特別家事審判事件の手続に関する

改正試案の補足説明
平成22年8月
法務省民事局参事官室
( 1 )
はじめに
......................
1 任意後見契約に関する法律に規定する審判事件 2
..........................................................
(1) 管轄 2
..................................................
(2) 手続行為能力 2
......................................
(3) 精神状況に関する意見聴取 3
....................................................
(4) 陳述聴取等 3
..................................................
(5) 審判の告知等 4
......................................................
(6) 即時抗告 6
..................
ア 任意後見監督人の選任の申立てを却下する審判 6
..........................
イ 任意後見監督人の解任についての審判 6
..............................
ウ 任意後見人の解任についての審判 6
エ 任意後見監督人が選任された後の任意後見契約の解除についての許可に
................................................
ついての審判) 7
......................
(7) 任意後見監督人に対する指示及び事務の調査 7
..................................
ア 任意後見監督人に対する指示 7
................................
イ 任意後見監督人の事務の調査等 8
..............................................
(8) 審判前の保全処分 8
..........
ア 任意後見監督人の解任の審判事件を本案とする保全処分 8
............................................
(ア) 保全処分の内容 8
........................................
(イ) 職務代行者の改任等 9
........
イ 任意後見人の解任の審判事件を本案とする保全処分の内容 9
........................................
2 戸籍法に規定する審判事件 10
..........................................................
(1) 管轄 10
................................................
(2) 事件係属の通知 10
..................................................
(3) 手続行為能力 11
....................................................
(4) 陳述聴取等 11
........................................
ア 氏の変更の許可の審判 11
............................
イ 市町村長の処分に対する不服の審判 11
..................................................
(5) 審判の告知等 11
..................................................
ア 審判の告知 11
( 2 )
....................................
イ 市町村長に対する処分命令 11
......................................................
(6) 即時抗告 11..3 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に規定する審判事件 12
..........................................................
(1) 管轄 12
..................................................
(2) 手続行為能力 12
......................................................
(3) 即時抗告 12
............................
4 厚生年金保険法等に規定する審判事件 12
..........................................................
(1) 管轄 12
......................................................
(2) 陳述聴取 13
......................................................
(3) 即時抗告 13
....................................
5 児童福祉法に規定する審判事件 14
..........................................................
(1) 管轄 14
..................................................
(2) 手続行為能力 14
....................................................
(3) 陳述聴取等 14
....................................................
(4) 審判の告知 14
......................................................
(5) 即時抗告 15
..............................................
(6) 審判前の保全処分 15
..............................................
ア 保全処分の内容 15
....................................................
イ 陳述聴取 15
..................................
