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平成19年新司法試験考査委員会議議事要旨
(司法試験委員会庶務担当)
1 日時
平成19年8月2日(木)13:35〜14:30
2 場所
法務省大会議室
3 出席者
(司法試験委員会委員)
(委員長) 髙橋宏志
(委 員)太田 茂,奥田隆文,小幡純子,長谷川眞理子,本間通義(敬称略)
(新司法試験考査委員)
100名出席
(司法試験委員会庶務担当(法務省大臣官房人事課))
稲田伸夫人事課長,山口久枝人事課付,濱田亮二試験管理官
4 議題
(1) 平成19年新司法試験考査委員による不適正行為の発生について(報告)
(2) 平成19年新司法試験考査委員による不適正行為の試験への影響について(協議)
5 議事等
(1) 平成19年新司法試験考査委員による不適正行為の発生について(報告)
しろまる 事務局から,植村栄治元考査委員(公法系・行政法担当)が,所属の法科大学院に
おいて,担当科目について,新司法試験の受験指導をしたことなどの事実が判明した
こと及び当該考査委員に対して採られた措置についての報告がなされた。
しろまる 法務大臣から,再発防止のための努力をされたい旨,司法試験委員会に対して要請
があり,これを受けて,司法試験委員会では,再発防止のための方策の検討に入るこ
とになったことについて,事務局から報告がなされた。
(2) 平成19年新司法試験考査委員による不適正行為の試験への影響について(協議)
しろまる 今回の不適正行為が,実施された平成19年新司法試験に与える影響について,公
法系考査委員による検討状況の報告がなされ,協議が行われた。
その結果 「短答式試験については,当初から正解と予定していた選択肢を解答し,たものについて得点を与える通常の取扱いを変更しないこととし,短答式試験の合格
に必要な成績について,変更する必要はない。また,論文式試験について,再試験等
特段の措置を講じる必要はない。」旨全員一致で議決された。なお,その概要は以下
のとおりである。
しろまる 植村元考査委員の行った不適正な行為による影響について,公法系の短答式試験,
論文式試験の双方の問題の全体にわたり,詳細な検討を行ったが,植村元考査委員が
行った受験指導の中には,本試験の問題と同一,あるいは「類題」と評価できるよう
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な類似した問題は全くなかった。
その上で,問題とすべきは,短答式試験については,第18問,論文式試験につい
ては,第1問及び第2問とされた。
1 短答式試験第18問については,植村元考査委員が,平成19年4月に,判例の
要旨を慶應義塾大学大学院法務研究科修了生に対して情報提供した中に,同問題に
おいて出題された判例が含まれていることが問題とされた。
植村元考査委員が提供した情報は,
ア 試験問題そのものを示したり,出題に関連する判例であると明示して送付した
ものではなく,
イ 情報提供した判例6つのうち1つが出題されたにとどまるところ,
ウ 当該判例は,平成18年3月に言い渡された最高裁判所大法廷判決であり,受
, , ,
験者としては 当然勉強しておくべき重要な判例で その存在や内容については
刊行物で容易に知り得るものと認められた。
エ このような情報提供により,実際に,どのような影響があったかを考慮する必
要があるという観点から,成績面での検討も行った。
(ア) この問について,慶應義塾大学大学院法務研究科修了の受験者の正答率とそ
の他の受験者の正答率を比較したところ,前者が後者を若干上回っているが,
このような問題のない問でも,同じ位,あるいは,それ以上に正答率の差が認
められる問が,他にも相当数あり,中には,その倍以上の差がついていた問も
あったこと
(イ) この問について,法科大学院ごとの正答率を見ても,慶応義塾大学大学院よ
りも,正答率の高い法科大学院が相当数あり,慶應義塾大学大学院のこの問に
ついての正答率が不自然に高いとは見えないこと
などからしても,植村元考査委員の情報提供が有利な結果をもたらしたとはいえな
いと判断された。
2 論文式試験の公法系第1問については,問題の中で都市計画法に言及していると
ころ,植村元考査委員が,答案練習会において,都市計画法を取り扱っていること
が問題となった。
しかし,植村元考査委員が,答案練習会で行ったのは,都市計画法自体の規制内
容の解説にとどまると認められるところ,出題は,都市計画法の規制内容やその適
用上の問題点を問うものではなく,より強度の規制を内容とする条例をめぐる憲法
上の問題点について問うものであることから,植村元考査委員が,上記憲法上の問
題点についての答案作成に反映できるような有利な情報を与えたとは言い難いと認
められた。
なお,当該問題の採点を担当する憲法考査委員において,答案中に都市計画法自
体の規制内容について,問題文から得られる情報のほかにいかに詳細な記述があっ
ても,得点として考慮しないことについて,改めて確認がなされた。
3 論文式試験の公法系第2問については,答案練習会の中で,出題に一部関連する
論点が取り扱われていることや情報提供された判例に出題の題材となった出入国管
理及び難民認定法の判例があることが問題となったが,
ア 答案練習会では,行政法の主要な論点を幅広く取り上げており,出題範囲への
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偏りは認められないこと
イ 答案練習会等において,出題に係る具体的事案は取りあげられていなかったことウ 情報提供された判例は,出題に係る論点とは関連しないこと
などから,解答に当たり,植村元考査委員の情報提供を受けた者が有利になるとは
認められないとの結論となった。
なお,当該問題の採点を担当する行政法考査委員において,答案中に当該判例に
対する言及があっても,得点として考慮しないことについて,改めて確認がなされ
た。
これらのことから,短答式試験については,当初から正解と予定していた選択肢を
解答したものについて得点を与える通常の取扱いを変更しないこととし,短答式試験
の合格に必要な成績について,変更する必要はなく,また,論文式試験について,再
試験等特段の措置を講じる必要はないものとされた。
(以上)

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