03-1 「憲法の意義」に関する教材.doc

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「憲法の意義」に関する教材 第1 「憲法の意義」の単元設定の趣旨
1 法教育における「憲法の意義」の学習の必要性
「憲法の意義」の単元は,
「一人ひとりの人間が,かけがえのない存在として相互に尊重さ
れるべきであること及び自律的かつ責任ある主体として自由で公正な社会の運営に参加して
いく必要があることを認識させるとともに,それに必要な資質や能力をはぐくむために,個
人の尊厳,国民主権あるいは法の支配などの憲法及び法の基礎にある基本的な価値や国と個
人との関係の基本的な在り方について,一層理解を深めさせる」
(報告書第3の1(2)ウ)こ
とを目指すものとして位置付けることができる。この「個人の尊厳や法の支配」などの憲法
及び法の基本原理について,司法制度改革審議会意見書I第2の1では,
「法の下ではいかな
る者も平等・対等であるという法の支配の理念は,
(中略)司法の在り方において最も顕著に
現れていると言える。それは,ただ一人の声であっても,真摯に語られる正義の言葉には,
真剣に耳が傾けられなければならず,そのことは,我々国民一人ひとりにとって,かけがえ
のない人生を懸命に生きる一個の人間としての尊厳と誇りに関わる問題であるという,憲法
の最も基礎的原理である個人の尊重原理に直接つらなるものである。
」と述べられている。
「憲法の意義」の単元においては,法教育が目指す「自由で公正な社会」の理念・原理と
なっている個人の尊厳と法の支配について取り上げ,その内容について適切に理解させるこ
とが求められている。
2 「憲法の意義」に関する学習指導要領や教科書の記述
(1) 学習指導要領の内容
「憲法の意義」について,要領では,大項目「(3) 現代の民主政治とこれからの社会」
の中項目「ア 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則」で取り上げられる。この大項目の
ねらいには
「民主主義の基礎には個人の尊厳と人権の尊重という考え方があること,
また,
自らが自らを治めるという民主政治の基本となる考え方は,現代の国家においては国民に
よって選出された代表者が治めるという代表民主制の仕組みに反映されていること」(解説)
を理解させることがあげられている。
また,
中項目においては,
「法の意義に着目させ,
民主的な社会生活を営むためには,
法に基づく政治が大切であることを理解」
させるとし,
「民主的な社会における法は,国民生活の安定と向上を目指し,国民の意思のあらわれと
して国民の代表者によって構成されている議会によって制定されるものであり,国や地方
公共団体は国民の自由と権利を侵さないようにそうした法の拘束を受けるのである。した
がって,
ここでは,国民の自由及び権利はこのような法によって守られること,それゆえ,
『法に基づく政治』が民主政治の原理となっており,その運営によって恣意的支配を排除
しようとしていること,独裁政治や専制政治とは異なるものであることを理解させること」
(解説)の重要さを指摘している。本教材は,このような考えを生徒に具体的に理解させ
るために作成されたものであり,憲法学習において,国民主権と立憲主義という基本的な
考え方を理解させるとともに,憲法が,基本的人権の規定と統治機構を主な内容としてい
ることの意義を明らかにしようとするものである。
(2) 教科書の記述 ‐ 94 ‐
憲法学習に関しては,1人権の尊重,2人権思想,3憲法の意義,4日本国憲法,5三
大原則,6政治と権力の関係といった要素がある。これらの配列は,大きく二つに分ける
ことができる。一つの配列は,人権の尊重を述べた後で人権思想を説明し,この考えや精
神が憲法に結実していること,そして,日本国憲法は,人権思想の内容である人権尊重の
精神と国民主権を受け継ぐ一方で,日本独自の平和主義を掲げているというものである。
もう一つの配列は,
「政治とは何か」から解きおこし,政治には権力が不可欠であること,
国の政治の在り方は,
誰が権力を握るかによって左右されることを理解させ,
人権思想は,
