ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 子ども家庭局が実施する検討会等> 保育所における屋外階段設置要件に関する検討会> 第1回保育所における屋外階段設置要件に関する検討会議事録(2013年12月13日)




2013年12月13日 第1回保育所における屋外階段設置要件に関する検討会議事録

雇用均等・児童家庭局保育課

しろまる日時

平成25年12月13日(金) 15:00〜17:00


しろまる場所

都道府県会館 401会議室


しろまる出席者

メンバー

萩原一郎 氏 (独立行政法人建築研究所 防火研究グループ長)
佐野友紀 氏 (早稲田大学人間科学学術院 准教授)
高橋 紘 氏 (社会福祉法人至誠学舎立川 至誠第二保育園顧問、同法人保育事業本部事務局長、至誠保育総合研究所長)
古川容子 氏 (一般財団法人日本建築センター 評定部 設備防災課長代理)
町田直樹 氏 (東京都福祉保健局 少子社会対策部 保育支援課 保育計画係長)

オブザーバー

守谷専門官 (総務省 消防庁予防課)
津村係長 (国土交通省 住宅局建築指導課 野原課長補佐代理)

事務局

橋本保育課長、南幼保連携推進室長、堀保育課長補佐、馬場保育指導専門官

しろまる議題

(1) 座長の選出について
(2) 保育所における屋外階段設置要件について

しろまる配布資料

資料1 保育所における屋外階段設置要件に関する検討会 開催要綱
資料2 保育所における屋外階段設置要件について
資料3 乳幼児の避難行動特性と避難安全計画
参考資料1 関係条文等
参考資料2 避難階段等の構造の例

しろまる議事

しろまる橋本保育課長

定刻となりましたので、第 1 回「保育所における屋外階段設置要件に関する検討会」を開始いたします。

本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。座長が選出されるまで、議事進行を務めさせていただきます、保育課長の橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

この検討会でございますけれども、今年 6 月に閣議決定されました、「日本再興戦略」及び「規制改革実施計画」におきまして、保育室等が 4 階以上にある場合の認可保育所の設置基準につきまして、避難用の屋外階段の設置が義務付けられているわけでございますが、この設置要件につきまして「同等の安全性と代替手段を前提として緩和がなされるよう、合理的な程度の避難基準の範囲及び代替手段について検討する」こととされています。これを踏まえて今回、開催させていただいたわけでございます。

今回は、建築・消防の専門家の方々、それからまた保育の現場の方、自治体の御担当の方々にお集まりいただきました。メンバーの皆様方には、本当にお忙しい中をありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をいただきまして、有意義な検討成果を上げていただければと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

はじめに、本日御参集いただきました検討会のメンバーの皆様方を御紹介させていただきます。資料 1 ということで皆様方のお手元にお配りしております検討会開催要綱の 2 枚目のところに掲載しております名簿に沿いまして五十音順に御紹介させていただきます。

まず、早稲田大学人間科学学術院准教授の佐野友紀様でございます。

しろまる佐野准教授

佐野でございます。よろしくお願いします。

しろまる橋本保育課長

続きまして、社会福祉法人至誠学舎立川 至誠第二保育園顧問、同法人保育事業本部の事務局長、至誠保育総合研究所長の高橋紘様でございます。

しろまる高橋所長

高橋です。よろしくお願いします。

しろまる橋本保育課長

続きまして、独立行政法人建築研究所 防火研究グループ長の萩原一郎様でございます。

しろまる萩原グループ長

萩原です。よろしくお願いします。

しろまる橋本保育課長

続きまして、一般財団法人日本建築センター評定部 設備防災課長代理である古川容子様でございます。

しろまる古川課長代理

古川です。よろしくお願いします。

しろまる橋本保育課長

続きまして、東京都福祉保健局少子社会対策部 保育支援課 保育計画係長の町田直樹様でございます。

しろまる町田係長

町田です。どうぞよろしくお願いいたします。

しろまる橋本保育課長

続きまして、消防庁消防研究センター技術研究部長の山田常圭様でございます。なお、山田様におかれましては、本日は急な所用ということで、御欠席でございます。

また、オブザーバーといたしまして、国土交通省建築指導課の野原課長補佐ですが、本日は代理で津村係長においでいただいております。また、少し御到着が遅れておりますが、消防庁予防課の守谷専門官にもオブザーバーとして参加いただくことにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

続きまして、厚生労働省からの出席者を紹介させていただきます。私は保育課長の橋本でございます。隣が幼保連携推進室長の南でございます。

しろまる南幼保連携推進室長

よろしくお願いします。

しろまる橋本保育課長

その向こう側が保育指導専門官の馬場でございます。

しろまる馬場専門官

馬場でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

しろまる橋本保育課長

こちらは保育課長補佐の堀でございます。

しろまる堀課長補佐

堀です。よろしくお願いします。

しろまる橋本保育課長

続きまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。配布資料といたしまして、資料 1 が「保育所における屋外階段の設置要件に関する検討会 開催要綱」、資料 2 が「保育所における屋外階段設置要件について」、資料 3 としまして「乳幼児の避難行動特性と避難安全計画」。それから、参考資料 1 といたしまして「関係条文等」の抜粋、参考資料 2 が今回の検討の対象となります「避難階段等の構造の例」を参考までに配布させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。以上でございますが、何か漏れなどはございませんでしょうか。

それでは、座長の選出に移りたいと存じます。今回の開催要綱の 2 (2) におきまして、「検討会に座長を置き、構成員の互選により定める」とさせていただいております。検討会のメンバーの皆様方におかれましては、座長の選出をお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。

しろまる佐野准教授

個人的には、建築研究所の萩原一郎様がよろしいのではないかと思います。

しろまる橋本保育課長

ありがとうございます。他の皆様はいかがでしょうか。

(「賛成」の声あり)

しろまる橋本保育課長

ありがとうございます。それでは、萩原様を推薦するとの御意見をいただきましたので、萩原様にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

しろまる萩原グループ長

はい。

しろまる橋本保育課長

それでは、萩原様に座長をお引き受けいただきたいと存じます。早速でございますが、座長席にお移りください。今後の議事進行につきましては、座長にお願いしたいと存じます。

しろまる萩原座長

それでは、座長を引き受けさせていただきたいと思います。実は、この保育所に関する基準の見直しは、ちょうど 10 年くらい前に同じような検討会が設置されて、そこでも参加させていただいたところなので、そういうこともあって今回参加させていただいたのではないかと思いますが、今回は座長としての任を拝しましたので、皆様よろしくお願いいたします。

冒頭の御挨拶にありましたように、社会ニーズとして保育所の設置が叫ばれていることから、こういう規制の見直しの検討が行われるのかと思いますけれども、前回の見直しのときにも安全性は落とさずにどうするかということで議論は進めてまいりましたので、今回の検討に当たりましても、そこだけは押さえて適切な検討を進めていただければと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。

それでは、議事次第が用意されていますので、それに従って議事を進めさせていただきます。本日は第 1 回ですので、まずはこの検討会開催の背景や現行制度、検討の方向性について、事務局から説明をお願いいたします。

しろまる堀課長補佐

保育課長補佐の堀でございます。どうぞよろしくお願いいたします。資料 2 「保育所における屋外階段設置要件について」と参考資料 2 「避難階段等の構造の例」をお配りしておりますので、それをご覧いただきながら説明をお聞きいただければと思います。資料 2 の方を 1 ページおめくりいただければと思います。先ほど課長から少しお話しさせていただきましたけれども、この検討会の趣旨・背景でございます。今年 6 月に「日本再興戦略」と「規制改革実施計画」を閣議決定してございます。その中で、ここにございますように「屋外階段設置要件の見直し」が規定されたわけでございますけれども、事業所内保育施設を 4 階以上に設置する場合は雇用保険の関係の助成金があるわけですけれども、その助成要件が、基本的に認可保育所の基準に準拠しているということでございまして、そうすると、既存のオフィスビルの高層階に事業所内保育施設をつくろうとした場合に、 4 階以上だと屋外避難階段が必ず必要になってくる。そうすると、なかなか既存のオフィスビルにはつくれないということになっておりますので、そこについて、ここにありますように「同等の安全性と代替手段を前提として緩和がなされるよう、合理的な程度の避難基準の範囲及び代替手段について」検討することになったということでございます。

次のページは「現行制度の概要」ということで、主に避難基準に関わる事項について、まとめさせていただいております。ここにある事項は、先ほど座長からお話がありましたけれども、平成 14 年に省令の見直しがされておりまして、改正された事項を 3 点ほど挙げさせていただいております。もともと保育所の基準は最低基準ということで厚生労働省令で定められていたわけでございます。今は地方分権の関係で厚生労働省令で定められた基準を基に各自治体が条例で定めることになっているところでございます。

