生活に必要となる基本的
な生活習慣・生活技術を身に
付けるための各種の指導
支援教育課程II N2
情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑い
のある者及びこれに準じた者で処遇上の配慮
を要するもの
障害等その特性に応じた,社
会生活に適応する生活態度・
対人関係を身に付けるための
各種の指導
支援教育課程III N3
義務教育を終了した者のうち,知的能力の制
約,対人関係の持ち方の稚拙さ,非社会的行
動傾向等に応じた配慮を要するもの
対人関係技能を養い,適応的
に生活する習慣を身に付ける
ための各種の指導
社会適応課程IV A4
特に再非行防止に焦点を当てた指導及び心
身の訓練を必要とする者
健全な価値観を養い,堅実に
生活する習慣を身に付けるた
めの各種の指導
社会適応課程V A5
外国人等で,日本人と異なる処遇上の配慮を
要する者
日本の文化,生活習慣等の理
解を深めるとともに,健全な社
会人として必要な意識,態度
を養うための各種の指導
支援教育課程IV N4
知的障害又はその疑いのある者及びこれに準
じた者で処遇上の配慮を要するもの
社会生活に必要となる基本的
な生活習慣・生活技術を身に
付けるための各種の指導
支援教育課程V N5
情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑い
のある者及びこれに準じた者で処遇上の配慮
を要するもの
障害等その特性に応じた,社
会生活に適応する生活態度・
対人関係を身に付けるための
各種の指導
第3種 医療措置課程 D
身体疾患,身体障害,精神疾患又は精神障害
を有する者
心身の疾患,障害の状況に応
じた各種の指導
第4種 受刑在院者課程 J 受刑在院者
個別的事情を特に考慮した各
種の指導―第1種
2年以内
の期間
2年以内
の期間
第2種
別表110 SE E1 E2 SA A1 A2 A3 N1 N2 N3 A4 A5 N4 N5 D J
1 帯広少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
2 北海少年院 しろまる しろまる しろまる
3 紫明女子学院 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
4 月形学園 しろまる しろまる
5 盛岡少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる
6 東北少年院 しろまる
7 青葉女子学園 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
8 置賜学院 しろまる しろまる
9 茨城農芸学院 しろまる しろまる
10 水府学院 しろまる
11 喜連川少年院 しろまる
12 赤城少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる
13 榛名女子学園 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
14 市原学園 しろまる
15 八街少年院 しろまる
16 多摩少年院 しろまる
17 関東医療少年院 しろまる しろまる
18 愛光女子学園 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
19 久里浜少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
20 小田原少年院 しろまる しろまる
21 神奈川医療少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる
22 新潟少年学院 しろまる
23 有明高原寮 しろまる しろまる
24 駿府学園 しろまる しろまる
25 湖南学院 しろまる
26 瀬戸少年院 しろまる しろまる しろまる
27 愛知少年院 しろまる しろまる
28 豊ケ岡学園 しろまる しろまる
29 宮川医療少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる
30 京都医療少年院 しろまる しろまる
31 浪速少年院 しろまる
32 交野女子学院 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
33 和泉学園 しろまる しろまる しろまる しろまる
34 泉南学寮 しろまる しろまる
35 加古川学園 しろまる しろまる
36 播磨学園 しろまる
37 奈良少年院 しろまる しろまる しろまる
38 美保学園 しろまる しろまる
39 岡山少年院 しろまる しろまる
40 広島少年院 しろまる しろまる しろまる
41 貴船原少女苑 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
42 丸亀少女の家 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
43 四国少年院 しろまる しろまる しろまる
44 松山学園 しろまる しろまる
45 筑紫少女苑 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
46 福岡少年院 しろまる しろまる
47 佐世保学園 しろまる しろまる
48 人吉農芸学院 しろまる しろまる
49 中津少年学院 しろまる しろまる しろまる しろまる
50 大分少年院 しろまる しろまる
51 沖縄少年院 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
52 沖縄女子学園 しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる しろまる
なお,符号は別表1の符号による。
実施すべき矯正教育課程
施設名
(注) 「実施すべき矯正教育課程」欄のしろまるは,当該矯正教育課程を実施すべきことを示す。
別表211 短期処遇についても,
7 頁2で述べたように,
特修短期処遇と一般短期処遇の区分をやめ,
短期義務教育課程(SE)と短期社会適応課程(SA)に整理し,標準的な教育期間を 6 月以
内としました。
SE とは「原則として 14 歳以上で義務教育を終了しない者のうち,その者の持つ問題性が
単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大きいもの」を対象とし,SA とは「義務教育を
終了した者のうち,その者の持つ問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大き
いもの」としています。
分かりやすく言うと,現に中学生の場合は SE,中学校を卒業している場合は SA となりま
す。
また,従来の特修短期処遇は,家庭裁判所で「特別短期間」の処遇勧告が付された少年
について,原則として 4 月以内の教育期間を設定して矯正教育を行うこととし,実質的に
継承されています。
このため,
SE やSA についても,
どのように特色化を図っていくかが課題となっています。
この点については月形学園から報告がありました。
短期義務教育課程及び短期社会適応課程
月形学園での院外教育活動の1コマ(登山)12 月形学園は,短期義務教育課程(SE)と短期社会適応課程(SA)の指定を受けていま
す。
SEとSAの対象者は他の矯正教育課程の対象者と比較して,
最も社会内処遇に近いとこ
ろにあることから,同園では,特色化を図るに当たって,より社会に近い環境にする,開放