6 生活保護法に規定する審判事件 15
..........................................................
(1) 管轄 16
..................................................
(2) 手続行為能力 16
......................................................
(3) 陳述聴取 16
....................................................
(4) 審判の告知 16
......................................................
(5) 即時抗告 17
ア 被保護者を保護施設に入所させること等についての許可についての審判
..............................................................17
..............................
イ 費用負担額の確定についての審判 17
........
7 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する審判事件 17
..........................................................
(1) 管轄 17
( 3 )
......................................................
(2) 意見聴取 17
......................................................
(3) 即時抗告 17
..................................................
(4) 保護者の改任 18
........................................
8 破産法に規定する審判事件 18
..........................................................
(1) 管轄 18
........................................................
(2) 審理等 19
....................................................
(3) 申述の方式 19
......................................
(4) 申述の受理の審判の手続 20
....................................................
(5) 即時抗告 20..9 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する審判事件 20
..........................................................
(1) 管轄 20
....................................................
(2) 審判の告知 20
......................................................
(3) 即時抗告 21
- 1 -
「特別家事審判事件の手続に関する改正試案」の補足説明
はじめに
現在,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会においては,家事審判法の
見直しについての調査審議を進めており,このほど,非訟事件手続法及び家事審
判法の見直しに関する中間試案(以下「中間試案」という。
)を公表し,幅広く
意見を求めることになった。家事審判法が適用される事件には,民法により家庭
裁判所の権限に属するものと定められた事件以外に,民法以外の法律により家庭
裁判所の権限に属するものと定められた事件(特別家事審判規則第1条参照)も
あり,後者は通常,特別家事審判事件と呼ばれている。特別家事審判事件の手続
には,家事事件のための手続の通則的規律(中間試案においては,第2部の「第
1 総則」及び「第2 家事審判に関する手続(総則)
」の部分)が適用される
から,家事審判法が改正され,通則的規律が変更されると,それとともに特別家
事審判事件の手続について,通則的規律を前提とした特別家事審判事件の手続固
有の規律や通則的規律に対する特則を整備する必要が生ずる。
法務省においては,
このような観点から,現在関係省庁と協議しながら,その内容を検討していると
ころであるが,この度,
「特別家事審判事件の手続に関する改正試案」
(以下「改
正試案」という。
)をまとめたので,これを公表し,幅広く意見を求めることと
した。本資料は,改正試案の各項目について,その趣旨等を法務省民事局参事官
室の責任において補足的に説明したものである。
〔法令名の略記〕
この補足説明の本文においては,次のとおり現行法令名を略記することがある。
家審法 家事審判法
家審規 家事審判規則
特家審規 特別家事審判規則
任意後見契約法 任意後見契約に関する法律
精神保健福祉法 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
民保法 民事保全法
- 2 -
(前注1)は,特別家事審判事件の対象を,
(前注2)から(前注6)までは,
改正試案全体に共通する記載のルールを確認するものである。
1 任意後見契約に関する法律に規定する審判事件
(1) 管轄(特家審規第3条関係)
1では,任意後見契約法第4条第1項の規定による任意後見監督人の選任
の審判事件の管轄について,特家審規第3条の規律を維持し,任意後見契約
法第2条第2号の本人(以下,1において「本人」という。
)の住所地の家
庭裁判所の管轄とするものとしている。
2では,任意後見監督人が選任された後は,当該任意後見監督人の選任の
審判をした家庭裁判所が任意後見契約法に規定する審判事件を一元的に取り
扱うものとすることが合理的であると考えられることから,1以外の任意後
見契約法に規定する審判事件については,本人の住所地の家庭裁判所の管轄
とする特家審規第3条の規律に代えて,任意後見監督人の選任の審判をした
家庭裁判所(1による任意後見監督人の選任の審判事件が係属している場合
には,同事件が係属している裁判所)の管轄とするものとしている。なお,
本人の住居の変更等により,任意後見監督人の選任の審判をした家庭裁判所
においてその後の任意後見契約法に規定する事件を処理することが相当では
