01-1 「ルールづくり」に関する教材.doc

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ルールづくりに関する教材 第1 「ルールづくり」の単元設定の趣旨
1 法教育における「ルールづくり」の学習の必要性
「ルールづくり」の単元は,
「法は共生のための相互尊重のルールであり,国民の生活をよ
り豊かにするために存在するものであるということを,実感をもって認識させるために,ル
ールをどのようにしてつくるのか,ルールに基づいてどのように紛争を解決していくのかに
ついて主体的に学習させる」
(報告書第3の1(2)ア)ものとして位置付けられている。具体
的な学習場面では,ルールづくりを通じて,上述の内容を認識させるとともに,法が多様な
人々が共生するための相互尊重のルールであり,守ることの大切さを理解させることを目指
している。
本教材の特徴は,生徒に身近に感じられる紛争状況を設定し,この紛争状況を解決するた
めの解決策(ルール)づくりを体験的に行わせる点にある。
解決策(ルール)を体験的に作成する過程においては,生徒がそれぞれ合理的な意見を持
ち,生徒間の討論を経た合意形成に基づいて紛争を解決することが必要となるが,こうした
体験的な作業は合意形成や建設的な批判の能力の育成にもつながると考える。
また,生徒の身近な紛争状況を設定することにより,作成したルールもまた身近なもので
あると意識付けることが可能となるし,作成体験を通じて,自分たちで合意したルールを守
るという規範意識の涵養,状況の変化に応じてルールをつくり変えるといった,主体的なル
ールを作成し利用するという意識をはぐくむ教育にもつながると考える。
2 「ルールづくり」に関する学習指導要領や教科書の記述
(1) 学習指導要領の内容
「ルールづくり」について,中学校学習指導要領(以下「要領」という。
)では,大項目
「(1) 現代社会と私たちの生活」の中項目
「イ 個人と社会生活」
に位置付けられており,
「人間は本来社会的存在であることに着目させ,個人と社会とのかかわりについて考えさ
せる」際に,
「社会生活における取決めの重要性やそれを守ることの意義及び個人の責任な
どに気付かせる」こととされている。中項目イについては,
「身近な社会集団として家族,
学校,地域社会などを取り上げるとともに,個人が結び付いて社会が生まれ,社会生活が
営まれていることを理解させ,社会生活を円滑にするために互いの合意に基づいてルール
がつくられていることなど,
日常の具体的な事例を取り上げて考えさせる」
とされており,
「例えば,生徒会の規則,ゲームやスポーツのルール又は,地域の自治会の規則など,具
体的な事例を幾つか取り上げることが考えられる。それらの事例を通して,ルールや規則
をつくっていくには,様々な考えを持つ人々がそれぞれ自分の意見を説明し十分な話し合
いを行って,互いが納得して合意できる内容にしていく努力が必要であることに気付かせ
ることが大切である。また,そうしてつくられたルールや規則ゆえに互いが責任をもって
守ることが大切であること,そして個人がそのようなルールや規則をつくったり,あるい
はそれを受け入れていく限り,その結果について責任が伴うことにも気付かせることが大
切である。」(文部省『中学校学習指導要領解説−社会編−』
,以下「解説」という。
)との
記述も見られる。 ‐ 44 ‐
前者の記述から以下の3点が指摘できる。
1 個人と社会との関係の中で,ルールがつくられていること。
2 ルールは社会生活を円滑にするための手段であり,それを形成するのは社会の中で生
きる個人であること。
3 ルールは個人間の合意に基づき間主観的に形成されること。
「ルールづくり」の学習においては,このような「ルールのとらえ方」を生徒に理解さ
せることが大切であろう。また,後者の記述にあるように,
4 ルールは個人と社会との関係でつくられるものであり,必要が生じた場合に個人間で
合意し,つくるべきものであること。
5 自分たちでつくったルールであり,守る責任が生ずること。
6 個人と社会との関係の中で不必要になったルールは変更又は廃止する必要があること。 などに気付かせることが大切である。このため,生徒会の規則など日常生活の具体的な事
例を用いることが考えられる。
なお,ここでは社会科における,
「ルールづくり」学習に焦点を絞り,まとめた。中学校
段階では,他に,特別活動に集団生活におけるルールに関する内容が含まれる。例えば,学
級活動で,学級内の組織づくりや仕事の分担処理にかかわって,学級のルールについて話
し合わせたり,社会の一員としての自覚と責任の指導に際し,社会生活上のルールなどに
ついて考えさせたりすることが考えられる。社会科と特別活動のそれぞれの特質や意義を
踏まえつつ,双方の指導を関連付けることも大切である。
(2) 教科書の記述
教科書に見る「ルールづくり」学習においては,社会におけるルールの存在理由を帰納
的に説明しているもの,ルールをつくる場合の合意の大切さ,ルールを変えることの大切さ,
ルールを守ることと社会的責任の関係について説明したものがある。また,具体的な紛争
状況を踏まえ問題について考察をさせる,紛争状況に関してルールが作られる過程を生徒
にたどらせる記述も見られる。 第2 単元 1 小単元1 「ごみ収集に関するルールをつくろう」
(3時間:第1プラン)の構成
第一時 「ごみ収集に関するルールをつくろう」
第二時 「ごみ収集に関する町内会規約を制定しよう」
第三時 「ごみ収集に関する町内会規約を評価しよう」
小単元2 「マンションのルールをつくろう」
(4時間:第2プラン)の構成
第一時 「ルールの機能と望ましいルールの要件は何か」
第二時 「マンションの紛争を解決するルールをつくろう」
第三時 「ルールについて討論しよう」
大項目 「(1) 現代社会と私たちの生活」
中項目 「イ 個人と社会生活」 ‐ 45 ‐
第四時 「ルールを評価しよう」
(注記) 第1プラン又は第2プランを選択的に利用することを想定している。
2 単元の目標
1 ルールについての関心を高め,社会生活におけるルールの意義について考える態度を養
う。
2 ルール作成による紛争解決を通じて,社会生活における取決めの重要性,集団内の個人
の自由を保障するためのルールの必要性,それを守る意義について考えさせる。
3 事例の望ましい解決策(ルール)を作成し表現させる。
4 作成したルールについて,合理的に考察し評価することができる。