度はより高く,自主・自律度もより大きくする,といったことに焦点を当て,主として院外
での教育活動を積極的に行うこととしています。
同園の場合,(人的・物的にも)短
期処遇に取り組んできた実績があり,
フェンスがなく開放的で,院外委嘱先
や院外教育活動をする環境や社会資源
に恵まれています。これまでの実績や
ノウハウを踏まえつつ,院外委嘱指導
や院外教育活動などを充実させ,社会
内処遇により近い教育を行うこととし
ています。
加えて,「特別短期間」の勧告が付された場合については,院外教育活動を「短期間」の
場合よりも多く,また長い期間設定することで,特色化を図ろうとしています。
SEとSAでは,教科指導を行うか,生活設計のための各種指導を行うかで,重点的な教
育内容は異なりますが,いずれも,院外教育活動等のプログラムを実施しており,入院して
からおおむね4週間,2級の段階で,院外で実施する行事などに参加させています。
1級の段階では,職場体験実習や院外委嘱指導を行っています。1級は8週間なので,そ
の間に何種類かのプログラムを組み合わせて実施することになりますが,
実際の就労を経験
でき,
自分で考えて自分で行動する訓練にもなり,
一般の方々との触れ合いから学ぶことも
多く,円滑な社会復帰のためにも有意義であるとしています。
以上のとおり,月形学園では,対象者の特性を踏まえ,院外委嘱指導や院外教育活動を充
実させ,少年院矯正教育課程の特色化を図ることを目指しているとのことでした。
月 形 学 園13 社会適応課程 I(A1)は,対象者の幅が広く,多数の少年院がこの課程の指定を受けてお
り,義務教育を終了した少年の多くがこの課程を履修することになります。
A1 の矯正教育の目標は,
社会生活に適応するための能力の向上を図ることとされており,
各少年院の特色を生かして具体的な教育内容をどのように定めるかが大きな課題となって
います。
A1 においては,生活指導(問題行動指導)に加えて,職業指導(職業生活設計指導・職
業能力開発指導)
,教科指導(高等学校教育指導)が重点的に実施すべき指導内容とされて
いるため,
職業指導を中心に行っている少年院,
教科指導を中心に行っている少年院など,
様々な施設があります。
A1 の指定を受けている少年院の中には,より高度で専門性の高い資格取得を目的とする
専門的職業指導を中心に行っている施設があり,東北少年院もその一つです。
また,教科指導を中心に矯正教育を行っている施設もあります。喜連川少年院はその一
つですが,全国で唯一,高校通信制課程(栃木県立宇都宮高校通信制課程)を設置してい
ます。
少年院は,原則として,管区単位の収容圏域が設けられています(例えば,北海道の少
年は北海道内の施設に入ることになっています)が,東北少年院や喜連川少年院では,全
国から広域収容を行っており,編入を希望し,かつ,要件を満たしている少年については,
管区を越えて受入れることとしています。
その他,新法施行に伴い,矯正教育課程として再編されたことを受け,従来は職業能力
開発課程を中心に指導を行ってきた A1 施設においても,再編の趣旨を踏まえ,教科指導の
強化に力を入れている施設があります。
新潟少年学院はその一つであり,高校卒業程度認定試験の受験指導モデル庁として,そ
の指導の強化に取り組んでいます。
高校卒業程度認定試験とは,高等学校を卒業していない者等の学習成果を適切に評価し,
高等学校を卒業した者と同等以上の学力があることを認定する試験であり,文部科学省が
実施している国家試験の一種です。同試験に全科目合格することは,その後の修学上も,
あるいは就労上も有益であることから,法務省では,文部科学省と連携し,平成 19 年度以
降,希望する少年院在院者は同施設内において受験できる体制を採っています。
以上の点について,東北少年院,喜連川少年院及び新潟少年学院から,指導の取組につ
いての報告がありました。
特色ある教育
(専門的職業指導・通信制高校・高校卒業程度認定試験等)14 東北少年院は専門的職業指導を中心とする施設であり,
在院者にはいくつかの特徴があり
ます。1つ目は,18歳以上の年長少年が全体の75%を占めること,2つ目が,更生保護
施設や自立準備ホームに帰住する少年が4分の1を占め,出院後には,社会的・経済的な自
立が早期に求められる状況にあることです。
同院は,
このような在院者の特性を考慮して少
年院矯正教育課程を編成しています。
同院は,専門的職業指導における知識・
技術の指導に関しては,長く職業訓練施設
として運営されてきた蓄積があり,資格試
験等でも高い合格率を保っています。しか
し,1習得した知識や技術は具体的にどの
ような仕事に,どの程度活用できるのか,
2取得した資格は,就職するときや就労を
続けていく上で,
どの程度有効であるのか,
3現実の職場においては,資格や専門的知識・技術の前に,基礎的な社会人としての行動が
求められるところ,
そのような能力をどの程度付与できているのか,
といった課題もありま
す。同院では,これらの課題について,現状を把握し,より効果的な少年院矯正教育課程に
していくこととしています。
同院において,平成25年度及び同26年度の出院者(112名)について出院時点での
進路を調べた結果,
53%の在院者が,
訓練種目と関連のある仕事に就く予定がある又は就
きたいと考えており,
逆に,
関連のない仕事に就く予定がある又は就きたいと考えている在
院者が約40%となっていました。
同院では,この調査結果を踏まえ,より多くの少年が在院中に就職決定でき,また,その
決定に当たって専門的職業指導の成果がより多く寄与できるようにしていくとのことです。
その方策として,
習得した知識・技術の有効性や関連職種に関する新しい情報を分かりやす
く整理して,在院者,保護者をはじめ,更生保護関係機関,家庭裁判所,少年鑑別所に対し
て伝えていくこととしています。
また,専門的職業指導の5つのコース(土木・建築科,電気工事科,自動車整備科,給排
水設備科,溶接科)について,養成施設の認可を得ている関係省庁や業界団体をはじめ,資
格試験の実施や技術指導等で協力を得ている諸団体にも働き掛け,
情報提供等ができるよう
にしていくとのことです。
東 北 少 年 院15 喜連川少年院では,
昭和49年5月に栃木県立宇都宮高等学校通信制課程喜連川スクーリ
ング教場が設置され,以来40年を超す歴史を有しています。
創設以来,
宇都宮高校とは良好な関係を保ち,
週に1日スクーリングとして宇都宮高校の
先生方による授業が実施されています。
本年度も5月8日,
宇都宮高校の校長先生に来院していただき,
本年度入学生8名の入学
式を行い,昨年から継続する在籍少年3名と合わせて11名でスタートしました。
喜連川少年院における高等学校通信制課程の入学の要件の1つに,
同院を仮退院する時に
帰住先の通信制課程に転学できることがあります。
私学の通信制高校では,
随時の転学が認められている高校が多いので,
仮退院と同時に転
学を希望することが可能です。もっとも,私学は授業料が高いため,公立高校への転学を希
望する少年も少なくありません。
この場合,
公立高校は転学時期がおおむね4月と9月に指定されているため,
それまでの
間,宇都宮高校に週1回通学する必要があります。
このため,同院においては,地元が遠隔地の少年について,宇都宮への通学が可能な更生
保護施設等に一時的に帰住させるなどのきめ細やかな配慮をし,修学の継続を可能にしつ
つ,できるだけ広域収容の実が上がるような方策を検討していきたいとのことでした。
喜 連 川 少 年 院16 新潟少年学院では,