専制的な権力に対して,基本的人権の尊重と国民主権を主張し,その内容が憲法に規定さ
れたことを解き明かしている。
本教材による授業の展開は,後者の配列に近いものとなっている。
3 「憲法の意義」学習の内容とその理解
法教育のねらいが,自律的かつ責任ある主体として,自由で公正な社会の運営に参加する
ために必要な資質や能力を養うことであると考えるならば,主権を持つ国民は,自らの生活
と社会の向上を図るという目標のために,政治に参加するのであるという意識と,憲法が基
本的人権を保障し,政治権力の在り方を定めたものであるという認識は重要である。したが
って,本教材は,政治と権力の関係,憲法,人権思想,日本国憲法という学習の配列を採用
し,できるだけ生徒の生活と関連させながら,民主主義や権力,人権の問題を取り上げ,自
らが主権者であるという自覚のもとで,憲法の意義を認識させるように工夫したものである。 この場合,日本国憲法そのものの意義を述べる前に,権力と人権との関連から憲法一般の
意義について,民主主義と立憲主義を中心に理解させるような学習が重要である。
本教材では,民主主義を,
「みんなのことはみんなで決めること」
,立憲主義を,
「みんなで
決めるべきこと,みんなで決めてはならないことを明らかにすること」と言い換え,こうし
た概念を生徒の生活と関連付けながら理解させようとしている。さらに本教材では,三権を
それぞれ,
「決めて良いことについて誰がどのように決めるのか〔立法権〕」「決めたことを,
誰がどのように実行に移すのか〔行政権〕」「決めて良いことと決めてはならないこととの区
別が守られているか,決められたことが適切に実行されているかを,誰がどのように判断す
るのか〔司法権〕
」と位置付け,できるだけ平易な言葉で学べるようにしている。
以上の考え方に基づき,憲法とは,主として,
「みんなで決めてよいこと,いけないこと」
にかかわる基本的人権の尊重と,
「みんなで決める仕組み」である統治機構を定めたものであ
ることを理解させるように構成したものである。 第2 単元
1 小単元「憲法の意義」
(3時間)の構成
第一時 「国の政治の在り方は誰が決めるべきか」
第二時 「みんなで決めるべきこと,みんなで決めてはならないこと」
大項目 「(3) 現代の民主政治とこれからの社会」
中項目 「ア 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則」 ‐ 95 ‐
第三時 「憲法とは何か」
2 単元の目標
1 日本国憲法の基本的な考え方や政治の仕組みに対する関心を高め,それを意欲的に追究
させる。
2 民主主義と立憲主義という,
現代の民主政治の基本概念を,
身近で具体的な例をもとに考
えさせ,基本的人権の尊重と政治の仕組みを主な内容としている憲法の意義を理解させる。 3 自分の考えを持ち,論理的に意見を述べ,討論し,合意を形成することができる能力を育
成する。
3 単元の位置付け
「憲法の意義」の単元は,民主主義と立憲主義の考えを理解するとともに,これらをもと
に憲法が成り立っていることを学習するものであり,この後に続く,
「政治単元」の学習の基
盤となるものである。日本国憲法や基本的人権の学習においても,国会,内閣,裁判所の学
習においても,この民主主義と立憲主義の考えが基礎となっている。したがって,本単元は,
要領の大項目「(3) 現代の民主政治とこれからの社会」の中項目「ア 人間の尊重と日本国
憲法の基本的原則」の最初に位置付けた。
4 単元の指導計画
「憲法の意義」の概要
(1) 第一時 「国の政治の在り方は誰が決めるべきか」
第一時の授業では,
「国の政治の在り方は誰が決めるべきか」というテーマのもと,国の
政治のあり方を決定する主体は誰か,ということについて事例を取り上げて考察する。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる 身近な生活の中に政治が関係しているものを取り上げる。
しろまる 「ある特定の人」だけが,政治の在り方を決めた場合の問題点を考える。
しろまる 問題が起こらないようにするためにはどうすればよいか考える。
しろまる 政治の在り方を,みんなで決めることが民主主義の基本であることを学ぶ。
