保護者のための
ハンドブック
保護者のための
ハンドブック
〜より良い親子関係を築くために〜
法務省保護局
目 次
くろまるはじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 1
❶親子のコミュニケーションの課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 2
❷子ども
を理解するためのコツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 3 1)子どもの欲求と反応の理解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2)関係を切れさせてしま
う対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 7 3)適切な話合いの進め方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 8❸4コマでの事例 1)携帯にこだわる子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 10 2)プチ家出の子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 3)昔の仲間に悩む子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 14 4)仕事
(学校)
を休んだ子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
❹親
お や業ぎょう
訓練とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 18
くろまる子ども
・若者支援に関わる諸機関等・・・・・・・・・・ 21 1くろまるはじめに
保護者の方々にとって、我が子が非行などの問題行動をして警察に
補導されたり、少年鑑別所や少年院に行くことが決まったときの衝撃
はさぞ大きいことと思います。普通に育てたつもりなのに、何がいけ
なかったのだろう?どうして、子どもと気持ちが通じないのだろう?
子どもからは「親のせいだ」と責められ、周囲からも「親の育て方が
悪い」と非難されることもあるでしょう。なぜ、自分の家族ばかりが
こんな思いをするのだろうか。悩んでも、誰に相談していいのか分か
らない方もおられると思います。そして、社会に戻ってきた我が子と
向き合うとき、二度と非行をさせないために、余計に肩に力が入って
しまうことがあるかもしれません。
このハンドブックは、こうした非行をした子どもの親として悩み、
苦しんでおられる保護者の方々に対し、子どもとのコミュニケーショ
ンを図る方法などをお示しするものです。
実は、最初のボタンの掛け違えは、日常のちょっとした会話などに
よって起こっています。そこに気付くことができれば、お互いの本当
の気持ちを伝えることができるかもしれません。このハンドブックで
は、子どもとの日常の会話によるコミュニケーションにはパターンが
あることに気付くことから始まり、子どもを理解するためのコツや、
適切な会話の続け方へと展開します。実際の会話例は、4コマ漫画で
解説を入れていますので参考にしてください。また、
「親
お や業ぎょう
訓練」の
研修会の紹介や地域での支援組織の紹介をしています。ひとりで悩ま
ないで、地域の力も借りて子どもたちの立ち直りに取り組んでみませ
んか。 2❶親子のコミュニケーションの課題
いっしょに生活しているのになんとなく家の中が重苦しい雰囲気で、
家庭内で会話が切れてしまうことってありますね。話そうと思って何
かするとかえって雰囲気が悪くなる。なぜでしょうか?まず、会話が
切れてしまう時に何が起こっているかについて理解していきましょう。
(両者が話しかけない場合)���������������������������������������������������������������� まず、お互いに話しかけにくい場合があります。接したくない場合
もありますが、本当は話したいのに遠慮してきっかけがつかめないこ
ともあります。親も子も接触したくないけれどいっしょに生活しなく
てはいけない場合は、上手に「住み分け」をしてぶつからないように