高校卒業程度認定試験合格が有効な再非行防止策となるとして,
その
重要性が高まる中,昨年度末,同試験受験指導モデル庁として,合格率向上等を目的に指導
体制の充実強化を図ることとしました。
平成27年6月24日現在,在院者56人のうち,高校在学中の者が10人(18%),中退した者が29人(52%)います。同院では,モデル庁としてスタートするに当たり,
本年5月に全在院者に対し,高校卒業程度認定試験受験指導への参加希望を募ったところ,
25人が希望しました。
希望理由は,
「高校に復学したい」,「専門学校
や大学に進学したい」,「学力を付けたい」等であ
り,修学に意欲のある者は少なくないことが,改
めて分かりました。具体的な指導方法について
は,従来の個別指導中心の受験指導に加え,授業
形式の指導も導入しました。
また,全国的に合格率が低く,重点的に指導す
る必要のある科目(数学,英語,国語(古典・漢文))には,専任講師を招へいしています。
質問シートによる個別サポート体制を整える
など,きめの細かい指導を行っています。
なお,
昨年度の受験結果については,
11人が受験し,
全科目合格者は4人でした。
また,
科目別の合格率を見ると,数学が受験者5人中,合格者2人(40%)
,英語は同じく6人
中,3人(50%)という結果となりました。
同院では,例えばコーラス指導など,従前から実績を積み重ね,高い教育効果が認められ
る様々な指導も鋭意継承しつつ, 出院後の進路に係る選択肢を広げる新たな取組を重点的
に進めることにより,少年院矯正教育課程の特色化を図りたいとのことでした。
新 潟 少 年 学 院17 心理技官とは,心理学の専門的な知識・技術等を生かし,非行や犯罪の原因を分析し,
対象者の立ち直りに向けた処遇指針を提示する,主に少年鑑別所で勤務する職員です。
従来,少年院における矯正教育は,もっぱら法務教官が担ってきましたが,近年は,心
理技官が一部の少年院にも配置され,心理技官の専門性を生かしつつ,少年の矯正教育計
画の立案や矯正教育の効果判定に関わるなど,少年院における矯正教育,社会復帰支援の
充実に向けて様々な役割に従事しています。
非行の背景や個々の少年の特性に即したより的確な矯正教育を実現する上で,今後一層
の活躍が期待されています。
岡山少年院でも,昨年度から,心理技官1名が勤務しています。少年院において心理技
官の果たしている役割の現状等について,同院から報告がありました。
心理技官と連携した矯正教育
各種心理検査器具の一部
(心理技官は,このような検査も活用しながら面接を行っています。)18
新法24条3項により,
少年院においては,
全国共通のプログラムに基づき特定生活指導
を実施することになりました。この特定生活指導には,被害者の視点を取り入れた教育,薬
物非行防止指導,性非行防止指導,暴力防止指導,家族関係指導及び交友関係指導の6種類
があります。
これらの指導の実施に当たっては,
少年鑑別所の処遇指針をはじめ各種の資料,
少年に対
する面接結果等を踏まえ,
非行の態様等を勘案して受講の要否を検討し,
受講対象者の適切
な選定に努めていく必要があります。
岡山少年院では,心理技官の専門性を可能な限り活
用し,個別面接の実施等により,新たに入院した少年
の資質面での特性の見立てを行うとともに,少年鑑別
所から引き継がれた資料や情報を「処遇方針連絡票」
に取りまとめ,これを処遇現場に伝達し,個人別矯正
教育計画の作成に役立ててもらうという役割を担って
います。
具体的には,まず,入院した少年とできるだけ早期に面接します。そして,少年簿,特に
処遇指針票,鑑別結果通知書の内容を参考に,送致元少年鑑別所の心理技官と,電話などに
よるカンファレンスを行います。
それらから得られた情報を連絡票に記載し,
必要な場合は
個別担任をはじめとする寮担任職員に直接引き継ぐこととしています。
また,
特定生活指導
の要否を判断するためのスクリーニングシートを作成して連絡票に添付し,
集団寮編入時に
寮の職員が活用できるようにしています。
つまり,送致元少年鑑別所とのカンファレンスなど,多様な方法で少年の情報を収集し,
包括的な視点で処遇方針連絡票を作成しており,
特定生活指導受講対象者の選定だけに止ま
らず,個人別矯正教育計画の策定資料としての活用も意図しているものです。
複数の特定生活指導の対象となる場合は,
本人の中核的な問題に焦点を当て,
優先すべき
ものを選定しています。
心理技官と個別担任等の寮職員とで協議を行い,
選定することにな
りますが,基本的には,個別担任が当該少年と面接し,その問題点を見立てて受講が必要な
特定生活指導を選定しますので,心理技官は,そのための一助となる資料を作成したり,助
言をしたりすることになります。
心理技官と寮職員の双方が,
それぞれの立場から特定生活
指導の対象者の選定に関わっていくことになります。
同院では,
心理技官の関与により,
受講対象者の選定がスムーズにできていると考えており,今後は,
選定された対象者に対する指導の実施に漏れがないよう注意して取り組んでい
くとのことでした。
岡 山 少 年 院19 職業指導とは,在院者に対し,勤労意欲を高め,職業上有用な知識及び技能を習得させ
るために行われるもので,新法においても,矯正教育の内容の一つとして位置付けられて
います。
この職業指導には,職業能力開発指導,自立援助的職業指導及び職業生活設計指導の3
つがあります。
そのうち,職業生活設計指導は,
「有為な職業人としての一般的な知識及び態度並びに職
業選択能力及び職場適応能力の習得を目的とした指導」です。
具体的には,職場における基本的なマナーや知識,円滑な対人関係を築き,自己の意思
を適切に表現するためのコミュニケーション能力などを身に付けさせることを目的として
います。
また,職業指導等の矯正教育を実施した上で大切なのが,その後の社会復帰支援です。
社会復帰支援とは,在院者の円滑な社会復帰を図るため,出院後に自立した生活を営む
上での困難を有する者に対し,その意向を尊重しつつ,適切な住居を得ることや,修学又
は就業を助けることなどの支援を行うものです。
社会復帰支援は,旧法では法令上の根拠がありませんでしたが,新法では矯正教育と並
ぶ少年院の業務の柱とされましたので,この一層の促進を図ることが少年院の課題になっ
ています。
就労支援の一環として,例えば,日本財団が中心となって活動している職親プロジェク
トがあります。
関係する企業が自ら少年院に求人を行い,
在院中に面接等を行って採用し,
出院後は仕事を通じて立ち直りを見守るという,新しい形の就労支援です。
以上の点について,沖縄女子学園及び小田原少年院から報告がありました。
就労と結び付く職業指導・社会復帰支援20 少年院では,
在院者ごとに個人別矯正教育計画を策定して,
個々の在院者の教育を行って
いますが,これを効果のあるものとするためには,計画的に行いつつも,日々の生活の中で
生起する様々な機会をとらえて臨機に対応する(指導する)ことも必要となります。
また,個々の指導は,日課表上の矯正教育の時間帯の中だけで完結するものではなく,常
に,他の指導も含めた少年院生活全体と関連付けながら展開されるべきものです。
実際,少年院においては,これまでもそのように在院者の教育を行ってきました。
沖縄女子学園では,
今回新たに設けられた職業生活設計指導について,
ビジネスマナーに
関する講座や,
対人関係を円滑にするための講座などを週6単元実施しつつ,
上述のように,
少年院生活全体と関連付けながら展開されるよう,取り組んでいます。
同学園では,14歳から16歳の年少少年が大半を占め,就労経験がなく,社会性も未熟