(2) 第二時 「みんなで決めるべきこと,みんなで決めてはならないこと」
第二時の授業では,
「みんなで決めるべきこと,みんなで決めてはならないこと」という
テーマのもと,
クラスが集団として決定を行う事例を取り上げ,
「みんなで決めるべきこと」
と「みんなで決めてはならないこと」とは何かを考え,その上で,国の政治ではどのよう
に考えればよいかを追究する。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる みんなで何かを決定しなければならないとき,どのような方法があるかを考える。
しろまる 多数決という決定方法を取り上げ,クラス内で,多数決で決めてよいことと,決めて
はいけないことにはどのようなものがあるかを考える。
しろまる 国の政治において,
「みんなで決めるべきこと」と「みんなで決めてはならないこと」
について考える。
(3) 第三時 「憲法とは何か」
第三時の授業では,
「憲法とは何か」というテーマのもと,憲法は,
「みんなで決めてよ
いこと,いけないこと」に関することと,
「みんなで決める仕組み」に関することを定めた
ものであることについて学習する。 ‐ 96 ‐
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる 生徒が各自で,
「憲法」の定義について考える。
しろまる 「憲法」とは,
「みんなで決めてよいこと,いけないこと」に関すること(=基本的人
権の尊重)と「みんなで決める仕組み」に関すること(=統治機構)を定めたものであ
ることを確認する。
しろまる 日本国憲法では,
「みんなで決めてよいこと,いけないこと」に関することと,
「みん
なで決める仕組み」に関することについて,どのように定めているかを確認する。
第3 単元の指導計画
1 第一時 「国の政治の在り方は誰が決めるべきか」
力を持っていたから(軍事力,経済力)
「ある特定の人」が権力(人を強制させる力)を持っていたから。
みんながそのことを認めていたから
A 「ある特定の人」の決め方がおかしい。
B 特定の利害関係者に有利なルールにしてしまう。
C 悪意は無いものの,全体の利害関係が反映されない。
B→特定の人の決定ではよくない。
C→特定の人だけではなく,みんなが決定に加わらなくてはならない。
国民主権
民主主義 国の政治の在り方はみんなで決めるべきである。(=民主主義)
個人の尊重
学習内容 指 導 上 の 留 意 点
他の生徒は,国民の立場から,これらのルールが妥当かどうかを,その
理由とともに検討する。
学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
「自分」とは異なる意見や利害を持つ「他人」が存在することを十分に
理解すること。
生徒の意見を拾いつつ
教師がまとめていく。
クラス内で「ある特定の人」を2,3人,教師の決めた条件に基づいて
指名する。
生徒にとって気付きに
くい問題であるため,
いくつかの事例(教科
書,私鉄の運賃など)
を挙げ,それらが政治
に関係するかどうかを
考えさせると良い。
「ある特定
の人」によ
る政治の問
題点導入
国の政治の
在り方の決
め方
国の政治の在り方は,誰が決めるべきでしょうか。
かつて,どこの国においても,国の政治の在り方は,「ある特定の人」
が決めていたが,どうして彼らは国の政治の在り方を決めることができ
たのでしょうか。展開
私たちの生活の中で,政治に関連していると思われるものを挙げてみま
しょう。
生活と政治
との関連
学校,教師,教科書,道路,信号機など,政治に関係していることが身
近な生活に多くあることをつかむ。
権力と権威
とは何か
「ある特定の人」が権威(人を強制させる精神的な力)を持っていたから。
現在の日本において,「ある特定の人」が,国の政治の在り方を決める
べきでしょうか。
各自が,異なる意見や
利害を持つことを実感
させる例を挙げると良
い。
「ある特定の人」とい
う言葉の意味は漠然と
したままにしておく。
あなた方は権力と権威を持ち各自の意思が国の政策となるとしたとき,
あなたの夢や願いを実現するためにどのようなルールを決めますか。
「ある特定の人」が,国の政治の在り方を決定すると,「おかしなルー
