- これまでの経緯
公共工事コスト縮減対策については、平成9年4月4日に策定された「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」に基づき、同行動指針の対象期間である平成9年度から11年度までの3年間、各省庁が一致協力して施策を推進し、一定の成果を得てきました。
また、平成12年9月1日には、公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、平成12年度以降の新たな「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」が策定され、これを踏まえ、平成13年1月6日の省庁再編に伴い、運輸省、建設省及び北海道開発庁において策定した新行動計画を統合し、平成13年3月30日に国土交通省におけるコスト縮減のための具体的施策を盛り込んだ新行動計画を策定しました。
さらに、平成15年3月31日には、新行動指針だけでは、限界があることから、新行動指針を維持継続することに加え、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す「コスト構造改革」に取組むこととし、国土交通省は、「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」を策定し、?@事業のスピードアップ、?A計画・設計から管理までの各段階における最適化、?B調達の最適化 を見直しのポイントとし、各施策を実施しているところです。
これまでの経緯の詳細を巻末に示します。
- コスト縮減の取り組みの成果
(1)平成15年度コスト縮減取組み実績
1)公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針 (詳細は別紙−1)
- 実施施策
30施策 170項目(全項目数 174項目)
- 行動指針の項目をより具体化した行動計画の実施施策
30施策 304項目(全項目数 312項目)
2)国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム (詳細は別紙−2)
(2)平成15年度総合コスト縮減率 (詳細は別紙−3)
数値目標は、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す「コスト構造改革」の取り組みを適切に評価するため、従来からの工事コストの縮減に加え、規格の見直しによるコストの縮減、事業のスピードアップが図られることによる便益の向上、将来の維持管理費の縮減をも評価する「総合コスト縮減率」を設定し、平成15年度から5年間で、平成14年度における標準的な公共事業のコストを基準として、15%の総合コスト縮減率を達成することを目標としています。
平成15年度の総合コスト縮減率は、国土交通省・関係公団等合計で6.1%、政府全体(全府省・全公団等)で5.5%の低減となりました。また、企業物価、労務費等の下落を考慮した総合コスト縮減率は、国土交通省・関係公団等合計で7.3%、政府全体(全府省・全公団等)で6.7%の低減となりました。
- 国土交通省・関係公団等の平成15年度実績
総合コスト縮減率等 :縮減率:6.1% 縮減額:2,717億円
物価の下落等を含めた縮減率等:縮減率:7.3% 縮減額: 3,227億円
- 全府省・全公団等の平成15年度実績
総合コスト縮減率等 :縮減率:5.5% 縮減額: 3,049億円
物価の下落等を含めた縮減率等:縮減率:6.7% 縮減額: 3,691億円
なお、これらの縮減額は、社会資本整備の推進に充当し、公共事業全体の進捗を図っています。
(3)平成15年度公共事業コスト構造改革取り組み事例 (詳細は別紙−4)
1)公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針
工事コストの低減
- 既存躯体の有効利用によるコスト縮減(1計画手法の見直し)
- 新東京国際空港第一旅客ターミナルビルの改修に当たり、ターミナル施設の既存躯体及び大屋根等の一部を有効利用することで約6.4%のコスト縮減。(成田国際空港株式会社)
- 舗装開水路補強手法の計画見直しによるコスト縮減(1計画手法の見直し)
- 舗装開水路補強工事において、フリューム開水路への改修からひび割れ補修と部分打換へ変更することにより約58%のコスト縮減。(水資源機構)
- 地権者の造成協力による地盤改良工及び擁壁の削減(1計画手法の見直し)
- 造成協力により法面を緩勾配にすることで、地盤改良工及び擁壁を削減し、約42百万円のコスト縮減。(都市再生機構)
- 浮体構造ゲートの採用によるコスト縮減(3設計方法の見直し)
- 樋門の構造を鋼製のスライドゲートから浮体構造ゲートに変更することで、門柱・管理橋が不要になり、工事費を約60%縮減。
- 竹割り型構造物掘削工法の採用によりコスト縮減(3設計方法の見直し)
- 竹割り型構造物掘削工法の採用により、地山の掘削面積を最小限に抑え、工事費を約6%縮減するとともに、自然環境への影響も低減する。
- 複合構造の採用による橋梁構造の合理化(3設計方法の見直し)
- 橋脚柱部に鋼製橋脚とRC橋脚を剛性構造として接合することにより、アンカーフレームを省略することで約110百万円のコスト縮減。(阪神高速道路公団)
- 浮標用スラブ重錘の採用によるコスト縮減(3設計方法の見直し)