平成 14 年の改正の中身ですけれど、しろまる1としまして、乳児室、ほふく室、保育室及び遊戯室をまとめて「保育室等」といっておりますけれども、これを 2 階に設ける場合の建物は、耐火建築物又は準耐火建築物であることが必要とされました。ただ、(注記)印にございますように、建築基準法上は、保育室等が 3 階以上にある場合は耐火建築物ということになっておりますので、基本的に今回の検討の対象は 4 階以上のところでございますので、耐火建築物についての検討ということになろうかと考えております。

しろまる2といたしまして「保育室等を 2 階以上に設ける場合について」ということで、(注記)印の一つ目ですけれども、常用、避難用をそれぞれ一つずつ、以下にありますような施設又は階段といったものを設けなければならないということになっております。以下の表のうち、下線が引いてありますところが平成 14 年の改正のときに加わった、あるいは見直されたものでございます。

平成 14 年の改正につきまして、もともと改正前は「 2 階」と「 3 階以上」の二つに分かれていたものでございます。「 2 階」部分につきましては、常用が屋内階段で避難用が屋外階段と傾斜路等と規定されておりました。参考資料 2 をご覧いただければと思います。これは平成 14 年改正時の資料でございますが、 1 ページ目が屋内階段と屋外階段の構造の例ということで、ここでは基本的に屋内階段として特に規定はないと書いてありますけれども、普通の階段になっております。それから、避難用のところに「傾斜路等」とありますが、これは参考資料 2 4 ページ、 5 ページをご覧いただければと思います。傾斜路は、いわゆるスロープでございますが、傾斜路等の「等」は「これに準ずる設備」ということで、非常用の滑り台について 5 ページに記載されています。これらを平成 14 年改正におきましては右側の欄の「現行」の常用のところで屋内階段に「屋外階段」を追加しました。避難用のところには屋外階段、傾斜路等に加えまして「特別避難階段に準じた屋内避難階段又は特別避難階段」と「待避上有効なバルコニー」でございます。参考資料 2 2 ページ目が特別避難階段の構造ということで、 6 ページ目が屋内避難階段の構造でございます。違いはどこかということでございますけれども、大きなところは階段室と屋内の間に付室又はバルコニーを設けまして煙の侵入等を防ぐといった構造になっているのが 2 ページ目の特別避難階段でございます。この規定にございます「特別避難階段に準じた屋内避難階段」と申しますのは、 6 ページ目の屋内避難階段を基本としつつ、階段室と屋内との間に付室又はバルコニーといったものを設けたものでございます。それから、「待避上有効なバルコニー」というのが参考資料 2 3 ページ目にございます。開口部から一定の距離を保って待避上有効な部分を持つバルコニーを「待避上有効なバルコニー」ということで規定しているところでございます。以上が 2 階の部分でございます。

3 階以上」の部分でございますけれども、常用の場合ですと改正前は屋内避難階段又は特別避難階段。避難用は屋外避難階段という規定でございましたが、これを「 3 階」と「 4 階以上」に分けまして、「 3 階」のところは常用に「屋外階段」を付け加えております。避難用のところは屋外避難階段に変えて「屋外階段」、「傾斜路等」、「特別避難階段に準じた屋内避難階段又は特別避難階段」を加えたということでございます。屋外避難階段であったものを屋外階段に変えておりますけれども、これは 3 階のところは耐火建築物となっているので避難階段構造でなくてもよいということで、このとき屋外階段としたということになっております。

それから「 4 階以上」のところですが、当時の検討では基本的に外出の利便が損なわれるといったことによりまして見直しを行わなかったということで、常用のところに屋外避難階段を付け加えた以外は見直しを検討しなかったとされているところでございます。

それから、しろまる3として、これは階段の構造とは直接の関係はありませんけれども、保育所の調理室の関係で、スプリンクラー等を設置した場合には、調理室以外の部分と防火区画を設けなくてもよいということにするという見直しが行われたということでございます。

次のページは、実際の児童福祉法に基づく厚生労働省令の規定でございます。第 6 条におきまして「児童福祉施設と非常災害」ということで、軽便消火器等の消火用具を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を立て、これに対する不断の注意と訓練をするように努めなければならないという規定と、 2 項におきまして、前項の訓練のうち、避難及び消火に対する訓練は、少なくとも毎月 1 回は、これを行わなければならないという規定がございます。

それから、第 32 条が「設備の基準」でございまして、ここに記載されておりますように、先ほど申し上げた常用と避難用にそれぞれ一つずつ設けなければばらないという規定になっております。「 2 階」部分の避難用のところの 1 項が屋内避難階段と特別避難階段の規定でございまして、建築基準法施行令第 123 条第 1 項が屋内避難階段でございまして、同条第 3 項が特別避難階段の規定でございます。ただし、同条第 1 項の屋内避難階段の場合は、その構造は、建築物の 1 階から 2 階までの部分に限り、屋内と階段室とはバルコニー又は付室を通じて連絡すること、かつ、同条第 3 項の特別避難階段の規定の第 2 号、第 3 号及び第 9 号を準用するということで、バルコニーや付室については耐火構造にするとか、不燃材料にするといった規定を準用しているということで、これが特別避難階段に準じた屋内避難階段の規定となっているということでございます。

次のページが「 3 階」あるいは「 4 階以上」の部分で、 3 階の避難用の第 1 項のところに同様の規定があるということで御確認いただければと思います。それから、ハのところに「ロに掲げる施設及び設備が避難上有効な位置に設けられ」と書いてありますが、これは一つの階段の近くで火災が発生したときに、その他の別の階段が使えなくなるようなところでは駄目ですよということでございます。かつ、「保育室等の各部分からその一つの階段に至る歩行距離が 30 メートル以下となるように設けられていること」といった規定が設けられているところでございます。

続きまして、 5 ページでございます。今回の「見直しの検討」のところでございますけれども、考え方といたしまして、平成 14 年の見直しにおける改正理由といったものを参考に記載させていただいております。

しろまる1「階段の構造」のところですけれども、当時の改正の際には、煙に汚染されにくい空間確保のため、現行認められている屋外階段及び傾斜路 (3 階以上の場合は屋外避難階段 ) と同等と評価できるものとして、屋内と階段室との間に一定の付室等を有する屋内避難階段 (3 階以上の場合は屋外避難階段 ) 、それから、 2 階部分には待避上有効なバルコニーを追加するということ。その理由として、「屋内と階段室との間に一定の付室等を有する屋内避難階段」については、階段室前に室を設けて階段室への煙の侵入を少なくすることで、階段室の安全性を高めているものであるということ。それから、バルコニーにつきましては、一時的な待避が可能であり、かつ、消防隊による救助も期待できるものであるということで説明がなされているところでございます。なお、一番下の丸で、バルコニーにつきましては、建基法上は直通階段には該当しないので、保育室等から 50 メートル以内に直通階段を設ける必要があるとされているところでございます。少し戻っていただいて、屋外階段についてでございますけれども、改正前の最低基準では 3 階に保育室等を設ける場合は避難階段構造でなければならないということでありましたが、 3 階の場合は、先ほど御説明したように、耐火建築物であることを勘案して、避難階段構造であることを要しないという見直しをしたということでございます。なお、 4 階以上の場合につきましては、屋上に屋外遊戯場がある場合等は別として、一般に外出の利便性が損なわれることから、見直しの検討を行わなかったということで、安全性の観点から見直しの検討を行わなかった、ということではないという説明がされているところでございます。

6 ページでございます。「見直しの検討」のところでございますけれども、「日本再興戦略」及び「規制改革実施計画」におきましては、「同等の安全性と代替手段を前提として合理的な程度の避難基準の範囲及び代替手段について検討」するとされています。従いまして、まずは現行 4 階以上に保育室等を設置する場合には、避難用としての屋外避難階段だけが認められておりますけれども、これと同等の安全性を有するものとして、どのようなものが認められるかということについて検討することになろうかと考えております。

その検討の方向性といたしましては、特に、 3 階に保育室等を設置する場合に認められている、しろまる1の「傾斜路等」としろまる2の ( ) 特別避難階段に準じた屋内避難階段、 ( ) 特別避難階段といったものについて、 4 階以上に認められるかどうかといったことを検討するのではないかと考えているところでございます。

参考といたしまして「建築基準法における避難階段の設置に関する規定」ということで、地下の部分は省略しておりますけれども、基本的に建築物の 5 階以上の階におきましては、右側にありますように「直通階段又は避難階段」、これは屋内・屋外の避難階段ですが、「又は特別避難階段としなければならない」とされています。また、建築物の 15 階以上の階は「特別避難階段としなければならない」ということで、屋内・屋外の避難階段ではなく、特別避難階段が求められているということでございます。

次のページに、建築基準法施行令の今申し上げました部分、まず第 122 条が避難階段の設置に関する規定でございます。第 123 条第 1 項が屋内に設ける避難階段、第 2 項が屋外に設ける避難階段、第 3 項として特別避難階段の規定。そのうち、第 2 号・第 3 号・第 9 号が特別避難階段に準じた屋内避難階段の規定に準用されているということでございます。