ル」になってしまうことも多い。それはなぜかを話し合ってみましょ
う。
状況に応じて合理的で
はない条件で指名した
り,ルールを決めたり
させる。
「権力」と「権威」と
いう言葉は,教師から
提示しなくてはならな
い場合もあると思われ
る。
「ある特定の人」の政
治がすべて悪い結果を
及ぼす訳ではないこと
にも必要に応じて言及
する。
こうした問題が起こらないようにするにはどうしたらよいでしょうか。
A→国の政治の在り方を決めるべき人をどのように決めるかを,みんな
で決めるべきではないか。まとめみんな(国民)が国の政治の在り方を決める力を持つべきである。
(=国民主権)
民主主義を
支える考え方それでは,みんなで物事を決めていくには,何が必要でしょうか。
「みんな」と一概にいっても,実は,一人ひとり意見が違うことを理解
すること。
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2 第二時 「みんなで決めるべきこと,みんなで決めてはならないこと」
くじ,あみだくじ,じゃんけん,多数決,全員一致
多数決
(例)
A 移動教室のキャンプファイヤーでのクラスの出し物 しろまる
B クラスの生徒一人ひとりの昼休みの過ごし方 ×ばつ
C 教室の掃除当番の決め方 しろまる
D クラスの中で人数の一番多いしろさんかくしろさんかく部の今年の目標 ×ばつ
E 遠足でのバスの座席の決め方 しろまる
F クラス内の有志が発行している新聞の内容 ×ばつ
G 卒業文集に載せるクラス内での今年の十大ニュース しろまる
→したがって,話し合って多数決で決める。
⇒みんなで決める。
基本的には個人の判断にまかされるべきものである。
学級新聞といっても記事の内容は有志が自由に決めるべきことである。
みんなで決
めるべきこ
と,決める
べきではな
いこと
みんなで決めるべきこと,決めるべきではないことについて考えてみま
しょう。
次にあげることは,基本的にはクラスみんなで多数決によって決めるべ
きことか,決めるべきではないことかを考えてみましょう。
A クラスの出し物なのに,出演をいやがる特定の人にまかせることを
クラスで話し合って多数決で決めても良いか。なぜ良くないのか。
C クラスの掃除当番を出席番号の1番から5番までの人が毎日行うと
いうことをクラスで話し合って多数決で決めても良いか。なぜ良くな
いのか。
生徒の挙手でクラスの
意見の傾向をつかむ。
AからGのすべてを使
用する必要はない。ま
た,内容も,そのクラ
スに合ったものにする
と良い。
A,C,E,Gは,なぜみんなで決めるべきなのでしょうか。 ほとんどの項目が,生
徒たちの感覚で,すぐ
に答えられるものであ
るが,なぜ,そう思う
のか,その理由を考え
させることが大切であ
る。
集団内には,個々に異なる意見や考えがあるものの,クラスという集団
の意志を決めなくてはならない。
学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
多数決
指 導 上 の 留 意 点
議論の必要性「自分」と「他人」と一緒に政治の在り方を決めていくには,お互いに
意見や利害を明確に主張し,議論しなくてはならないこと。
「みんなで
決める」こ
との意味
「自分」のこととともに「他人」のことを考えて決めるということが,
「みんなで決める」ということであること。まとめ導入多数決以外にも,全員
一致や話し合いによる
合意で決めることもあ
る。
いろいろな
決め方
みんなで何かを決めるときの方法には,どのようなものがあるでしょう
か。
集団の意志
の決定
集団の意志をみんなで決める最善の方法は何でしょうか。
学習内容
既習事項との関連を図
りながら,授業を進め
る。
決めたこと
を守る責任
→みんなで話し合って多数決で決定したことは,みんなで守らなければ
ならない。展開 Bについては,個人の
判断にまかせるべきこ
とではあるものの無制
限ではないことに触れ
る。
みんなで決
めるべきで
はないもの
とその理由
B,D,Fは,なぜみんなでは決めるべきではないのでしょうか。
ある集団の意思に関することを他の集団が決めることは不適切である。
みんなで決
めるべき理由全員がかかわることであり,一人,または数人で決めてしまっては集団
