1高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン
平成 28 年3月に策定された住生活基本計画(全国計画)では、8つの目標の1つとして、
「高
齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現」が掲げられており、そのための基本的な施策
の1つに、
住宅のバリアフリー化やヒートショック対策を推進するとともに、
「新たな高齢者向け
住宅のガイドライン」を検討・創設することとされている。
本ガイドラインは、これを受けて、高齢になっても自宅で健康で快適な暮らしを送るために必
要な既存住宅の改修における配慮事項をまとめたものである。
別紙3 2第1.ガイドライン策定の背景
(1)社会の状況
1) 高齢化のさらなる進展
我が国では既に 65 歳以上の高齢者が 3,557 万人、高齢化率(全人口に占める 65 歳
以上人口の割合)は 28.1%(平成 30(2018)年9月現在)となっており、今後もさら
に高齢化が進み、平成 47(2035)年には高齢化率が 32%を超えると予測されている。
また、高齢者のいる世帯に占める高齢者のみの世帯が増加し、特に単独世帯が平成 47
(2035)年には 39.0%となることが予測されている。
特に、平成 37(2025)年には、団塊世代の全てが後期高齢者になるため、後期高齢
者(75 歳以上)人口は全国では平成 22(2010)年の約 1.5 倍、首都圏(埼玉県、千葉
県、東京都、神奈川県、茨城県)では約 1.8 倍と大幅に増加する見込みである。
2) 医療・介護需要と社会保障費の増大
高齢化の進展、特に介護が必要な高齢者や単身高齢者の増加は、今後も医療・介護
サービス需要と社会保障費の増大をもたらすと予測されており、
既にこの 30 年間で社
会保障費は3倍になっている。
高齢者が、住み慣れた地域で可能な限り健康で快適に暮らしつづけることができる
よう、地域において医療、介護、生活支援サービス等が提供される地域包括ケアシス
テム(注記)1
の構築を進めるとともに、介護予防、健康増進、多世代交流等を促進し、高齢
期の自立した生活を支える地域と住まいの整備が求められている。
(注記)1重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続け
ることができるよう、
住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組み。
(2)高齢者の状況
1) 退職後の期間の長期化と高齢期の暮らし
長寿命化により、我が国における平均寿命は男性 81 歳、女性 87 歳となり、退職後
の期間はこの四半世紀の間に、5年以上伸びている。また、1998 年から 2016 年の 18
年間で、高齢者の体力は5歳程度若返っていること等を示す調査結果もあり、元気な
高齢者が増えている。
一方で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である健康
寿命と平均寿命との差は、年々縮まってはいるものの、平成 28(2016)年時点におい
て、男性で約9年間、女性で約 12 年間となっており、単身・夫婦のみの世帯が増加す
る中、在宅介護サービスの利用を前提とした期間も想定する必要がある。
高齢者の多くは、
介護が必要になったとしても、
自宅での居住の継続を望んでおり、
退職後の長期にわたる期間を、健康で快適に暮らし、介護サービスの利用が必要とな
ったとしても可能な限り住み続けられるような住まいの備えが求められている。 32) 団塊世代を中心としたこれからの高齢者の特徴
これから後期高齢者となるのは、いわゆる団塊世代であるが、これまでの高齢者像
より健康で心身機能が衰えていないこと、退職後の就業率が高いこと、インターネッ
トの活用に慣れていること等、より活動的だといわれている。
また、自らの親世代の介護経験から、自らの介護に備える意識が醸成されている。
ただし、その一方で、核家族化により、家族、親族の介護が受けにくい、住宅ローン
の長期化等により経済的に余裕がないなどの戦後生まれの世代固有の特徴もある。