以上、簡単ではございますけれども説明とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

しろまる萩原座長

説明をありがとうございました。今の説明に対する質疑については、後ほどまとめてということでお願いしたいと思います。

保育所からの避難については、佐野委員や古川委員が最近精力的に研究されていますので、それについてここで御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

しろまる佐野准教授

早稲田大学の佐野でございます。これから、研究報告をさせていただきたいと思いますが、内容に詳しい古川さんから御報告させていただきます。この内容につきましては、我々は建築の分野の防災の専門家ということで、この問題、特に高層建築物の中の保育施設の問題に着目しておりまして、この検討会とは別で独自に研究を行ったものでございます。ですから、今回の検討と多少ずれがあるところ等もあると思いますけれども、そういう立場で、まずお聞きいただいて、現状をまず知っていただいた上で議論の参考にしていただければと考えております。よろしくお願いします。

しろまる古川課長代理

日本建築センターの古川です。よろしくお願いいたします。ただ今、佐野先生からお話がありましたように、私と佐野先生ほか、いろいろな専門家が集まって、高層建築物における乳幼児、主に自力避難が困難な乳幼児の避難について、主に火災時の避難安全性について、ずっと研究を行っております。私の立場というのは、もともと建築の防災の方ですけれども、プライベートでは子どもが二人、中学生と小学生の子どもがおります。上と下の歳が離れている関係で、足かけ 12 年ほど保育園に通い詰めました。保育園を 3 か所変わっておりまして、母親としての立場からの保育園の事情もよく分かっているつもりです。研究者という立場と建築というところと母親として保育園が足りないということも非常によく分かっておりますので、その辺りを踏まえて研究に参加させていただいております。

本日は、これまでの研究の成果を少し発表させていただきますけれども、ある保育園で避難訓練を行って、そこの状況から、いろいろな分析を行いました。その保育園に全面協力をいただいておりまして、今回は皆様の御理解の一助のためにいろいろな写真をこれからご覧いただきますけれども、あくまでこれはこの場での説明のためということで御理解いただければと思います。申し訳ないのですが写真撮影等も、こちらのパワーポイントについては御遠慮いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、まず私どもがこういった研究を始めた背景から御説明しますと、皆様には釈迦に説法のようなことになりますが、ご存じのように待機児童ということが問題になっておりまして、待機児童の定義によっていろいろな数字がありますけれども、全国で 2 2,500 人という数字がこちらでは目についたので、ここで掲載しております。「待機児童ゼロ作戦」ということで保育サービスの量的拡充や提供主体の多様化ということを検討されてきたかと思いますが、その結果、認可外の保育所が増加しているというところも事実だと思います。保育園の中には、ご存じかと思いますが認可保育所の他に認証保育園、無認可保育所というものも多々あるということです。その認可保育所の増加の背景、さらに背景としまして特に都市部では待機児童問題もそうですけれども、交通利便性を確保したり、土地が足りないということもあって、高層階に保育施設が増加しているという状況があります。

高層階に保育施設が増えるということは、自力避難が困難な乳幼児の避難安全性というところをまず第一優先に考える必要性があると思います。ただし、自力避難困難者の避難安全性というのは、乳幼児に限らず高齢者等もそうですが、現状として実態の把握が難しくて、実際に避難しなければならない状況になったときに、どういうことが起こるかという実態把握というものが進んでいない状況です。私どもとしては、まずは実態調査で乳幼児の避難行動特性を把握するところから始めようということで、乳幼児の避難訓練を通して避難行動の把握を行っているところでございます。

今回、目的とその結論としまして 3 点考えております。まず、高層建築物における保育施設の基準や設置状況を整理するということ。それから、保育施設において避難訓練を調査して、低層のいわゆる皆様が保育園とか幼稚園と聞いて思い浮かべるような、園庭に面した形の保育園と、それから新しいタイプの高層階に設置されているような保育園とを比較して、どういうことが違うのかということを考えるということ。その結果として、高層保育施設における避難安全計画というものを提案していくことが最終的な目的と考えております。

保育所の設置の状況ですが、これも皆様よくご存じかと思いますが、これは一昨年にホームページなどで調査したところで、まず認可保育所については、高層階というところで 8 階に 1 件、 6 階に 2 件ありました。これは少し字が小さくて見づらいのですが、神奈川・埼玉・千葉・東京都という 1 3 県の状況です。次に、無認可になりますともう少し増えまして、一番高いところで東京都の 30 階というところに 1 件ございまして、神奈川は 13 階と 8 階に 2 件ということで高層の保育所が増えてきている。ただ、これはあくまでもホームページで見つけられたものだけで、このほか企業内の保育所や保育所と名前がつかないような、いわゆるベビーホテルというものがあったり、いろいろだと思いますが、そういったものはもしかするともう少しあるかもしれません。

これは皆様よくご存じのことですが、保育施設にはこういった設置基準があって、必要な設備が決まっていたり、保育士の配置に関しても必要な人数が決まっている。さらに、先ほども資料にありましたが、階段に関してもこういったことが決まっているということがあります。その結果、保育室面積には明確な基準があるので、園児人数の算定が可能。これは建築基準法の世界では部屋の面積に人口密度を掛けて、どれぐらいの人数がそこに在館しているかということを考えます。その在館している人数が逃げられるか逃げられないかということを考えますので、保育施設の面積が決まっているということは園児の人数が算定できるということにつながるということです。さらに、保育者人数に明確な基準があるということで、介助者人数も把握できるということです。ただし、避難関連規定は 4 階以上は全て現状では同基準であるので、これについては検討が必要であるけれども、何らか歩行困難な園児を含めた避難の基準というものを検討していくことはできるのではないか。そういう可能性があるということを示しております。

以上のような背景を含めまして、ここからは避難訓練調査について説明したいと思います。今回は、 2 か所について説明いたします。まず、保育施設 A は低層 2 階建てのものです。園庭に面してバルコニーがついていて、 1 階はテラスが回っていて直接外に出られる形で、 2 階もバルコニーからぐるりと回ってプールのところを通って真ん中の廊下に入っていけるという施設です。保育施設 B 8 階にあります。こちらは 8 階建ての 8 階にあります。駅前の保育所で複合建築物に入っています。中庭に面してテラスがありまして、テラスに面している部分は全て保育室になっていますが、保育室の中から直接園庭に出られるような形になっている。保育施設 B 8 階建ての主に公共施設が入っているビルです。 1 7 階は図書館やメディアセンターといった割と公共性の高い施設が入っている建築物で、その最上階にあります。園庭が中庭の形でとってありまして、避難階段が 4 か所あります。廊下はぐるりと回っている防災計画をよく考えられた建築物です。いずれも認可保育園です。

調査方法としては、決まったところにビデオカメラを固定しまして、廊下や階段等の避難速度を撮影して後ほど撮影した状況から歩行速度を測りました。園児や保育士の状況も撮影しました。訓練が終わった後にヒアリング調査やアンケート調査を行いました。こちらがそれぞれの状況ですが保育施設 A と保育施設 B を比べると、 A の方が低層の方です。こちらは 0 歳児 11 人、 1 歳児 25 人、その他 2 歳児 29 人、 3 歳児 28 人、 4 歳児 33 人、 5 歳児が 54 人ということで、保育施設 B 0 歳児 11 人から始まって、 B の方が少し園児の数は少ないという形になっています。

避難の方法としては、 0 歳児は歩けませんのでおんぶ又は抱っこをしてもらったり、あるいは大型ベビーカーに乗せてもらったりして避難しています。 1 歳児は、歩ける子どもは歩かせて、歩けない子どもは散歩車に乗せたりということでしたが、最終的には外に出てからは全員散歩車に乗せてまとめて運んだという状況です。 2 歳以上は全て自分で歩かせたということです。保育施設 B の方も大体同じですが、保育施設 A は低層で園庭に面していますので、散歩車に乗せて直接外に運ぶことができますが、保育施設 B は階段の中を散歩車やベビーカーというわけにいきませんので、 0 歳児に関しては廊下は散歩車で運んで、階段はおんぶ又は抱っこで下りていったということです。 1 歳児に関しては、階段までそれほど距離がなかったので頑張って階段まで歩かせていまして、階段はおんぶや抱っこをしたり歩けそうな子どもは歩かせたりということで避難させました。こちらも 2 歳児以上は自力歩行です。ここにまとめて書いてありますが、保育施設 A は園児 180 人と保育士が 38 人、 B が園児 125 人と保育士 19 人です。

