司 法
単元設定の趣旨第1
「司法」の単元は,
「司法とは,法に基づいて,侵害された権利を救済し,ルール違反に対処することによっ
て,法秩序の維持・形成を図るものであることを認識させるとともに,すべての当事者を対等な地位に置き,
公平な第三者が適正な手続を経て公正なルールに基づいて判断を行うという裁判の特質について,
実感を持っ
て学ばせる」
(報告書第3の1(2)エ)ことを目指している。
本教材では,法・ルールに基づいて紛争を解決し,また,ルール違反に対処するという裁判の機能について,
裁判手続の一部を,模擬体験を通じて学習させることにより,裁判が公正な手続のもとで理性的な議論を踏
まえて行われていることに気付かせることを目指している。
1学習指導要領の内容 「司法」について,
学習指導要領(社会科[公民的分野]
)では,
大項目「
(3)私たちと政治」の中項目「イ
民主政治と政治参加」に「法に基づく公正な裁判の保障があることについて理解させる」という記述が見ら
れる。このことについて解説は,
「法に基づく公正な裁判によって国民の権利が守られ,社会の秩序が維持さ
れていること,そのため,司法権の独立と法による裁判が憲法で保障されていることについて理解させるこ
とを意味している。その際,抽象的な理解にならないように裁判官,検察官,弁護士などの具体的な働きを
通して理解させるなどの工夫が大切である」と述べ,裁判の基本的な役割を具体的に理解させることを求め
ている。実際の授業においては,
「調査や見学」などの活動(要領「内容の取扱い」
)の工夫をはじめ,様々
な学習指導の工夫が考えられる。
2教科書の記述
教科書における「司法」は,
「国の政治」という大項目に位置付けられ,国会,内閣,裁判所の順に記述さ
れているのが一般的である。司法が,三権分立の一権力機関として位置付けられるため,教科書の中には,
記述の大部分を,
「三権分立」と「司法権の独立」
「違憲立法審査権」に充てているものもある。基本的に,
このような構成を採用しながら,
「司法」のページの多くを,
「民事裁判と刑事裁判」
「裁判と人権保障」
「裁12
法教育における
「司法」の学習の必要性
「司法」
に関する
学習指導要領や教科書の記述086 判員制度」などの記述に充て,司法の目的や役割を理解させる工夫を行っているものも見られる。また,弁
護士会などによる模擬裁判の指導,さらには裁判の傍聴の方法が記述されているものなどもあり,体験的な
活動など様々な学習指導を想定したものとなっている。いずれも司法を生徒の身近なものにしていくための
工夫であり,このほかにも,裁判所,検察庁において,模擬裁判の指導や講演,さらには裁判の傍聴や体験
的な活動など様々な学習支援を行っていることから,これらも授業改善のために活用することができる。
3「司法」学習の内容とその理解 「司法」に関する学習では,紛争やルール違反が起こった場合,その内容に即して解決を図っていく過程を
教材化している。この教材では,裁判の当事者による主張等と裁判官による判断の過程が授業の中心となる。
生徒は,事例の中から法的な問題を発見し,個々の問題点に法を適用して,その内容に即して解決を考えて
いくことになる。これらの一連の学習によって,裁判制度の意義と機能を理解することができる。
司 法087 単元第2大項目 「(3)私たちと政治」
中項目
「イ 民主政治と政治参加」132単元の構成
単元の位置付け
単元の目標
第1時
「日常の紛争解決と民事裁判」
第2時
「民事裁判との比較で見る刑事裁判」
第3時
「裁判員として裁判に参加する」 「司法」の単元は,中学校社会科公民的分野で実施する。なお,発展的な部分につ
いては総合的な学習の時間においても実施が可能になるような工夫がなされている。
現在,多くの中学校では社会科公民的分野において司法学習に充てられる時間は,
3〜4時間程度と推察される。このような実態を踏まえ,
「司法」の学習を3時間の構成とし,司法に関する
基本的な知識と法的に考える力を養うことができるようにした。また,総合的な学習の時間において,司法
に関する学習を展開させることができるように,模擬裁判などの実践を取り入れることも可能なものとした。
1さまざまな紛争解決の方法と比較しながら裁判の仕組みについて関心を高める。
2具体的な紛争事例の中に,法的問題を発見し,紛争の原因や争点を分析・評価し
た上で,その内容に即した解決について考え判断させる。
3具体的な事例をもとに,法やルール違反への対処の在り方について考え判断させる。
4具体的な事例と関連付けながら,法に基づく公正な裁判の仕組みや機能について理解させる。088 4 単元の指導計画
❶「司法」の概要
ア 第1時
「日常の紛争解決と民事裁判」
第1時の授業では,
「日常の紛争解決と民事裁判」というテーマのもと,紛争解決の方法として,まずは当
事者同士による解決があること,次に,解決しないときのために公平な第三者による解決があり,その一つ
として裁判制度があることを学習する。その後,
民事裁判を想定し,
当初は当事者の立場に立って主張を行い,
最後は裁判官の立場に立って判断する。具体的には,交通事故を想定事例として取り上げ,それぞれの当事
者の立場から,どのような主張がなされるかを考えるとともに,当事者の主張を前提とした判決内容をワー
クシートに記入する。