な少年が多いことから,伝統工芸科,農園芸科などの職業指導を通じて,就労を継続させる
ために必要な忍耐力や責任感を養うことも行っています。
それと並行して,
職業生活設計指
導により,
実際の職場で必要とされる基本的なマナーや知識,
円滑な対人関係を築き自己の
意思を適切に表現するためのコミュニケーション能力などを身に付けさせています。
そのこ
とを通じて,
自己肯定感や就労への自信を育むことが,
まずもって重要と考えているとのこ
とです。
この職業生活設計指導をより効果的な
ものとするためには,
指導内容を職業指導
の他の細目や生活指導など,
少年院生活全
体と関連付けて行うこと,特に,
「社会人
としての基礎的マナー」や「基本的会話力」
の内容については,
院内生活の様々な場面
で実践させながら身に付けさせていくこ
とが肝要であると考えています。
そのためには,
特定の担当者だけに指導
を任せきりにすることなく,
全職員がこの
指導の内容を理解しておくようにしています。
このような手厚い指導は,1日24時間体制でチーム処遇をしている少年院だからこそ,
できることであり,沖縄女子学園では,今後もこの利点を生かし,着実に内容の充実を図っ
ていくこととしているとのことでした。
沖 縄 女 子 学 園21 小田原少年院の在院者には,入院時の年齢が
18歳,19歳の者が多く,就労に対する関心
や意欲が比較的高いものが多いと思われます。
特に,在院者の約半数を占める少年院再入院の
者は,自らの再非行の原因が主に不良交友と不
就労にあったことを認識しており,在院中に,
出院後の就職先を確保したいという要望も強く
持っています。
これまでの少年院在院者の求職活動は,
保護者等から紹介があるケース,
入院前に働いて
いた会社等に再就職するケース,
あるいは,
出院後にハローワークへ赴いて求職活動を行う
ケースなどが中心でした。しかし,出院から就職までタイムラグがあること,帰住先が地元
である場合,不良交友が原因での再非行リスクが高まることなどの懸念がありました。
同院においては,
そのようなリスクを軽減するために,
できる限り在院中に就職の内定を
もらい,出院後速やかに就労できるよう,国の実施する就労支援事業(
「刑務所出所者等就
労支援事業」
)と日本財団による職親プロジェクトを併用した就労支援を積極的に実施して
います。
さらに,
これらの事業に関心を示してきた者や帰住調整が難航することが予想される者等
を中心に,
「就労支援スタッフ」によるキャリアカウンセリングなどを受講させています。
その結果,平成26年度には,国の実施する就労支援事業に9名の少年が応募し,そのう
ちの6名が在院中に雇用主の採用面接を受けて内定をもらい,
出院後,
直ちに就労すること
ができました。また,1名はハローワークの紹介状により早期に就労し,1名は求職活動中
とのことです。ただし,残りの1名については,出院後,採用予定の会社の面接を受けなか
ったという報告を保護観察所から受けています。平成27年度は,現在のところ,4名の少
年が応募し,1名の就職が内定しました。
職親プロジェクトについては,平成26年度には2名が応募し,1名が就労し,1名は6
月下旬に出院しています。
平成27年度には4名が応募を希望しましたが,
そのうちの2名
については,保護者の同意が得られず,残念ながら応募を断念しました。
少年の中には,
地元の不良交友を断絶するために,
別の土地で就労したいという意思を示
す者もいます。今後は,保護者の理解と協力を得て,少年の最善の利益を考えた進路を決定
するため,より一層の就労支援の充実を図っていく方針であるとのことでした。
小 田 原 少 年 院22 成人式(小田原少年院)23 処遇ケース検討会とは,家庭裁判所,地方検察庁,地方更生保護委員会,保護観察所,
少年鑑別所その他の関係機関の担当者に参加を呼び掛け,少年院において一堂に会し,あ
る特定の在院者の入院後の処遇経過,今後の処遇方針及び保護関係調整等について,検討・
協議を行うものです。
このような場を設けることで,処遇の一層の充実を図るとともに,個別のケースを通し
た関係機関との実質的な連携協力を推進することを目的としています。
生活環境調整とは,少年院仮退院後の引受人や実際に帰住して生活する場所等を調整す
ることであり,保護観察所等がその業務を担っています。
保護者や親族の許へ帰るケースが一般的ですが,中には,保護者等が引き受けを拒否す
るケースも少なくなく,その場合は,更生保護施設等への入所に向けた調整が行われるこ
ととなります。
帰住先の調整等を含めた処遇ケース検討会の実践について,交野女子学院から報告があ
りました。
処遇ケース検討会24 交野女子学院では,生活環境調整が難航するケースが比較的多い実情にあります。
平成26年の出院者について見ても,70人中,引受人が実父母であるのは3割を切り,
更生保護施設や自立準備ホーム等の施設に帰った者も1割を占めています。
そのため,
関係機関との様々な情報交換や調整をすべく,
処遇ケース検討会を多く開催し
ています。
平成26年度は全部で6ケース,計7回の処遇ケース検討会を実施しています。
例えば,
知的障害のある少年のケースでは,
NPO法人の運営するグループホームへの帰
住が整ったため,
帰住予定地であるその福祉施設内で検討会を開催しました。
ボランティア
協会スタッフ,市役所障害福祉課,児童相談所,保護観察所といった関係機関が出席し,そ
れぞれの立場から,対象者に対して提供できるサービスの確認を行うことができました。
また,
自閉症スペクトラム障害と診断された少年のケースでは,
引受人は実父母でしたが,
少年の障害特性の理解が十分ではないという課題が残っていました。
児童相談所,
更生保護
官署,
少年鑑別所医師の参加を得て,
出院後の支援体制について話し合うことができました。
このように,処遇ケース検討会を実施して言えることは,
1 関係者が一堂に会し,顔を合わせる
ことに大きな意義があるということ
2 懸念される事項を忌憚なく話し合う
ことで,関係者間で新たな知恵や見
解が生まれるということ
です。
書面や電話のやり取りだけでは得られ
ないものがあります。
在院中に,
本人や引受人等の不安を軽減し,
懸念される問題を少しでも解決しておくこと
が,実効ある社会復帰支援につながり,再犯・再非行防止へと至ることになります。
同院では,今後もこうした取組を続けていく方針であるとのことでした。
交 野 女 子 学 院25 平成27年7月9日に,少年鑑別所長会同が開催されました。少年院長会同と同様に,全
国の少年鑑別所長が集まり,各施設の取組や今後の展望について,協議を行いました。
ここでは,少年鑑別所長会同で報告のあった各施設の取組の一部を紹介します。
少年鑑別所が行う鑑別には,3つの種類があります。
家庭裁判所の審判のために行う鑑別(審判鑑別)と,少年院在院者や保護観察対象者等
に対して行う鑑別(処遇鑑別)
,家庭裁判所で少年院送致の決定を受けた者に対して行う鑑
別(指定鑑別)です。
まず,審判鑑別は家庭裁判所の求めに応じて行われ,多くの場合,家庭裁判所の観護措
置の決定により,少年鑑別所に少年を収容した上で実施します。
少年鑑別所に少年を収容することの利点としては,1時間を掛けた丁寧な調査を行うこ
とが可能となる,2非行につながる悪い環境や交友関係から切り離し,自分自身をじっく
りと振り返る機会を持たせることができる といったことが挙げられます。
審判鑑別の結果は,鑑別結果通知書にまとめられ,家庭裁判所に提出され,審判や少年
院・保護観察所での指導・援助に活用されます。
次に,処遇鑑別は,少年院や保護観察所などの処遇機関で,改善更生のための働き掛け