してみましょう。また、必要なコミュニケーションはメモやメールを
使って間接的にしてみてください。向き合いたい気持ちがある場合は、
普通に挨拶することから始めてみましょう。
「ドアを開ける」ことが
大切だからです。
(片方が話しかけるが、相手が応えない場合)������������������������������ 話しかけても反応がないと次に話しかけるのをためらいがちになり
ますね。こういう場合は、話しかけたタイミングが悪く、相手にまだ
準備ができていなかったのではないでしょうか。つまり、相手にとっ
ては「突然、自分のテリトリーに侵入された」状態です。驚き、不安
になり、防衛的になります。日常生活で必要な内容を伝える場合でも、
相手が準備していないと「攻撃」になってしまいますから、相手が暇
そうにしていても、まずは、
「伝えることがあるけど、今5分くらい
時間ある?」とか「手伝ってもらいたいことがあるんだけど、何時頃 3ならいい?」と相手が選択できるように声掛けをしてみてください。
大切にされていると感じてもらえます。
もう一つは、相手に準備はできているけれど「どうやって答えたら
よいのかが分からない」状態です。面と向かって話すのが苦手だった
り、
自分で答えを出すのが苦手な場合に起こります。このタイプは「学
校どうなの?」や「最近どう?」など漠然とした質問をされると、ど
う答えたらよいのかが分からないので、黙り込んでしまいます。こん
な時は、相手が答えやすいように選択肢を出すという方法があります。
「今日のご飯、お魚とお肉とどっちがいい?」とか「最近、気に入っ
てるコンビニの弁当とかあるの?」という具合です。触れても安全な
話題で具体的なことから始めてみましょう。相手が黙っていたら「私、
この間こんなの見たのよ。
」と自分から情報を出して行くのもドアを
開けることになります。
❷子どもを理解するためのコツ
会話をやりとりするには、まず、自分の気持ちが分かっている必要
があります。自分が何を伝えたいのかが分からない上にどう伝えてよ
いか分からないと、相手に「なんで分からないんだ」と自分の気持ち
を押し付けたり、説明不足で正しく伝わらなくなるためです。
最初は、
関係を開くことから始めます。
この時大切なのは、
相手の準
備状況を見ることです。子どもが黙りこんだり、何をしているかが見
えないと親は不安になりますが、相手の準備や許可がない状態で踏み
込めば、相手を傷つけるのみならずシャットアウトされてしまうから
です。
まず、
自分
(親側)
が開いていることを言葉掛けや態度などで伝
えましょう。
「おはよう」
「おかえり」
といった日常の言葉掛けを普通に 4行うことがこれに当たります。また、玄関に子どもの靴置き場がある、
リビングに座れる場所がある、などが見える形になっていると子ども
が緊張せずに入ってくることができるようになります。一方、下駄箱
は親の靴でいっぱいだったり、子ども用のコップが使えるところにな
かったりすると「ああ、自分は居ないと思われているんだ」ととらえ
てしまいます。
会話は始まったけれど、かみ合わない時は、子どもが話しているメッ
セージを理解できていないことが考えられます。子どもは本当のメッ
セージをストレートには出しません。出しても安全か、正しく理解し
てくれそうかを試してから本音を語り出します。子どもがどんな欲求
をどのように表現しているかをまず理解してください。
1)子どもの欲求と反応の理解(次ページの図を参照)������������������������ 子どもの欲求は大きく5つあります。もっとも基本的なものが生理
的欲求といって、食事、睡眠、性的欲求など生きるために必要な内容
です。これが満たされると、次に「安心」を求めます。安心できる相
手や場所、物など自分がコントロールできる状態に環境を整えておき
たいと考えます。これは親も子も同様です。これを安心欲求と呼びま
す。安心欲求がプラスに働いていると、お互いが居心地がよいように
テリトリーを守ったり、予定の見通しを伝え合うので相手の動きが見
えて、タイミングを合わせやすくなります。一方、マイナスに働いて
いると相手が見えないので自分のコントロールが効く状態にしようと
してしまいます。会話が切れている状態では、自分にとっては予定の
行動でも相手に伝わっていないので、
相手にとっては突然のスケジュー