こうした団塊世代以降のこれからの高齢者の特徴を踏まえた住まいのあり方を考え
る必要がある。
(3)高齢者の住まいの状況
1) 高齢者の居住する住まいの現状
高齢者のいる世帯のうち8割以上が持ち家に居住しており、その住宅のうち約半分
は一定のバリアフリーの条件を備えている。平成 7(1995)年に、手すり設置や段差解
消等のバリアフリー基準を定めた「長寿社会対応住宅設計指針」が策定され、それ以
降に新築された持ち家の多くは、一定のバリアフリー性能を有している。
一方で、残りの約半分はバリアフリーの配慮がなく、昭和 56(1981)年前に建築さ
れた建物の場合は耐震性も現行の基準を満たしていない可能性がある。また、断熱性
能や設備等の面において劣っているものと考えられる。
こうした住まいの現状を踏まえると、特に築年の古い既存の住宅において、高齢期
の生活に適した性能の確保が必要である。
2) 高齢期に求められる住まいの性能
高齢期の生活においては、適切な温熱環境の確保が重要であることが明らかになり
つつある。
高齢者の家庭内の死亡事故は既に交通事故による死者数を上回っているが、
その原因として、転倒・転落等のほかに、近年浴槽内の溺死が増加していることがあ
(注記)2
。それには、入浴前後の温度の急激な変化による心血管系疾患、脳血管疾患、熱
中症等のいわゆるヒートショックが関係している。また、室内温度が血圧など高齢者
の健康に影響を与えることも分かってきている。
住まいの環境を要因として、転倒や転落による怪我や疾患、活動量の低下などにつ
ながり、さらに要介護になることを予防するため、高齢期の生活を考慮した住まいづ
くりが必要である。
(注記)2厚生労働省の「人口動態調査」によると、平成 29(2017)年時点で 65 歳以上の高齢者の
家庭内の死亡事故は 11,879 人、そのうち溺死が 5,508 人であり、交通事故による死者数
2,883 人を上回っている。
3) 住まいと世帯のミスマッチ
持ち家に居住する高齢者の多くは、子どもの独立等に伴い、広すぎる住宅に、夫婦
または単身で暮らしており、居住人数と住宅の規模にミスマッチが生じている。例え
ば、持ち家に居住する 65 歳以上の単身・夫婦のみ 1,136 万世帯のうち、その約 44%に 4あたる約 500 万世帯は 100 m2以上の住宅に住んでいる。部屋数が多く大きな庭などの
ある広い住宅の維持管理は、加齢に伴い困難になってくる。
高齢期の快適で自分らしい生活を楽しむためには、趣味や外出、交流など高齢期の
豊かな生活を送るための場として活用できる住まいに転換していくことが求められて
いる。こうした観点から、日常的な生活空間をコンパクトにまとめるとともに、余っ
た部屋は収納や趣味、交流などの別の使い方を工夫することが望ましい。
4) 高齢期の生活に配慮した住まいの選択
高齢者の多くは、
自宅での生活の継続を希望しており、
そこでの生活を安全・安心、
健康・快適で豊かなものにするには、自宅の改修が極めて有効である。また、その改
修は、
介護の必要にせまられて時間的な余裕がない中で行うのではなく、
気力、
体力、
金銭的にも余裕のある、高齢期を迎える前の早い段階から検討し、行うことが望まし
い。
一方で、高齢期の住まい方としては、自宅に住みつづけるのとは別に、立地のよい
マンション等への住替え、UJIターンによる地方への移住など、適所に住替える選
択もある。また、虚弱期に備えた住まいとして、サービス付き高齢者向け住宅や有料
老人ホーム等の選択肢も増えている。それぞれの世帯の状況に応じた住まい・住まい
方を選択することが重要である。 5第2.ガイドラインの目的と概要
(1)ガイドラインの目的
長期間の退職後の暮らしを支え、より豊かなものにするには、住まいに関する備えが
不可欠である。住宅は、安全・安心と健康・快適を保証し、身体的な負担や経済的な負
担を軽減するとともに、趣味や交流、外出などの活動を行いやすいなどの条件を満たす
必要がある。
また、社会的にも、医療・介護サービスへの需要が拡大し、社会保障費が増大する中
で、地域包括ケアシステムの根幹として、住み慣れた地域で住み続けられる基盤となる
住まいの確保が求められている。