避難の方法ですけれども、給食室の 1 階での出火を想定しまして、 1 階の子どもはそのまま直接園庭に出る。 2 階の子どもは集まって階段を下りていくという形をとりました。保育施設 B はまず地震が起きます。地震が起きた後に給食室の厨房で出火が起きて、 0 1 歳児は下の階段から、 2 歳児以上は上の階段から逃げるということで、このときは直下階の 7 階まで避難することで避難完了という形にしました。後ほど動画でお見せしますが、これが保育施設 A 0 歳児の避難の様子です。日よけのシートがかかっている裏側のこの辺りが保育施設ですが、あまり見えません。ここに開口部の扉がありまして、ここから保育士がみんな出てきて、あらかじめお散歩カー、大型ベビーカーが用意してあって、ここにどんどん子どもたちを乗せていった。そういう避難の方法をとりました。これは 1 歳児ですけれども、 1 歳児は取りあえず外までは自分で頑張って出なさいということで外に出して、そこからこれがお散歩カーですが、これに乗せましてこうやって運んだという形です。ただ、このときに保育士はここで集めておこうとしたのですが、取りに行ったもう一人の保育士に皆ついて行ってしまって、仕方がないから、そのまま一緒にこちらまで連れてきてまとめて乗せたということです。これが 2 5 歳児の避難で、先ほど階段を下りると申し上げましたが、これが 1 か所ある階段のところ、ここをみんなで下りて来て、こういった形で昇降口から外に出て行くということです。最後は園庭に集まって人数確認をしているということです。

次に、こちらが保育施設 B ですけれども、この写真が保育施設が入っている全体の建物で、最上階の 8 階に保育施設があります。真ん中の中庭の状況をこちらから撮影したのがこの写真ですが、中庭の周りにこういった形で廊下が回っていて、非常に明るくて快適な空間になっています。これが避難の様子です。こちらの保育施設はまず地震が起こったという想定だったので、みんな防災ずきんを被っています。 3 歳以上の子どもは防災ずきんを被って逃げました。これは階段室の前で避難を待っているところです。というのは、最初に 2 歳児が避難を始めてしまったので、階段室の中でなかなか前に進まなくて、階段に入れなくて、ここで階段に入るのを待っているということです。こちらは階段 2 か所に分かれて避難していますが、手前側の階段は 0 1 歳児が避難しましたので、その子どもたちは先に終わって 7 階の一時待機場所で集まって飽きてしまっていますが、それを保育士がなだめて「もう少し待って」と言っているところです。これが階段の中です。これが多分 2 歳児か 3 歳児だと思いますが、とにかく怖くて手摺りにつかまらないと逃げられないので、両手で手摺りにつかまって一歩ずつ下りている状況です。そこを後から後からみんなで逃げて行って、こういう感じで階段室が混雑しているので、他の子どもたちは廊下で待っていたということです。こちらの避難が終わった子どもたちは、こういった形で 7 階で並んで待っているということです。この辺りのことは後で佐野先生から御説明いただきます。

結果としてどうなったかというと、まず 0 1 歳児は避難準備時間というものが必要であるということが分かりました。つまり、大型ベビーカーに乗せたり散歩車に乗せたり、あるいは抱っこしたりということにある程度時間がかかりますので、普通の大人であれば火事ですと言ったらバッと逃げられるのですが、その準備をする時間が必要だということです。大型ベビーカーと散歩車に関しては、保育施設 A B でも大体 5 秒ぐらいで乗せ終わっていますが、抱っこひもの装着に平均 52 秒かかって、標準偏差が 13.35 ということで、ここは非常に個人差が大きく出ました。抱っこひもは今いろいろなタイプがありまして、おんぶをしたり抱っこをしたりが不慣れな保育士もいて、ここはかなり時間がかかるということが分かりました。こちらがそれをまとめたところですが、 1 階の保育室からそのまま園庭へ避難できて、まとめて行けるということで大型ベビーカー・散歩車はかなり有効な手段だということが分かりました。しかし、抱っこひもで園児を背負うというところは時間がかかるということで、ばらつきがあるということも分かりました。

次に、「歩行速度」です。まず水平歩行速度です。保育施設によってデータがとれなかったところがあって 2 歳児のデータが少ないのですけれども、薄い色が保育施設 A という低層の方のデータです。濃い色が高層の保育施設 B のデータです。保育施設 A 3 歳児のデータしかないのですが、大体 1.07 メートル / 秒、 1 秒辺り 1.07 メートルぐらい進めるということです。保育施設 B の方で測った 2 歳児がその半分ぐらいの 0.54 メートル / 秒で、 3 歳が 1.0 メートル / 秒から 1.59 メートル / 秒ぐらいということで、この数字というのは、建築基準法で避難を見るときの大人の歩行速度は毎秒 1 1.3 メートルということで規定していますので、 3 歳児は大人より少し遅いぐらいか大人並みで歩けるけれども、 2 歳児はその半分ぐらいでしか歩けないということが分かりました。これが水平歩行速度です。これが 4 5 歳児になるとかなりきちんと歩けるようになりまして、先ほどと同じように薄い色が低層の保育施設 A で濃い色が高層の保育施設 B ですが、大体 1.47 メートル / 秒や 1.43 メートル / 秒など 1.5 メートル / 秒に近い数字が出ていまして、大人並みの水平歩行速度が出るということが分かりました。次が階段ですけれども、階段になると極端に遅くなります。濃い色が高層の保育施設 B ですけれども、 2 歳児が 0.12 メートル / 秒ということで大体 1 秒間に 0.1 メートルしか進めず、 3 歳児も 0.15 メートルぐらいしか行けなかった。ところが、同じ 3 歳でも保育施設 A では 0.3 メートル / 秒と随分早い値が出ています。これは階段の構造も違うということと、後ほど説明しますが保育施設 A の方では 3 歳児はしょっちゅう階段を使って保育室に行き来しているので階段に慣れていることもあって、ここでかなり差が出ました。しかし、大人の歩行速度が建築基準法では 0.6 0.78 メートル / 秒ぐらいの値を使っていますので、それに比べるとかなり遅いということが分かります。 4 5 歳児になると、随分早くはなるのですが、それでも低層の保育園よりも高層の保育園の方が遅いということで高層保育園の方は階段が他の事務所等の用途と兼用していることもあって大人向けの階段になっていることも関係するのではないかと思います。

ここまでをまとめますと、まず 0 1 歳児は自力歩行が困難ですので、抱っこひもを装着するよりもお散歩カーや大型ベビーカーに乗せてしまった方が避難は早いということが分かりましたが、高層施設では垂直移動ができないという問題があります。 2 5 歳児は自力歩行が可能ですが水平歩行に関しては 2 歳児はかなり遅いということ。それから、階段の降下に関しても 2 歳児は大変遅い速度でしか歩けなくて、階段降下速度は高層は低層よりも遅いということが分かりました。これは先ほども申し上げたように、日常的にあまり高層保育園では階段を使っていないということです。通常はエレベーターで保育園に来て、そのまま遊びに行くときもエレベーターで行ってしまうので階段に慣れていないということと、階段自体が大人向けの階段を使っていますので、蹴上げが高かったり、吹き抜けの中を見渡すことができるような形になっていて、「下が見えて怖い」という声がたくさん聞かれました。そういった形で階段自体に慣れていなかったり、恐怖感があったり、そもそもの運動能力も低いということで階段の降下速度が非常に遅いということが分かりました。

次に、終わった後で保育士に避難上の問題点についてヒアリング調査をした結果を少し御説明します。「避難経路上でどういうところが危険と感じましたか」という質問については、白色が低層の保育園で、赤色が高層の保育園になっていますが、共通して日常使用しない避難経路には不安があるという意見や、避難経路上に今回は大丈夫だったけれども、もしガラスが割れたりすると裸足では危険という意見がありまして、保育園では普通は靴を脱いで保育室の中を裸足で過ごしていますので、そういったところに不安感があるということを言われました。それから、今回は大規模な保育園だったので子どもが他の室に入り込んでしまったりすると、見つけ出すことができない。人手が不足しているということや、階段に関しては保育施設 B ではほとんど全員の保育士が避難階段が怖い、不安であるということをおっしゃっています。避難に要した時間に関しては「長く感じた」という意見が保育施設 B で非常に多くて、保育施設 A は「思ったよりも早くスムーズに終わりました」という意見が多かったです。それは階段室の中に入ってから非常に時間がかかったので、この階段室が一体どの程度大丈夫なのかが知りたいという御意見もありました。

それから、 2 番目の御意見です。階段室での子どもの受け渡しに時間がかかったというところですが、保育施設 B の方は保育士の数が、基準は満足しているのですが、避難を考えると少し少ないと園長先生が判断されたこともあって、 7 階にある公共施設から避難応援を頼みました。階段室の中でバケツリレーのようにどんどん子どもを送っていって下ろそうという計画だったのですが、いらっしゃったのが年配の男性が多くて、子どもが抱っこされたがらないというか泣きわめいて大変なことになって、結局あまりお役に立っていただけなかったといいますか、仕方がないので保育士が全員を運んでしまったということがあって、併設施設があると助けになるということは確かにあるのですが、日常から馴染んでいただかないと、非常時に急におじさんが来て抱っこといわれてもちょっとというところがあったということです。