なくなった場合には,裁量移送又は自庁処理により新住所を管轄する家庭裁
判所において一元的な処理をすることが想定される。
(2) 手続行為能力(新設)
任意後見制度においては,すでに法定後見(成年後見,保佐又は補助)が
開始されている本人が,任意後見契約法第4条第1項の規定による任意後見
監督人の選任の申立てをすることも想定されることから(同項第2号参照),(2)では,そのような場合には,自己決定の尊重の見地から,本人は,意思
能力を有する限り,手続行為能力を有するものとしている。なお,任意後見
監督人を選任して任意後見契約の効力を生じさせた場合には,法定後見の審
判は取り消され(任意後見契約法第4条第2項)
,また,本人が未成年者で
ある場合には,任意後見監督人が選任されることはないことから(同条第1
項第1号)
,任意後見監督人の選任により任意後見が開始された後は,本人
が行為能力の制限を受けていることは想定されないため,特段の規律がなく
- 3 -
ても自ら手続行為をすることができることを前提としている。
(3) 精神状況に関する意見聴取(特家審規第3条の2関係)
(3)では,精神状況に関する意見聴取について,任意後見制度は任意後見
人に代理権を付与するにとどまるものであること,
任意後見監督人の選任は,
本人の申立てにより,又は本人の同意がある場合にされること(任意後見契
約法第4条第1項及び第3項)から,利用者の利便性にかんがみ,余りに厳
格な手続とすることは相当でないと考えられることから,特家審規第3条の
2の規律を維持するものとしている。
(4) 陳述聴取等(特家審規第3条の3,第3条の9第3項,第3条の10及び第
3条の12並びに家審規第76条関係)
(4)では,任意後見契約法に規定する各審判事件における陳述聴取及び意
見聴取について規律している。いずれの審判事件においても,本人について
心身の障害により陳述を聴くことができないときには,陳述聴取をすること
は不可能であるから,陳述聴取をすることを要しないものとしている。
なお,改正試案において,陳述聴取は,主として,審判の影響を受ける者
について手続保障的な観点から陳述を聴く場合に用いているのに対し,意見
聴取は,主として,裁判所の判断に資するために意見を聴く場合に用いてい
る。
a 任意後見監督人の選任の審判
aでは,本人の意向の尊重という観点から,特家審規第3条の3第1項
の規律を維持し,任意後見監督人を選任するには,本人の陳述を聴かなけ
ればならないものとしている。
b及びc 任意後見監督人の解任の審判及び任意後見人の解任の審判
b及びcでは,解任される者に解任事由について反論する機会を与える
ため,特家審規第3条の9第3項及び第3条の10が準用する家審規第76条
の規律を維持し,任意後見監督人を解任する審判をするには当該任意後見
監督人の陳述を,任意後見人を解任する審判をするには当該任意後見人の
陳述をそれぞれ聴かなければならないものとしている。なお,cについて
は,任意後見人の解任により任意後見契約は終了するため,本人は重大な
利害関係を有するが,解任事由(
「不正な行為,著しい不行跡その他後見
- 4 -
の任務に適しない事由があるとき」
(任意後見契約法第8条))にかんがみ,
常に本人の陳述がしんしゃくされるべきであるかどうかは疑問であり,任
意後見人の所在が不明な場合や任意後見人が本人の財産を横領した場合な
ど,本人の意向にかかわらず解任すべき場合もあるから,常に本人の陳述
を聴取しなければならないものとすることは,迅速な対応により本人の保
護を図るという観点からも相当ではないと考えられる。そこで,本人の陳
述を聴取するかどうかは,事案に応じた裁判所による適正な裁量にゆだね
るものとしている。
d 任意後見監督人が選任された後の任意後見契約の解除についての許可の
審判
dでは,任意後見契約の解除についての許可について,本人及び任意後
見人の陳述を聴取しなければならないとする特家審規第3条の12の規律を
維持するものとしている。これらの者は,任意後見契約の契約当事者であ
り,契約の解除の影響を直接受けるので,解除をしようとする契約の一方
当事者が申し立てた許可の審判の手続において,他方当事者に反論の機会
を与える趣旨の規律である。
2では,特家審規第3条の3第1項の規律を維持するものとしている。
3では,特家審規第3条の3第2項の規律を維持するものとしている。
(5) 審判の告知等(特家審規第3条の4,第3条の6,第3条の11及び第3条
の13関係)
(5)では,任意後見契約法に規定する審判事件における審判の告知等につ
いて規律している。
a 任意後見監督人の選任の審判
aでは,任意後見契約法第4条第1項の規定による任意後見監督人の選
任の審判について,これにより任意後見契約の効力が生じるため,契約の
当事者にその旨を了知させる必要があることから,特家審規第3条の4の
規律を維持し,本人及び任意後見受任者に当該審判を告知するものとして
いる。
b 後見開始,保佐開始又は補助開始の審判の取消しの審判
bでは,任意後見契約法第4条第2項の規定による後見開始,保佐開始
- 5 -
又は補助開始の審判の取消しの審判について,これにより成年後見人等及
び成年後見監督人等はその地位を失うことになることから,特家審規第3
条の6の規律を維持し,成年後見人等及び成年後見監督人等に当該審判を
告知するものとしている。
c 任意後見人の解任の審判
cでは,任意後見人の解任の審判について,これにより任意後見契約は
終了すると解されることから,特家審規第3条の11の規律を維持し,当該
契約の当事者である本人及びその任務が終了することになる任意後見監督
人に当該審判を告知しなければならないものとしている。
d 任意後見監督人が選任された後の任意後見契約の解除についての許可の
審判
dでは,任意後見監督人が選任された後の任意後見契約の解除について
の許可の審判について,これにより任意後見契約を解除することが可能に
なることから,特家審規第3条の13の規律を維持し,任意後見契約の当事
者である本人又は任意後見人(許可の審判の申立人は,審判を受ける者と
して告知を受けるから,契約当事者の他の一方を意味する。
)及び解除に
より地位を失うことになる任意後見監督人に告知しなければならないもの
としている。
(注1)では,本文に亀甲括弧を付した理由を記載している。本人に対
する審判の告知について,告知はこれを受ける者がその内容を理解できな
ければ意義に乏しいことから,本人が心身の障害によりその審判の内容を
全く理解できない場合には,告知をしなくてもよいとも考えられるが,他
方で,本人が即時抗告権を有する場合もあり,また本人に審判の受領能力
がある場合も想定されることから,裁判所において本人が心身の障害によ
り審判の内容を理解できないと判断した場合であっても,審判について一