3 単元の位置付け
「ルールづくり」の単元は,要領の大項目「(1) 現代社会と私たちの生活」の中項目「イ
個人と社会生活」で実施する。
学習は3〜4時間で編成しており,第1プランと第2プランの2種類のプランを作成した。 第1プランは,
「ごみ収集に関するルールをつくろう」と題して3時間で構成し,第2プラ
ンは,
「マンションのルールをつくろう」と題して4時間で構成した。
なお,第2プランの1時間目はルールの機能,望ましいルールの要件を理解するための授
業となっており,第1プランの1時間目としても適用することができる。
4 単元の指導計画
(1) 「ごみ収集に関するルールをつくろう」の概要
ア 第一時 「ごみ収集に関するルールをつくろう」
第一時の授業では,
「ごみ収集に関するルールをつくろう」というテーマのもと,町内
会で起こった,ごみ収集場所をめぐる紛争の解決策を考える。具体的には,実際に,ご
み出しの経験をした後,架空の町内会を設定して,利害が対立する幾つかの立場に立っ
て,ごみ収集場所をどこにするか考える学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる ごみ出しについて自分の経験を報告する。
しろまる 良いルールの条件を考える。
しろまる ごみ収集場所をどこにするかを幾つかの立場に分かれて考える。
イ 第二時 「ごみ収集に関する町内会規約を制定しよう」
第二時の授業では,
「ごみ収集に関する町内会規約を制定しよう」
というテーマのもと,
第一時の授業でそれぞれの立場に立ってつくったルールを提案する。具体的には,それ
ぞれの立場から町内会規約案を提案し,話し合い活動を行って望ましい町内会規約を検
討する学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる それぞれの立場から町内会規約案を提案する。
しろまる パネルディスカッション形式で話し合う。
しろまる 生徒が各自で望ましい町内会規約を検討する。
ウ 第三時 「ごみ収集に関する町内会規約を評価しよう」
第三時の授業では,
「ごみ収集に関する町内会規約を評価しよう」
というテーマのもと,
町内会のごみ収集場所をめぐる紛争の解決策のためにつくったルールを一定の基準から ‐ 46 ‐
評価する。具体的には,町内会役員の役割を担当したグループが作成したルールを評価
し,この評価を前提に生徒各自がごみ出しのルールを作成する学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる 町内会役員の役割を担当したグループが作成した町内会規約を発表する。
しろまる 発表された町内会規約が望ましいルールかどうか評価する。
しろまる 生徒各自が望ましいと考えるルールを作成する。
しろまる ルールの機能,望ましいルールの要件を確認する。
(2) 「マンションのルールをつくろう」の概要
ア 第一時 「ルールの機能と望ましいルールの要件は何か」
第一時の授業では,
「ルールの機能と望ましいルールの要件は何か」というテーマのも
と,日常生活に見られるルールの中で受け入れることのできるルールとは,どのような
ものかを考える。具体的には,生徒が日常生活の中で出会うトラブルを解決するルール
を想定し,その適否を考えることを通して,ルールの機能と望ましいルールの要件を考
える学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる ルールは何のためにあるか考える。
しろまる ルールの具体例を検討する。
しろまる それぞれのルールの問題点を考える。
しろまる ルールの問題点をどのように改善すればよいか考える。
しろまる ルールが適正となる要件を整理する。
イ 第二時 「マンションの紛争を解決するルールをつくろう」
第二時の授業では,
「マンションの紛争を解決するルールをつくろう」というテーマ
のもと,架空のマンション住人間の紛争を設定し,解決のためのルールを考える。具体
的には,マンションでのペットの飼育について紛争が発生していると想定し,その紛争
を解決するルールを考える学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる マンションでのペットの飼育について住人間に紛争が生じていることを確認する。
しろまる ペットを飼育している住人や隣接する部屋に居住する住人の状況を確認する。
しろまる 班に分かれて解決策を考える。
ウ 第三時 「ルールについて討論しよう」
第三時の授業では,
「ルールについて討論しよう」というテーマのもと,第二時の授
業で各班が考えた解決策をクラス全体で検討し,クラス全体の議論を通して,望ましい
解決策を決定する学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる 各班で考えた解決策を生徒各自で評価する。
しろまる 各班で考えた解決策についてクラス全体で話し合う。
しろまる クラス全体で解決策を決定する。
エ 第四時 「ルールを評価しよう」
第四時の授業では,
「ルールを評価しよう」というテーマのもと,第三時の授業で決
定された解決策が適正かどうかを評価する。具体的には,第一時で学習した,
「ルールが ‐ 47 ‐
適正となる要件」をもとに解決策を評価する学習を行う。
実際の学習の流れは次のようになる。
しろまる 第一時の授業で学習した,
「ルールが適正となる要件」を確認する。
しろまる クラスで決定した解決策を生徒各自が受け入れることができるか検討する。
しろまる 新たな問題状況を設定し,
現在の解決策で問題が解決されない場合の対応を考える。 第3 単元の指導計画
1 ごみ収集に関するルールをつくろう(第1プラン)
(1) 第一時 「ごみ収集に関するルールをつくろう」
ワークシート1に記載する。
ワークシート2−1の「ごみ収集場所をどこに?」を範読する。
ワークシート3に記載する。
(2) 第二時 「ごみ収集に関する町内会規約を制定しよう」
立場に応じて班分けをし,それぞれの班で解決策(町内会規約)を作成
してみましょう。
資料1のような主張が
考えられる。
議論が拡散しないよう
ごみ収集場所は,川上
・山村・太田宅前の3
か所に限定する。
班ごとに役割演技に徹
しさせ,役割分担をさ
せる。
罰金や罰則を設けるこ
とのみに論点を着目さ
せない。
各立場を明確にさせる
ため,表示板を用意す
るとよい。