私どもの方から見ていた問題点はこちらにまとめたところです。まず、 0 歳児ですけれども、保育士は避難訓練のときにやることがきちんとマニュアル化されていて戸締りをしたり、名簿を持っていったり、人数を確認したり、とてもたくさんあります。そうすると、園児をおんぶしているのを多分覚えていると思いますが、そのままの状態で、ものすごい速さであっちへ行って窓を閉めて、こっちへ行って何かを持ってということをやっていて、見ている方が心配になるぐらい子どもが背中でブンブン振られるようなことがありました。それから、 2 歳児ぐらいになると非常ベルや非常放送の大きな音で泣き出したり、固まってしまったりということが見られました。 3 5 歳児では手摺りを持って一列で避難することで歩行速度の遅い 2 歳児の後ろで 3 4 歳児が滞留したり、歩行速度が遅くなって時間がかかった。これは主に高層の保育施設 B の方の話です。それから、全体的に年齢が低いほど階段室内で下階が見えることに恐怖心が強くて、壁際を一列になってしまったり、階段の途中で止まってしまうということが見られました。園児の反応や能力に応じた避難計画が必要であるということです。

ここからまとめますけれども、まず保育園の避難には幾つか他の避難と違う特徴がありまして、一番大きな特徴が避難の集団単位ということです。これはクラス単位で保育士がまとめて避難するということがあって、それは保育士が避難させるという意味で非常に重要ですが、途中で必ず人数確認をしていくので、そのための時間もかなりかかるというところです。保育士の人数の基準に基づいた避難計画の事前検討が必要というのは、つまり、今ある保育士の設置基準というのはあくまで日常生活を基に考えられていたものだと思いますが、避難ということになると人数確認であるとか、先ほど申し上げたように窓を閉めたり、いろいろやらないといけないことが出てくると、日常生活上で必要な人数とは違う、もう少し人数が必要になってくるのではないかということです。

次に、園児の能力に合わせた避難方法ということで、日常動線による避難が一番園児も安心しますし、保育士も避難誘導がやりやすいということで、特に階段については慣れた日常的な階段の利用が妥当であろうということです。さらに、避難階段の使用に対する配慮ということで、手摺りは必須ですけれども、大人向けですと高いところにあってつかめなかったり、握りが太すぎて手が回らなかったりということがあって、手摺りの設置位置や形状に工夫が必要だということと、蹴上げを低くするということ。下が見えると非常に恐怖感があるということで、素通しを防止するなど階下への恐怖感を軽減することが重要だと考えます。さらに、避難施設の整備ということで避難遅れを考慮して水平避難方法、下まで下りなくてもどこか安全に区画された場所を用意して、安全なところまで逃げるような方法ですとか、あるいは非常用エレベーターの利用なども少し考慮に入れて検討していくことが必要ではないかということです。

それらを踏まえて、新しい避難計算方法の検討が必要ではないかということで、今、建築基準法では避難安全を検証するために計算によって避難時間を出すということをやっていますが、保育園児については大人の規定をそのまま適用できませんので、人数把握が可能であるという利点を生かして、少しこれから新しい避難計算方法を検討していく必要があるということです。特に、水平歩行速度、垂直歩行速度ともに成人の歩行速度よりも小さい基準値を決めることが必要ですし、流動係数というのは開口部を通り抜けるための人数ですけれども、それも大人と違う基準が必要だということです。推奨対策としては、独立した垂直避難経路や避難支援スペースやエレベーター利用も今後は検討していく必要があるでしょう。それから外部との関係です。ここは保育園ならではの話ですが、 1 については、園児の保護者への引き渡し方法ということで、特に園庭があるようなところでは逃げてすぐお迎えが来てそこで引き渡しということができるのですが、高層の保育園だと引き渡す場所についても考えておかないと。それから、引き渡す方法でどうやって連絡をとるかについても保護者の混乱も考慮するべきではないかと考えます。それから、先ほど申し上げた建物内園外からの施設職員による避難援助協力を依頼するのであれば、日常からお互いに慣れておくことが重要であるということです。私の方からは以上です。

しろまる萩原座長

ありがとうございました。では、佐野さん。

しろまる佐野准教授

早稲田大学の佐野でございます。大きな話の流れは古川さんにお話しいただいたとおりでよろしいのですが、今お話しいただいたものに併せて現状を実感していただくことが非常に大事ではないかと思いまして、私は動画をお見せしながら、先ほどのまとめの話と併せてお話ししていきたいと思います。

最初に申し上げたいのは、低層と高層の保育施設、今回は 1 か所ずつでしたが実は複数回あるいは複数個所で見ておりまして、ほぼ同じような状況でしたけれども、これらは非常に真面目に訓練をされている良い施設だと思います。そういう中であっても、やや問題といいますか、解決していかなければいけない事項がある可能性があるので、そのようなお話をさせていただければと思います。

これからお見せするのは高層施設です。 0 歳児は少し時間がかかりますので早送りしますが、訓練時の様子を各部屋に人を置きましてビデオカメラで撮影しております。この辺は日常的な、屋上園庭が外にあるようなものでございます。今、地震が起きていることにして実際にベル等は鳴らさないのですが、こういうケージの中に入れたりしています。この辺りは園によって運営は違うと思いますが、扉を開けたり、このようにいろいろやることがあるのは先ほど言われたとおりです。危ないということを保育士が思ったらしく、ここは布団をかけているのですが、これは一般的かどうかは分かりませんが、非常に積極的にいろいろ自分たちで考えてやられているような園でした。これが「おんぶひも」ということで、こういうものでおんぶをするわけですが、一人では時間がかかるので複数の保育士で対応しています。泣いたりする状況もありました。これが 50 秒ぐらいかかる場合もあるということです。普段散歩に使っている散歩車を使うと割とスムーズに子どもたちを移動できるのですが、これを使えるのは水平避難、つまり階段室までですので、この先をどうするかという辺りも一つの検討課題であろうと思います。階段まではすぐですが、これを押していきます。子どもたちを置いていったら大変ですので、各個所で点呼、つまり人数確認を行います。これを非常に頻繁に行っておりまして、いわゆる大人の避難と比べると、そういうところで事前の準備と避難の途中で時間がかかるということがあります。ですから、このための対策を考えなければいけない。

これが避難階段です。これは 8 階建てですので避難階段ということで、入口は防火戸で防火区画されています。ここからは歩いて下りていこうということで、少し飛ばしますが、一人ずつ抱き上げながら下りていったということです。この子どもたちは抱いて下りていくわけですが、自力で歩いて一番速度が遅い 2 歳児をお見せしたいと思います。これもこういう感じで最初は訓練前です。ここでは地震を想定しているので、防災ずきんを被せたりして時間がかかりますが、火災だけであればこれは被らずに避難することになります。それにしても、いったん集めて避難させる。こういう準備時間がかかるということです。逃げ遅れがいないか。それから、これは子どもを連れて作業していますが、これはかなり細かい話なのでということですが、実態としてはこういうこともあり得るということです。扉を閉めたり、これで廊下に出て避難階段に歩いて行く。ここで一度点呼しています。先ほども申し上げましたけれども、例えば階段の中が混雑していると、このように階段の中に入れないような場合がありますので、こういう場所で安全に待機できる場所を確保するということも一つの考え方としてあるのではないかということです。 2 歳児ぐらいですと、これぐらいで少し混雑していることもありますが、足元もおぼつかないところもあります。非常によかったと思うのは手摺りです。子ども用の手摺りがきちんと設置されているということで、安全に下りるためには手摺りの設置は非常に大事だろうということでございます。この状況で 4 人ぐらいの先生が見ていますけれども、ある程度目の届くところに先生がいると、特に小さい子どもについては安心である。ですから、そのための人数確保ということも必要になると思います。これはたまたま 1 階下のところまでの避難と設定しておりましたので、そこまでの避難ということで、適宜抱っこしたりしておりますが、手が足りないと、こういうこともできないということになります。それから、あと二つだけお見せしますが、今度は 3 歳児です。 3 歳児ぐらいになると大分歩けるようになってくるということで、イスに座って自分たちでテーブルの中に地震だというと入ったりすることもできる。帽子などを被って下りてくるわけですが、この辺で歩く様子も割としっかりしてきまして平地であれば比較的大人と同等より少し遅いぐらいで行けるのですが、階段になると少し遅いということです。割としっかりと歩いているということと、階段前の滞留ということが問題になる可能性があるのではないかということです。先ほどと比較していただくと、 3 歳ぐらいになると大分避難ができるようになる。このようにクラスごと、年次ごとによって違うということです。