切知らせなくともよいものとすることは相当ではないとも考えられる。そ
こで,この点については,なお検討するものとしている。
(注2)では,任意後見監督人を解任する審判をした場合には,裁判所
が本人に対して告知をするものとする規律を置くか否かについて,検討す
るものとしている。この点については,すでに効力が生じている任意後見
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契約に影響を及ぼすものではなく,また本人はこれに対して即時抗告権も
有していないため((6)イ参照)
,本人に対する告知は法的には何らの効果
も伴わないことにかんがみれば,法律上明文の規律をもって常に告知を義
務付けるだけの必要性はないことから,現行の規律を維持し,本人に対す
る告知の規律は置かないものとすることが考えられる。他方で,任意後見
監督人の解任により,任意後見人を監督する者がいなくなる場合もあるこ
とから,本人に対して告知しなければならないものとすることも考えられ
る。
(6) 即時抗告
ア 任意後見監督人の選任の申立てを却下する審判(特家審規第3条の5関係)アでは,特家審規第3条の5の規律を維持し,申立人は,任意後見契約
法第4条第1項の規定による任意後見監督人の選任の申立てを却下する審
判に対し,即時抗告をすることができるものとしている。
イ 任意後見監督人の解任についての審判(特家審規第3条の9第3項及び
家審規第87条関係)
特家審規第3条の9第3項及び家審規第87条第1項は,任意後見監督人
を解任する審判に対しては,任意後見人,任意後見監督人又は本人若しく
はその親族が即時抗告をすることができるとしているが,解任される任意
後見監督人自身がこれに不服はないとして即時抗告をしない場合に,他の
者がその判断を争うことを認めることは相当ではなく,また,そのような
場合には当該任意後見監督人による監督の実効性も期待できないと考えら
れることから,1では,現行の規律に代えて,当該審判に対しては,解任
される任意後見監督人のみが即時抗告をすることができるものとしてい
る。
2では,特家審規第3条の9第3項及び家審規第87条第2項の規律を維
持し,申立人並びに本人及びその親族は,任意後見監督人の解任の申立て
を却下する審判に対し,即時抗告をすることができるものとしている。
ウ 任意後見人の解任についての審判(特家審規第3条の10及び家審規第87
条関係)
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1では,任意後見人を解任する審判に対しては,任意後見人,任意後見
監督人又は本人若しくはその親族が即時抗告をすることができるとしてい
る特家審規第3条の10及び家審規第87条第1項の規律に代えて,解任され
る任意後見人及び本人のみが即時抗告をすることができるものとしてい
る。これは,当該解任により任意後見契約は終了すると解されるため,解
任される任意後見人及び契約の当事者である本人には即時抗告権を認める
必要があるが,それ以外の者がその判断を争うことを認めることは,相当
ではないと考えられるからである。もっとも,本人が当該事件の申立人で
ある場合には,即時抗告を認める必要がないから,即時抗告をすることの
できる者から除くこととしている。
2では,特家審規第3条の10及び家審規第87条第2項の規律を維持し,
申立人,任意後見監督人並びに本人及びその親族は,任意後見人の解任の
申立てを却下する審判に対し,即時抗告をすることができるものとしてい
る。
エ 任意後見監督人が選任された後の任意後見契約の解除についての許可に
ついての審判(特家審規第3条の14及び第3条の5関係)
1では,許可の審判を得た後に解除の意思表示をすれば任意後見契約は
終了することから,特家審規第3条の14第1項の規律を維持し,許可の審
判について利害関係を有する本人及び任意後見人は,許可の審判に対し,
即時抗告をすることができるものとしている。もっとも,現行の規律の文
言上は必ずしも明確ではないが,当該事件の申立人については,即時抗告
を認める必要がないという解釈を明文化し,即時抗告をすることのできる
者から除くこととしている。
2では,特家審規第3条の14第2項及び第3条の5の規律を維持し,申
立人は,任意後見監督人が選任された後の任意後見契約の解除についての
許可の申立てを却下する審判に対し,即時抗告をすることができるものと
している。
(7) 任意後見監督人に対する指示及び事務の調査
ア 任意後見監督人に対する指示(特家審規第3条の7関係)
アでは,任意後見監督人に対する指示について,特家審規第3条の7の
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規律を維持するものとしている。
イ 任意後見監督人の事務の調査等(特家審規第3条の8及び第3条の9第
1項関係)
イでは,任意後見監督人の事務の調査等について,特家審規第3条の8
及び第3条の9第1項の規律を維持するものとしている。
なお,
(注)にあるように,家庭裁判所調査官の報告書の記載事項につ
いては,特家審規第3条の8第3項の規律を維持することが考えられる。
(8) 審判前の保全処分
(前注)では,審判前の保全処分については,(8)の規律のほか,中間試
案の第2部の「第3 審判前の保全処分に関する手続(総則)
」の規律(た
だし,即時抗告の対象等(第3の2(3)ア及び3(3)ア)の規律については,
これに対応する規律として特家審規第2条があることから,特家審規第2条
と同様の規律)が適用されることを前提としていることを記載している。
ア 任意後見監督人の解任の審判事件を本案とする保全処分
(ア) 保全処分の内容(特家審規第3条の9第3項及び家審規第74条第1項
関係)
(ア)では,保全処分の内容について,基本的に特家審規第3条の9
第3項及び家審規第74条第1項の規律を維持するものとしている。ただ
し,家審規第74条第1項の明文上は,家庭裁判所が任意後見監督人の解
任の審判事件を職権により開始した場合(任意後見契約法第7条第4項
及び民法第846条参照)であっても,家庭裁判所が職権により任意後見
監督人の職務の執行を停止し,その職務代行者を選任することはできな
いが,本案事件について職権で開始することができる以上,保全処分に
ついても同様に職権で開始することを認めるのが相当であると考えられ
ることから,
(ア)では,職権により職務を停止し,その職務代行者を
選任することができるものとしている。
(注1)では,本文に亀甲括弧を付した理由を記載している。
(注2)では,(ア)による職務執行停止の保全処分をするには,中間
試案の第2部第3の2(2)エにより,任意後見監督人の陳述を聴取しな
ければならないことを明らかにしている。