これから,「ルールをみんなでつくってみよう」という学習をします。
この学習にかかわる次のことに答えてください。
第三時にも同様のこと
を行わせ,本学習によ
る意識の変容を確認す
る。
ある町内会で,ごみ収集場所についての問題が生じています。まず,問
題の状況を確認しましょう。
ワークシート2−3の
「付近地図」を黒板等
に掲示する。
ワークシート2−2の「各自の主張」を生徒が音読し,ごみ収集場所に
ついての,それぞれの住民の立場を確認する。
自分たちの立場を理解
し,その立場になりき
ってこの問題の解決策
を考えさせ,他者を説
得し得る案を提示させ
る。
学習内容 学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指 導 上 の 留 意 点
生徒は,1週間程度ごみ出しを体験し,感想を簡単なレポートとして提
出する(1枚程度)。
学習内容 学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
皆さんが提出してくれた,「ごみ出し」レポートを発表してください。
指 導 上 の 留 意 点事前準備
日常生活に
おける紛争
紛争解決の
ためのルー
ルづくりまとめ導入展開指名された何名かの生徒が,ごみ出しの感想レポートを発表し,ごみ問
題の切実さを確認する。
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机の配置をパネルディスカッション形式の円陣にする。
班ごとに,町内会規約案の提案を行う。
班ごとに,各提案への質疑・応答を行う。
論点を整理する。
(3) 第三時 「ごみ収集に関する町内会規約を評価しよう」
ワークシート5−1に記入する。
ワークシート5−2に記載した後,班で話し合いをする。
班の話し合いの結果について,ワークシート5−3に記載させる。
班の代表が話し合いの結果を発表し,クラス討論する。
司会進行は,町内会役
員班に行わせる。同班
に,ワークシート4
(司会進行シート)を
活用させ,問題点,対
立点を明確にさせ,興
味や関心が持続できる
ようにさせる。
全体討論の成果を踏ま
えた町内会役員班が,
代表として町内会規約
を決定したというプロ
セスの正当性の確認を
させる。
町内会役員班から町内会規約を発表してもらいましょう。
指 導 上 の 留 意 点
町内会規約案の論点が
拡散(ごみ収集場所を
地下に設ける,2階建
てにする等というよう
に)するときは,論点
を整理させる。
この町内会規約が本当に望ましいルールかどうか,評価してみましょ
う。展開
学習内容 学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
町内地図を拡大し,場
所の説明の際に使用さ
せる。
町内会役員班による検討会議を行い,この問題に関する町内会規約を決
定し,その決定内容,プロセスを他の班に対し報告できるようにする。
町内会規約の検討に当
たっては資料2のよう
な論点が考えられる。事後学習
ルールづく
りの合意形成導入・展開導入
町内会役員班による「町内会規約」の発表と理由,決定プロセスの説明
を行う。
生徒個人の決定を踏まえ,全体討論を行い,望ましい町内会規約を検討
する。
ここで役割演技を終了し,生徒個人(各自)で自らの支持する町内会規
約案を考え,一旦決定する。
ルール評価
の視点
1手段の相
当性
2明確性
3平等性
4手続の公
平性
それぞれの班が作成した解決策(町内会規約案)を発表してもらい,ど
のような町内会規約をつくったらよいか議論しましょう。
「ごみ収集に関する町内会規約」の制定をめぐり,パネルディスカッ
ション形式の話し合いを行う。まとめルール評価の視点に基
づき評価させる。
1手段の相当性=目的
ルールをつ
くるに当た
っての条件
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ワークシート5−5,5−6に記載する。
ワークシート5−7に記載する。
ワークシート6に記載する。
それでは,これまでの話し合いを踏まえて,あなた自身が最もふさわし
いと考えるルールをつくり,それを評価してみてください。
1手段の相当性は,目
的を達成する手段とし
て個人の自由を必要以
上に制限していないか
などについて考えさせ
る。展開
これまで,「ルールをみんなでつくってみよう」について学習し,この
学習の中で様々なことを学んできました。その上で,もう一度,皆さん
の考えを聞かせてください。
この授業を通じての感想を記載してください。
ワークシートが完成し
ない場合には課題とす
る。
学習を振り返り,「ル
ールづくり」の条件と
して
1ルールの必要性
2ルールづくりの合意
形成の方法
3ルール評価の視点
などを考えさせ,まと
めさせる。
クラスの検討を踏まえた感想について,ワークシート5−4に記載する。まとめ を実現するために適
切な手段ですか。
2明確性=そのルール
はいろいろな解釈が
できませんか。
3平等性(公正さ)=
立場が変わってもそ
の決定は受け入れら
れますか。
4手続きの公平性=ル
ール作りにみんなが
参加し,ルールをつ
くる過程に問題はあ
りませんか。
1ルールの
必要性
2ルールづ
くりの合
意形成の
方法
3ルール評
価の視点
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資料1 想定される各立場の回答事例
A 川上さん(ごみ収集場所周辺に住む住人)の立場
B 田中さん(古くからの住人)の立場
C 山村さん(新しく引っ越してきた住人)の立場
D 山本不動産の立場
E 佐藤さん(町内会長)の立場
F 太田さん(商店街の商店主の一人)の立場
主張:ごみの量が増えるのだし,これまで我慢してきたのだから,別の場所にごみ収集場所を変えるべきである。
ごみ出しのルールを守らない人もいる。
理由:町内におけるごみ収集場所の不利益は公平に負担するべきである。町内の一人,もしくは一地域のみが負担
するのは不公平である。これまで長い間,私の家の前をごみ収集場所として提供してきたのだから,今度
は新しくできた建売住宅地の一角につくるべきであり,これで公平になる。
主張:ごみ収集場所は,これまでどおり川上さんの家の前でよい。ごみ出しルールの徹底を図ることとする。
理由:町内におけるごみ収集場所の不利益は公平に負担するべきである。町内の一人,もしくは一地域のみが負担