それには、個々人が、高齢期にさしかかる前の可能な限り早い段階において、自らの
判断に基づき、高齢期の住まいや住まい方を選択し、必要な場合には住まいの改修を行
うことが望ましい。また、高齢者の多くは長年住み慣れた持ち家に居住し、そこでの安
全・安心、健康・快適な暮らしの継続を求めている。
こうした状況を踏まえ、本ガイドラインは、高齢期に備えた既存住宅の改修に関する
配慮事項を示し、高齢期を迎える居住者、関連する専門家や事業者、地方公共団体など
による活用を促すことにより、高齢期の豊かな暮らしの実現に資することを目指すもので
ある。
(2)ガイドラインの主な対象
1) 対象者
高齢期の暮らしへの備えは、早い時期に行うことが望ましい。このため、本ガイド
ラインは、65〜74 歳のいわゆる「アクティブシニア」といわれる世代及びこれから高
齢期を迎える 50〜64 歳のいわゆる「プレシニア」といわれる世代を主な対象とする。
また、本ガイドラインには、加齢に伴い心身機能が衰えてきた状態(いわゆる「フレ
イル」・「虚弱」
)や要介護状態になっても役立つものも含まれている。プレシニア、ア
クティブシニア、フレイル、要介護等の個々の状況に応じて広く本ガイドラインを活
用することができる。
2) 対象とする住宅
本ガイドラインは、持ち家の戸建住宅を主な対象としている。ただし、これに加え
て、マンションや賃貸住宅等の建て方(戸建・共同及び長屋建)や所有関係(持ち家・
借家)を問わず、全ての住宅において援用できる。なお、基礎的なバリアフリー性能
の確保等に関しては、
「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針(平成 13 年国土交通
省告示第 1301 号)
」を参照されたい。 6(3)ガイドラインが目指す住まいのイメージ
本ガイドラインは、住宅に関して以下の4つの目標を実現することを目指している。
1) 長く健康に暮らせる「住まい」
安全に安心して、身体的な負担や経済的な負担が少なく、外出や家事に便利で、虚
弱化を予防し、健康で快適に暮らしつづけられる「住まい」
2) 自立して自分らしく暮らせる「住まい」
外出、趣味、交流を楽しむなど豊かで多様な高齢期のライフスタイルに応じた空間
が確保され、地域とも連携して自立して自分らしく暮らしつづけられる「住まい」
3) 介護が必要になってからも暮らせる「住まい」
高齢期の生活に必要な住宅性能を確保し、介護が必要となっても軽微な対応(介護
保険の適用による手すりの設置や福祉用具等の使用)により暮らしつづけられる「住
まい」
4) 次世代に継承できる良質な「住まい」
長寿命化に対応し、子どもや孫を始めとして誰にとっても住みやすい社会的資産と
して次世代に継承できる良質な「住まい」
(4)改修を選択する際の留意事項
1) 高齢期の住まい・住まい方の自己選択
本ガイドラインは、既存住宅の改修における配慮事項を示している。ただし、高齢
期の住まいの選択には、改修に加えて、建替えや住替え等の多様な手段があり、いず
れの手段を選択するかは、高齢者やその家族が、自らの意向や心身・経済状況、家族・
住宅・地域の状況等を多面的に検討して判断する必要がある。高齢期の住まいや住ま
い方を選択する際の主要な視点は以下の通りである。
1自らの意向...どのような暮らしをしていきたいか 等
2自らの心身状況...現在の体力・気力、既往歴 等
3自らの経済状況...老後資金のうちから「住まいの備え」に充当可能な額 等
4家族の状況...子や親族等から見守りやケアの助力を得られるか 等
5住宅の状況...バリアフリー化の状況、設備の状況 等
6地域の状況...介護・医療サービスの充実度、コミュニティ資源 等
2) 高齢期の住まい・住まい方の専門家への相談
高齢期の住まいや住まい方の選択にあたっては、1)の自己選択を踏まえてその意
向を的確に実現するために、建築、資産活用、法律などの専門家やこれらの専門家に
よる相談窓口に相談し、多様な視点からの情報の整理を行うこと(アセスメント)が
望ましい。具体的には、こうした専門家が、高齢者や家族へのヒアリング、高齢者の
心身状況の確認、住宅の現況調査等を行い、必要に応じて医療・介護等の専門家の知