実際の学習の流れは次のようになる。
1ワークシートに記された,
「友達同士のけんか」を読み,紛争の内容を読み取り,けんかの当事者の立場
に立って紛争解決を目指す。
2当事者間で解決できなかった場合,正当な手続のもとで公正な第三者が判断して紛争を解決する必要が
あることを理解し,裁判制度(民事)の意義を学ぶ。
3交通事故の事例を読み,紛争の内容を理解する。
4紛争の解決方法としての民事裁判の特徴と,この紛争に適用される法律(民法709条)を確認する。
5交通事故の被害者の立場に立ち,損害賠償を請求する主張内容を考える。
6交通事故の加害者の立場に立ち,被害者の損害賠償請求を減殺する主張内容を考える。
7裁判官の立場に立ち,判決内容を考える。
8民事裁判の過程と機能をまとめる。その際,裁判(民事)による紛争解決にも限界があることを学ぶ。
イ 第2時
「民事裁判との比較で見る刑事裁判」
第2時の授業では,
「民事裁判との比較で見る刑事裁判」というテーマのもと,民事裁判が私人間の私的紛
争を扱うのに対し,刑事裁判が,犯罪に対する処罰という公益的な事柄に関する裁判であり,民事裁判とは
異なることを認識させるとともに,公正な裁判の在り方について触れる。具体的には,傷害事件を想定事例
として取り上げ,事件発生から判決に至る過程において,裁判官,検察官,被告人,弁護人がどのような役
割を担うかをまとめるとともに,刑事裁判の特徴などを考え,ワークシートに記入する。
実際の学習の流れは次のようになる。
1「電車における傷害事件」を読み,前時に扱った民事事件の交通事故の事例との違いを挙げる。
2刑事裁判に関わる人々の役割に着目し,民事裁判と比較しながら刑事裁判の特徴に触れる。
3裁判官の立場で事実を明らかにするために必要な質問を考え,公正な裁判を行うために大切なことを考
える。
司 法089 4刑事裁判の過程と機能をまとめる。
5三審制の過程と意義をまとめる。
ウ 第3時
「裁判員として裁判に参加する」
第3時の授業では,
「裁判員として裁判に参加する」というテーマのもと,裁判員裁判が,刑事裁判の一種
であることを認識させるとともに,裁判員裁判で,裁判員として公正なものの見方・考え方のもとで,判断
することの大切さを考察する。具体的には,裁判員裁判の想定事例を取り上げ,事実認定を考え,裁判員裁
判における裁判員の役割をワークシートに記入する。
実際の学習の流れは次のようになる。
1裁判員の加わる裁判と加わらない裁判の写真などを比較し,裁判員裁判の目的を知る。
2裁判員裁判の事例を分類することで,裁判員裁判の特色をまとめる。
3裁判員の行う事実認定を考える。
4裁判員として裁判員裁判で気を付けることを考える。
❷ 発展的学習教材-学習の深化・発展を図る場の設定 「司法」については,総合的な学習の時間を念頭において,学習の深化・発展を図る場として,1刑事裁判
の傍聴と,2模擬裁判の実践をオプションとして組み込んでいる。いずれの学習においても,法律実務家か
ら指導を受けることにより授業の充実が図られると考えられる。とりわけ,模擬裁判では,シナリオ作りや
判決主文,判決理由のまとめに際して,法律実務家の指導・助言により生徒の関心を深めることができる。
ア 個別課題の設定を行う
3時間の小単元の授業後,これまでの学習内容に基づいて個別課題の設定を行う特設の時間を置く。
事前の準備として,小単元の学習に入る前に,
「司法制度について生徒が日ごろから疑問に思っていること
や知りたいと思っていること」をまとめさせておく。この内容を集計した一覧表を作成して,生徒の疑問や
学習への関心を共有する場を設ける。
この授業では,生徒の関心事項の中から論題を選択し,クラスで議論を行う。生徒はこの議論の内容を参
考にしながら自己の課題を再検討する。課題の研究については,夏休みなどの長期休業期間を活用し,生徒
の見学調査や校外機関(裁判所,検察庁,弁護士会など)の活用を促すなどの工夫が考えられる。生徒の研
究成果は,発表会を開く,ある程度の期間を設けて掲示するなど,この学習を位置付ける時期や学校行事等
との関連を考慮して決定する。
イ 法廷傍聴の実施 「司法」の学習後,法廷傍聴を実施する。その際には,傍聴のマナーを事前によく指導し,傍聴後は報告書
や感想文をまとめさせる。また,法廷傍聴ではなく,裁判官,検察官,弁護士などの法律実務家をゲストと
単元第2090
して学校に招き,授業への参加・協力を求めることも選択肢の一つである。その場合には,あらかじめ生徒
に事前質問をまとめさせておき,その内容に基づいて,ゲストの役割を事前に打ち合わせておくなどの準備
が必要である。
ウ 模擬裁判の実施 「司法」の学習を踏まえて,例えば,模擬裁判を実施する。もし,法廷傍聴を実施した後,模擬裁判を実施
することができれば,効果的である。
判決主文・判決理由などをまとめる際には,生徒の発達段階に配慮し,難解な専門用語にこだわりすぎな
いように指導する。必要に応じて,法律実務家の指導・助言を受ける場を設けることも視野に入れて学習を
進める。学習に際しては,課題や役割分担を明確にすること,関係者のプライバシーには十分留意すること,
スモール・ステップで学習を進められるような,授業の進み具合の調節や指導・助言を心がけることなどの
工夫が考えられる。発表については,文化祭・学校祭や学校公開授業などの活用が考えられる。