を受けている者に対して,その進捗状況や残された課題などを確認することを目的として
鑑別の在り方26 行われるものです。
処遇鑑別の結果は,処遇機関における働き掛けの効果や今後の方向性を検討する重要な
資料となります。
少年院法の改正により,少年院在院者に対する処遇鑑別については,一定期間,少年院
から少年鑑別所に収容の場を移して実施することができるようになりました。
これを収容処遇鑑別といいます。
これにより,少年鑑別所の法務技官(心理技官)や法務教官(観護教官)が時間を掛け
て,面接や心理検査,行動観察などを実施し,精度の高い鑑別を行うことができるように
なります。また,出院後の生活を送る場所に近い少年鑑別所に収容することによる環境調
整上のメリットも期待できます。さらに,少年院における矯正教育と連携して収容処遇鑑
別を行うことにより,鑑別を少年の改善更生の方策として積極的に位置付けることも可能
になると思われます。
最後に,指定鑑別は,家庭裁判所から少年院送致の決定を受けた少年について,処遇鑑
別の結果やそれぞれの少年院に指定された矯正教育課程等を考慮し,実際に収容する少年
院を指定するために実施するものです。
今回の会同では,少年鑑別所法における審判鑑別や処遇鑑別の在り方について,活発な
意見交換がなされました。
まず,審判鑑別の在り方について八王子少年鑑別所から,また,収容処遇鑑別について
名古屋少年鑑別所から報告がありました。27 審判鑑別は,
関係諸機関が実施することになる処遇の方向性を指し示すもので,
処遇にお
ける起点的役割を担っています。
この起点的役割を担う審判鑑別の機能を十分に果たす上で,
再犯の実態や対策の効果等を
調査・分析・検証し,更に効果的な対策を検討・実施するEBP(エビデンス・ベースド・
ポリシー)の考え方は大変重要です。
刑事政策を十分踏まえた上で,
マクロ的な処遇効果検証の視点を併せ持ちながら,
現に目
の前の少年が抱えている個々の事情を明らかにしつつ,
今後の立ち直りと改善更生に向けて
の指針を説得力をもってきめ細かく提示することが審判鑑別実施上肝要です。
この観点から法務省式ケースアセスメントツール(30 頁で後述。
)が全国の少年鑑別所で
実施されている意義は大変大きなものがあります。
現在,少年矯正においては,効果検証のための専従職員が配置され,各種データの分析作
業等に取り組んでいます。
実証データに基づいた説得力ある鑑別判定と処遇指針の提示は,
当該少年の改善更生と円
滑な社会復帰のためにも,
また,
多くの国民の理解に支えられた矯正を実現していく上でも,
今後,ますます重要となってきます。
「非行性」と「矯正可能性」とを明らかにする際,非行の機制を「被害体験とその影響」
の観点から理解することが鍵を握る場合が多いと言えます。
例えば,
被虐待体験が非行や犯罪に結びつく可能性については,
これまでも多くの研究が
明らかにしているところですが,実務上も,虐待が少年に与える様々な心理的影響と,被害
が加害に転じる機制とを明らかにすることは,非行を理解する上で,また,今後の処遇の在
り方を検討する上で,大変重要です。
その際,非行の発現に,例えば,発達障害など対象者が抱える特性がどの程度関与したか
を把握するとともに,
家庭の状況など様々な環境上問題となる事情を明らかにした上で,対象者が有する強みや回復力,
社会資源に言及しながら,
かつ,
少年の痛みや想いを汲みつつ,
改善更生に資する個別具体的な処遇指針を示すことが,
審判鑑別において特に肝要であると
のことでした。
八王子少年鑑別所28 少年鑑別所の職員が少年院に出向いて行う通常の処遇鑑別に比べ,
収容処遇鑑別では,担当者がじっくりと面接や心理検査を実施することができるようになり,行動観察に加えて,
精神医学的な診察も可能となったことで,
多面的・多角的な分析により精密な鑑別を行うこ
とができるようになります。
収容処遇鑑別を受ける対象者も,審判のために少年鑑別所に入所していたときと比べて,
現在はどのように変わったのか,あるいは,変わっていないのかと,自らを振り返る気持ち
が自ずと湧いてくるようになることが期待できます。
また,少年院での人間関係から一時的に離れることから,これまでの生活態度や教官,他
の在院者との関係について距離を置いて振り返ることが可能となります。
少年院では,
強が
るなどして,言えなかった本音の部分を見せてくれるかもしれません。
いずれにしても,
対象者には収容処遇鑑別を行うための目的やその必要性について事前に
説明し,鑑別を自ら進んで受けるための動機付けを高めるよう配慮する必要があります。
どのような者が収容処遇鑑別に適しているかについては,まず,特に問題性が高く,標準
的な期間を超えた矯正教育を必要とする者について,
少年院在院中に1回は収容処遇鑑別を
実施することが考えられます。
対象者の中核的な問題についてどこがどのように変わったのか,処遇効果の検証も含め
て,矯正教育の内容との関連性を検討することになります。
社会復帰を図る上で特別な配慮を要する者については,
保護者,
保護観察所あるいは教育
関係者との面会や電話による通信を活用し,
その状況について綿密な行動観察を行い,
情報
を収集することが有効です。
収容処遇鑑別によって,少年鑑別所は,調査のみならず,対象者の健全育成に向けた支援
により積極的に関わることができます。
少年院における矯正教育との連続性・連動性に配慮しながら,
対象者が更生に向けて自発
的に考えていけるような転換点となるべく方向付けができれば良いとのことでした。
名古屋少年鑑別所29 鑑別のための調査は,1心理技官による面接・心理検査,2観護教官による行動観察,
3医師による診察を3本柱としています。
これに加えて,再非行の可能性や教育上の必要性に関する客観的な指標として,法務省
式ケースアセスメントツール(MJCA)があります。
MJCAの開発に当たっては,少年鑑別所に入所した約6,000人の非行少年に関す
る様々なデータを収集した上で,2年間にわたって再非行の有無に関する追跡調査を行い,
収集したデータと再非行の生起との関連を統計的に分析しました。
MJCAは,先行して開発・実施されている欧米の同様のツールと比べても遜色ない予
測精度を有しています。
MJCAは,既に鑑別における有効なツールとして活用されていますが,今後,少年院
や保護観察所における少年の理解や処遇効果の検証のために一層活用されていくことが期
待されています。
この点に関して,少年院在院者に対するMJCAについて,津少年鑑別所から報告があ
りました。
法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)30 少年院在院者に対するMJCAとは,
少年の再非行の可能性や教育上の必要性について定
量的に把握するため,
少年鑑別所において実施しているMJCAを,
少年院に送致して一定
期間を経た後に,再び実施するというものです。
少年院においても収容審判鑑別時と同一の項目について評定するため,
少年院で評定した
際の評価点と,収容審判鑑別時の評価点とを比較し,少年の問題性が低減した点や,今後更
に指導が必要な領域などについて,
鑑別結果通知書に記載することで,
少年院の教官に少年
の現状について理解してもらいやすくなり,
MJCAが少年鑑別所と少年院との共通認識を
深める資料として活用できるようになります。
さらに,
MJCAの活用に付随する効果として,
鑑別経験の浅い若手の心理技官にとって,
評定に必要な情報を「漏れなく」聞き取る力を身に付ける機会となり,鑑別技能の向上につ
ながることも期待されます。