見も得て、個々の高齢者に応じた最適な住まいや住まい方の提案を行うこととなる。 7また、住宅の現況調査においては、建物の劣化や不具合の発生等の把握(インスペク
ション)もあわせて行うことが望ましい。
(5)ガイドラインの活用方法
1) 高齢期を迎える居住者(プレシニア・アクティブシニア)
プレシニアやアクティブシニアの居住者は、
改修を行うかどうか決めていない段階で
あっても、高齢期を迎えるにあたってどのような住まいの備えが必要かを考えるため
のチェックリストとして本ガイドラインを活用することが期待される。
また、改修を行うことを決めている場合には、
実施する改修内容の検討や専門家や事
業者と相談する際の参考資料として活用することが期待される。
2) 専門家・事業者
高齢期の住まいや住まい方について相談を受ける専門家は、
高齢期を迎えるにあたっ
ての住まいの備えの必要性、改修、住替え、建替えなどの選択肢のメリットや内容を
相談者に十分に説明し、適切な提案ができるようにするための参考資料として活用す
ることが期待される。
工務店、住宅供給事業者、住宅の設備、機器、建材を供給する事業者、エネルギー
供給事業者など住まいの改修に関する事業者は、高齢期を迎える居住者に対して必要
な改修の提案やその効果を説明するための材料として活用することが期待される。
また、本ガイドラインを活用し、
企業の退職前研修や地域の高齢者向けセミナーなど
において、早めの住まいの備えの重要性に関する周知普及を行うことも考えられる。
3) 地方公共団体
高齢期を迎える前に住まいの備えを促すことにより、
高齢期の居住環境の向上、健康
の維持・増進、介護予防、さらには社会保障費の抑制に資することは、行政上の大き
な課題の一つである。
地方公共団体の住宅部局や健康・福祉部局などが連携し、
セミナーの開催などの普及
啓発や住まい相談に本ガイドラインを活用することが期待される。 8第3.配慮事項
(1)項目一覧
既存住宅の改修にあたって、
高齢期の健康で快適な暮らしを実現するために配慮すべ
き重要項目は8つである。このうち、健康で快適な暮らしの実現への寄与度が大きく、
特に早期に改修を行うことが重要な項目を特に重要と考えられる項目として4つ設定
している。以下にその概要、期待される主な効果と重要性を示す。
なお、配慮項目は互いに関連しており、例えば、日常的な生活空間をまとめた上でそ
の空間の温熱環境を整える、
トイレや浴室と主要な動線のバリアフリーをあわせて行う
など、一つの項目に限らず広く実施項目を検討し、効果的に行うことが望ましい。
配慮項目 概要 期待される主な効果(注記)3 特に重要と考
えられる項目
1温熱環境 ・開口部など住宅の断熱性を高め
るとともに、暖冷房設備を適切に
設置する
・居室と非居室の間で過度な温度
差を生じさせない
・運動機能の維持と健康な期間の延伸
・ヒートショックの防止
くろまる
2外出のしや
すさ
・玄関や勝手口から道路まで安心
して移動できるようにする
・外出や来訪のしやすい玄関とする・外出や交流の促進による生活の充実
と健康の増進
・心身機能が衰えた場合の外出・訪問
の容易化
くろまる
3トイレ・浴室
の利用のし
やすさ
・寝室からトイレまで行きやすく
する
・トイレ、脱衣室や浴室の温熱・バ
リアフリー環境を確保する
・トイレや浴室の使いやすさ
・ヒートショックの防止
・虚弱化した場合の自宅で生活できる
期間の延伸
くろまる
4日常生活空
間の合理化
・日常的な生活空間を同じ階にま
とめる
・よく利用する空間を一体的にし、
広く使えるようにする
・開放的で豊かな生活空間の確保
・運動機能の低下予防と健康な期間の
延伸
・虚弱化した場合の自宅での生活継続
の容易化
くろまる
5主要動線上
のバリアフ
リー
・日常生活において家事、外出、ト
イレなどによく利用する動線を
バリアフリー化する
・転倒等の事故の防止と自立して生活
できる期間の延伸
・歩行が不自由になった場合でも軽微
な改造で対応可能
6設 備 の 導
入・更新
・安全性が高く、使いやすい、メン
テナンスが容易な設備の導入ま
たは更新
・安全性の向上
・家事等の軽減と利便性の向上やラン
ニングコストの低減
7光・音・匂い・
湿度など