司 法091 単元の指導計画第3学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
司 法
第1時 日常の紛争解決と民事裁判導 入日常生活におけ
る紛争
普段の生活の中でけんかをすることはあるか。
くろまる生徒の身近にある紛争
(二人以上の者が利害を
めぐって対立している状態)
を挙げる。
ペアで春菜と秋穂になりきり,
話し合いによるけん
かの解決をしてみよう。
くろまる ワークシート
1のけんかの事例と二人の主張
を読み,
春菜と秋穂の紛争状況を理解し,
話し合
いのルールを決めて解決を図る。
それぞれのペアでどのような状況
(解決または未
解決)
になったか,
話し合いの内容とともに教えて
ほしい。
・事実を正確に伝えてい
る点や相手の話をよく
聞いている点などのよ
い点を価 値付けたり,
解決した
(または解決し
なかった)
ポイントが何
だったのかを明確にし
たりする。
・安易に裁判に任せれば
いいのではなく,
まずは
自分たちで解決しよう
とする姿勢をもたせた
い。
くろまる解決したペアだけではなく,
未解決のペアの話
もよく聞いて,
違いを理解する。
私たちの生活の中で様々な紛争があるが当事者
同士で話し合って解決しなかった時はどうしたら
よいか。
くろまる他人の意見も聞いて参考にしていく。
くろまる少し時間を空けてもう一度話し合ってみる。
くろまる裁判を起こして解決を試みる。
様々な方法が考えられるが,
紛争を放置することが
社会秩序の混乱につながりかねず,
国家による紛争
解決手段
(民事裁判)
が用意されている。
1時間092 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点展 開紛争の具体例と
しての交通事故
交通事故の事例から裁判についての理解を深め
よう。
・生徒に事故の状況を正
確にとらえさせるために,
事故の状況を図示した
ワークシート2を活
用する。
くろまる ワークシート2の交通事故の事例を読み,状況を把握する。
民事裁判による
解決
くろまる今回の事例では,
交通事故を起こしたYさんは,
Xさんに与えた損害を賠償するという民事責任,刑罰を受けるという刑事責任,
交通違反によ
る減点を受ける行政責任が生じる。
くろまるこの紛争は,
どうも話し合いでは解決せず,
民事
裁判になった。
民事裁判になると
「法に基づく
解決 」
なので,
この場合に使われる法律を説明
する。
・一つの交通事故で,
民事・刑事両方の裁判が行わ
れることを理解させる。
・実際には,
保険会社と
契約をしていれば,
まず
は保険会社が当事者間
に入って,
調整役となっ
てくれることを伝える。
くろまる ワークシート2の民法709条を読み,
1故意
(わざと)・過失
(うっかり)
により,
2誰かの権利
(生命・身体・財産 )
に損害を与えた場合には,その損害を賠償する責任があることを理解する。
XさんとXさんの弁護士,
YさんとYさんの弁護士
それぞれの立場で今回の出来事について主張でき
ることを整理しよう。
くろまる ワークシート
2の主張を,
どちらの主張として
使用できるか考え,
分類する。
・民事裁判では,
当事者双
方が自分の主張を裏付
ける証拠を集めること,
裁判官は当事者の主張
を聞き,
当事者が提出し
た証拠に基づいて判断
することに触れる。
・民事裁判は損害の賠償
(金銭の支払いなど)という形で紛争解決策を
示すことを理解させる。
友達と意見交換させ,より公正な判決を導き出
させる。
あなたが裁判官だったら,
Yさんに対して
「Xさん
にいくら支払え」
という判決を下すのか。
ワークシート2に金額とその理由を書いてみ
よう。
くろまる裁判官が公平な第三者として,
XさんとYさんの
主張を聞き,
この主張を総合的に考慮して,
法律
に当てはめ結論を出すことを理解する。
司 法093 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
単元の指導計画第3まとめ
民事裁判の過程
と機能
民事裁判は当事者では解決が困難な紛争に対
して,
第三者による法に基づく解決を図る役割
を果たしている。
訴えた人が原告となり,
訴えら
れた人が被告となって主張し合い,
判決以外にも
「示談 」
「和解 」
などの様々な解決方法がとられて
いる。
・判決以外にも
「示談 」
「和
解」
など様々な解決方
法がとられていることを
着目させる。
その際,経済的な側面以外に
「お互
いの気持ちにしこりが
残らない」
「早く結論が
出る」
などの視点を示
唆し,
紛争解決に必要な
方策を多面的・多角的に
考えさせる。
くろまる民事裁判の過程と機能を理解する。
判決以外に
示談や和解も
あるんだね
公正な判決を
導き出せたかな094 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
第2時 民事裁判との比較で見る刑事裁判導 入刑事事件の
具体例
ワークシート3の電車における傷害事件と前回
学習した交通事故の事例の違いを挙げよう。
くろまる
「加害者のYさんが逃げている」
「暴力をふるって
いる」
などの刑事事件になる要素を発表する。
くろまる今回は刑事事件に着目することを理解する。
・民事裁判と比較しなが
ら刑事裁判を学ぶ意識