するのは不公平である。これまで長い間,川上さんの家の前をごみ収集場所としてきたのだから,これから
は新しくできた建売住宅地の一角につくるべきであり,これで公平になる。
理由:商売をしているため,町がごみで汚れているというのは困る。毎朝,店を開ける前に掃除をしているが,ご
みが氾濫する状況は何とかしなければならない。川上さんのところで,これまで,あまり問題がなかったの
だからこれからも川上さんの家の前がよい。ただし,今回のようなことがまた起こらないとも限らないので
違反者の出ないような対策は必要と考える。
規約:ごみ収集場所は,これまでどおり川上さんの家の前とするべきであり,町内会員は期日とルールを守ってご
みを出すようにするべきである。そのため,ごみ出しルールの確認を回覧板で回し,町内の掲示板にも掲示
することとする。もし,それでもルールを守らない町内会員には,一週間,ごみ収集場所の清掃を担当して
もらうこととする。
理由:これまでも町内会では,ごみ収集のルールを守ってきた。これまでどおり川上さんの家の前でもよい,新し
くできた建売住宅地の一角でもよい。いずれにしてもごみ出しのルールを守らないと,今回のようなことが
再び起こるので町内会規約をつくるに当たって,今後,このようなことが再び起こらないように,よく検討
していただきたい。
規約:ごみ収集場所は,新しくできた建売住宅地の一角につくるべきであり,町内会員は期日とルールを守ってご
みを出すようにするべきである。
主張:ごみの量自体そんなに増えるわけではないのだから,ごみ収集場所の場所を変えるまでもない。ごみ出しの
ルールをみんなで守れば問題はない。
理由:今回,私の不注意で違う日にごみを出してしまい迷惑をかけたが,これまでも川上さんの家の前のごみ収集
場所で問題がなかったのだから,これからもごみ収集場所は川上さんの家の前にしてもらいたい。ごみ出し
の期日とルールを守れば問題はない。
規約:ごみ収集場所は,これまでどおり川上さんの家の前とするべきであり,町内会員は期日とルールを守ってご
みを出すようにするべきである。ごみ出しのルールの確認をもう一度行う。その上で,もし,ルールを守ら
ない町内会員には,一週間,ごみ収集場所付近の清掃を担当してもらうこととする。
主張:新しい建売住宅の中に,ごみ収集場所をつくってほしくない。ごみ出しのルールを徹底させるようにする。
理由:まだ売れていない建売住宅が売れ残ると困るので,ごみ収集場所が,建売住宅地の中に移されるのは困る。
これまでも川上さんの家の前のごみ収集場所で問題がなかったのだから,これからもごみ収集場所は川上
さんの家の前にしてもらいたい。ごみ出しの期日とルールを守れば問題はない。
規約:ごみ収集場所は,これまでどおり川上さんの家の前とするべきであり,町内会員は期日とルールを守ってご
みを出すようにするべきである。そのため,ごみ出しルールの確認を回覧板で行うこととする。もし,それ
でもルールを守らない町内会員には,一週間,ごみ収集場所の清掃を担当してもらうこととする。
主張:古くからの住人も,今度来た新しい住人にも,皆さんにとってよいような町内会規約をつくってほしい。
規約:〔司会なので特にない〕
規約:ごみ収集場所は,新しくできた建売住宅地の一角につくるべきであり,町内会員は期日とルールを守ってご
みを出すようにするべきである。
主張:住人が増えてごみの量が増えるのは新しい住人が来るからである。新しい住人の住んでいる周辺にごみ収集
場所をつくるべきである。ごみ出しのルールを守らない人もいる。
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資料2 議論の論点例
1 ごみ収集場所の近隣住民の被害は,ごみ収集場所を変更しなければならないほどのものかどうか。
2 ごみ収集場所を変更する場合,場所選定にあたり,公平性を期すためには,どのような配慮が必要なのか。
4 ごみ収集場所への通行人の投棄,ごみに対するカラスや猫への対策などが必要かどうか。
3 ごみ収集にかかわるルール(ごみ出しの期日,場所,時間,種別など)を守らない場合,罰則を科す必要があるの
かどうか。
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「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート1
3年( )組( )番 氏名
ア 自分の考えに基づいて行動する。
イ 相手の考えに合わせて行動する。
ウ お互い納得するまで話し合ってから行動する。
エ その他 ( )
ア いろいろな人たちの異なる考えや意見をまとめるため。
イ いろいろな人たちが対等に生活できるようにするため。
ウ 弱い立場の人たちを守るため。
エ 犯罪を防いだり,社会の秩序を守るため。
オ その他 ( )
3 あなたが考える望ましいルールの決め方を書いて下さい。
2 様々な人たちがいる社会には,必ずルールがあります。あなたは,ルールは何のため
にあると考えますか。自分の考えに近いものを2つ選んで下さい。
これから,「ルールをみんなでつくってみよう」について学習します。この学習にかか
わる次のことに答えてください。
1 周囲の人たちと考えや意見がくい違ったら,あなたはどのような行動をとりますか。
あなたがとるであろう行動に最も近いものを選んで下さい。
「ルールをみんなでつくってみよう」事前質問
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「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート2
3年( )組( )番 氏名
1 ごみ収集場所をどこに?
2 各自の主張
A 川上さん(ごみ収集場所周辺に住む住人)の立場
B 田中さん(古くからの住人)の立場
C 山村さん(新しく引っ越してきた住人)の立場
D 山本不動産の立場
E 佐藤さん(町内会長)の立場
F 太田さん(商店街の商店主の一人)の立場
古くからの住人も,今度来た新しい住人にも,皆さんにとってよいような町内会規約をつくってほ
しい。
ごみ収集場所は,これまでどおり川上さんの家の前でよい。ごみ出しルールの徹底を図ることとす
る。
ごみの量自体そんなに増えるわけではないのだから,ごみ収集場所の場所を変えるまでもない。ご
み出しのルールをみんなで守れば問題はない。
新しい建売住宅地の中に,ごみ収集場所をつくってほしくない。ごみ出しのルールを徹底させるよ
うにする。
町内会規約つくってみよう!