・日照、採光、遮音、通風など適切
な室内環境を確保する
・健康で快適な生活環境の実現
・心身の感覚機能が低下した場合の生
活の容易化
8余剰空間の
活用
・余った部屋を収納、趣味、交流な
どの空間として利用する
・ライフスタイルに適した豊かな生活
空間の実現
・孤立防止による自宅で生活できる期
間の延伸
(注記)3 期待される主な効果は、配慮項目を踏まえた住宅改修を行うことにより一般的に期待される効果を
記載しているが、改修を行う項目、対象とする空間や部位、実施する内容等により異なる。 9(2)配慮事項
8つの配慮項目について、それぞれ取組の必要性、対応の方向性、改修方法の例、改
修の効果を示す。 101温熱環境
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・住まいで過ごす時間が長くなる
・ヒートショックや熱中症などにかかりやすくなる
・健康の維持に有用な家事などが負担になる
などの特徴があり、冬は暖かく、
夏は涼しい適切な温熱環境を確保することが必要で
ある。
しろまる特に、築年が古い住宅は、新築住宅と比べ、断熱性・気密性や設備性能の面で劣るこ
とが多いことから対応が必要となる。
【B.対応の方向性】
しろまるリビングや寝室などの居室において快適な室温を保持できるように、
開口部をはじめ
として住宅の断熱性を高める。
しろまる廊下、浴室、トイレ、洗面・脱衣室などの非居室と居室との間で過度な温度差が生じ
ないように、
非居室の開口部などの断熱性を高めるとともに、
暖冷房設備を設置する。
しろまる非居室に暖冷房設備を設置することが難しい場合には、
居室の暖冷房設備により非居
室も含めて暖冷房を行えるよう間取りなどを工夫する。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★リビングや寝室等の主な居室の開口部を内窓や高断熱サッシなどにより断熱化する。
★廊下、浴室、トイレ、洗面・脱衣室等の非居室の開口部を内窓や高断熱サッシ・玄関
ドアなどにより断熱化するとともに、暖冷房設備を適切に設置する。
★居室を中心にエアコンや床暖房などの暖冷房設備を設置するとともに、
暖冷房が非居
室にもとどくように、
間取りの工夫により、非居室も含めた暖冷房を行う空間を設定
する。
☆外壁、屋根や天井、床を断熱化する。
☆自動制御や遠隔操作の可能な暖冷房設備や、
省エネルギー性能の高い暖冷房設備を設
置する。
☆暖冷房効果が損なわれにくい熱交換型換気設備を設置する。
☆在来工法(タイル張り)の浴室をユニットバスにする。
【D.改修の効果】
しろまる住宅内での家事活動等を活発にし、運動機能を維持し、健康に自立して生活できる期
間を延ばすことができる。
しろまる適切な温熱環境を整えることにより、血圧低減による健康状態の維持・向上や、ヒー
トショックや熱中症などの事故を防止することができる。
しろまる加齢に伴い心身機能が衰え、
自ら室内の温度を調節することが難しくなった場合にも、
自動制御や遠隔操作の可能な暖冷房設備により、適切な温熱環境を確保できる。
しろまる断熱性や設備の暖冷房効率の向上により、
光熱費などのランニングコストを抑えるこ
とができる。 112外出のしやすさ
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・外出は家族や地域社会からの孤立を回避し、新たな生きがいや人間関係の構築に
つながる
・加齢に伴い心身の機能が衰えると、住宅内や外構部の段差や空間のせまさなどが、
外出を妨げる可能性がある
・外出の頻度が減ると運動機能や意欲が低下し、歩行障害や寝たきり、認知症の発
症のリスクが高まる
などの特徴があり、外出しやすい環境を整えることが必要である。
【B.対応の方向性】
しろまる玄関や勝手口から道路まで安心して移動できるように、段差の解消や手すり・照明の
設置などを行う。
しろまる外出や来訪しやすい玄関となるよう、
玄関スペースを広く確保するとともに、
縦手す
り、手すりの下地やベンチの設置などを行う。
しろまる玄関の改修が難しい場合は、
縁側や掃出し窓を改修し、バリアフリーの経路を確保す