付けをする。展 開刑事裁判に関わ
る人々の役割
ワークシート4の裁判に関わる立場と役割を写
真の人物と結び付ける。
・民事裁判では被害を受
けた当事者が訴えを起
こすが,
刑事裁判では検
察官が起訴するなど民
事裁判との違いに着目
させながら説明する。
くろまる裁判官...双方の言い分を聞き,
判決を下す。
くろまる検察官...犯罪を立証し,
刑の言渡しを求める。
くろまる被告人...自分が犯人として行ったと疑われてい
る行為について,
裁判を受ける。
くろまる弁護人...被告人の言い分を裁判官に伝え,
被告
人を弁護する。
あなたが裁判官だったら, ワークシート5の電
車における傷害事件の様子をはっきりさせるため
には,
XさんとYさんにどのような質問をしたらよ
いだろうか。
理由とともに考えてみよう。
・公平な第三者として審
判を下すために,
事実を
明らかにする過程を体
験させる。
・友達と意見交換する時は,質問内容だけではなく,質問の意図も伝え合
う。
また,
その中で事実
をより明らかにするため
に新たな質問を生み出
していく。
くろまるXさんに質問です。
「痛いよ,
気を付けて。」の注意
はどのような言い方でしたか。
くろまるXさんに質問です。
突き飛ばされたとき,
手には
何か持っていたのですか。
くろまるYさんに質問です。
どうして突き飛ばしたので
すか。
くろまるYさんに質問です。
どうして逃げたのですか。
司 法
1時間095 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
単元の指導計画第3展 開
公正な裁判を行うためにはどのようなことが大切
になってくるのだろうか。
ワークシート6
・司法権の独立について
も説明をする。
くろまるよく聞いたり,
調べたりして事実を明らかにする
ことや思い込みや疑わしいだけでは罰しないこ
とが大切だ。まとめ刑事裁判の過程
と機能
ワークシート6のしろまる×ばつクイズで刑事責任の特徴
を理解しよう。
・あらかじめルールを作り,どのような行為をす
れば,
どのような処罰を
受けるかを決めておくこ
とによって,
そのルール
に反しない行為につい
ては処罰を受けないこ
とや,
刑罰は人々の共存
を保障する法秩序を維
持するためのものである
ことも理解させる。
くろまるあらかじめルール
(この場合は刑法)
があるから
Yさんは処罰されるんだ。
くろまる今回の事例も民事責任だけではなく,
刑事責任
も負うんだ。
くろまる令状がなければ逮捕することはできないんだ。
くろまる刑罰は人々が安心して暮らせる社会を維持する
ためのものなんだ。
くろまる民事裁判は被害を受けた当事者が訴えを起こすが,刑事裁判では検察官が起訴するんだ。
三審制の過程と
意義
今回の交通事故の事例をもとに, 資料1の図で,三審制について説明する。
くろまる簡易裁判所や地方裁判所から始まり,
最高裁判
所で争われることもあるんだ。
くろまる人権を守り,
公正な裁判が行われるために三審
制がとられているんだ。
・各裁判所の役割にも触
れながら,
三審制の意義
を理解させる。096 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
第3時 裁判員として裁判に参加する導 入裁判員裁判の
目的
裁判員の加わる裁判と加わらない裁判の写真など
を比較し,
裁判員裁判での裁判員に関心をもつ。
・裁判の写真などを用意
する。
資料2
(参照)
・第1時と第2時での裁
判に関する学習を生か
した発言を促す。
・裁判員裁判のしくみの
要点を押さえる。
・教 科 書,
資 料 集,
法 務省,最 高 裁 判 所,
日 本
弁護士連合会のホーム
ページの関連資料を利
用する。
くろまる裁判官以外に,
裁判員がいる。
くろまる裁判員裁判では,
一般市民の感覚を裁判に反映
する目的がある。
くろまる誰もが裁判員になる可能性がある。
くろまる裁判員裁判は,
刑事裁判の一種である。
裁判員裁判の仕組みを理解する。
くろまる裁判員は,
「名簿の作成」
「候補者への通知・調査
票の送付」
「事件ごとに名簿の中からくじで選
定」
「選任手続き期日のお知らせ・質問票の送付」
「選任手続 」
「裁判員の選任 」
といった手続きで
選ばれる。
くろまる裁判員の役割は,
「審理 」
「評議」
「判決 」
を行うこ
とだ。
裁判員になったら,
裁判員裁判ではどのように判
断すればよいのだろうか?展 開裁判員裁判の
特色
裁判員裁判の事例を読み,
要点や気付きを整理する。 ・ 資料3に各事例の要
点や気付きを記入する
ように指示する。
くろまる従業員のいる建造物への放火,
殺人,
危険運転
による死亡事故,
営利目的による覚せい剤の密
輸入,
強盗致傷。
くろまる被告人と被害者がいる。
くろまるやってはいけない行為や不正を行っている。
くろまる周囲の人が傷付けられたり,
危険な目にあって,
損害を被っている。
くろまる被告人は孤立している。
司 法
1時間097 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
単元の指導計画第3展 開
裁判員裁判の事例から共通点や相違点を見付け
ることで,
裁判員裁判の特色を掴む。
・各事例から読み取った
ことから,
共通点や相違
点を考えて,
ワークシー