の意見を反映できない。
みんなで決
めてはなら
ないこと
みんなで話し合って多数決で決めるといっても,決めてはならないこと
はないか。A,C,E,Gの場合で考えてみましょう。
ほとんどの項目が,生
徒たちの感覚で,すぐ
に答えられるものであ
るが,なぜ,そう思う
のか,その理由を考え
させることが大切であ
る。
生徒の挙手でクラスの
意見の傾向をつかむ。
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A 政治を批判した人を処罰すること。
B 他人のものを盗んだ人を処罰すること。
C 女性に選挙権を認めないこと。
D 20歳以上の人に選挙権を認めること。
E 政府が国民一人ひとりの職業を適切に決定すること。
F 政府が失業者の求めに応じて職業をあっせんすること。
E 職業を選ぶことは,個人個人の決定にまかせるべきことだから。
3 第三時 「憲法とは何か」
「憲法とは何か」について,自分の考えを書く。
→国のきまり,国民の守るべき規則,国の最高のきまりなど。
何人かが,自分の考えを発表する。
E 車酔いしやすいため,前の座席を希望する人を,本人の意思に反し
て後ろの座席にさせることを,クラスで話し合って,多数決で決めて
も良いか。なぜ良くないのか。
G いくら「大きな出来事」といっても,個人を傷つけたり,プライバ
シーを侵してしまうような,個人の尊厳を損なうことを十大ニュース
として取り上げることを,クラスで話し合って,多数決で決めても良
いか。なぜ良くないのか。
先ほど学習したクラス
のケースと同じことが
国の政治レベルでもい
えることを確認する。
B,D,Fは,なぜみ
んなで決めるべきこと
なのかは,後の学習の
課題とする。
B,D,Fについて,個人やある特定の人たちにまかせるといっても,
プライバシーを侵害したり,少数の特定の集団が不当に不利益を被るこ
となど,個人の尊厳を否定するようなことは,決めてはならないことで
あるということを確認する。
AからGのすべてを使
用する必要はない。ま
た,内容もそのクラス
にあったものにすると
良い。
個人の尊厳を否定するもの,少数の特定の集団が不当に不利益を被るこ
となどは 多数決によって決定すべきことではない。展開
A 個人の考えを発表することを禁止することは個人の尊厳を否定する
ものであり,個人の考えを自由に発表することが民主主義の基本とな
るから。
AからFのすべてを使
用する必要はない。
A,C,Eは,国民によって選ばれた代表者といえども,なぜ決めては
ならないのでしょうか。
生徒自身でまとめるこ
とは難しいと思われる
場合は,生徒の発言を
汲み取りながら教師が
まとめるようにする。
国の政治に
おける,
「みんなで
決めるべき
こと,決め
てはならな
いこと」
国の政治の在り方を決めるときも,「みんな」で決めるべきことと,
「みんな」で決めてはならないことはないか考えてみましょう。
個人の尊厳
・公正さまとめC ある特定の「性」だけが不当に不利益を被るから。
みんなで決めてはならないこととはどのようなことでしょうか。
個人の尊厳を否定するもの,個人個人の決定にまかせるべきもの,少数
の特定の集団が不当に不利益を被ること(プライバシーにかかわるこ
と,個人の事情を無視したものなど。)。
次にあげるものから,みんなによって選ばれた代表者が多数決で決める
べきことと,多数決で決めてはならないものを考えさせる。
憲法って何だろうか。自分なりに定義してみましょう。導入
憲法の意義 憲法って何だろう。
学習内容 学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
先ほどと同じように,
ほとんどの項目が,生
徒たちの感覚で,すぐ
に答えられるものであ
るが,なぜ,そう思う
のか,その理由を考え
させることが大切であ
る。
自分の考えを自由に書
かせる。
第一時に国の政治に関
して学習したことを踏
まえる。
指 導 上 の 留 意 点
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憲法とは,以下のことを定めたものであることを理解する。
民主主義
個人の尊厳