ル変更だったり侵入と受けとられることもあります。安心欲求を満た
すために、暴力をふるったりひきこもるということもあります。 5道徳・規制
欲 求
ストレス
ストレス
図 子どもの欲求と反応の理解 6 3番目が所属欲求です。相手と安心できる関係が築けるようになれ
ばそこに居場所を求めます。プチ家出を繰り返す子どもは家の方が外
よりも安全だということは分かっているのですが、家の中に居場所を
見つけられていないようです。居続けたいと思うようになるためには、
安心できる場所になった上でお互い守れるルール作りを始めます。自
分が自由にしてよい空間や時間と家族に合わせる空間や時間を分けま
す。食事、
掃除、
外出、
金銭の使い方などは基本的な約束事ですが、
ルー
ル作りでトラブルになるのは、親側が決めたことを一方的に押しつけ
られることが多いためのようです。お互いの言い分を聞いた上で納得
のゆく解決方法を見つける必要があります。4番目は、承認欲求です。
居場所がみつかれば、そこでの役割をはたして集団の一員として認め
られる経験が大切になります。他の人が「できて当たり前」のことを
行うのに子どもたちは「相当な努力」を要します。食事の時間に合わ
せて部屋から出てきた、という一見ささいな行動の影には、
「食事は
6時だ」と記憶しておく、
「やっていることがあっても、
途中でやめる」
あるいは「6時前には終わらせる」という自分の欲求の調整が行われ
ます。自己中心的に生理的欲求のままに生活していた子どもたちが少
年鑑別所や少年院の中で規則正しい生活ができるのは、
「枠」や「強
制力」があるからですが、それ以上に「教官に認めてもらえる」とい
う承認欲求が満たされるからなのです。子どもたちが家で食事の時間
に部屋から出てきたのは、
「家族の時間に合わせよう」という子ども
たちの意志が実現された瞬間なのです。その大切さを理解してくださ
い。
家族の中で承認されるようになると「自分らしさ」を実現したいと
いう自己実現欲求の段階になります。
「男らしさ」、「女らしさ」
、どん
な仕事につきたいのか、などを考え始めます。この段階は、親が子ど 7もの気持ちを受け止めたり、子どもの良さを認めていくことが大切に
なります。青年期になると容姿や性格等が親に似てきます。この段階
で親子関係が切れたままだと、嫌悪している親を否定することで、親
に似ている自分自身をも否定することになってしまいます。
2)関係を切れさせてしまう対応���������������������������������������������������
では、どんな言い方をすると関係が切れやすくなるのでしょうか。
日常生活を振り返ってみましょう。よく見られるのが次の5つの言い
方です。共通しているのは、子どもたちは、表現された言葉をそのま
まとらえるということです。
1自分の感情で相手を非難する 「何時だと思ってるの!」娘が帰宅するなり怒鳴りつけてしまったり、
「何でこんなこともできないんだ」と自分の期待に応えてくれない相
手を責めてしまうことありませんか。本当は、心配していたり、がん
ばってほしいのに、子どもは、親からできていない部分ばかりを見ら
れているように感じてしまうので、劣等感を覚えて近寄らなくなりま
す。
2ものごとを否定的に関連付ける 「こんなことだから、また失敗したんだよ」と過去の失敗を持ち出
されたり、
「今日もさぼるんでしょ」と否定的な予測をされると、
「ど
うせ、できないと思われてるんだろう」と自己否定的になったり、親
への拒絶感が高まります。できない自分をごまかすために、うそや反
抗も増えてしまいます。 83本当の気持ちと反対のことを言う 「勝手にしなさい」
「もう、知らない」
。本当は何とかしてあげたい
のに、ついこんなふうに言ってしまいますね。言われた言葉をそのま
ま受け取る子どもは「見捨てられた」と感じてしまいます。
4説教
親としては、ぼやかしたりオブラートに包んで話すほうがいいかと
思っても、一般化した話を子どもが理解するのは難しいようです。自
分には関係ないと思ってうるさがられるだけでなく、説教は上から目
線になりがちなので拒絶反応を呼んでしまいます。
5命令・脅迫 「さっさと風呂に入ったら?」
「ちゃんと夜寝ないんだったら、ネッ
ト解約するよ」
。親としては軽い指示や提案のつもりでも、被害的に
とらえる子どもの場合は、命令や脅迫と受け止めます。