トに記入するように指
示する。
・最高裁判所の公表する
平成25年の裁判員裁判
対 象 事 件 数 は,1465
件であった。
対象となっ
た重大な犯罪は,
強盗
致傷,
殺人,
現住建造物
等放火,
傷害致死,
(準)
強制わいせつ致死傷,
(準)
強姦致死傷,
覚せ
い剤取締法違反の順に
多い。
くろまる裁判員裁判は,
刑事事件を取り扱っている。
くろまる裁判員裁判の事例は,
重大な犯罪が扱われて
いる。
裁判員裁判での
判断
「お金を作って,
使ったか」
を読み,
裁判員裁判の
事例を理解する。
資料4・「お金を作って,
使った
か」
を生徒を指名して読
ませる。・「お金を作って,
使った
か」
をもとに,
「不正と損
害は何か」
「不正と損害
の重大さ」
「不正と損害
を与えた人 」
「不正と損
害を被った人」
を確認す
る。
・社会に偽造通貨が出回
ると,
通貨の信用が損
なわれ,
その通貨を利
用した経済活動が停滞
してしまうおそれがある
ことを確認する。098 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点展 開裁判員裁判の事例をもとに,
使用する目的で通貨
を偽造したことの証拠となるかならないか,
偽造
通貨と知って使用したことの証拠となるか,
ならな
いかを考える。
くろまる ワークシート7「
『お金を作って,
使ったか』の証拠をもとに考えよう」に,個人で考えを記入す
る。
くろまる記入に当たり,
「使用する目的」
の証拠になるのか,「被告人が偽造した」
証拠になるのか,
「被告
人が偽札と知っていた」
ことの証拠になるのか,
「被告人が使用した」
ことの証拠になるのかを意
識させる。
・証 拠Aから証 拠Jが,
「本物のお札として使用
する目的で,
使われた偽
札を作ったか」
「偽札で
あると知っていて,
偽札
を使ったか」
のいずれに
ついて,
被告人にとって
不利あるいは有利な事
情になるのかを考える。
・人の話については,
その
話がどれだけ信用でき
るのか,
物の証拠につい
てはどれだけ関係があ
るのかを考えるよう支
援する。・「不正をただしたり,
損害
を回復するには何がで
きるか」
「不正をただしたり,損害を回復するため
の対応が適切か」
という
視点をもって,
「お金を
作って,
使ったか」
を考
えさせる。
くろまるグループで,
使用する目的で通貨を偽造したこ
との証拠となるかならないか,
偽造通貨と知っ
て使用したことの証拠となるか,
ならないかを話
し合う。
くろまるクラス全体で,
使用する目的で通貨を偽造し
たことの証拠となるかならないか,
偽造通貨と
知って使用したことの証拠となるか,
ならないか
をどのように考えたかを発表する。
くろまる裁判員裁判の事例の場合,
どのように判断し,
解決することが公正かを考える。
司 法099 学習内容 学習活動
(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指導上の留意点
単元の指導計画第3まとめ
裁判員の役割 なぜ,
事件と全く関係ないのに,
裁判員として裁判
に参加するのだろうか。
・様々な生徒の意見を尊
重する。
くろまる様々な経験や知識をもった市民が裁判に参加す
ることで,
様々な角度から証拠を検討すること
ができる。
くろまる市民が,
社会のできごとに関心をもつことは大切
だ。
裁判員になったら,
裁判員裁判ではどのようなこ
とに気を付けるべきだろうか。
・自分の考えをまとめる
よう指示する。
・生徒の多様な意見を尊
重する。
・裁判員として裁判員裁
判に参加する意味に着
目させるよう促す。
くろまる適切に事実を確認する必要がある。
くろまる証拠に基づき判断するようにする。
くろまる適切に量刑を考え,
判断する必要がある。
くろまる本当に間違いないかしっかり考える。
くろまる当事者の話をきちんと聞く。
くろまる公正なものの見方や考え方が大切だ。
くろまる裁判員になったら責任をもって裁判に参加する。
くろまる一人ひとりの人権を大切にする必要がある。
くろまる一人ひとりがよりよく生きるためにどうすればよ
いか考える。100 くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
友達同士のけんか
春菜 秋穂
四季中学校の寮では,
掃除,
洗濯,
炊事などの家事
は皆で協力してやることになっていましたが,
春菜は炊
事をさぼってばかりいて,
いつも春菜の食事まで作って,まじめに家事をやっている秋穂は怒っていました。
そんなある日のことでした。
春菜と秋穂は,
学校の遠
足に行くことになりました。
そこで,
当日,
秋穂は,
朝早く起きてお弁当を一生懸命作りました。
お弁当を寮の台所に置い
たまま,
遠足の準備をするために,
自分の部屋に行きました。
しばらくして台所に戻ってきたところ,なんと,
遠足に持っていくお弁当が,
台所の机の上から
無くなっていました。
春菜がそのお弁当を持っていってし
まったのです。
秋穂は,
急いで春菜を追いかけました。
秋穂は,
通学路
の途中でやっと春菜に追いつき,
春菜の腕をつかんで,
「私
のお弁当を返してよ!」と叫びました。
ところが,
春菜は,
「あれは私のお弁当でしょ
?いつも秋
穂は私の分も料理を作ってくれるじゃない。
どうして今日だ