る。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★玄関から道路まで安心して移動できるように、
滑りにくくするための整地やスロープ
などにより段差を解消し、手すりや照明などを設置する。
★外出や来訪のしやすい玄関とするため、下駄箱の大きさや配置の見直しなどにより、
玄関のスペース(土間など)を広く確保する。
★玄関の上がり框付近に縦手すり、手すりの下地やベンチなどを設置する。
★玄関の改修が難しい場合は、
縁側や掃き出し窓にデッキやスロープ、手すりを設置す
る。
☆高齢者の住まいであることが目立たないように、
玄関の内側にキャリーカートや杖な
どの収納スペースを確保する。
☆玄関の近くに福祉用具などに利用する電源や宅配ボックスを設置する。
☆下駄箱の大きさの見直しなどにより、他室や外部からの採光を確保する。
☆開閉が容易で通行しやすい玄関扉や門扉(引き戸など)にする。
☆駐車スペースは、周囲に十分なゆとりを確保する。
【D.改修の効果】
しろまる外出や来訪のしやすい環境を整え、
家族や地域との交流などが促進され生活が充実す
る。
しろまる外出機会の向上により、
運動機能や意欲の低下を予防し、
健康に自立して生活できる
期間を延ばすことができる。
しろまる加齢に伴い心身機能が衰えた場合にも、段差の解消や広いスペースの確保、手すりの
設置、車いす置場の確保などにより、外出をつづけることが容易になる。 123トイレ・浴室の利用しやすさ
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・自分でトイレを利用できることが自立した生活をつづけるために不可欠である
・トイレや浴室の利用は、身体の清潔を保ち健康に暮らしつづけるために重要である・要介護状態になった時、排泄介助のしやすさによって在宅継続の可能性が左右さ
れる
などの特徴があり、トイレや浴室を利用しやすい環境を整えることが必要である。
【B.対応の方向性】
しろまる夜間にも、寝室からトイレまで行きやすい環境を整える。
しろまるトイレや浴室を安全に安心して利用でき、動作がしすいよう、広い空間を確保し、バ
リアフリー環境を整える。
しろまるヒートショックを防止するため、
断熱や暖房方法の工夫により適切な温熱環境を確保
する。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★トイレに近い部屋を寝室とし、寝室からトイレまでの手すりの下地設置、段差解消、
照明増設などを行う。
★トイレや浴室内での安全のため、段差の解消、広さの確保、縦手すり、手すりの下地
や手洗い器の設置を行う。
★トイレ、浴室、洗面・脱衣室などが隣接している場合には、空間を広く使えるように
間仕切り壁の撤去などを行う。
★浴室、脱衣室やトイレにも適切な暖冷房設備を設置する。
☆出入りやそうじがしやすいように、
便器の向きに対し横方向への出入口の設置やドア
の引き戸化などを行う。
☆安全性の向上や家事の軽減、
ランニングコストの軽減のため、
トイレや浴室の設備機
器を更新する。
【D.改修の効果】
しろまるトイレや浴室を安心して快適に利用できるようになり、
日常生活のストレスや負担が
軽減される。
しろまる加齢に伴い心身機能が衰えた場合にも、必要に応じて介助を受けつつ、
トイレを利用
しやすくなるため、自宅で生活できる期間を延ばすことができる。 134日常生活空間の合理化
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・子育て期に合わせた広い住宅の維持管理が負担になる
・加齢に伴い、階段の昇り降りや、布団、洗濯物、買物袋等の重い荷物の運搬やそ
うじが負担になる
・そうじ、洗濯、料理などの家事による適度な活動をつづけることが、健康の維持
につながる
・清潔な環境を整えることが快適な生活につながる
などの特徴があり、過度な身体的負担なく家事ができるように、日常的に生活する空
間の合理化が必要である。
【B.対応の方向性】
しろまる日常的な生活空間である、居間、食事室、寝室、トイレ、浴室、玄関等を同じ階にす
る。
しろまる日常的によく利用するスペースの間仕切り等を少なくし、
広々と一体的に使えるよう