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(注3)では,職務の執行を停止する審判が,原則どおり,職務を停
止される任意後見監督人に対し告知されたときに効力が生ずるものとす
ると(中間試案の第2部第3の2(2)ウ(ウ)参照)
,職務執行を停止さ
れる任意後見監督人が行方不明であるような場合や審判書の受取りを拒
否しているような場合には,
職務の執行を停止する審判の効力が生じず,
職務の執行を停止する審判の効力が生じたことを前提とする職務代行者
を選任する審判も効力を生じないことになる結果,保全の目的を達する
ことができないおそれがあるとの指摘があることから,このような事態
への対応方法について,なお,検討するものとしている。この点に関す
る考え方については,
中間試案の補足説明第2部第4の1(9)イ
(ア)(注3)参照。
(イ) 職務代行者の改任等(特家審規第3条の9第3項並びに家審規第74条
第2項,第32条第1項及び第75条関係)
(イ)では,職務代行者の改任等について,特家審規第3条の9第3
項並びに家審規第74条第2項,第32条第1項及び第75条の規律を維持す
るものとしている。
イ 任意後見人の解任の審判事件を本案とする保全処分の内容(特家審規第
3条の10及び家審規第74条第1項関係)
イでは,任意後見人の解任の審判事件を本案とする保全処分の内容につ
いて,基本的に特家審規第3条の10及び家審規第74条第1項の規律を維持
するものとしている。なお,任意後見人の解任は職権で開始することがで
きない審判事件であることから(任意後見契約法第8条)
,同様に保全処
分についても,現行の規律を維持して職権ではすることができないものと
している。
(注1)では,亀甲括弧の趣旨については,(8)ア(ア)の(注1)と
同じであることを記載している。
(注2)では,イによる職務執行停止の保全処分をするには,中間試案
の第2部第3の2(2)エにより,任意後見人の陳述を聴取しなければなら
ないことを明らかにしている。
(注3)では,任意後見人に職務執行停止の審判を告知することが困難
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である場合の手当てについて,なお検討するものとしている(詳細につい
ては,
(8)ア(ア)
(注3)及び中間試案の補足説明第2部第4の1(9)イ
(ア)
(注3)参照)。2 戸籍法に規定する審判事件
(1) 管轄(特家審規第4条,第7条,第10条及び第13条関係)
1では,氏の変更の許可の審判事件又は名の変更の許可の審判事件につい
て,特家審規第4条の規律を維持し,申立人の住所地の家庭裁判所の管轄と
するものとしている。
2では,
就籍の許可の審判事件について,
特家審規第7条の規律を維持し,
就籍しようとする地の家庭裁判所の管轄とするものとしている。
3では,戸籍の訂正の許可の審判事件について,特家審規第10条の規律を
維持し,
その戸籍のある地の家庭裁判所の管轄とするものとしている。
なお,
現行の取扱いのとおり,複数の戸籍を訂正すべき場合には,そのうちの一つ
の戸籍について管轄を有する裁判所は,管轄を異にする地にある他の戸籍に
ついても,併せて審理判断することができることを前提としている(この場
合,他の戸籍の訂正に係る事件についてはいわゆる自庁処理がなされること
になる。)。
4では,戸籍事件についての市町村長の処分に対する不服の審判事件につ
いて,特家審規第13条の規律を維持し,当該市役所又は町村役場の所在地の
家庭裁判所の管轄とするものとしている。
(2) 事件係属の通知(新設)
現行の規律には,事件係属の通知に関する規定はないが,戸籍法第113条
の規定による戸籍訂正の許可の審判事件においては,利害関係人が申立権者
であるため,必ずしも届出人又は届出事件の本人が申立人になるとは限られず,これらの者が事件の存在を知らないまま手続が進められる可能性もある。
そこで,(2)では,これらの者が手続に参加して自己の利益を確保するため
の機会を保障するため,家庭裁判所は,届出人又は届出事件の本人以外の者
の申立てにより上記審判事件が係属した場合には,事件記録上氏名及び住所
又は居所が判明している限り,当該届出人又は届出事件の本人にその旨を通
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知するものとしている。
(3) 手続行為能力(新設)
氏又は名の変更の許可の申立て,就籍の許可の申立て,戸籍の訂正の許可
の申立て及び市町村長の処分を受けた届出等が意思能力を有する限りするこ
とができるものである場合の当該処分に対する不服の申立ては,意思能力を
有する限り,することができると解されていることから,(3)では,これら
の申立てをすることができる者は,意思能力を有する限り,手続行為能力を
有するものとしている。
(4) 陳述聴取等
ア 氏の変更の許可の審判(特家審規第5条関係)
アでは,氏の変更の許可の審判事件における陳述聴取について,基本的
に特家審規第5条の規律を維持し,申立人と同一戸籍内にある15歳以上の
者の陳述を聴取しなければならないものとしている。
イ 市町村長の処分に対する不服の審判(特家審規第14条関係)
イでは,市町村長の処分に対する不服の審判事件における陳述聴取につ
いて,特家審規第14条の規律を維持し,当該市町村長の意見を聴かなけれ
ばならないものとしている。
(5) 審判の告知等
ア 審判の告知(特家審規第16条関係)
アでは,市町村長の処分に対する不服の申立てを却下する審判の告知に
ついて,特家審規第16条の規律を維持するものとしている。なお,当該市
町村長に対する処分命令の審判については,
市町村長は
「審判を受ける者」
として告知を受けることになるため(中間試案の第2部第2の2(7)ア
(エ)),特則を置いていない(改正試案(前注4)参照)。イ 市町村長に対する処分命令(特家審規第15条関係)
イでは,市町村長に対する処分命令について,特家審規第15条の規律を
維持するものとしている。
(6) 即時抗告
(6)では,即時抗告について,現行の規律(特家審規第6条,第8条,第1
1条,第17条及び第3条の5)を維持するものとしている。
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3 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に規定する審判事件
(1) 管轄(特家審規第17条の2関係)
(1)では,管轄について,特家審規第17条の2の規律を維持し,申立人の
住所地の家庭裁判所の管轄とするものとしている。
(2) 手続行為能力(新設)