け自分のお弁当なんて言い張るの?お弁当がなければ困るから返さない。」と言い返しました。
秋穂は,
「とにかくお弁当を返してよ。」と言いましたが,
春菜は,
返す素振りを全く見せない
ので,
ついに秋穂は春菜の持っていたカバンを力
ずくで奪い取りました。
春菜も負けじと秋穂からカバンを奪い返そう
としたので,
自分のお弁当をどうしても取り返し
たかった秋穂は,
思わず春菜を振り払ってしまい
ました。
すると,
春菜は転んでしまい,
手足をすりむい
てしまいました。
春菜,秋穂は四季中学校の3年生です。
春菜と秋穂は,四季中学校の寮で一緒に生
活していますが,最近けんかする機会が増
えてきました。101 くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
友達同士のけんか
春菜
お弁当を持っていったのはい
つものことだし,ケガをさせ
られたのだから秋穂のことは
許せない。
秋穂
どう考えても私のお弁当を勝手
に持っていくのがおかしいし,
それが原因でケガをしたんだか
ら悪いのは春菜でしょ。
1 二人の主張
2 話し合いのルール102 くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに紛争解決について考えてみよう36歳のXさんは,200
4年5月2
8日午後10時2
5分頃,Yさんの運転する自動車
にはねられて重傷を負った。
さっそく警察がこの事故に
ついて調べたところ,次の
ようなことがわかった。
Xさんには妻と子(中学生)がいたが,事故後,経済的にも苦しくなったた
め,Yさんに治療費などを請求することにした。一方,Yさんも生活に追われ
ているため,ぎりぎりの額まで支払額を抑える必要が生じた。
基本的な事実
事故現場はせまい県道で,見通しの悪いカーブだった。
現場の制限速度は時速3
0キロメートルであるが,Yさんの自動車
は時速6
0キロメートルで走行していた。
事故直前,対向車線から大型のダンプカーがセンターラインをは
み出しそうになってYさんが運転する車に向かってきていた。Y
さんは,そちらに目を奪われており,Xさんが道路を渡ろうとし
ていることに気付くのが遅れた。
事故現場には,横断歩道がなく,3
0メートル先の信号にしか,横
断歩道はなかった。
Xさんは,入院はしないで済んだが,3か月の通院治療を余儀な
くされた。また,治療費は月に2
0万円かかった。
Xさんは,月収3
0万円の仕事についていたが,けがで仕事ができ
ず給料をもらえなかった。
・ 1 ─
・ 2 ─
・ 3 ─
・ 4 ─
・ 5 ─
・ 6 ─
事故の状況
参考条文 (不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保障される利益を侵害し
た者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
Yさん Xさん103 歩道
歩道
くろまる交通規制
制限速度3
0km/h
はみ出し通行禁止
くろまる参考事項
衝突地点 〜横断歩道30m3m3m
くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに紛争解決について考えてみよう
XさんとXさんの弁護
士,YさんとYさんの
弁護士それぞれの立場
で今回の出来事につい
て主張できることを整
理しましょう。
事故の状況
Yさんの主張( A ・ C )Xさんの主張( B ・ D )A:対向車線から大型のダンプカーがセンターラインをはみ出しそうになって
車に向かってきた。
C:事故現場には横断歩道がなく,3
0メートル歩けば横断歩道があった。
B:せまく見通しの悪いカーブなのに制限速度の3
0キロメートルをオーバー
する6
0キロメートルで走行していた。
D:治療費が6
0万円かかり,さらに仕事ができず9
0万円分の給料がもらえな
かった。104 原告 被告
くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに紛争解決について考えてみよう
私が裁判官だったら,Yさんに対して
「Xさんに( )円払え」
という判決を下します。
理由は次の通りです。
あなたが裁判官だったら,Yさんに対して「X
さんにいくら支払え」という判決を下します
か。金額とその理由を書いてみましょう。
民事裁判は当事者では解決が困難な紛争に対し
て,第三者による( )に基づく解決を図る
役割を果たしています。訴えた人が( )
となり,訴えられた人が( )となって主
張し合い,判決以外にも「示談」「和解」などの
様々な解決方法がとられています。
民事裁判
訴えた人 訴えられた人105 治療費
200,000円
しろまるしろまる病院
くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに民事裁判と刑事裁判の特徴を考えてみよう
Xさん Yさん
Xさんは,電車でたまたま隣り
合ったYさんが,よろめいて足を
踏んだので,思わず,
「痛いよ,
気を付けて。」と注意しました。
すると,Yさんは,いきなり怒り
出して,
「生意気だ。」などと言
い,Xさんを両手で突き飛ばしま
した。そのため,Xさんは転倒し
て,頭を切るけがをしました。
Xさんは,Yさんを捕まえようとしまし