- 灯浮標の重錘(おもり)にスラブ鋼(くず鉄)を利用することで、製造コストが約34%縮減。
- 桁端切欠部補強工法の見直し(4技術開発の推進)
- 桁端切欠部の補強工事において、ジャッキアップ用の仮設縦横桁を増設して増設縦横桁をジャッキアップする工法から、既設主桁をジャッキアップする工法に変更し、約17.5%のコスト縮減。(首都高速道路公団)
- 法面補強工事における工法の見直し(4技術開発の推進)
- 幹線水路の法面補強工事で攪拌混合補強体による法面補強工法(ラディッシュアンカー工法)の採用により約48%のコスト縮減。(水資源機構)
- VE提案による岩盤仕上掘削の機械化・省力化(8入札・契約制度検討)
- ダムの基礎岩盤面の仕上掘削を、施工業者のVE提案により、ツインヘッダ掘削機を用いた機械掘削とし、約8%のコスト縮減。
工事の時間的コストの低減
- 特定構造物改築における重点整備・事業期間短縮によるコスト縮減(工事の時間的コストの低減)
- JR橋梁の改築において、橋梁形式から遮水壁土堤方式へ変更することで、事業期間を4年間短縮し、太田川流域の家屋浸水被害や農地の浸水被害の防止効果を早期発現。
ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)
工事における社会的コストの低減
- 他事業への連携により浚渫土砂の土捨て費用を縮減(工事における環境改善)
- 他事業の埋立事業との連携により、浚渫土砂の土捨て費用が縮減されるとともに、 浚渫土砂のリサイクルにより環境負荷量の低減を図り、社会的コストを低減。
2)国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム
事業のスピードアップ
- 住民参加手続きガイドラインの策定(【1】合意形成・協議・手続きの改善)
- 「国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン」を策定し、ガイドラインに基づき、各事業において、住民参加の取り組みの推進を図る。
計画・設計から管理までの各段階における最適化
- 山林保全制度を導入しコスト縮減 (【1】計画・設計の見直し)
- 付け替え林道の3路線について、道路の付替に代わり、林道の受益範囲の買収を行う。付替林道工事費を山林保全制度負担額に置き換えることで約80%のコスト縮減。
- 高規格幹線道路における追越車線付き2車線構造の導入(【1】計画・設計の見直し)
- 高規格幹線道路において、追越車線付きの2車線構造を導入できるように平成15年7月に道路構造令を改正するなど、地域に応じた規格の見直しを推進する。
- 水理模型実験の検証による規格等の見直し (【1】計画・設計の見直し)
- 防波堤工事において、水理模型実験を行うことにより基準によらないその地域海域にあった断面を検討し、約15%のコスト縮減。
- 設計の高度化によるコスト縮減 (【1】計画・設計の見直し)
- 超軟弱地盤における軟着式防波堤の設計において、現行の設計手法を見直し、現地実証試験により新設計手法を確立し、堤体築造費を約44%縮減。
- 設計の総点検の実施 (【1】計画・設計の見直し)
- 国土交通省においてストックされている全ての設計を対象として、予備設計から詳細設計、発注、施工まで、様々な設計の段階に応じた点検項目により、設計の見直しを実施。
- 設計VEの実施と成果の活用 (【1】計画・設計の見直し)
- 設計時にVE検討組織を設置し、基本設計あるいは実施設計に対しての代替案を提出し、検討を行うことで、建設コスト・ライフサイクルコスト等を縮減。
- 公共工事における新技術活用システム(【2】新技術の活用)
- 民間で開発された優れた技術の公共工事への活用を促進するため、技術の適切な評価、多様な入札契約方式の活用、技術情報への一般への提供等、技術活用に関する取組を総合的に行う。
- トンネル換気設備の制御方式の見直しによる電力量の削減検討(【2】新技術の活用)
- トンネル換気制御に簡易交通量計とファジー理論を組み合わせた新方式を用いることで、最適な換気を行うことにより電力料金を約56%縮減。
- 道路構造物の効率的な管理手法によるコスト縮減(【3】管理の見直し)
- 道路構造物の劣化予測や最適な補修工法の選定を行うことにより、道路構造物の使用期間中に必要な管理コストを最少化する効率的な管理手法を構築。(日本道路公団)
- 既設構造物の非破壊劣化診断技術の開発(【3】管理の見直し)
- トンネルなどのコンクリート構造物劣化診断に打音発生装置や打音解析装置を用いることで作業が効率化され、約40%のコスト縮減。
- ITを活用した施設管理によるコスト縮減(【3】管理の見直し)
- 公園管理センターで一括監視・情報の集中管理を行うことで、10年間で約35%の管理コストが縮減。
調達の最適化
- 新しい契約方式の試行によるコスト縮減(【1】入札・契約の見直し)
- 通常の入札方式では落札者となる業者に、さらにコスト縮減に関する技術提案を求めることにより協議を行い、合意に至った内容で契約する方式(技術提案付価格合意方式)により、工事契約額を約2.2%縮減(水資源機構)
- 出来高部分払い方式の導入に向けた試行の実施(【1】入札・契約の見直し)
- 出来高部分払い方式の導入に向け、平成15年度発注工事において試行を実施。
- ユニットプライス型積算方式の導入に向けた検討の実施(【2】積算の見直し)
- ユニットプライス型積算方式の導入に向け、制度設計を実施し、一部の工種について単価収集・調査を実施。