にする。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★玄関・トイレ・浴室・リビング・キッチンと同じ階の部屋を寝室として利用する。
★引き戸への変更、間仕切り壁の撤去、家具の配置がえなどにより、生活空間を一体的
にまとめる。
☆そうじがしやすい床仕上げとする。
☆減築して平屋にする。
【D.改修の効果】
しろまる居住人数などに応じて区切られていた空間をまとめることにより、
開放的で快適な生
活空間とすることができる。
しろまる家事をしやすくすることにより、
運動機能の低下を予防し、健康に自立して生活でき
る期間を延ばすことができる。
しろまる加齢に伴い心身機能が衰えた場合にも、階段の上り下りがなく、移動やそうじがしや
すい空間にしておくことにより、自宅での生活の継続が容易となる。 145主要動線上のバリアフリー
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・加齢に伴い身体機能が衰えると、小さな段差や暗がりであっても、転倒などの事
故が起きやすくなる
・事故を契機に、それまでできた日常生活動作(ADL(注記)4
)ができなくなるなど、
さらなる心身の衰えにつながり得る
などの特徴があり、日常生活において移動しやすく、
転倒しにくい環境を整えること
が必要である。
(注記)4 起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容など、日常生活を送るために最
低限必要な日常的な動作(Activities of Daily Living)。
【B.対応の方向性】
しろまる寝室やリビングからトイレや洗面・脱衣室、玄関までなど、日常生活において家事、
外出、トイレなどによく利用する動線(日常生活の主要な動線)のバリアフリー化な
どを行う。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★部屋の出入り口を引き戸などにして幅員を確保する。
★日常生活の主要な動線にある段差を解消する。
★日常生活の主要な動線に伝って歩ける手がかりや手すりの下地などを設ける。
☆滑りにくさや転倒時の衝撃に配慮した床仕上げとする。
☆物につまずかないように各部屋に十分な収納空間を確保する。
☆床面に電源ケーブルなどが露出しないようコンセント位置の付け替えや配線ルート
の確保を行う。
【D.改修の効果】
しろまる移動しやすい環境を整えることにより、転倒などの事故を防止し、
安全で安心な生活
につながるとともに、健康に自立して生活できる期間を延ばすことができる。
しろまる加齢に伴い足腰が弱り、
歩行が不自由になった場合にも、
日常生活の主要な動線をバ
リアフリー化しておけば、簡易な対応により、円滑な移動が可能となる。 156設備の導入、更新
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・加齢により、トイレや浴室のそうじや料理が負担になる
・火気の安全や緊急時の連絡、外出時の防犯などに特に気を配る必要がある
・情報通信技術を利用する高齢者が増えており、仕事や趣味、交流に活用すること
で豊かな生活につながり得る
・虚弱化の進行により、排泄や入浴などの日常的な動作に支障が生じる
などの特徴があり、こうした高齢期の生活に適した設備の導入や更新が必要である。
【B.対応の方向性】
しろまる日常生活の防災性、防犯性の向上などの観点から、安全性が高く、高齢者にとって使
いやすい設備を導入又は更新する。
しろまる家事の軽減、
日常生活の利便性の向上などの観点から、そうじやメンテナンスが容易
で、高齢者にとって使いやすい設備を導入又は更新する。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★安全性、利便性、快適性のため、トイレ、浴室、台所などの設備機器を更新する。
★外出時の利便性や防犯性の向上のため、
電動シャッター、
自動点灯照明、
防犯カメラ、
ドアホンなどを設置する。
★日常生活の利便性の向上のため、
インターネット回線やWi-Fi設備などの情報通
信環境を整える。