「今やろうと
してたのに」
「信じてもらえないんなら、もうやめた」と自立心をそ
いでしまうこともあります。
3)適切な話合いの進め方����������������������������������������������������������������
では、どのように話をすると気持ちが通じ合うのでしょうか。二つ
の段階に分けてお伝えします。第一段階は、
「ドアを開ける」です。
安心して話せる場所をつくり、
相手が話す準備があるかを確かめましょ
う。日常的な挨拶は安心して話せる場所づくりに欠かせませんが、ト
ラブル場面でも「おかえり」や「ご飯食べる?」といった普通の会話
が子どもの警戒心を低めます。お互いに落ち着いたら、
「今、
話せる?」
と話す意志があるかを確かめてください。OKがでたら、第二段階で 9す。ここでは、次のように進めましょう。
ステップ1 気持ちを受けとめる
ステップ2 何を伝えたいかを明確にする(自分・相手)
ステップ3 具体的な解決方法を話し合う
ステップ4 会話が違う方向に行きそうなときは、戻す
相手からどんな気持ちがぶつけられても、まず最初に「そうなんだ」
「そんな風に感じてたんだね」と受け止めることが大切です。子どもは、
「聞いてもらえた」と安心し、興奮や不安が減ります。落ち着いたら
ステップ2に進みます。話の内容が分かりにくい場合は、
「こういう
ことが言いたいのかな」と子どもの欲求を明確にします。親が伝えた
いことがある場合は、
「私メッセージ」を使ってみましょう。
「お母さ
んが伝えたいのは、こういうことなんだ」
「こんなことがお父さんは
気になっているんだ」という具合です。これは、話し合う話題を明確
にするために大切です。何について話し合えばいいのかが分かったら、
ステップ3の具体的な解決方法の話合いに進みます。
もし、途中で子どもが別の話題を出してきても、
「今は、この話を
したいので、まずこれを終わらせよう」と話を戻すようにしてくださ
い。
次のページ以降で、4コマ漫画による具体的な例を紹介してい
ます。左側のページが会話が切れてしまうよくない例です。なぜ
切れるのか解説を見てください。右側のページの2つの例は、上
記のステップを使った会話の例ですので、比較してみてください。 10携帯にこだわる子 マイナスの例
何で勝手に
契約を
切るんだよ!!お前が利用上限を
超えたからだ!く
そ親父〜!!ちょ、ちょっと!
スマホがねえ
と、
連絡とれなくて困るだろ?ええ?もう〜さっさと出せば
いいんだよ!お父さんに、
怒られる〜
相手が感情的になっている場
合、親側が冷静にルールを伝え
たつもりでも、子どもは「否定
された」と、とらえがちです。
こういう時は、まず気持ちを受
け止めます。
気持ちを受け止めてもらえな
かった上に、親との関係も悪化
したため不安から八つ当たりが
始まります。大抵は、巻き込め
そうな相手が見ている場所で暴
れますので、本人が自分でクー
ルダウンできるまでは親もその
場を離れて静観しましょう。
欲しいものを手に入れるため
に、泣き落としが始まります。
「今回だけ」という決まり文句
を言われると、信じたい気持ち
も出ますが、断る場合ははっき
りと態度で示します。
また、どのような事情があるか
をきちんと説明してもらい、
本来の問題を解決しましょう。
❸4コマでの事例 11
携帯にこだわる子 プラスの例 1 携帯にこだわる子 プラスの例 2
何で勝手に
契約を切るんだよ!まあ、
座れよ。
いろいろあんだよ。うるせえなあ!なんで上限を超えたか、
分かってたら、説明して

れ。
お母さんに事情を話すな
ら、
お父さんも、ちゃんと
考える。
何で勝手に
契約を
切るん
だよ!そう
だよ!!くそっ!連絡がとれなくて、 イライラ
してる
みたいね。
お母さんね、あなたとこう
して話したかったんだ。
最近、携帯
ばかり見て、
寂しかったな。
俺だっ
て、上限は
分かっ
てんだよ。だから、
なるべく
金がかからないように
してんのにさ。
分かってんな
ら、早く
元に戻せよ!子どもが話しやすいように、安心できるお母さ
んを相談役にしました。
(第一段階 ドアを開け
る。)子どもの気持ちを受け止めています。
(第二段階
ステップ 1)お母さんが伝えたいことを明確に
しています。
(第二段階 ステップ2) 12プチ家出の子 マイナスの例
も〜、掃除
しないん
だから!何?