MJCAの再評定結果と再非行の可能性の程度との関係については,
基本的には,
収容審
判鑑別時と同様,得点が低くなるにつれて,再非行の危険性も低減すると考えられます。
少年院出院後に再犯・再非行に及ぶかどうかは,少年が,少年院と比べて自由度の高い一
般社会での生活においても,
少年院での状態を持続できるかどうかといったことや,
出院後
の保護者との関係の変化,
学校・職場での適応状況などといった環境要因にも左右されます。
今後,
再評定の得点と再非行との関連について統計的な検討がなされれば,
MJCAの再
評定の有用性が更に高まることが期待できるとのことでした。
津 少 年 鑑 別 所31 少年鑑別所の在所者の大部分は,家庭裁判所の審判を受けるために収容されています。
そのため,少年鑑別所では,少年院と異なり,在所者に対して非行の存在を前提とした
矯正教育を行うことはありません。
しかし,単に収容しておくだけでなく,心身の成長発達の途上にある少年に対して,情
操の保護に配慮するとともに,健全な育成を期すため,少年からの悩みや心配事に対して
相談に応じたり,助言を行うなどの働き掛けを行っています。
この点,少年鑑別所において,どこまでの働き掛けができるかは,従来は法令の規定も
なく,様々な議論がありましたが,新法において基準が明確化されました。
また,養育環境や就学状況に問題があり,基本的な生活習慣や学力が身に付いていない
少年も多いことから,日々の生活態度,言葉遣いに関する指導から,勉強や読書のための
図書の貸出し,外部協力者による学習支援,さらには,七夕やクリスマスなどの季節の行
事を体験させることなど,収容期間中に在所者の健全な育成に配慮した様々な支援や働き
掛けを行っています。
この点について,京都少年鑑別所から健全育成のための取組の報告がありました。
健全育成に資する観護処遇32 近年の入所者を見ると,
SNSの仮想空間が主な遊び場所となっており,
集団社会生活を
経験できる貴重な場であるはずの学校から早くに離脱してしまった結果,
人格形成に必要な
「生活の実体験」が不足している子供が少なくありません。
ところで,終戦後の少年鑑別所の黎明期には,衣食住に窮乏する子供たちに対して,食堂
に集って食事をさせ,海水浴に出かけ,町はずれのグランドに行って野球をする,といった
普通の生活の場を提供するという処遇を行っていました。
現在,物質的には豊かになり,必要とされる支援の内容も様変わりしましたが,健全育成
に資する観護処遇の観点から,京都少年鑑別所では,1年を通して,主に集団で行う季節ご
との旬を体験する「文化活動」や「情操の涵養に資する活動」を実施しています。
対象は,同所に在所している者のうち,参加を希望する者です。
職員が個々の行事の由来や意味を説明して,最後に感想文を書いてもらいます。
旬の体験は,1月の「書き初め」から始まります。
2月は節分。宮中で行われる 追儺
つ い な
の説明を交えなが
ら,鬼の面を作成します。
3月は,上巳
じ ょ う し
の節句,雛祭で,内裏雛を作成します。
4月は観桜会です。
これは歌会で,
桜花にちなんだ短
歌や俳句を詠み,
短冊にしたためます。
その後,
短冊は,
廊下に掲示します。
5月は,端午の節句,鯉のぼりの作成を行います。
7月は,七夕の節句で,5色の短冊に願いを込めます。
9月は,
伝統産業である和紙の紙すきで,
牛乳などの紙パックから抽出したパルプを材料
に,網戸を再利用したすき器を用いて和紙をすきます。
12月は,クリスマスカードの作成です。
参加者は,
最初は面白半分で参加したという者が大半だったようですが,
実際に参加した
子供は,リラックスして普段とは違う顔を見せてくれるようになったとのことです。
「当たり前」
の体験が大きく不足している子供に対して,
年齢相応の社会経験や情緒体験
を持たせることは,社会が少年鑑別所に期待している機能の一つです。
歌会などの行事の多くは,
宮中の年中行事の影響が残る京都という土地柄に根差したもの
ですが,
健全育成に配慮した処遇は,
その土地に合った内容を選択することが肝要であると
のことでした。
京 都 少 年 鑑 別 所33 少年鑑別所法では,地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助が少年鑑別所の
本来業務として規定されました。
少年鑑別所は,家庭裁判所等の求めにより,心理学,教育学等の専門的な知識や技術に
基づき,年間1万件以上の「鑑別」を実施しており,その過程で,非行や思春期の問題行
動に関する専門的な知見を蓄積しています。
そうした非行や問題行動に関する専門的な技術,経験や知見を地域社会における非行・
犯罪の防止のために役立てるため,少年鑑別所は,
「法務少年支援センター」として,子育
てに悩んでおられる保護者の方からの御相談や,学校における生徒指導への助言や協力,
福祉機関,司法機関等が行う非行・犯罪防止に関する活動との連携,非行や思春期の問題
に関する講演等,地域の方々や関係機関からの依頼に幅広く対応しています。
和歌山少年鑑別所からは,地域援助業務として,福祉施設及び地域生活定着支援センタ
ーとの連携について報告がありました。
少年鑑別所が実施する地域援助業務(1)34 和歌山少年鑑別所では,福祉施設を月1回の割合で訪問し,体育指導や理科実験,工作,
フィンガーペインティング等,観護処遇の方法を応用した取組を行っています。
福祉施設側の反応は,
全般的に好評です。
能力にハンディを抱えた子供にはフィン
ガーペインティングや粘土細工を,知的興
味や能力を有している子供には,
理科実験,
工作等を行うなど,対象者のニーズによっ
て柔軟に内容を変え,バラエティに富んだ
支援を行っていることから,福祉施設の入
所児童が実に楽しんで取り組んでいたとの
評価をいただいたところです。
なお,担当した教官からも,
「確かに負担にはなるが,教官として可能性が見えてくる感
じがする。
」との前向きな意見が上がっています。
地域生活定着支援センターとの連携としては,
同センターからの依頼に基づき,
成人犯罪
者に対する心理検査及びケースカンファレンスを実施しています。
具体的には,
地域生活定着支援センターが支援している知的障害が疑われる未決拘禁中の
被疑者・被告人に対して個別知能検査を実施し,結果報告書を作成するというものです。
今後は,
対応が難しい対象者に対する支援の在り方を検討するため,
継続的なケースカン
ファレンスを実施する予定です。
さらに,
特別調整対象者に選定された受刑者に対し,
和歌山少年鑑別所の心理技官が面接,
個別知能検査等を実施し,
刑務所と連携しながら,
同センターに対象者の情報を引き継ぐと
いった取組も検討しているとのことでした。
和 歌 山 少 年 鑑 別 所35 再犯・再非行防止は,
「世界一安全な国・日本」実現のための重要課題であり,切れ目の
ない支援の必要性が強調されているところです。
その内容としては,高齢者や障害者等が矯正施設を出所した後に,円滑に社会復帰でき
るよう支援する「出口支援」が挙げられます。
また,刑事司法過程の捜査・公判といった段階において,被疑者・被告人の中から福祉
的な支援を必要としている者を発見し,地域の適切なサービス等につなげることによって
再犯防止と更生支援を目指す「入り口支援」も重要な取組です。
これら「入り口・出口」双方の支援が奏功することにより,安心・安全な社会の実現に
つながります。
千葉少年鑑別所からは,地域援助の取組として,千葉地方検察庁等と連携した入り口支
援について報告がありました。
少年鑑別所が実施する地域援助業務(2)36 千葉地方検察庁では,
平成25年に
「再犯防止推進室」