3 国の政治の在り方に関して,みんなで決めるべきこと。
⇒この制度が三権分立である。
立法権 A 「決めて良いことを,誰がどのように決めるのか」
行政権 B 「決めたことを,誰がどのように実行に移すのか」
司法権
国民主権
立憲主義
1 日本国憲法はどうだろうか。 資料1を活用する。
2 日本国憲法の資料をもとに,実際に確かめてみる。
3 これらの学習から,「憲法とは何を定めたものか」を整理する。
条文の概要について
は,できるだけ簡単な
表現を用いる。展開
1 一つは,1時間目に学習した,国の政治の在り方はみんなで決めよ
うということ。
国民一人ひとりの基本的人権は尊重されなくてはならず,国民みんな
が,多数決によってその人権の核心を制約してはならない。
基本的人権
の尊重
→2の個人の尊厳(基本的人権の尊重)を守りながら,1の「みんなで
決める」という民主主義の考えを実行していくための制度。
2 もう一つは,2時間目に学習した国民によって選ばれた代表者とい
えども,みんなで多数決によって決めてはならないことがあるという
こと。
→2とは個人の尊厳にかかわること=基本的人権にかかわること。
C 「決めて良いことと決めてはならないこととの区別が守られている
か,決められたことが適切に実行されているかを,誰がどのように判
断するのか」まとめ日本国憲法
の意義
日本国憲法の三原則は何かをもとに,日本国憲法の「章立て」を予想し
てみる(資料1参照)。
日本国憲法
の三大原則
しろまる この憲法を守る義務は,天皇または摂政及び国務大臣,国会議員,
裁判官その他の公務員(=国の政治を行う権力者)にある。
日本国憲法
の意義
しろまる この憲法は,国の最高法規であり,どのような法律も,これに反し
てはいけない。
国民が代表者を選び,選ばれた代表者が決定を下して政治を行っていく
前に,国民がその国の政治の在り方を決める最終的な権限があるという
国民主権を宣言し,それに基づいて,国民が1〜3の内容を文章で表し
た憲法を定め,選ばれた代表者といえども,この憲法に従わなくてはな
らないこととした。
日本国憲法も,本当に,こういう仕組みになっているか確かめてみま
しょう。
資料2の日本国憲法第
97条から99条の条
文を読み,その内容を
確認する。
しろまる この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久
の権利である。
日本国憲法とは,基本的人権の尊重,国民主権,平和主義(三大原則)
と,三権分立を基本とする政治の仕組み(統治機構)とを定めたもので
ある。
日本国憲法第10章「最高法規」の条文を読み,その内容の概要を簡潔
にまとめ,日本国憲法の意義を確認する(資料2参照)。
司法の内容は,これが
すべてではないことに
留意する。
これから学習する内容
を,1,2時間目の学
習事項と関連させなが
ら,憲法の意義を論理
立てて説明することが
大切である。
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「憲法の意義」参考資料
資料1 日本国憲法
日本国憲法
第一章 天皇 第七章 財政
第二章 戦争の放棄 第八章 地方自治
第三章 国民の権利及び義務 第九章 改正
第四章 国会 第十章 最高法規
第五章 内閣 第十一章 補則
第六章 司法 資料2 日本国憲法 第10章 最高法規
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由獲得の
努力の成果であつて,これらの権利は,過去幾多の試練に堪へ,現在及び将来の国民に
対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第98条 この憲法は,国の最高法規であつて,その条規に反する法律,命令,詔勅及び
国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。
2 (略)
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を
尊重し擁護する義務を負ふ。

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