この
高そう
な鞄?
ああっ!しま
った!!
何してんのちょ、ちょっ
と、
待って!勝手に、
入んないで !!
出かける前に、
少しは
片付けて ..
せっかく安心して部屋の鍵を開
けていたのに、無防備な状態で
侵入されると、誰でも防衛的に
なり、攻撃が始まります。
こうなると、親への不信感は募
り、せっかく開いていたドアの
鍵がまた、閉まってしまうで
しょう。
子どもを怒らせてしまうと、親
としては、言い訳をしたくなり
ます。お互いに感情的になって
いるので、攻め合いになってし
まいます。
子どもの行動が見えなくなって
くると、持ち物などで確かめた
くなりますが、相手のテリト
リーに無断で入り込むのはご
法度です。鍵が開いているから
といって、勝手に入るのは止め
ましょう。
はっと 13プチ家出の子 プラスの例 1 プチ家出の子 プラスの例 2
...も
う、
こんな時間
しろまるしろまるちゃんへ、
部屋の掃除を
したいです。
いつなら一緒に
掃除できますか。
ごはん、
要らないのに。
...メモ?なんで、こんなに
高そう
なバッグが?
あの子?
おかえ
り。
ただいま。
お部屋の中、どれを
捨てていいか、
教えておいてね。
わかった
って!!
何か困ったこ
とが
あったら、
話してね。
そろそろ
潮時かな
...
冷静になって、自分の伝えたいことをメモにし
ました。
(第二段階 ステップ2)
日常的な挨拶をクッションにしてから、伝えた
いことを伝えています。
(第二段階 ステップ2) 14昔の仲間に悩む子 マイナスの例
たまには、
つき
あえよ
ぉ。
何か
持ってる?何で、こんなに
遅いんだ!?遊んでき
たのか!返事は!?
おい!あいつを
つかまえろ!ああ ...
せっかく
帰って
来たのに!な〜、俺らと 行こ
うぜ!
地元の不良少年たちとの関係
は、再非行防止の課題です。こ
ちらが断ち切りたいと思って
も、付きまとわれるので心配が
尽きません。
帰ってきた子どもに、自分の不
安をぶつけてしまうと相手は信
用されていないのか、とがっく
りしてしまいます。
外でエネルギーを使い果たして
いるので、不機嫌になるのも自
然です。
ストレス発散方法も少ないの
で、せっかく振り切った不良少
年に結局は捕まってしまうこと
になります。
表面上の態度だけを見て不安に
なると、無理に自分たちの側に
子どもがいることを確かめたく
なります。確認のつもりで言っ
た言葉が、疑いのメッセージと
して伝わることもありますから
注意してください。 15昔の仲間に悩む子 プラスの例 1 昔の仲間に悩む子 プラスの例 2
おう。
あ〜〜〜、
疲れた〜。
おかえ
り。
無事に帰って
良かった ...
お風呂?ごはん?
ん〜、
風呂〜 ...
先生どう
してるかな ...
まあ ...
ふつう。
学校は、
大丈夫か?
大変か?な、なんだこれ!?あいつらに、
せびられて
いるのか?
頼む!金、貸してくれ!
今、金を
持ってねえ
んだ。
大丈夫かな、
あいつ ...
難しいこ
とだね ...