が設置され,
平成27年度からは,
非常勤社会福祉士を社会福祉アドバイザーとして採用するなど,本格的な「入り口」におけ
るサポートを開始しています。
従前,
千葉少年鑑別所と千葉地方検
察庁との連携は,
地検主催の法教育プ
ログラムへの参加が中心でしたが,平成27年度からは,これに加え,軽微
な事案の被疑者を中心に知的障害や
認知症のスクリーニング検査等を少
年鑑別所が実施することになりまし
た。
検査に素早く対応し,
起訴前勾留期
間の時間的制約下で迅速に所見を伝
達できるよう準備を進めています。
また,千葉県の場合,県の地域生活定着支援センターを受託しているNPO法人が,出口
支援に加え,入り口支援にも奔走しています。
そこで,
千葉少年鑑別所では,
入り口支援におけるアセスメントや相談について少年鑑別
所が関与できることを説明するため,同センターに赴きました。
その結果,
福祉の側においても心理学的な観点による個別支援や少年鑑別所による講演等
のニーズが高いことが判明しました。
入り口支援の対象者は,不起訴,起訴猶予等,様々な身分の者がいるため,関係機関との
連携が欠かせません。
関係機関のニーズを踏まえ,
少年鑑別所の専門性を柔軟に発揮してい
く必要があります。
出口支援や入り口支援の試みは,
関係機関が連携して,
チームで専門的に支援計画を策定
するものです。
出口支援や入り口支援は,
少年鑑別所がこれまで鑑別業務の中で連綿と実践
を積み重ねた専門性を最も発揮できる一領域であるとのことでした。
千 葉 少 年 鑑 別 所37 福岡少年院
帯広少年院
広島少年院
北海少年院
岡山少年院瀬戸少年院沖縄少年院
茨城農芸学院
関東医療少年院
東北少年院
水府学院
湖南学院
浪速少年院京都医療少年院中津少年学院
四国少年院和泉学園奈良少年院宮川医療少年院愛知少年院赤城少年院
盛岡少年院
喜連川少年院
八街少年院小田原少年院
新潟少年学院久里浜少年院
神奈川医療少年院
多摩少年院加古川学園人吉農芸学院
大分少年院
青葉女子学園
榛名女子学園
愛光女子学園
交野女子学院
沖縄女子学園
貴船原少女苑
丸亀少女の家
紫明女子学院
筑紫少女苑
月形学園
美保学園播磨学園
佐世保学園
松山学園駿府学園
置賜学院泉南学寮
有明高原寮豊ケ岡学園市原学園
全 国 の 少 年 院 一 覧38 施設名 郵便番号 所在地 電話番号
帯 広 少 年 院 080-0846 北海道帯広市緑ヶ丘3-2 0155-24-5787
北 海 少 年 院 066-0066 北海道千歳市大和4-746-10 0123-23-3147
紫 明 女 子 学 院 066-0066 北海道千歳市大和4-662-2 0123-22-5141
月 形 学 園 061-0516 北海道樺戸郡月形町字知来乙264-1 0126-53-2736
盛 岡 少 年 院 020-0121 岩手県盛岡市月が丘2-15-1 019-647-2107
東 北 少 年 院 984-0825 宮城県仙台市若林区古城3-21-1 022-285-4270
青 葉 女 子 学 園 984-0825 宮城県仙台市若林区古城3-24-1 022-286-1551
置 賜 学 院 992-0111 山形県米沢市大字下新田445 0238-37-4040
茨 城 農 芸 学 院 300-1288 茨城県牛久市久野町1722-1 029-875-1114
水 府 学 院 311-3104 茨城県東茨城郡茨城町駒渡1084-1 029-292-0054
喜 連 川 少 年 院 329-1412 栃木県さくら市喜連川3475-1 028-686-3020
赤 城 少 年 院 371-0222 群馬県前橋市上大屋町60 027-283-2020
榛 名 女 子 学 園 370-3503 群馬県北群馬郡榛東村新井1027-1 0279-54-3232
市 原 学 園 290-0204 千葉県市原市磯ケ谷157-1 0436-36-1581
八 街 少 年 院 289-1123 千葉県八街市滝台1766 043-445-3787
多 摩 少 年 院 193-0932 東京都八王子市緑町670 042-622-5219
関 東 医 療 少 年 院 183-0052 東京都府中市新町1-17-1 042-362-2355
愛 光 女 子 学 園 201-0001 東京都狛江市西野川3-14-26 03-3480-2178
久 里 浜 少 年 院 239-0826 神奈川県横須賀市長瀬3-12-1 046-841-2585
小 田 原 少 年 院 250-0001 神奈川県小田原市扇町1-4-6 0465-34-8148
神奈川医療少年院 252-0205 神奈川県相模原市中央区小山4-4-5 042-772-2145
新 潟 少 年 学 院 940-0828 新潟県長岡市御山町117-13 0258-35-0118
有 明 高 原 寮 399-8301 長野県安曇野市穂高有明7299 0263-83-2204
駿 府 学 園 421-2118 静岡県静岡市葵区内牧118 054-296-1661
湖 南 学 院 920-1146 石川県金沢市上中町ロ11-1 076-229-1077
瀬 戸 少 年 院 489-0988 愛知県瀬戸市東山町14 0561-82-3195
愛 知 少 年 院 470-0343 愛知県豊田市浄水町原山1 0565-45-0511
豊 ケ 岡 学 園 470-1153 愛知県豊明市前後町三ツ谷1293 0562-92-3106
宮 川 医 療 少 年 院 519-0504 三重県伊勢市小俣町宮前25 0596-22-4844
京 都 医 療 少 年 院 611-0002 京都府宇治市木幡平尾4 0774-31-8101
浪 速 少 年 院 567-0071 大阪府茨木市郡山1-10-17 072-643-5065
交 野 女 子 学 院 576-0053 大阪府交野市郡津2-45-1 072-891-1132
和 泉 学 園 599-0231 大阪府阪南市貝掛1096 072-476-5221
泉 南 学 寮 599-0231 大阪府阪南市貝掛1096 072-476-5221
加 古 川 学 園 675-1201 兵庫県加古川市八幡町宗佐544 079-438-0353
播 磨 学 園 675-1201 兵庫県加古川市八幡町宗佐544 079-438-0340
奈 良 少 年 院 631-0811 奈良県奈良市秋篠町1122 0742-45-4681
美 保 学 園 683-0101 鳥取県米子市大篠津町4557 0859-28-7111
岡 山 少 年 院 701-0206 岡山県岡山市南区箕島2497 086-282-1128
広 島 少 年 院 739-0151 広島県東広島市八本松町原11174-31 082-429-0821
貴 船 原 少 女 苑 739-0151 広島県東広島市八本松町原6088 082-429-3001
丸 亀 少 女 の 家 763-0054 香川県丸亀市中津町28 0877-22-9226
四 国 少 年 院 765-0004 香川県善通寺市善通寺町2020 0877-62-1251
松 山 学 園 791-8069 愛媛県松山市吉野町3803 089-951-1252
筑 紫 少 女 苑 811-0204 福岡県福岡市東区大字奈多1302-105 092-607-5695
福 岡 少 年 院 811-1346 福岡県福岡市南区老司4-20-1 092-565-3331
佐 世 保 学 園 857-1161 長崎県佐世保市大塔町1279 0956-31-8277
人 吉 農 芸 学 院 868-0301 熊本県球磨郡錦町木上北223-1 0966-38-3102