商店街にある空き地を山本不動産が買い取って5軒程度の建売住宅を売り出しました。うち何軒か
はすでに新しい住人が入居しています。
この商店街のごみ収集場所は,川上さんという人の家の前にありますが,ある日,新しく引っ越し
てきた山村さんが,燃えないごみの日に間違えて生ごみを出してしまいました。これをきっかけに,
川上さんは,「これまで長い間,自分の家の前にごみ収集場所があるのを我慢してきたが,町内の住
人が増えて,ごみの量も増えている。また,商店街を通る人たちが,ごみを勝手に捨てていって,ご
み収集場所は散らかっている。生ごみの日は,猫が入ってきて散らかし,悪臭がすごい。この機会に
ごみ収集場所を変えてほしい。」と言い始めました。その両隣や向かいの人も川上さんに賛成してい
ます。
他方,古くからこの町内に住んでいる田中さんは,「住人が増えて,ごみの量が増えるからといっ
て,もとから住んでいる私たちが不利益を受けるのは困る。もし収集場所を変えるなら新しい建売住
宅地の中にしてもらいたい。」と言っています。古くからの住人はだいたい田中さんと同じ意見のよ
うです。
しかし,山村さんなど新しく引っ越してきた人たちは,「ごみの量が増えるといっても,たいした
量ではなく,ごみ収集場所を変えるほどのことはない。」と言っています。山本不動産も,「まだ売
れていない建売住宅が売れ残ると困るので,ごみ収集場所が建売住宅地の中に移されるのは困る」と
言っています。
商店街の太田さんも,「うちの前にごみ収集場所ができたのでは商売に影響が出るので困る。」と
言っています。
町内会長の佐藤さんと町内会の役員さんたちは,この問題を解決するために,町内のごみ収集場所
に関する町内会規約をつくらなければならなくなりました。
現在,ごみの収集は,この町内では,毎週火・金の2回燃えるごみの収集が行われています。燃え
ないごみの収集は,毎週木曜日の1回だけです。また,ごみ収集車の通行上,ごみ収集場所に指定で
きる場所は,川上さんの家の前,山村さんの家の前,太田さんの家の前の3か所だけです。
ごみの量が増えるのだし,これまで我慢してきたのだから,別の場所にごみ収集場所を変えるべき
である。ごみ出しのルールを守らない人もいる。
住人が増えてごみの量が増えるのは,新しい住人が来るからである。新しい住人の住んでいる周辺
にごみ収集場所をつくるべきである。ごみ出しのルールを守らない人もいる。
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3 付近地図
あすなろロード商店街
←現在のごみ収集場所
古くからの住人の住宅地
住 宅 地
田中家
(古く
からの
住人)
W商店街
川上家
(ごみ収集場所
周辺の住人)
住 宅 地
X 商 店 街
太田家
(商店街)
Y 商 店 街 佐藤家
(町内
会長)
新しい建売
住宅(5軒)
山村家
(引越し
てきた住人)山 本
不動産
Z 商 店 街
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「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート3
3年( )組( )番 氏名
自分の班の立場は
自分で考えた発言内容
1 ごみ収集場所はどこに
2 ごみ出しのルール 1 2 3 4
3 1と2の理由
町内会規約つくってみよう!
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「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート4
3年( )組( )番 氏名
1 司会班の自己紹介
司会は,以下の役割分担をしています。
1 解決策発表担当の( )
2 質疑・応答担当の( )
3 解決策の検討担当の( )
4 記録担当の( )
です。
2 立論
1 ごみ収集場所をどこにするのか。
2 ごみを出す時のルール(守らなければならないこと)は何か。
3 以上1,2の理由は,どういうことか。
(2) では,次の順番で発表してください(対立する主張のある人を順番に)。
A ごみ収集場所近くに住む川上さん
C 新しく引っ越してきた山村さん
B 古くからの住人の田中さん
D 不動産屋の山本さん
F 商店街の商店主の一人の太田さん
3 質疑・応答
それでは,A,C,B,D,F各班から,それぞれ質問や疑問はありませんか。
〔特にないようなら,A班はありませんかと,各班それぞれを指名する。〕
4 町内会規約案の検討
〔特にないようなら,まず,A班(川上さん)の主張を支持する人はどうですか。
逆に,C班(山村さん)の主張を支持する人はどうですか。と各人をそれぞれ指
名する。〕
*町内会役員班として,自分たちで最終的に町内会規約を
決定するため,様々な意見を出してもらうようにする。
司会進行シート(町内会長・役員班専用シート)
(1) それぞれの立場の町内会規約案を発表してもらいます。その際,次の3点をはっ
きりさせて発表してください。
(1) では,ロールプレイング(役割演技:各立場での発表)を終わって,一人ひとり
個人として自分の支持する町内会規約案を考えてください。
(2) それでは,考えるのをやめてください。途中の人もお願いします。続いて,クラ
ス全体で話し合いたいと思います。自分の考えのある人はいませんか。
‐ 57 ‐
「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート5
3年( )組( )番 氏名
1 町内会役員班の決定した町内会規約とその理由
1 ごみ収集場所は
とします。
2 その理由は
です。
2 1の町内会規約を評価してみよう。
A:はい B:どちらでもない C:いいえ
3 班で話し合った結果はどのようなものでしたか。
3 そのルールはいろい
ろな解釈ができません
か?
A B C
4 ごみ収集場所の問題
を解決するという目的
を実現するために適切
な手段ですか?
A B C
2 立場が変わってもそ
の決定は受け入れられ
ますか?
A B C
1 ルールづくりにみん
なが参加し,ルールを
つくる過程に問題はあ
りませんか?
A B C
町内会規約つくってみよう!
ルール評価の項目 評 価 結 果 B か C に しろまる を 付 け た 理 由
‐ 58 ‐
「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート5
4 クラス検討を踏まえ,あなたはどう考えますか。
5 あなたの考える町内会規約案を考えなさい。
1 ごみ収集場所は
とします。
2 その理由は
です。
6 あなたの考えた町内会規約案を評価してみよう。
A:はい B:どちらでもない C:いいえ
7 これからルールについて,どのように考えていきますか。
4 ごみ収集場所の問題
を解決するという目的
を実現するために適切
な手段ですか?
A B C
2 立場が変わってもそ
の決定は受け入れられ
ますか?
A B C
3 そのルールはいろい
ろな解釈ができません
か?
A B C
ルール評価の項目 評 価 結 果 B か C に しろまる を 付 け た 理 由
1 ルールづくりにみん
なが参加し,ルールを
つくる過程に問題はあ
りませんか?