保護司さんに相談
してみたら?日常的な言葉かけをして、子どもが安心して話
せる場所を作っています。
(第一段階 ドアを開
ける)
子どもを信頼して、具体的な解決策を話し合っ
ています。
(第二段階 ステップ3) 16仕事を休んだ子 マイナスの例
えっ、欠勤ですか?
今朝は、
普通に
出かけま
した
が ...
職場
帰ってきた
! あ〜、
疲れた〜
職場から電話が
あったよ!どう
いうこと!
すぐ説教かよ!関係
ねえだろ !!
子どもについて、
クレームやマイナス情報が入る
と、注意を受けているのは子ど
ものことなのに、自分の子育て
について非難されたように感じ
てしまいがちです。不安と恥ず
かしさから、ひたすら謝って電
話を素早く切ってしまいたくな
ります。
十分に情報を得ないまま、子ど
もが帰ってくるのを待っている
と不安が増大します。
そんなときに、悪びれずに帰っ
てくると、不安は一気に怒りに
変わってしまいますね。
仕事を休んだ子どもには何か事
情があったかもしれません。
一方的に責められてしまうと、
話し合うきっかけを逃してしま
います。
職場の人と、自分の思いがごっ
ちゃになっているので、子ども
に対して感情的に文句を言いが
ちです。
こうなると自分の気持ちを冷静
に伝えたいのに、攻撃的になっ
てしまいます。 17学校を休んだ子 プラスの例
ただいま
あの子、学校に
行かなかったよ!「おかえ
り」も
ないの ... いやいや、
お母さんも
心配なのね。
お母さん、帰ったよ。
ただいま!夕飯は、
鯖の味噌煮だよ。
7時に出て

てね。
は〜、私もお腹すいた〜。まず食べよ
う♪
気になることがあるな
ら、後で部屋においで。
とん
とん
具体的な解決策を話し合っています。
(第二段階
ステップ3)
安心して食事をした後で、話し合いの場を作っ
ています。
(第一段階 ドアを開ける。)仕事を休んだ子 プラスの例
えっ、欠勤ですか?
今朝は、
普通に
出かけま
した
が...
あの、職場の様子について、詳しくお話を
伺っても、よろしいですか?
その後、
保護司さんと相談したいと思います。
役割分担の
イメージ
本人の
事情を
聞き
ます
メールを
入れます
夕食を
作り
ます
何ができるか、一緒に
考えよう。
ええ、
どう
ぞ。
職場 18❹親
お や業ぎ ょ う
訓練とは 親お や業ぎょう
訓練は、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士(1918-
2002)によって始められた、コミュニケーションの訓練講座です。
「訓
練」という名のとおり、ただ座って授業を聞く形式ではなく、実際に
「聞く」体験をし、自分が声に出して「伝える」方法を練習する、実
践講座であることが大きな特徴です。 親お や業ぎょう
訓練では大きく3つの基本的な方法を学びます。I.「聞くこと」
。子どもの気持ちを聞き、自分自身で問題を解決でき
るように手助けをします。II.「話すこと」
。親の気持ちや考え方を率直に伝えるとき、子どもに
とって理解しやすい表現を学びます。III.「対立を解く」親と子の欲求が対立したとき、どちらも納得いく
解決策を見つけます。また、異なる価値観から生まれる行動が対立
したとき、いくつかの解決方法をとっていきます。これらの方法を
使うことでお互いに「分かりあえる関係」を築いていきます。
コミュニケーションで親子の「心のかけ橋」をかける�������������子「あーあ、朝起きるの辛いんだよね...」
母「朝起きるの辛いんだね。」(気持ちを受け止めます)
子「そうなんだ。起きなきゃとは思ってるんだけど。」母「
頭では分かっているけど、体がついてこないんだね。」(子どもが
伝えたいことを、分かりやすく説明します)
子「
そうなんだよ。明日は、少しでも楽に起きられるように、部屋を
暖かくしておこうかな。」(いっしょに、解決策を考えます)
親は子どもに伝えたいことがたくさんあります。しかし、それも親 19子の間に信頼関係があって、初めて相手に伝わるのです。まずは子ど