たが,Yさんは,次の停車駅で電車から
走って逃げてしまいました。
Xさんが,その後病院に行って診察して
もらったところ,頭を5針縫うけがで,
全治1か月と診断されました。Xさん
は,治療費として合計2
0万円を病院に払
いました。
電車における傷害事件
参考条文 刑法第204条 人の身体を傷害した者は,十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
に処する。106 くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに民事裁判と刑事裁判の特徴を考えてみよう
裁判所の法廷の写真を見ながら,それぞれの
立場の名前と役割を確認しましょう。
双方の言い分を
聞き,判決を下
す。
裁判官
犯罪を立証し,
刑の言渡しを求
める。
検察官
自分が犯人とし
て行ったと疑わ
れている行為に
ついて,裁判を
受ける。
被告人
被告人の言い分
を 裁 判 官 に 伝
え,被告人を弁
護する。
弁護人
被告人が有罪か
どうか,有罪の
場合はどのよう
な刑にするかを
裁判官と一緒に
決める。
裁判員
法務省と内閣官房による模擬撮影107 Y
さんに対する質問とその理由
くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに民事裁判と刑事裁判の特徴を考えてみよう
あなたが裁判官だったら,電車における傷害事件の様子を
はっきりさせるためには,XさんとYさんにどのような質問
をしたらよいでしょうか。理由とともに考えてみましょう。Xさんに対する質問とその理由108 くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
事例をもとに民事裁判と刑事裁判の特徴を考えてみよう
公正な裁判を行うためには
どのようなことが大切に
なってくるでしょうか。
Yさんの行為を処罰するためのルールがなければ,Yさんは
処罰されない。
Yさんが逮捕されたとき,罪を償うためにXさんに治療費を
払うだけでよい。
Xさんが3日後に街中でYさんを見かけた場合,Xさんが捕
まえて逮捕することができる。
民事裁判は被害を受けた当事者が訴えを起こすが,刑事
裁判では検察官が被疑者を被告人として裁判所に訴える
(起訴)。刑罰は個人の被害の救済だけでなく,人々が安心して暮らせ
る社会を維持するためのものでもある。
・( ) ─・( ) ─・( ) ─・( ) ─・( ) ─刑事裁判109 高等裁判所の裁判に対してされた不服申立て
(上告等)
を取り扱う最上級,
最終の裁判所です。
三審制
裁判所には,最高裁判所,高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所の5種類があり,
役割分担がされています。
事件の内容によって,簡易裁判所か地方裁判所あるいは家庭裁判所で最初の裁判(第一審)が行
われます。その裁判に納得がいかないときは,上級の裁判所に不服を申し立てることができます
(第二審)
。その裁判に憲法の違反があるときなどには,さらに上級の裁判所に不服を申し立てるこ
とができます(第三審)
。 最高裁判所は,終審の裁判所ですから,その裁判は最終のものとなり
ます。裁判所の種類
大法廷(1)(15人の合議制)
小法廷(3)(各5人の合議制)
最高裁判所
東京
((注記)知的財産),大阪,
名古屋
(金沢),広島
(岡山・松江),福岡(宮崎・那覇),仙台
(秋田),札幌,
高松
地方裁判所,
家庭裁判所,
簡易裁判
所の裁判に対してされた不服申立て(控訴等)
を取り扱います。
(注記)知的財産高等裁判所は,
東京高等裁判所の特
別の支部として設けられています。
高等裁判所
(3人の合議制)
本庁8
(支部6)
都 道 府 県 庁 の
ある4
7か所の
ほか函館,
旭川,
釧路の3
か所
民事事件,刑事 事 件 の 第
一 審 を 簡 易
裁 判 所 と 分
担して取り扱
います。
地方裁判所
(1人制または
3人の合議制)
(注記)裁判員裁判では,
原則裁判官3人,
裁判員6人の合議制
本庁50支部203
都 道 府 県 庁 の
ある4
7か所の
ほか函館,
旭川,
釧路の3
か所
家事事件,少年事件,
人事
訴 訟 事 件 な
どを取り扱い
ます。
家庭裁判所
(1人制または
3人の合議制)
本庁50支部203
出張所77争いとなっている金額が比較的少額の民事事件と比較的
軽い罪の刑事事件のほか,
民事調停も取り扱います。
簡易裁判所
(1人制)438上告 上告 上告
上告 人事訴訟
そしょう刑事 家事・少年
抗告
こうこく
控訴
こう そ
控訴
こう そ
控訴
こう そ
控訴
こう そ
民事
特別抗告・再抗告
こうこく こうこく
くろまる司法 資料 1
こう そ
裁判所ホームページ
「裁判所ナビ」
参照110 くろまる司法 資料 2
裁判官のみの場合
裁判員が加わった場合
傍聴人
被告人
証人
裁判長 裁判官
(左陪席)
裁判官
(右陪席)
弁護人
検察官
裁判所事務官
裁判所書記官
裁判所書記官
裁判所速記官
裁判員
弁護人
検察官
裁判員
裁判長
裁判官
被告人
傍聴席
法務省と内閣官房による模擬撮影111 被告人は,仕事に就くことができず収入がないことなどから,預金が減っていくことに不安になり,路上生