性別の取扱いの変更の審判事件においては,申立人である性同一性障害者
自身の意思を可能な限り尊重する必要があることから,(2)では,申立人は,
意思能力を有する限り,手続行為能力を有するものとしている。
(3) 即時抗告(特家審規第17条の3及び第3条の5関係)
(3)では,即時抗告について,特家審規第17条の3及び第3条の5の規律
を維持し,申立人は,申立てを却下する審判に対し,即時抗告をすることが
できるものとしている。
4 厚生年金保険法等に規定する審判事件
(前注)では,厚生年金保険法等に規定する審判事件は,調停をすることが
できる事項についての審判事件であり,上記事件の調停手続においては,中間
試案の第2部の「第5 家事調停に関する手続」の規律が適用されることを前
提としていることを記載している。
(1) 管轄(特家審規第17条の6関係)
(1)では,厚生年金保険法等に規定する審判事件の管轄について,両案を
併記している。
甲案は,相手方の住所地の家庭裁判所にのみ管轄を認めるものとすること
は,当事者間の公平という見地から合理性が認められること,厚生年金保険
法等に規定する審判事件において,事案に即した適正かつ迅速な解決を図る
ためには,相手方の協力が必要であるが,相手方の住所地で処理する方が相
手方の協力を得やすいことを理由にして,特家審規第17条の6の規律を維持
し,相手方の住所地の家庭裁判所の管轄とすることを提案している。
乙案は,人事訴訟の手続においては当事者双方の住所地の家庭裁判所に管
轄が認められていること(人訴法第4条第1項)
,手続において必要な裁判
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資料は申立人及び相手方の住所地の双方にあると考えられること等を理由に
して,現行の規律を変更し,相手方の住所地の家庭裁判所に加えて,申立人
の住所地の家庭裁判所にも管轄を認めるものとするものである。なお,離婚
又は婚姻取消しの場合の財産分与においても,管轄について同様の問題があ
ることから(中間試案の第2部第4の6(1)1参照)
,これとの整合性にも留
意する必要がある(甲案及び乙案の理由については,中間試案の同所の補足
説明と共通するので,参照されたい。)。
なお,
(注)にあるように,請求すべき按分割合の審判及び調停の申立て
の方式については,特家審規第17条の7及び第17条の9の規律を維持するこ
とが考えられる。
(2) 陳述聴取(新設)
厚生年金保険法等に規定する審判事件においては,事案に即した適正な解
決を図るためには,
当事者双方にそれぞれ陳述の機会を保障する必要がある。
もっとも,厚生年金保険法等に規定する審判事件についての審理判断は,基
本的に,対象期間標準報酬総額,按分割合の範囲,これらの算定の基礎とな
る期間等に関する客観的な資料に基づいてされるものであり,当事者の陳述
内容によって左右される要素はそれほど多くはないことから,当事者からの
陳述聴取の方法として,必ず審問の期日を開かなければならないものとする
までの必要性はないと考えられる。そこで,(2)では,申立てが不適法であ
るとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き,書面により陳述
を聴取することも含めて,当事者の陳述を聴かなければならないものとする
規律を置くものとし,仮に,この審判事件にも適用される中間試案の第2部
第2の2(6)イにおいて乙案が採用され,調停をすることができる事項に
ついての審判事件においては,原則として当事者の陳述を聴く審問の期日を
経なければ,審判をすることができないものとされた場合には,その例外を
定めるものとなることを,
(注)において説明している。
(3) 即時抗告(特家審規第17条の8関係)
(3)では,即時抗告について,特家審規第17条の8の規律を維持し,当事
者は,請求すべき按分割合についての審判に対し,即時抗告をすることがで
きるものとしている。
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5 児童福祉法に規定する審判事件
(1) 管轄(特家審規第18条関係)
(1)では,管轄について,特家審規第18条の規律を維持し,児童の住所地
の家庭裁判所の管轄とするものとしている。
(2) 手続行為能力(新設)
児童福祉法に規定する審判事件においては,児童,児童を現に監護する者
及び児童の親権者又は未成年後見人は,審判の結果によって直接的な影響を
受ける者であるから,その意思を可能な限り尊重する必要があると考えられ
る。そこで,(2)では,これらの者は,意思能力を有する限り,手続行為能
力を有するものとしている。
なお,児童は,児童福祉法に規定する審判事件の当事者でも審判を受ける
者でもないが,(2)の規律によって意思能力を有する限り手続行為能力を有
することになる結果,
家事事件の結果について重大な利害を有する者として,
裁判所の許可を得て利害関係参加をすることができるが(中間試案の第2部
第1の7(2)ア2参照)
,これに加えて,児童が裁判所の許可を得ることなく
当然に参加をすることができるものとする規律を置くかどうかについては,
児童の意思を可能な限り尊重する必要がある一方で,児童が参加するのが児
童の福祉の観点から相当か否かについて裁判所の判断を介在させるべきであ
るとも考えられることから,
(注)において,なお検討するものとしている。
(3) 陳述聴取等(特家審規第19条関係)
(3)では,陳述聴取等について,基本的に特家審規第19条の規律を維持す
るものとしている。なお,2では,児童が15歳以上の場合に限り,当該児童
の陳述を聴取しなければならないものとしているが,それは,15歳未満の者
については,およそその陳述を聴取する必要はないという趣旨ではなく,当
該児童が15歳未満である場合には,
(注)のとおり,裁判所は,適切な方法に
よりその者の意思を把握するように努めなければならないものとする趣旨で
ある(中間試案の第2部第1の15参照)。(4) 審判の告知(新設)
(4)では,現行の規律には審判の告知に関する規定はないが,児童を現に
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監護する者及び児童の親権者又は未成年後見人は,承認の審判に対して強い
利害関係を有し,また当該審判に対して即時抗告をすることができる者であ
るから,これらの者に対しては,当該審判を告知するものとしている。
(5) 即時抗告(特家審規第20条及び第3条の5関係)
(5)では,即時抗告について,特家審規第20条及び第3条の5の規律を維
持し,承認の審判に対しては児童を現に監護する者及び児童の親権者又は未
成年後見人が,却下の審判に対しては申立人が,それぞれ即時抗告をするこ