A B C
‐ 59 ‐
「ごみ収集に関するルールをつくろう」ワークシート6
3年( )組( )番 氏名
ア 自分の考えに基づいて行動する。
イ 相手の考えに合わせて行動する。
ウ お互い納得するまで話し合ってから行動する。
エ その他 ( )
ア いろいろな人たちの異なる考えや意見をまとめるため。
イ いろいろな人たちが対等に生活できるようにするため。
ウ 弱い立場の人たちを守るため。
エ 犯罪を防いだり,社会の秩序を守るため。
オ その他 ( )
3 あなたが考える望ましいルールの決め方を書いて下さい。
「ルールをみんなでつくってみよう」事後質問
これまで,「ルールをみんなでつくってみよう」について学習し,この学習の中で様々
なことを学んできました。その上で,もう一度皆さんの考えを聞かせてください。
1 周囲の人たちと考えや意見がくい違ったら,あなたはどのような行動をとりますか。
あなたがとるであろう行動に最も近いものを選んで下さい。
2 様々な人たちがいる社会には,必ずルールがあります。あなたは,ルールは何のため
にあると考えますか。自分の考えに近いものを2つ選んで下さい。
‐ 60 ‐
2 マンションのルールをつくろう(第2プラン)
(1) 第一時 「ルールの機能と望ましいルールの要件は何か」
「受け入れられない」との答えの理由として,
(C) 男子⇔女子 の立場の入れ替えを行う。導入
身のまわり
のルールの
存在
ルールの正
当性を示す
根拠(社会
統制機能・
紛争解決機能)身のまわりにはルールがあることを確認する。ワークシート1−1に書
く。以下の発問について,ワークシート1−2に書く。
答えられない場合は教
師の方で例示する。
授業時間の関係上左記
内容は事前にカード等
に書いておくとよい。
社会統制機能といった
言葉を挙げて説明する
必要はない。
1 秩序を守らないと安全に暮らしていけないから(秩序維持機能)
2 紛争を解決しなければ社会が安定しないから(紛争解決機能)
といったルールの機能について説明する。
学習内容
(C) 女子だけが掃除をしないのは公平ではない(平等性の欠如)。
(C)について,「受け入れられる」との答えが出される場合は,以下の
発問を行う。
立場を入れ替えてもルールを受け入れることはできますか。
(C) 男子が掃除を,いつもさぼっていて,男子と女子がけんかをしてい
るので,「掃除は男子生徒のみとする」というルールをつくった。展開
この二つの機能の実現を目指してルールはつくられることを確認し,以
下のような目的で作成されたルールの適否について検討する。
1授業中は静かにする,2部活はみんなで頑張りましょう,3みんなで
掃除をきちんとやろう。
前述の目的に沿ってつくった以下に示すルールを受け入れることはでき
ますか,できませんか。(そう選んだ)理由は何ですか。
ルールが適
正となる要
件(手段の
相当性・明
確性・平等
性・手続の
公平性)
教員は,(A)〜(C)を板書する(もしくは事前にカードに書いておく)。
生徒は,ワークシート1の3を書く。
(A) 授業中いつもうるさく勉強ができないので,「授業開始のベルが鳴
ったら50分の授業のうち40分間目を閉じる」というルールを先生
がつくった。
(B) キャプテンは部員の意見をまったく聞かず,「部内の雰囲気を乱し
た部員は,キャプテンからどんな制裁でも受けなければならない」と
いうルールをつくった。
「受け入れられる」ルールにするには,どうすれば良いのですか。
左記の視点は以下のよ
うな意味である。
学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
ルールは何のためにあるのでしょうか。
指 導 上 の 留 意 点
平等性が問いやすい
(C)について,ここで
取り上げる。
手段の相当性=目的に
対して手段が適切か。
(B) みんなの意見を聞いて決める,規定の意味をはっきりさせる,キャ
プテンの独裁にしないなど。
既出のカードを使って
以下をワークシート1の4に書く。
(C) 女子も平等に掃除をするなど。
明確性=いく通りにも
解釈されることはない
か。
平等性=立場を替えて
も受け入れられるか。
手続の公平性=みんな
が参加しているか
(B) 雰囲気を乱すとはどういうことかはっきりしない(明確性の欠如)。
キャプテンが部員の意見をまったく聞かないのは公平でない(手続の
公平性の欠如)。
(A) 授業中,静かにするために40分間目を閉じるということは,結果
として授業時間を大幅に減らすことにつながり,授業時間の確保が十
分できないといった点で適切なルールとは言えない(手段の相当性の
欠如)。
(A) 授業開始のベルと同時に1分程度目を閉じて,静かになってから授
業を開始するなど。
‐ 61 ‐
限りにおいて,我々は正当なルールとして受け入れることができる。
(2) 第二時 「マンションの紛争を解決するルールをつくろう」
以下の問題状況を範読する。
A 事実:チワワと一緒に楽しく遊んでいる。
主張:ペットの飼育を認めてほしい。
ペットの飼育について,それぞれの立場を確認しましょう。
A〜Fの立場に班分けを行い,自分たちの状況(事実),事実に基づく主
張(自分の希望する状況),主張の理由(それを希望する理由)について,
各班ごとに話し合い,ワークシート2−1に記入する。
生徒から予想される回答は以下のとおり。
机間指導を行い,適宜
アドバイスをするとと
もに,時間をしっかり
とり,想定される事実
を整理して記入するさ
せる。2F住人 住人
管理人(中立)
〈F〉1F事前に「マンションの
図」をクラス全員に見
えるように模造紙等で
作成しておくと良い。
住人
チワワを飼って
いる「いちょ
う」さん〈A〉
〈E〉さん
住人
連続した2時間で行う
のが望ましい。
あるマンションで,ペットの飼育についての問題が生じています。ま
ず,問題の状況を確認しましょう。
クラスを6班に分ける。以下の「マンションの図」を示す。
いちょうさんは,ペットのチワワと一緒に暮らしています。マンション
では,規則でペット禁止のルールを決めているところもありますが,い
ちょうさんの住んでいるマンションでは,ペット飼育が禁止されていま
せん。同じように猫や犬を飼っている世帯が何軒かあります。しかし,
マンションに住む人たちの中には,犬のほえる声がうるさいし,フンの
悪臭もひどい。ペットの飼育は迷惑なので,何とかしてほしいと要望が
出されています。
さて,どのように問題を解決すればいいのでしょうか。
前時の授業内容の内,「どのようなルールであれば,受け入れることが
できるのでしょうか」について確認する。展開
本時から3時間かけて,「マンションのルールづくり」の授業を行うこ
とを提示する。
住人 〈B〉さん
猫を飼っている
がフンの処理を
しない。3F 朝ほえる犬を飼
っている「かえ
で」さん〈C〉
子どものいる
「もみじ」さん
〈D〉
マンション入居者一覧
(b) いく通りにも解釈されないものになっている。4F学習内容まとめルールの正
当性を示す
根拠・ルー
ルが適正と
なる要件
(d) ルールをつくる過程にみんなが参加している。
どのようなルールであれば受け入れることができるのでしょうか。