☆安全性の高い調理器具(IHコンロやSiセンサー付コンロ)を導入する。
☆見守り機能を有する機器や緊急通報システム機器を導入又はその準備をする。
☆聞き取りやすい警報音の住宅用火災報知器を設置する。
☆浴槽内の湯温を適切に制御できる給湯器を導入する。
☆座って使える調理台・洗面台などを導入する。
【D.改修の効果】
しろまる安全・安心で、健康・快適な住まいを保つことができる。
しろまる高齢者にとって使いやすい設備を導入することにより、
日常的な家事負担を軽減でき
る。
しろまる最新の設備を導入することにより、光熱費などのランニングコストを減らしつつ、生活の利便性や安全性を高めることができる。
しろまる加齢に伴い心身機能が衰えた場合にも、安全に料理、トイレ、入浴などを行いやすく
なり、自宅で自立して生活できる期間を延ばすことができる。 167光・音・匂い・湿度など
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・住まいで過ごす時間が長くなる
・加齢に伴い視力・聴力をはじめとした感覚機能が低下、または変化する
・個人によって、光、音、匂い、温湿度等に関する感覚の違いが生じる
などの特徴があり、長時間過ごしやすい快適な室内環境を確保する必要がある。
【B.対応の方向性】
しろまるリビングや寝室などの日常生活において長く過ごす空間を中心に、
日照、
採光、
遮音、
通風等について適切な環境を整える。
しろまる適切な室内環境を確保するために、間仕切り壁の撤去や照明の工夫、内装材の変更な
どを行う。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★採光や通風が良くなるように、間仕切り壁の撤去などを行う。
★落ち着いた雰囲気と手元の必要な明るさを確保できるよう、複数照明、間接照明、補
助照明、足元灯、調光機能などの照明計画を工夫する。
★吸音・遮音・調湿・防臭などの機能がある内装材に変更する。
☆開口部にルーバーや日除けなどを設置する。
☆日照・通風・採光・眺望が確保できるよう、開口部の位置や大きさを変更する。
【D.改修の効果】
しろまる適切な室内環境を整えることにより、健康で快適な生活を送ることができる。
しろまる加齢に伴い視力や聴力が低下した場合にも、
高齢期に適した照明や内装材を利用する
ことにより、読書や手作業、会話などを行いやすくなる。 178余剰空間の活用
【A.取組の必要性】
しろまる高齢期の生活においては、
・子育て期に合わせた住宅では子ども部屋など使わない部屋ができる
・自分の趣味や家族、友人との交流を楽しむ時間を確保しやすくなる
・単身世帯の場合には、地域から孤立すると生活の継続が困難になるケースもある
などの特徴があり、余った部屋を活用し、
個々のライフスタイルに応じて高齢期の豊
かな生活を楽しめる環境を整える必要がある。
【B.対応の方向性】
しろまる余った部屋を収納、趣味、交流などの空間として利用する。
しろまる縁側やテラスなどの半屋外空間の整備などを行う。
【C.改修方法の例】
(代表的な例は★、その他の例は☆で記載。)★余った部屋を納戸や収納庫として使い、
主に使う生活空間に物を置かないようにする。
★自分の趣味や生活を楽しめるように、
余った部屋を趣味室や教室などの空間として利
用する。
★家族や友人との交流を楽しめるように、
余った部屋を客間や宿泊室などの空間として
利用する。
☆近所との交流を楽しめるように、縁側やテラスなどの半屋外空間を整える。
☆寝室からリビングなどを通らず、屋外に直接出入りできる動線を確保する。
【D.改修の効果】
しろまる余った部屋を収納、趣味、交流などに利用することにより、個々のライフスタイルに
応じた豊かな生活を送りやすくなる。
しろまる単身世帯の場合にも、
趣味や交流を通じて地域からの孤立を防ぎ、
自宅で生活できる
期間を延ばすことができる。
しろまる加齢に伴い介助が必要になった場合にも、
寝室に屋外から直接出入りできるようにし
ておけば、同居の家族のプライバシーを確保しつつ、
外部の介護サービスを使いやす
い。

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