とができるものとしている。
(6) 審判前の保全処分
(前注)では,審判前の保全処分については,(6)の規律のほか,中間試
案の第2部の「第3 審判前の保全処分に関する手続(総則)
」の規律(た
だし,即時抗告の対象等(第3の2(3)ア及び3(3)ア)の規律については,
これに対応する規律として特家審規第2条があることから,特家審規第2条
と同様の規律)が適用されることを前提としていることを記載している。
ア 保全処分の内容(特家審規第18条の2関係)
アでは,保全処分の内容について,基本的に特家審規第18条の2の規律
を維持するものとしている。
(注)では,亀甲括弧の趣旨について,1(8)ア(ア)
(注1)と同じで
あることを記載している。
イ 陳述聴取(新設)
審判前の保全処分は,保護者の親権(監護権)の行使を制限するもので
あることから,保護者の陳述を聴取し,それを踏まえた判断をすることが
望ましいと考えられる。そこで,イでは,審判前の保全処分を認容する審
判をするには,その陳述を聴くことにより審判前の保全処分の目的を達す
ることができない事情があるときを除き(民保法第23条第4項参照),保護者の陳述を聴かなければならないものとしている。
6 生活保護法に規定する審判事件
(前注)では,生活保護法に規定する費用負担額の確定の審判事件は,調停
をすることができる事項についての審判事件であり,上記事件の調停手続にお
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いては,中間試案の第2部の「第5 家事調停に関する手続」の規律が適用さ
れることを前提としていることを記載している。
(1) 管轄(特家審規第20条の2及び第20条の5関係)
1では,被保護者を保護施設に入所させること等についての許可の審判事
件について,特家審規第20条の2の規律を維持し,被保護者の住所地の家庭
裁判所の管轄とするものとしている。
2では,扶養義務者の負担すべき費用額の確定の審判事件について,特家
審規第20条の5の規律を維持し,扶養義務者の住所地の家庭裁判所の管轄と
するものとしつつ,複数の扶養義務者を相手方とする場合には,そのうちの
一人の住所地の家庭裁判所で併せて審理判断することができるものとするこ
とが当事者の便宜にかなうと考えられることから,扶養に関する処分の審判
事件の管轄と同様に(家審規第94条第2項)
,そのうちの一人の住所地の家
庭裁判所に申し立てることができるものとしている。
(2) 手続行為能力(新設)
被保護者を保護施設に入所させること等についての許可の審判事件におい
ては,被保護者及び被保護者の親権者自身の意思を可能な限り尊重する必要
があることから,(2)では,被保護者及び被保護者の親権者は,意思能力を
有する限り,手続行為能力を有するものとしている。
(注)については,5(2)の(注)参照。
(3) 陳述聴取(特家審規第20条の3関係)
(3)では,陳述聴取について,基本的に特家審規第20条の3の規律を維持
するものとしている。2については,許可の審判が被保護者に直接影響を与
えること,生活保護法第30条第2項が被保護者の意思に反して入所等を強制
することはできないとしており,被保護者の意思を確認する必要があること
によるものである。なお,2及び(注)については,5(3)参照。
(4) 審判の告知(新設)
現行の規律には審判の告知に関する規定はないが,被保護者の親権者又は
後見人は,被保護者の保護施設への入所等の許可の審判に対して強い利害関
係を有し,また,当該審判に対して即時抗告をすることができるから,これ
らの者に対しては,当該審判を告知するものとしている。
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(5) 即時抗告
ア 被保護者を保護施設に入所させること等についての許可についての審判
(特家審規第20条の4及び第3条の5関係)
アでは,被保護者を保護施設に入所させること等についての許可の審判
事件について,特家審規第20条の4及び第3条の5の規律を維持し,許可
の審判に対しては被保護者の親権者又は後見人が,却下の審判に対しては
申立人が,それぞれ即時抗告をすることができるものとしている。
イ 費用負担額の確定についての審判(特家審規第20条の6関係)
イでは,当事者は,費用負担額の確定についての審判に対し,即時抗告
をすることができるものとしている。なお,特家審規第20条の6は利害関
係人にも即時抗告権を認めているが,利害関係人として即時抗告権を認め
る必要のある者は特に想定されないことから,利害関係人には即時抗告権
を認めないものとしている(扶養に関する処分の審判事件における即時抗
告(中間試案の第2部第4の11(4))も参照。)。
7 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する審判事件
(1) 管轄(特家審規第21条関係)
(1)では,管轄について,特家審規第21条の規律を維持し,精神障害者の
住所地の家庭裁判所の管轄とするものとしている。
(2) 意見聴取(特家審規第22条関係)
1では,特家審規第22条の規律を維持し,保護者を選任する審判をするに
は,保護者となるべき者の意見を聴かなければならないものとしている。
現行の規律では,保護者の順位を変更する審判をする際の意見聴取に関す
る規定はないが,これにより先順位に変更される者は,種々の役割を担って
保護の任に当たることとなるため(精神保健福祉法第22条,第33条及び第41
条等)
,保護者を選任する審判をする場合と同様に,その者の陳述を聴取す
ることが相当であると考えられる。そこで,2では,保護者の順位を変更す
る審判をするには,当該審判により先順位に変更される者の意見を聴かなけ
ればならないものとしている。
(3) 即時抗告(新設)
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現行の規律では,即時抗告に関する規定はないことから,
(3)では,この
点に関する規律を整備するものとしている。
1では,保護者を選任する審判に対しては,それにより保護者となるべき
者(申立人である場合を除く。
)が重大な利害関係を有することから,当該
保護者が即時抗告をすることができるものとしている。
2では,保護者の順位を変更する審判に対しては,当該審判により先順位
に変更される保護者(申立人である場合を除く。
)が重大な利害関係を有す
ることから,当該保護者が即時抗告をすることができるものとしている。
3では,申立てを却下する審判に対しては,申立人が即時抗告をすること
ができるものとしている。
(4) 保護者の改任(特家審規第23条関係)