社会の秩序を維持したり,紛争を解決するルールは,その機能を果たす
限りにおいて正当なルールとして我々は受け入れることができる。
(c) 立場を替えても受け入れられるものになっている。導入
左記内容が生徒から答
えとして出てこなけれ
ば教師の方で説明を加
える。
また,ルールが正しい目的のためにつくられていることのほか,
(a) 目的に対して,適切なものになっている。
学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
整理しても良い。
指 導 上 の 留 意 点
‐ 62 ‐
なお,Fは中立的な立場で答を考え,第三時は司会の役割を担う。
(3) 第三時「ルールについて討論しよう」
4 飼育を認めるとして,ペットの種類を制限するかどうか。
3 ペット禁止をルール化するとして,以前から飼っていたペットをど
うするのか。
5 飼育を認めるとして,フンの処理を飼主がしなくてよいのか。導入・展開解決策を考
えるための
視点
1手段の相
当性
2明確性
3平等性
4手続の公
平性
指 導 上 の 留 意 点
各班で提案を行う。各班の提案をワークシート3−1に記入する。F班
は,「司会進行シート」に沿って司会・討論を進める。各班は,解決策
(ルール)及びその理由を発表し合い,また,その主張に対して質問を
受ける。教師は解決策(ルール)を板書する。
なお,解決策(ルール)を議論する際の論点は以下のとおり。
F班の進行に対して適
宜アドバイスを行う。
「考える視点シート」
の項目については,第
一時の展開「指導上の
留意点」を参照。
左記論点が生徒から出
されない場合は,教師
が例示する。
1 ペットの鳴き声は,住民の受忍限度(犬のほえる声の大きさ,時間
帯を考慮)を超えるものなのかどうか。
2 ペットのフンの悪臭は,住民の受忍限度を超えるものなのかどうか。
F班への指示終了後,
机間指導を行い,適宜
アドバイスする。
今日は,それぞれの班が作成した解決策について,まず自分で評価して
みましょう。
「考える視点シート」に沿って解決策(ルール)を再検討・話し合う。
その間にF班は司会の役割を担うので,教師は,F班に対して,「司会
進行シート」に沿って,後の討論の進め方について指示する。
それでは,それぞれの班が作成した解決策について発表し,どのような
解決策が望ましいか議論しましょう。まとめそれぞれの班で,解決策を作成してみましょう。
それぞれの立場に立った解決策(ルール)について各班で議論する。
ワークシート2−3に記入する。
第二時に作成した解決策(ルール)について再検討する。
学習内容 学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え)
罰則を設けることのみ
に着目させない。
解決策(ルール)はい
く通りもあることを意
識付けるようにする。
主張:ペットの飼育を禁止してほしい。
理由:安眠妨害である。
左記A〜Eに示すよう
な意見が出ない場合は
教師の方で意見を例示
する。
各班がワークシートの内容(事実・主張・理由)を発表する。生徒は,
各班が発表した内容をワークシート2−2にメモする。ワークシートに
メモした内容を踏まえて,各班に対して質問をする。
D 事実:Cの家の犬はうるさい。
主張:犬の飼育を禁止してほしい。
理由:朝,犬がほえるとうるさい。子どもが怖がっている。
E 事実:チワワの鳴き声がうるさい。展開
理由:チワワを生きがいにして,生活に欠かせない。
B 事実:猫のフンがくさい。
主張:猫の飼育を禁止してほしい。
理由:フンの臭いがしない環境にしてほしい。
C 事実:犬のフンの処理はしっかりしているが,朝,犬がほえる。
主張:犬の飼育を禁止しないでほしい。
理由:迷惑をかけているのは分かるが,仮に飼育を禁止しても,今
飼っている犬を捨てるわけにはいかない。しつけをきちんと
するように頑張る。
‐ 63 ‐
などが考えられる。
話し合いで解決策(ルール)を決定する(多数決でも良い)。
(4) 第四時 「ルールを評価しよう」
評価した内容をワークシート4−1に書く。
ワークシート4−1の内容について,何人かの生徒が発表する。まとめ展開話し合いで決定した解決策(ルール)について,ルールが適正となる要
件に沿って評価する。
ルールの特
質(ルール
は守るべき
である。ル
ールは変え
ることがで
きる)
評価する理由をしっか
り書くよう机間指導す
る。
「理由の適切性」も大
事なポイントなので,
生徒が考えるには難し
いようなら教師の方で
回答する。
ワークシート4−1
「マンションの問題を
解決するという目的を
実現するために適切な
手段ですか」
→個人の自由を,必要
以上に制限していない
か等について考えさせ
る。
発表した生徒の理由が,適切なのかどうかについて,他の生徒に確認す
る。
解決策(ルール)をあなたは受け入れられますか。その理由は何です
か。
指名された何人かの生徒が発表する。状況が変化して,ルールが,現状
に適応できない場合は,ルールを変える必要が出てくる,自分たちでつ
くったルールは自分たちで,現状に対応したルールに変更するべきでは
ないのかといったことを生徒が発表する。
この解決策(ルール)を皆さんは守れますか。
何人かの生徒が発表する。自分たちでつくったルールなのだから守るべ
きではないのかといったことを生徒が発表する。
新たな問題が発生して,「望ましい」解決策(ルール)で解決できない
状況が生じた時に,これまでのルールはどうしますか。
学習内容 学習活動(教師の指示・発問と生徒の予想される答え) 指 導 上 の 留 意 点導入 第一時で学習した,ルールが適正となる要件(1手段の相当性,2明確
性,3平等性,4手続の公平性)について確認する。
1時間で学習した,「どのようなルールなら受け入れられるか。」を思
い出してみましょう。まとめそれでは,どのような解決策がよいか全体で決定しましょう。
決定した解決策(ルール)をワークシート3−2に記入する。第四時に
本時で決まった解決策(ルール)について,評価することを生徒に伝え
る。
6 ペットの飼育を認めるとして,ペットに関わる費用負担(消臭剤・
しつけにかかる費用等)を誰が負担するのか。
生徒からの予想される解決策(ルール)は以下のとおり。展開
不合理な回答(例えば
「ペットを飼っている
住人にマンションから
出て行ってもらう」
「迷惑している人たち
が,マンションから出
て行く」等)は教師の
方から,理由を明示し
避ける。
A ペットの飼育を認める。ただし,消臭剤等の費用はペットの飼主が
負担する。また,飼主はペットのしつけを徹底する。
B ペットの飼育を原則禁止にする。ただし,希望する人に対して申請
書を出させ,その都度,自治会で審議する,以前から飼っていたペッ
トは特別に許可する(しつけは徹底する)。
‐ 64 ‐
「マンションのルールをつくろう」設例
管理人(中立)
〈F〉3F2F1F猫を飼っているが
フンの処理をしない
朝ほえる犬を飼って
いる「かえで」さん
〈C〉
子どものいる
「もみじ」さん
〈D〉
住人
住人 住人
住人 〈B〉さん
マンションの問題を解決しよう!