最後に蛇足ですが、実は私は全く別のことで高層建築物の避難訓練調査を行っておりまして、何を申し上げたいかというと、かなりたくさんの人が利用する階段は非常に混雑する可能性があるという映像をお見せしたいと思います。少し分かりにくいのですが、これは 25 階建ての各階段のいわゆる特別避難階段の踊り場で、こちら側に扉があって、ここから入ってきてここに下りるという階段です。ここでの避難訓練は 3,000 人ぐらいが参加する自社ビルのオフィスビルの避難訓練を調査したのですが、かなり混雑する状況がある。こちらが 1 階です。 5 階まで行って 6 階から、 10 階、 11 階からということで、ここは 25 階ですが、例えば下の方が空いていても上の方が混雑するような状況もあり得る。こういうところに、子どもたちが合流すると、この中を先ほどの子どもたちが一緒に避難しなければいけないという状況も考えられるということです。ですから、こういう問題を何らか解決する方法を考えなければいけないのではないかと現在考えているところでございます。説明は以上になります。

しろまる萩原座長

ありがとうございました。貴重な映像をありがとうございました。実際に現地に行ったわけではないのですが、映像を見たことで高層階でどういった避難が行われるのかという一端が分かったと思います。

以上の説明について、御意見・御質問等をお願いしたいと思います。御意見については、大きく二つに分けて資料 2 で先ほど堀課長補佐から説明がありました資料 2 5 ページ目「見直しの考え方」方針についての御意見と、実際に見直しを行う場合にどういう点に留意すればよいのか。大きくこの 2 点について御意見を伺えればと考えておりますので、御自由に御発言をお願いします。

その前に、守谷専門官が遅れて来られたので、自己紹介をお願いします。

しろまる守谷専門官(総務省消防庁)

遅れて申し訳ございません。消防庁の守谷です。よろしくお願いします。

しろまる萩原座長

それでは、「見直しの方針」と、見直すときにどういう点に留意すればよいのか。最後は実際の事例なので、あのときはどうなっていたのかという事実確認の質問等も含めて適宜お願いしたいと思います。

実際に避難させているのを見て、今のは高層でも 1 層分ですよね。だから、見た感じだと下まで下りるのは相当難しいというか、あまりそういうことを考えない方がよい気もしますが、そうだとすると、どういうことをすればよいのか。少しご提案がありましたが、そういう意味での御意見というか方向性を。

しろまる古川課長代理

高層ということが一つと、複合しているということが一つあって、高層という話でいうと、 2 歳児は 1 層下りるだけでもかなり大変ですから、それを何層も下ろしていくというのはかなり現実的には難しいのではないかと思います。割と 0 1 歳児は乳児といわれて 2 歳児からきちんと歩けるような括りになることがありますが、 2 歳児はかなり危ないというのが第一印象としてありまして、指示に従えるかというところも、 3 歳児になるとかなり保育士の言うことをよく聞くのですが、 2 歳児ではそこもおぼつかないので、並んで避難するといったところも難しく、途中で脱走してしまう子どもがいると、そちらに保育士が一人とられてしまいますから、かなり人数的にも必要だという印象です。

高層ということに関しては 1 層、せいぜい 2 層ぐらい下ろしたら安全なところに行けるということと、階段室の中に入ってしまえば、あとはゆっくり避難できるという状況があれば、最悪もしかすると下まで行かなくてはならなくなっても、ゆっくり頑張って休み休み避難できれば何とかなるかもしれないと思います。

それから、複合ということに関して、最後に佐野先生からお見せいただいた高層ビルの状況などを考えますと、階段に入ってゆっくり避難するためにも他の施設からの避難の合流があると、それは安全性として難しいのではないかと思います。今の 8 階の保育施設は最上階にありましたから、階段室が安全であったり、あるいは安全な退避場所があったりすれば下の階の人たちが全員逃げてから、ゆっくり逃げていくという選択肢もあると思いますが、途中階にあった場合はそういうこともできにくいので、他の施設との合流という面も考慮する必要があると思いました。

しろまる萩原座長

ありがとうございます。

しろまる高橋所長

質問です。今の保育園の避難の例を見せていただいて、構造的なものと避難方法でレポートの方でもスピードが違うから 4 5 歳児から先に下ろした方がよいという工夫などソフト面の両方があったと思いますが、このビル全体で他の施設を使っている方たちと一緒に合同の避難訓練はやっているのでしょうか。

しろまる古川課長代理

それはまだ実現できていないです。手伝いに来ていただいたところはありますが、それ以外のところは今、検討中です。

しろまる町田係長

私も建築の方に疎いのでお伺いしたいのですが、例えば避難する際にどれぐらいの時間で避難ができればよいとか、時間的な目安はあるのでしょうか。

しろまる古川課長代理

いろいろな考え方があるのですが、一般的に行われている避難安全の検証方法としては出火室から煙が安全区画と呼ばれる廊下や階段室に入るまでに避難が完了するようにということをざっくりいうと、やっています。時間的には、例えば出火源がどれぐらい大きいか。煙は部屋全体に行き渡ってから下りてきますので、部屋の広さが基本的に広ければ、天井が高ければ煙の降下時間は遅くなったりするのですが、そういったところも踏まえて煙の降下時間と避難時間を比較して今のところは検証していますので、そうするとどれぐらいだったらよいというのは難しいのですが、出火の危険性と延焼の問題と歩行速度の問題が出てくると思います。

しろまる萩原座長

逃げ始めてしまえば、普通の場合は数分で逃げられてしまう。今日見せてもらったように、避難を始めるまでに自分で逃げられない人たちのお世話をする。動き始めてからも真っすぐ行ってくれないということで多分時間がかかる。ただ、階の避難としては 5 10 分というオーダーで収めたい。普通の建物はそれぐらいは廊下でも安全が保たれるようになっています。時間のオーダーとしては、それぐらいと思っていただければよいと思います。

佐野さんも追加で言いたいことや懸念や見直しの方向などについて何かあれば。

しろまる佐野准教授

こちらを拝見して、先ほどの合流の問題を考えると、理論的に考えれば別経路をつくらない限りは合流しないようにするというのは時間をずらすしかありませんので、時間をずらす方法を考える。そうしますとどうするかというと、子どもたちを先に逃がすか大人が逃げ終わるまで待っているかということになります。子どもたちを先に逃がしますと、たくさんの人たちが逃げるのに時間がかかりますので、現実的ではない。そうすると、子どもたちは安全な場所で出火階あるいはその下の階ぐらいで待機するということが一つ考えられます。ですから、そういう場所、つまり火災上、煙上、熱から守られた場所をつくることが一つ方法として考えられると思います。その際に、少し個人的に懸念しておりますのは、そういう子どもたちが上の方の階にしばらくの間いる。建物的には安全を担保してつくられますけれども、そこに対する不安というのは親御さんなり他の人なりあると思います。そういうものをよしとしてそういうものを作るかどうかというのが一つの懸念のポイントだと思います。理論的にはそういうことで安全をある程度担保した施設ということはできると思いますが、その場合は子どもたちが後から逃げるということをどのように考えるか。そうではなくて、合流して何でもよいから一緒に逃がそうとか。その辺りが議論のポイントになるのではないかと考えております。

しろまる萩原座長

論点は基準の見直しの方向です。一番問題になっているのは、今までの屋外階段がないと建てられないというのを見直して、他の代替手段を考えることができるかどうか。資料 2 6 ページにあるような点が一つ。実はそれも関係しないことはないけれども、そもそも高層に保育所を置くことがどうなのか。それを安全にするためにはどういうことが必要かということと、入り組んでいるけれども論点としては二つありますので。前者についての意見が出てこないのですが、そこはどうでしょうか。要するに高層につくっても安全にできる手立てがあるなら屋外避難階段である必要はないのではないか。一般的には特別避難階段の方が安全性が高い。煙の侵入を防止できるということもあるので、そういうのはよいのではないかと思いますが、他の傾斜路や特別避難階段に準じた屋内階段でどうかという見直しの方向性が出てきますが、それについてはいかがでしょうか。

しろまる高橋所長

同じ福祉施設としては他の例えば障害者の施設や高齢者の施設で基準が変わったからということで、そういうことを参考にして、こちらも同じように変えるという例は多々ありますが、例えば高齢者で車イスで移動することしかできない方たちが 3 階・ 4 階の施設に入所されている例も多いと思いますが、建築的にはその辺との比較や避難の仕方について、もしご存じでしたらお聞かせいただけると参考になるのではないかと思います。

しろまる佐野准教授

福祉施設の避難についても研究しておりまして、建築基準法上の仕組みということだけで全てが解かれているわけではないのですが、そういう安全対策として防火上、防煙上安全な場所、一時避難場所というところに一時的に待機して救助を待つという考え方がございます。それから、そういう施設ですと、バルコニーのようなところが一時的な待機場所ということで考えられていて、運用上実際にうまくいっているかどうかは難しいところもありますが、防災上はそういうところを充てているということもあると思います。ですから、先ほど申し上げた一時的な避難場所を設けて、そういうところに子どもたちにいてもらうという考え方は、それが適切に設置されればあり得ると思います。それから、もう一度申し上げるのは、それを社会として認知するかということになるのではないかと考えています。

