平成25年度法教育懸賞論文コンクールの審査結果について
(座長談話)
1 はじめに
法教育推進協議会では,本年度で4回目となる法教育懸賞論文コンクー
ルを,日本司法支援センター(法テラス),公益社団法人商事法務研究会と
共催(日本弁護士連合会,日本司法書士会連合会後援)で実施した。本年度
の募集論文のテーマは,「私とみんなの法教育」とし,法教育の授業例と当
該授業を受けた児童・生徒の感想や発達の様子を踏まえた論文を募集した。
応募があった論文については,まず,法教育推進協議会の法教育普及検
討部会において審査を行い,同部会における審査結果を踏まえ,法教育推進
協議会の決議により受賞作を決定した。
その結果,日本司法支援センター賞,公益社団法人商事法務研究会賞各
1通及び奨励賞1通を受賞作として選出した。
2 全体講評
審査に当たっては,論文が法教育についての理解を前提とした論述内容
となっているかどうか,法教育の授業を実践しての感想や苦労した点及び
法教育授業の在り方についての考察・意見が記載されているか,児童・生徒
の感想・発達の様子を踏まえ,これからの法教育授業の在り方等についての
考察がされているかといった点に留意した。
応募のあった作品全体を通じ,具体的な授業実践例がわかりやすく記載
され,今後の法教育授業の在り方等についての考察・意見が具体的に論じら
れており,
今後の法教育授業の参考になるものが多く見られたところである。
3 各賞論文講評
(1) 日本司法支援センター賞
受賞者 河村新吾氏(広島市立 基
もと町まち
高等学校教諭)
(講評)
高等学校公民科の学習として「雇用と労働問題」をテーマに,丁寧に法
教育の実践が展開されたことがよくわかる論文である。生徒が,司会進行
役を担当し,弁護士が助言し,生徒同士で活発に討議するという望ましい
実践例であり,論文の構成や主張もわかりやすく適切で,優れた内容であ
る。雇用と労働問題をテーマとしたもので,日本司法支援センター賞にふ
さわしい内容であった。
(2) 公益社団法人商事法務研究会賞
受賞者 藤井健太郎氏(大垣市立 上石津
か み い し づ
中学校教諭)
(講評)
中学校公民的分野での実践事例であり,学校給食など生徒に身近な題材を
基に立法過程を学ばせるなど工夫している点が認められた。実践しやすい取
組みがわかりやすく紹介されている点で意義があり,優れた論文である。立
法過程に焦点をあてた授業の一つのモデルになり得る論文であり,学校教育
における法教育普及という観点から学校に対する支援を行っている社団法人
商事法務研究会の名を冠した賞にふさわしい内容であった。なお,仮想法案
として対象とされた「家庭学習改善法案」は,個人の自由に対する統制等,
慎重な取扱いを要する部分を含むが,プライバシーの侵害に関する意見を明
示するなどの配慮がされていた。
(3) 奨励賞
受賞者 藤井剛氏(千葉県立千葉工業高等学校教諭)
(講評)
法教育で目指すべき授業の在り方について,具体的な実践に基づき,
法教育授業の成果と課題がわかりやすく,バランスよく盛り込まれた優
れた論文である。なお,一部応募者が推察されるおそれのある個人情報
の記載があるが,欠格とするほどの記載ではないと判断した。
4 終わりに
受賞作は,いずれも法教育の充実・発展にとって重要な提言を含むもの
であり,今後の法教育推進協議会の議論においても参考にさせていただき
たいと考えている。
なお,論文コンクールは,本年度をもってその役目を終えることとなっ
た。これまでに応募された論文を通じて,学校教育における法教育が着実
に広まりつつあることを確信するとともに,今後も,更なる法教育の充実
・発展の必要性を強く感じたところである。

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