住人
チワワを飼っている
「いちょう」さん
〈A〉
〈E〉さん
マンションの入居者一覧4F いちょうさんは,ペットのチワワと一緒に暮らしていま
す。マンションでは,規則でペット禁止のルールを決めてい
るところもありますが,いちょうさんの住んでいるマンショ
ンでは,ペット飼育が禁止されていません。同じように猫や
犬を飼っている世帯が何軒かあります。しかし,マンション
に住む人たちの中には,犬のほえる声がうるさいし,フンの
悪臭もひどい。ペットの飼育は迷惑なので,何とかしてほし
いと要望が出されています。
さて,どのように問題を解決すればいいのでしょうか。
‐ 65 ‐
「マンションのルールをつくろう」考える視点シート
3年( )組( )番 氏名
★ 2時間目に考えた解決策(ルール)を,次の視点から再検討してみよう!
1 その解決策で不利益を受けるのは誰か。
2 その解決策では,どのような不利益を受けるのか。
3 その解決策で利益を受けるのは誰か。
4 その解決策で,どのような利益を受けるのか。
5 その解決策は,どのような目的の達成を目指しているのか。
6 その目的を達成するために,もう少し不利益の少ない方法はないのか。
7 その解決策は,ルールとして明確か。
8 解決策(ルール)をつくる過程に問題はないか。
9 解決策(ルール)は,みんなに平等であるか。
考 え る 視 点 シ ー ト
‐ 66 ‐
「マンションのルールをつくろう」司会進行シート
3年( )組( )番 氏名
1 司会班の自己紹介
司会は,以下の役割分担をしています。
1 解決策発表担当の( )
2 質疑・応答担当の( )
3 解決策の検討担当の( )
4 記録担当の( )
です。
2 解決策の発表
A 解決策を明確に発表する。
B 解決策の根拠としての理由を明確に発表する。
(2) では,次の順番で発表してください(対立する主張のある人を順番に)。
1 Aさんの立場
2 Bさんの立場
3 Cさんの立場
4 Dさんの立場
5 Eさんの立場
3 質疑・応答
〔特にないようなら,1班はありませんかと,各班それぞれを指名する。〕
4 解決策の検討
(1) それでは,クラス全体で話し合いたいと思います。自分の考えのある人はいませんか。
(2) 最後に,「望ましい」解決策(ルール)を決定したいと思います。しろまるしろまるさんの解決策に賛
成の人は挙手してください。しろさんかくしろさんかくさんの解決策に賛成の人は挙手してください。(以下,い
くつかある場合には続く。)賛成多数のため,??さんの解決策に決定します。
*十分,審議を尽くし,簡単に多数決による決定に持ち込
まないよう配慮する。
司会進行シート(管理人班専用シート)
(1) それぞれの役割の「望ましい」解決策を発表してもらいます。その際,次の2点をはっき
りさせて発表してください。
それでは,Aさん,Bさん,Cさん,Dさん,Eさんの立場の各班から,それぞれ質問や疑
問はありませんか。
〔特にないようなら,まず,1班の主張を支持する人はどうですか。逆に,2班の主張を支
持する人はどうですか。と各人をそれぞれを指名する。〕
‐ 67 ‐
「マンションのルールをつくろう」ワークシート1
3年( )組( )番 氏名
1 自分の身の回りにあるルールを,いくつか書いてみよう。
2 ルールは,何のためにあると思いますか。自分の考えを書いてみよう。
4 私たちは,どのようなルールであれば,受け入れることができるのでしょうか。C 受け入れられない
受け入れられるB 受け入れられない
受け入れられる
受け入れられない
身の回りにあるルールについて考えてみよう!
3 提示されたA・B・Cのルールを,あなたは受け入れることができますか。その理由も書い
てください。受け入れられない場合,受け入れられるルールに変えるにはどのようにすればよ
いですか。改正案を書いてください。
改 正 案A理 由
受け入れられる
‐ 68 ‐
「マンションのルールをつくろう」ワークシート2
3年( )組( )番 氏名
(1) 自分の立場(班)
(2) 事実(自分たちの部屋の様子)
(3) 事実に基づく主張(自分の希望する状況)
(4) そう主張する理由(それを希望する理由)
2 グループで議論し,出てきた主張について整理してみよう。
3 自分たちの班で議論して出てきた解決策(ルール)を書いてみよう。
マンションの問題を解決しよう!
1 資料を読み,マンションの問題状況についてグループ内で話し合い,自分の立場(班)につ
いて考えてみよう班自分の班主 張 理 由
事 実
‐ 69 ‐
「マンションのルールをつくろう」ワークシート3
3年( )組( )番 氏名
2 決定した解決策(ルール)を書いてみよう。自分の班
マンションの問題を解決しよう!
1 自分たちの班と他の5つの班がつくった解決策(ルール)を「考える視点シート」に沿って
再検討してみよう。そして,その理由を書いてみよう。
解 決 策 理 由班‐ 70 ‐
「マンションのルールをつくろう」ワークシート4
3年( )組( )番 氏名
1 解決策(ルール)について評価してみよう。
A:はい B:どちらでもない C:いいえ
2 1で評価した解決策(ルール)をあなたは受け入れられますか。その理由も書いてください。
3 1で評価した解決策(ルール)をあなたは守りますか。その理由も書いてください。
4 新しい入居者が入ってくるなど,このルールが適用できないような新たな問題が発生したら
どうしますか。
A B C
A B C
A B C
A B C
自分の置かれている立
場が替わっても,受け
入れることができる。
マンション問題を解決
するという目的を実現
するのに適切な手段で
ある。34
誰が読んでも同じよう
に読み取ることができ
る。
解決策を決定する過程
でみんなが参加してい
る。12
マンションの問題を解決しよう!
B か C に しろまる を 付 け た 理 由
ルール評価の項目 評 価 結 果
‐ 71 ‐

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