しろまる堀課長補佐

参考資料 1 の方に医療法施行規則を 21 ページに、特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準を 23 ページに載せておりまして、原文を載せているので分かりにくいかと思いますが、かいつまんで申し上げますと、病院・診療所の場合、主要構造部を耐火構造とする場合には 3 階以上に設置可となっております。 2 階以上に設置する場合には、屋内の直通階段が二つ以上必要ですが、患者用のエレベーターが設置されているもの、あるいは 2 階以上の各階の病室の床面積の合計が一定以下のものは屋内の直通階段を一つにできるという規定がございます。 22 ページの 3 階以上の場合では、避難に支障がないように避難階段が二つ以上必要という規定になっておりまして、ただし、直通階段のうちの一つ又は二つを屋内避難階段とする場合、その直通階段の数を避難階段の数に算入することができることとされております。

23 ページの特別養護老人ホームですけれども、建物は基本的に耐火建築物であることということで、ただ例外が幾つか書いてあります。また、 3 階以上又は床面積が 300 平方メートル以上のものは耐火建築物でなければならないことに建築基準法上ではなっています。また、建築基準法上 2 階の場合は居室等の床面積が 50 平方メートル超の場合は二つ以上の直通階段が必要です。また、特別養護老人ホームの規定によると、一つ以上の傾斜路を設けることとなっておりますが、エレベーターを設ければこの限りではないということになっています。それから、 3 階以上に居室等を設ける場合につきましては、特別避難階段が二つ以上必要で、居室の壁等が不燃材料である必要があるといったことが記載されています。病院と特別養護老人ホーム、保育所の規定の仕方はいろいろであり、特に、保育所の場合は、細かく「 2 階」、「 3 階」、「 4 階以上」についてそれぞれ規定されています。

しろまる萩原座長

ありがとうございます。ありていな言い方をすれば、法律のレベルで自力避難が困難な人のための対応をうまく書いているわけではない。ただ、実際のところ、そんなに大きな被害がないように建物ができていて、例えば病院や少し大きな老人ホームでもそうですが、一つの階を複数の防火区画に分けています。病院だと看護単位ぐらいに防火区画を作っていて、横に逃げれば安全な空間が用意されているという、多くの場合そういう計画になっていますので、そういうことは法律に書かれているわけではありませんが、ある種設計の標準として行き渡っていることがあります。だから、階段にたどり着く前にそういった安全なスペースがあって、そこから先は消防が来て助ける。そこに待機しているというので、あまり大きな被害にならないようになっているというのが実際です。ですので、保育所を高層につくるということを考えてみると、今低層部にあるものをそのまま高層につくると、そういった面で少し気になる点はあるけれども解決できないわけではなくて、病院や老人ホームで培ったノウハウを上のところでも用意すれば、それなりの安全は保てる。設計はできると思います。ただ、それが今法律で定められているわけでもないところがあって、必ずそうなるかというところは少し疑問があります。

しろまる守谷専門官(総務省消防庁)

消防庁の守谷でございますけれども、消防法上は特にどういった階段がついているかについて特段影響は全くないところです。話を聞いていて思ったところですが、屋外にあることの唯一の利点としては、その中が煙で侵されることはない。要は、煙などが入ったときにはすぐに屋外に排出されてしまうという特徴があろうかと思いますが、今回の実験の中で、避難にかかる時間として防火扉が破られるほどの時間はかからなかったかということです。竪穴区画自体が破られるほど時間がかかってしまうのであれば屋外の方が安全だという理屈はあるのかもしれないと思いましたが、その辺りの事実関係がもし分かれば教えていただければと思います。

しろまる萩原座長

訓練でどれぐらい時間がかかったか。

しろまる古川課長代理

正確な時間は今すぐ分からないのですが、階段室の防火区画が破られるほどの時間はかかっていませんが、階段室の前での待機の時間が長いので。そこは結構かかりました。

しろまる萩原座長

全部で 1 時間はかからないでしょう。

しろまる古川課長代理

1 時間はかかっていないです。ただ、あの保育園の場合は廊下と出火室の間はそれほど堅固な区画があるわけではないですから、少なくとも階段室の前で待っている状態で煙が追いかけてくる可能性は十分にあったと思います。だから、階段室に入れない状況が、 2 歳児が遅いからそういった状況が起きてしまったので、そこはもしかするとソフトで例えば 5 歳児から先に逃がすなど、何か解決がつくかもしれませんが、そういう意味では階段室の安全性もそうだし、階段室の前に安全な空間が必要だということが重要だと思います。論点がずれてしまったかもしれませんが。

しろまる萩原座長

別なことを考えていました。屋外階段のメリットは一つそれがありますが、もう一つは外からどういう状況かが分かる。消防が下で待っているとか、誰かがたまっているのが外から分かって、消防の対応がしやすいというのが一つあります。逆に悪い点があって、出火場所によっては屋外階段が煙をかぶってしまう。だから、必ずいつも使えるのか。別に屋外階段の区画が破れるか破れないかに関係なく、外に煙が出ると階段が煙にまかれて使いづらくなるということがあるので、そちらの方が頻繁にありそうなので、そういうことを考えると現行では屋外階段を必ずつけろといっているけれども、特別避難階段の方が煙に対してはより安全性が高いと思っています。

しろまる守谷専門官(総務省消防庁)

今お答えいただいたので大分安心できるのではないかと思ったのと、もう一つは多分今回の提案の中で特別避難階段に準じた屋内避難階段にしても、特別避難階段にしても付室がつくのが多分前提になっていると思います。そういった意味でも安全な区画が少なくとも階段の直前にはあるという発想ではないかということで、少し安心な方向でのものが提供されるのではないかと感じています。

しろまる津村係長(国土交通省)

国土交通省の津村でございます。 2 点お伺いできればと思いますが、今まさに屋外階段、代替措置で傾斜路ということが一案ありまして、ここに書かれているように建築基準法上 8 分の 1 の傾斜などいろいろな規定がかかってきますが、 4 階以上になったときに、傾斜路というのが現実的にあり得るのかというところで御意見をお聞かせいただければというところと、もう 1 点は、先ほどの実態に関して質問させていただければと思います。まさに建築基準法上も保育園は、幼稚園よりも防火上全体的に厳しい規定になっている部分もありますが、保育園ではお昼寝の時間があるかと思いますところ、先ほどはまさに子どもたちが起きている段階でも避難にかなり時間がかかっていたのですが、一般的にお昼寝の時間であれば、さらにかなりかかるだろうという認識で相違ないかという 2 点をお伺いできればと思います。

しろまる萩原座長

お昼寝の話は、多分古川さんの方が。

しろまる古川課長代理

お昼寝は皆さんが思っていらっしゃるよりも、がっつりみんな寝ます。ちょっとやそっとでは起きないぐらい寝てしまうので、先ほどの高層の保育園では実はお昼寝のときの避難訓練も少し考えていらっしゃって、実際にこの間の 3.11 のときは 14 40 分ぐらいでちょうどお昼寝から覚めるか覚めないかぐらいの時間帯だったということです。そうすると、半分起きている子どももいれば、完全に起きている子どももいて、かえって混乱したというところがあって、子どもたちは実はパジャマに着替えて寝ているのです。そうすると、子どもは結構習慣を大事にするので着替えたがったりします。着替えなくてもよいから早く逃げなさいと、その辺りの混乱もあったりして、かなりそこは大変ではないかと懸念しています。

しろまる萩原座長

スロープの方は。

しろまる佐野准教授

傾斜路につきましては、実はこれに関連して日本建築学会の方で 12 2 日にシンポジウムがあったのですが、火災時の「避難安全のバリアフリーデザイン特別調査委員会」というものがありまして、その中で商業施設ですが傾斜路がかなり高層でついていて周り中回っているような、あえてそういうデザインにしているものが数件あって、その資料ではかなり傾斜路を推奨している。これができるのは、商業施設は屋外へ解放させる必要がありませんので、窓が必要ないのでそういうデザインをあえてして、安全性を担保する。あるいは、高齢者福祉施設の中でも避難用に特にバルコニー傾斜路を使うことを推奨してデザインしたものなどについてはそういうものが実際にはあると思います。

それから、先ほどの守谷さんの御質問への古川さんの答えの補足ですが、おっしゃるように区画は確かに破壊されていないのですが、例えば先ほどの廊下と保育室の間の区画がもしかすると防煙区画になっていたかもしれませんが、それが完全に閉鎖されているかどうか分からない状況ですと煙が漏れてくる可能性もある。そういうことも考えますと、先ほどの特別避難階段の話もありましたけれども、階段室前にもう一つ輪になるようなゾーンがあるような計画になっていれば確かに安心だと思います。今回の場合はそういう形になっておりませんでしたので、それが要求されていないというところで、その辺りも併せてどのように考えるかが一つポイントになると考えています。