(4)では,保護者の改任について,特家審規第23条の規律を維持し,家庭
裁判所は,いつでも,その選任した保護者を改任することができるものとし
ている。
8 破産法に規定する審判事件
(前注)では,破産法に規定する夫婦財産関係における管理者の変更及び共
有財産の分割の審判事件を,現行の調停をすることができる事項についての審
判事件から,調停をすることができない事項についての審判事件に変更するか
否かについて,なお検討するものとしている。この点については,夫婦財産契
約による管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分に関する審判事件を,
調停をすることができない事項についての審判事件とするか否かについての検
討(中間試案の補足説明第2部第4の6(前注)参照)
)と併せて検討される
べき問題である。
(1) 管轄(特家審規第24条,第26条及び第28条関係)
1では,管轄について,以下の両案を併記している。
甲案は,特家審規第24条の規律を維持し,相手方の住所地の家庭裁判所の
管轄とするものとしている。
乙案は,現行の規律を変更し,相手方の住所地の家庭裁判所に加えて,申
立人の住所地の家庭裁判所にも管轄を認めるものとしている。
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両案の趣旨については,4(1)参照。なお,夫婦財産契約による管理者の
変更及び共有財産の分割においても,管轄について同様の問題があることか
ら(中間試案の第2部第4の6(1)1参照)
,これとの整合性にも留意する必
要がある。
2では,管理権の喪失の宣告の審判事件においては,特に子の利益を考慮
する必要があり,そのためには子の住所地の家庭裁判所において審理するの
が相当であると考えられることから,現行の規律(破産手続が開始された親
権者の住所地の家庭裁判所)に代えて,子の住所地の家庭裁判所の管轄とす
るものとしている(同様の趣旨により現行の規律を変更するものとしている
親権に関する審判事件における管轄(中間試案の第2部第4の8(1))も参照)。
3では,相続の放棄の承認の申述の受理の審判事件の管轄について,特家
審規第28条の規律を維持し,相続開始地の家庭裁判所の管轄とするものとし
ている。
(2) 審理等(特家審規第25条及び第27条関係)
(2)では,審理等について,特家審規第25条及び第27条の規律を維持し,
財産の管理者の変更及び共有財産の分割の審判事件については,民法第758
条第2項及び第3項の規定に基づく夫婦財産契約による管理者の変更及び共
有財産の分割に関する処分の審判事件に関する規定を,管理権の喪失の宣告
の審判事件については,民法第835条の規定に基づく管理権の喪失の宣告の
審判事件の規定を,それぞれ準用するものとしている。なお,財産の管理者
の変更及び共有財産の分割の審判事件における財産管理者の選任等の保全処
分の申立てについての裁判並びに夫婦財産契約による管理者の変更等に関す
る処分の審判事件における職務代行者選任の保全処分の申立てについての裁
判に対しては,即時抗告をすることができないものとする特別家審規第2条
の規律を維持するものとすることを前提としている。
(3) 申述の方式(特家審規第29条関係)
(3)では,申述の方式について,特家審規第29条第1項の規律を維持する
ものとしている。
なお,
(注)にあるように,申述書の記載事項については,特家審規第29
- 20 -
条第2項の規律を維持することが考えられる。
(4) 申述の受理の審判の手続(特家審規第30条及び家審規第115条第1項関係)
1では,申述の受理の審判の手続について,特家審規第30条及び家審規第
115条第1項の規律を維持するものとしている。
2では,実務の取扱いを明文化し,申述を受理する場合には申述人に告知
することを要せず,受理により直ちに効力が生ずるものとしている。
(注)では,裁判所が申述を受理したときは,申述人にその旨知らせるこ
とが相当であると考えられることから,裁判所書記官は,申述人に対し,受
理した旨を通知するものとすることを前提としていることを記載している。
(5) 即時抗告(特家審規第30条並びに家審規第115条第2項及び第111条関係)
現行の規律は,破産管財人(
「相続人」からの読替え)又は利害関係人は,
申述を却下する審判に対し,即時抗告をすることができるものとしている。
しかしながら,申述が却下された場合に,裁判所の許可を得て手続を追行す
る破産管財人以外の者が,即時抗告をして当該手続に関与することを認める
ことは,相当ではないと考えられる。そこで,利害関係人には即時抗告権を
認めないこととし,破産管財人のみが,申述を却下する審判に対し,即時抗
告をすることができるものとしている。
9 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する審判事件
(1) 管轄(特家審規第31条関係)
(1)では,管轄について,特家審規第31条の規律を維持し,中小企業にお
ける経営の承継の円滑化に関する法律第3条第2項に規定する旧代表者の住
所地の家庭裁判所の管轄とするものとしている。
(2) 審判の告知(特家審規第33条関係)
(2)では,審判の告知について,特家審規第33条の規律を維持し,遺留分
の算定に係る合意の許可の審判は,当該許可に係る合意の当事者の全員に告
知するものとしている。なお,もともと当事者の全員が審判を受ける者に該
当するため,あえて明文の規律を置く必要はないとも考えられる(
(前注4)
参照)
。しかしながら,中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
第8条は,許可の審判の申立人を合意の当事者のうち特に後継者に限定して
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いることから,特家審規第33条は審判を受ける者が合意の当事者の全員であ
ることを改めて明確にするために設けられたものであり,このような規定の
趣旨は維持されるべきであることから,
(2)においても,同様に規律を置く
ものとしている。
(3) 即時抗告(特家審規第34条関係)
(3)では,即時抗告について,特家審規第34条の規律を維持し,許可の審
判に対しては遺留分の算定に係る合意の当事者の全員(申立人を除く。
)が,
却下の審判に対しては申立人を含めて遺留分の算定に係る合意の当事者の全
員が,それぞれ即時抗告をすることができるものとしている。
なお,
(注)にあるように,申立ての方式については,特家審規第32条の
規律を維持することが考えられる。

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