中 津 少 年 学 院 871-0152 大分県中津市加来1205 0979-32-2321
大 分 少 年 院 879-7111 大分県豊後大野市三重町赤嶺2721 0974-22-0610
沖 縄 少 年 院 904-0034 沖縄県沖縄市山内1-13-1 098-933-4486
沖 縄 女 子 学 園 904-0034 沖縄県沖縄市山内1-14-1 098-933-7241
全国の少年院
少年院の参観などの希望がありましたら,お近くの少年院にお問い合わせください。39 施設名 〒 所在地 電話番号
札 幌 少 年 鑑 別 所 007-0802 北海道札幌市東区東苗穂2条1-1-25 011-784-7441
函 館 少 年 鑑 別 所 042-0944 北海道函館市金堀町6-15 0138-51-5652
旭 川 少 年 鑑 別 所 078-8231 北海道旭川市豊岡1条1-3-24 0166-31-5468
釧 路 少 年 鑑 別 所 085-0834 北海道釧路市弥生1-5-22 0154-41-5808
青 森 少 年 鑑 別 所 030-0853 青森県青森市金沢1-5-38 017-776-5118
盛 岡 少 年 鑑 別 所 020-0121 岩手県盛岡市月が丘2-14-1 019-647-2206
仙 台 少 年 鑑 別 所 984-0825 宮城県仙台市若林区古城3-27-17 022-286-2311
秋 田 少 年 鑑 別 所 010-0973 秋田県秋田市八橋本町6-3-5 018-862-3771
山 形 少 年 鑑 別 所 990-0021 山形県山形市小白川町5-21-25 023-642-3444
福 島 少 年 鑑 別 所 960-8254 福島県福島市南沢又字原町越4-14 024-557-6561
水 戸 少 年 鑑 別 所 310-0045 茨城県水戸市新原1-15-15 029-251-3038
宇 都 宮 少 年 鑑 別 所 320-0851 栃木県宇都宮市鶴田町574-1 028-648-5062
前 橋 少 年 鑑 別 所 371-0035 群馬県前橋市岩神町4-5-7 027-233-3183
さいたま少年鑑別所 330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-16-36 048-864-5858
千 葉 少 年 鑑 別 所 263-0016 千葉県千葉市稲毛区天台1-12-9 043-253-7741
東 京 少 年 鑑 別 所 179-0084 東京都練馬区氷川台2-11-7 03-3931-1141
八 王 子 少 年 鑑 別 所 192-0015 東京都八王子市中野町2726-1 042-625-9141
横 浜 少 年 鑑 別 所 233-0003 神奈川県横浜市港南区港南4-2-1 045-841-2525
新 潟 少 年 鑑 別 所 951-8133 新潟県新潟市中央区川岸町1-53-2 025-266-2442
甲 府 少 年 鑑 別 所 400-0055 山梨県甲府市大津町2075-1 055-241-1881
長 野 少 年 鑑 別 所 380-0803 長野県長野市三輪5-46-14 026-232-6144
静 岡 少 年 鑑 別 所 422-8021 静岡県静岡市駿河区小鹿2-27-7 054-281-3208
富 山 少 年 鑑 別 所 939-8263 富山県富山市才覚寺162-2 076-429-4884
金 沢 少 年 鑑 別 所 920-0942 石川県金沢市小立野5-2-14 076-231-1603
福 井 少 年 鑑 別 所 910-0001 福井県福井市大願寺3-4-20 0776-25-5036
岐 阜 少 年 鑑 別 所 502-0851 岐阜県岐阜市鷺山1769-20 058-231-5040
名 古 屋 少 年 鑑 別 所 464-8585 愛知県名古屋市千種区北千種1-6-6 052-721-8432
津 少 年 鑑 別 所 514-0043 三重県津市南新町12-12 059-228-3556
大 津 少 年 鑑 別 所 520-0867 滋賀県大津市大平1-1-2 077-537-1011
京 都 少 年 鑑 別 所 606-8307 京都府京都市左京区吉田上阿達町37 075-751-7111
大 阪 少 年 鑑 別 所 590-0014 大阪府堺市堺区田出井町8-30 072-233-3326
神 戸 少 年 鑑 別 所 652-0015 兵庫県神戸市兵庫区下祇園町40-7 078-351-0761
奈 良 少 年 鑑 別 所 630-8102 奈良県奈良市般若寺町3 0742-22-4829
和 歌 山 少 年 鑑 別 所 640-8127 和歌山県和歌山市元町奉行丁2-1 073-425-5369
鳥 取 少 年 鑑 別 所 680-0007 鳥取県鳥取市湯所町2-417 0857-23-4441
松 江 少 年 鑑 別 所 690-0873 島根県松江市内中原町195 0852-21-3154
岡 山 少 年 鑑 別 所 701-0206 岡山県岡山市南区箕島2512-2 086-281-1171
広 島 少 年 鑑 別 所 730-0823 広島県広島市中区吉島西3-15-8 082-244-3388
山 口 少 年 鑑 別 所 753-0074 山口県山口市中央4-7-5 083-922-6518
徳 島 少 年 鑑 別 所 770-0816 徳島県徳島市助任本町5-40 088-652-5606
高 松 少 年 鑑 別 所 760-0071 香川県高松市藤塚町3-7-28 087-834-1770
松 山 少 年 鑑 別 所 791-8069 愛媛県松山市吉野町3860 089-952-2841
高 知 少 年 鑑 別 所 780-0065 高知県高知市塩田町19-13 088-872-9283
福 岡 少 年 鑑 別 所 815-0042 福岡県福岡市南区若久6-75-2 092-541-7934
小 倉 少 年 鑑 別 支 所 802-0837 福岡県北九州市小倉南区葉山町1-1-7 093-965-1112
佐 賀 少 年 鑑 別 所 840-0856 佐賀県佐賀市新生町1-10 0952-26-2281
長 崎 少 年 鑑 別 所 852-8114 長崎県長崎市橋口町4-3 095-846-5600
熊 本 少 年 鑑 別 所 860-0082 熊本県熊本市西区池田1-9-27 096-325-4131
大 分 少 年 鑑 別 所 870-0016 大分県大分市新川町1-5-28 097-534-7576
宮 崎 少 年 鑑 別 所 880-0014 宮崎県宮崎市鶴島2-16-5 0985-27-5566
鹿 児 島 少 年 鑑 別 所 890-0081 鹿児島県鹿児島市唐湊3-3-5 099-254-3347
那 覇 少 年 鑑 別 所 900-0036 沖縄県那覇市西3-14-20 098-862-4606
全国の少年鑑別所
全国共通相談ダイヤル 0570-085-085 (最寄りの法務少年支援センターにつながります)40 少年院長・少年鑑別所長会同レポート
少年矯正NOW(しょうねんきょうせいなう)
平成27年8月19日発行
法務省矯正局少年矯正課
〒100-8977 東京都千代田区霞が関1-1-1
電話 03(3580)411141 碑『少年と共に幸せを』
(豊ケ岡学園)
同学園庁舎前にある碑で,少年たちの幸せを願う初代院長千
葉憲雄氏の志が,今も職員に受け継がれています。

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