活になると思い込むようになりました。母にかわいそうな思いをさせるくらいなら,いっそ殺害した方がよ
いと思い,殺意をもって母を死亡させました。
被告人は,重い病気にかかって,家族にも感染させているなどと思い悩むようになり,自殺しようと考えま
した。妻を一人残すと辛い思いをさせると考え,妻と無理心中することを決意し,死亡させました。
被告人は,酒気を帯びた状態で,普通乗用自動車を運転しました。信号機のある交差点で,信号が赤色にも
かかわらず,わざと無視しました。時速140キロメートルの速度で交差点に進入し,左方道路から信号に
従った被害者の普通乗用自動車に衝突させました。被害者を出血死させて,被害者の同乗者に6か月間の治
療を要する傷害を負わせました。
被告人は,共犯者らとともに,営利の目的で,フランスの空港で航空機に搭乗する際,覚せい剤約1895.73グラムが混入された水溶液入り瓶3本を隠したスーツケースを,手荷物として預けて積み込ませました。日
本の空港でこのスーツケースを航空機から運び出させて輸入し,その事実を申告せずに検査場を通過しよう
としました。
さい銭箱から現金を盗もうとした被告人は,見回り中の被害者に声をかけられて逃走する際,逮捕を免れる
ため,被害者に暴行を加えて全治約3か月間を要する傷害を負わせました。
被告人は,妻と離婚した後,自分が誰にも必要とされていない人間だと思い込むようになりました。自殺を
したり,犯罪を犯して刑務所に収容されたりすれば,思い悩む日々から抜け出すことができると考え,勤務
先の倉庫に放火することを決意しました。従業員3名がいる建造物に,段ボール板にライターで火を放ち,
建造物を焼損しました。
被告人は,体の麻痺のため寝たきりの状態であった妻に対して,献身的な介護を行っていました。準備した
食事を妻が嫌がったことなどに腹を立てて,妻に対して暴行を加え,傷害を負わせ,その傷害により死亡さ
せました。
裁判員裁判の事例
くろまる司法 資料 3
現住建造物等放火被告事件
殺人被告事件
殺人被告事件
道路交通法違反,危険運転致死傷被告事件
覚せい剤取締法違反,関税法違反
強盗致傷被告事件
傷害致死被告事件
共通点 相違点112 お金を作って,
使ったか
くろまる司法 資料 4
事件の概要
証拠
(事実)
被 告 人 は , 使 用 す る 目 的 で , イ ン ク
ジェットプリンター複合機を用いて,真
正な金額1万円の日本銀行券を白紙に複
写して裁断する方法で,通用する金額1
万円の日本銀行券を偽造し,さらに,商
品購入代金の支払として,偽造した金額
1万円の日本銀行券を真正なもののよう
に装って,お店で手渡して使用したとし
て起訴されています。被告人は,偽札を
作ったことはあるが本物のお金として使
う目的はなかった,また,その偽札を
使ったことはないと言って,無罪を主張
しています。
A:被告人の財布の中から,お店で使われた偽札と記番号が同一の本物の1万
円札が発見されました。
C:偽札は,一見すると本物ととてもよく似ています。ただ,よく観察する
と,本物とは色が少し違っていて,本物と並べて見ると,偽物かもしれな
いと疑うことができるような外観でした。
B:被告人の部屋には,インクジェットプリンター複合機,カッターマットな
どの道具がありました。
D:偽札は,
1枚の紙の表裏に1万円札の表面と裏面がずれないようにコピー
して,裁断する方法で作られています。
E:被告人の友人は,
「被告人は,最近,
『この前興味本位で試しに偽札を作っ
たが,意外とうまく作れるもんだね』
と私に話しました」と証言してい
ます。10000円113 ・ 1項 行使の目的で,通用する貨幣,紙幣又は銀行券を偽造し,又は変造
した者は,無期又は三年以上の懲役に処する。
(注記)行使の目的(お金として使う目的など)がなければ,処罰されない。
・ 2項 偽造又は変造の貨幣,紙幣又は銀行券を行使し,又は行使の目的で
人に交付し,若しくは輸入した者も,前項と同様とする。
(注記)偽札だと知らずに使った場合は,処罰されない。
お金を作って,使ったか
くろまる司法 資料 4
G:偽札がそのお店で使用された同じ日に,被告人は,ポイントカードを同じ
お店で使用しています。
F:お店で使用された偽札に付着した指紋を鑑定した証人は,この指紋は被告
人のものだと言っています。
H:偽札がそのお店で使用された時刻の1分前に,被告人は,友人に,
「今自
宅でくつろいでいる」という内容のメールを送っています。
J:犯人は,四つ折りに畳んだ1万円札の上に,本物の千円札を重ねて店員に
差し出しています。
I:防犯カメラの映像に映った犯人と被告人の衣服は,被告人の部屋の捜索で
発見されたものとよく似ています。
刑法第148条114
くろまる司法 ワークシート3年
( )組( )
番 氏名
「お金を作って,使ったか」
の証拠をもとに考えよう( )被告人に不利な事情
そうだったと思わせる事情( )( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
被告人に有利な事情
そうではなかったと思わせる事情
問題となっている
事実本物のお札として使う目的で,お店で使われた偽札を作ったか偽札であると知っていて,偽札を使ったか10000円115

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