もの言うことに耳を傾け、心にふれることで、親子の間に心のかけ橋
が築かれると、親の気持ちも相手に届きやすくなってきます。コミュ
ニケーションをキャッチボールに例えるなら、親が一方的にボールを
投げていては、分かりあえる関係にはたどり着けません。まずは相手
の投げたボールをしっかりと受け止めた後に、投げ返すことで、相互
理解のやりとりができるようになるのです。そのための具体的な方法
を学んでいくのが、親
お や業ぎょう
訓練講座です。
講座はこんな風に行われます����������������������������������������������������������� 親お や業ぎょう
訓練講座は全国各地のインストラクターにより実施されてい
ます。親
お や業ぎょう
訓練一般講座では、各回3時間の講座を8回、計24時間
受講することを通して、
コミュニケーションの3つの基本的な方法「聞
く」
「話す」
「対立を解く」ことを学びます。
第1回:自分の心を見る(問題を分ける)
第2回・第3回:聞く方法(子どもの気持ちを能動的に聴く)
第4回・第5回:話す方法(私メッセージで伝える)
第6回・第7回・第8回:
対立を解く方法(お互いが傷つかな
い解決策を探す)
全8回の講座、各回の間に一週間程度の間隔を空け、日常生活での
実践を挟んで講座は進行します。学んだ方法を実際の生活の中で実践
し、毎回講座の開始時に、一週間をふり返ることから3時間のプログ
ラムが始まります。最初から上手くいかないことはもちろんあります。
インストラクターと共に、学びながら気づくことも大きいのです。講 20座の中では2人1組で各々が親と子どもの役を受け持ち、お互いの気
持ちを実感したり、グループディスカッションでより理解を深め、学
んだ方法を日常的に使えるようにしていきます。
手法を学び実践する中で、親として、さらには親という役割にとら
われない「自分自身のものの見方・考え方」
「自分が大切にしたい思い」
を改めて見つめる機会も、生じてくることでしょう。全8回の講座を
通じ、親の子どもに対する接し方や見方が変わり、
「親自身が楽になっ
た」という感想も多く寄せられています。
講座の情報は親
お や業ぎょう
訓練協会
(〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-3-14 8F)
03-6455-0321 までお問い合わせください。
(協会HP http://www.oyagyo.or.jp/ からもご覧いただけます。) 21
子ども・若者支援に関わる諸機関等
子ども・若者の支援等に関わる機関等は,相談内容や求める支援の分野,また,
お住まいの地域によっても様々です。子どものことで困ったときには,保護観
察官や保護司とよく相談し,必要なときには,次の一覧に掲げる地域の相談機
関等の力も借りて,子どもの立ち直りに取り組みましょう。
分 野 団 体
教育
教育委員会
教育センター
学校
(大学を含む。)福祉
福祉事務所
(家庭児童相談所を含む。)社会福祉施設
児童相談所
発達障害者支援センター
ひきこもり地域支援センター
保健,医療
精神保健福祉センター
保健所
市町村保健センター
病院・診療所
心理相談所
矯正,更生保護 等
保護観察所
少年鑑別所
少年サポートセンター
雇用
地域若者サポートステーション事業・合宿型自立支援プロ
グラムを運営しているNPO等の法人・団体
ハローワーク
職業訓練機関
ジョブカフェ
総合相談 等
子ども・若者総合相談センター
((注記))
子ども・若者の支援に携わるNPO等
この一覧は,子ども・若者支援地域協議会設置・運営方針
(平成22年2月23日内閣府政策統括官
(共生社会政策担当)
決定)
を参考とした。
(注記)
「少年補導センター」
「青少年センター」
等を含む。
平成28年6月
編 集 法務省保護局
執筆協力 早稲田大学教育学部 本田恵子教授
親業訓練協会

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