しろまる萩原座長

よろしいでしょうか。他に、こういう視点・論点がありそうだというのはございますでしょうか。

しろまる高橋所長

先ほど、一般の建物で 8 階ということで階段の勾配や蹴上げの話が出たと思いますが、その辺の基準はあるのでしょうか。

しろまる古川課長代理

保育施設として、ですか。

しろまる高橋所長

いや、保育園の専用の建物としてつくる場合には大体経験的に 13 センチメートル・ 14 センチメートルで作ると子どもがスムーズに上がったり下りたりできる。ですから、低層の保育園はそういうものだったと思いますが一般の建物ではいかがでしょうか。

しろまる古川課長代理

一般の建物は、建築基準法ではあくまで健常な成人が使うものとしての避難階段の規定はありますけれど、そこに乳幼児を対象としたものは特に建築基準法上はないです。

しろまる萩原座長

小学校の生徒専用の階段だけ蹴上げが少し緩くなっているのが規定としてありますが、それ以外は。

しろまる古川課長代理

それ以外はないので、一般の建物をつくって。そうすると、階段をそこの 8 階だけ蹴上げを変えるということは普通しないので、同じ階段がずっと上がっていくことになりますから、先ほどのようなことになるということです。

しろまる佐野准教授

全てが法律で決まっているわけではなくて実は小学校・中学校は階段の規定が建築基準法にありますが、幼稚園・保育所は基準から外れておりますので、そういうところもございます。ですから、必ずしも全てが法規で決まっているというわけでもないというところです。

しろまる萩原座長

2 階建ての保育園の階段が緩くなっているのは法律に規定があるからではないのです。

しろまる高橋所長

最近、この近くの地下鉄の駅なども新しくできた地下鉄の階段はかなり緩やかな感じがします。私たち年寄りでもエスカレーターを使わないで今日は歩いて上がろうとか、それができるぐらいの傾斜になっているような気がしました。ただ、古い建物ですと勾配が 40 度とか 30 度とかかなり急なものがあります。

しろまる萩原座長

確かに古い建物はかなり厳しいものがあると思いますが、最近特に交通バリアフリーで。

しろまる佐野准教授

規定はされていない。

しろまる萩原座長

まさしく利用者の視点から多分そういうことが出てきたのではないかと思います。

しろまる高橋所長

勾配もそうですけれど、踊り場が設置されている間隔も 10 段前後ぐらいで必ずついているような階段ができていて、勾配だけではなくて踊り場の付け方でも、かなり例えば下りる場合も子どもにとって不安感が拭えるような気がします。

しろまる萩原座長

踊り場については法律で 3 メートルおきというのがありますけれども、日常的な疲れというよりは、ないと一挙に下まで落っこちてしまうので、転落防止という観点から踊り場がついているという方が趣旨かと思います。

ですので、今回の検討で、既存のビルの中に、既に建っているビルの一部を保育所に変えようと最初から計画したにしても、特に上の方につくってしまうと、そのために階段をどうこうするというのは今のではかなり難しいのではないかと想像はします。

しろまる町田係長

先ほど、座長から論点としては大体大きく二つだろうと。一つは屋外階段に代替する手段としてどういったものが認められるのかということと、今回の屋外階段という規定が事実上高層階への設置を防ぐような規定になっているといった観点から高層階への設置をどのように考えるのかといったことがあるということでしたが、最初の方のどういった代替手段が考えられるかということにつきましては傾斜路、先ほどそういった施設も考えられるといったことでしたが、現在は「傾斜路等」ということで、 3 階までは認められているところの「等」について、どのように考えるのか。例えば滑り台だと物理的には安全に下りられるような滑り台になっていたとしても、先ほどのお話もありましたけれども子どもたちが恐怖心を感じずに安全に避難できるのかといった観点でいろいろ問題があるのではないかと思います。そういった検討を加えた上で安全に避難できるのであれば特段屋外階段にこだわる必要はないと思います。実際上、風ですとか雨、あるいは雪国における雪ということもあって屋外階段が実際に避難に使えない。あるいは、先ほどの高層階にあった保育施設 B でも子どもたちが恐怖心を覚えるので屋外階段が使えないといった現状では、屋外階段が有効に活用されていないのではないかという気もします。一方で、高層階への設置ということにつきましては、前回の平成 14 年度に見直したときにも、外に出られるまでの時間ということも考慮して、あまり規定は見直さないといったこともあったように思いますので、そういった面での検討も必要ではないかと思います。

しろまる萩原座長

ありがとうございます。今の御意見についての御意見はございますでしょうか。

しろまる佐野准教授

私も前者については賛成いたします。屋外避難階段の要件として煙にさらされないとか、安全な状況が長い間確保できるということで、それと同等と読めるようなものであれば屋外にのみということでなくてもよろしいのではないかと考えております。ただし、後半の方にこだわりがございまして、この基準を発出することによって現状では屋外階段を 4 階以上までつけていくことが難しいことが契機になって、高いところにそういうものを設置しづらい状況があるわけで、それが駄目というわけではないのですが、安全性をしっかり確保できるような方策。これは 4 階以上となっていますが何階まででも無制限につくれるような基準になっていく可能性があることに対して、どこにあっても安全になるような各階の対策ということが必要になってくるのではないかと考えております。

しろまる萩原座長

前半の方で屋外傾斜路、又はこれに準じる設備として滑り台の扱いはどうですか。

しろまる佐野准教授

学会的な見解といいますか研究者の見解では実際に滑り台を使って避難訓練を行った事例等がございまして、あまりうまくいかないという結論は出ています。

しろまる萩原座長

それは何階からですか。

しろまる佐野准教授

それは子どもの施設ではなくて高齢者福祉施設で、誰かが常についていなければいけないということがございました。実は我々も滑り台を使った避難訓練を拝見したことがありまして、これは 2 階建ての低層保育所でしたが、一人が下りてしまうまで次の子どもが下りられないということで、時間が 3 4 倍ぐらいかかるような形になりました。ですから、いわゆる回転式の滑り台というのは、特に高層のものについては個人的にはあまり現実的ではないのではないかと。以前に拝見した例では 8 階建てで 8 階からぐるぐると滑り台が回っているものがございまして、あまり言うとあれですが、そういうものができかねないのではないかと。

しろまる萩原座長

それは老人ホームですよね。

しろまる佐野准教授

いや、老人ホームと、それは保育園の分園が 8 階にありました。半官のビルでしたが、あそこを子どもが下りていくのは現実的ではないと考えております。個人的には車イスが通れるようなスロープであればよろしいのではないかと思いますが、傾斜路等の「等」のところに滑り台が入ってくるというのは、個人的には反対したいという意見がございます。

しろまる萩原座長

今回は「 4 階以上」の見直しを考えると準じる設備というのは前回の解説に書いたようなものでは問題ありという認識ですね。他は、よろしいですか。大体意見は出尽くしたような感もありますが、こんなこともというのは。

しろまる町田係長

我々は保育所の認可あるいは認可外保育施設ですと開設された後に届出を受けるといった観点で、認可の場合にはいろいろコントロールしようがあるにしても、認可外保育施設の場合はどういったところで開設をされるか分からないといったことで、先ほど法的な形での規制以外にも実際にはいろいろ設計などの配慮があって安全性が確保されているという話もありましたが、認可外の保育施設につきましては、そういった配慮が行き届きにくいといったようなことがございます。そういったこともありまして、ある程度明確な基準というものが示されるとよいと思いますとともに、今回は高層階というところが焦点になっているわけですが、同じように地下階に設置されたいという事業者側の希望もございまして、これにつきましては特段、児童福祉施設の設備及び運営の基準は規定がないわけですが、できればそういったことについても基準が設けられると指導がしやすいのではないかと考えております。

しろまる萩原座長

ありがとうございます。

しろまる守谷専門官(総務省消防庁)

今の話の関係で、今回の議題の中心ではないと理解はしているのですが、認可外の保育所の関係で申し上げますと、消防法上も特に法令上の規範はないのですけれども、これはとても火災のときに逃げられないだろうなというところに時々設置されていたりするケースがあります。私が知っているケースでは 4 階建てのオフィスビルの 4 階部分が空き室になったので、そこに保育所を入れたケースですが、竪穴区画が形成されているはずですが、防火扉が撤去されていて区画がきちんとできていないというケースでも無認可というか届出は受理されるということになりますので、火災予防上大変危険ですが、そのことについて法令上違反といえないので指導に限界があるというところは、無認可のものでは高層階などで結構困ったことが起こります。

しろまる堀課長補佐

認可外の保育施設の場合は、最低限の基準といいますか認可外に対する基準というものが決められています。それに基づいて指導等ができることになっています。ただ、消防法違反ではないということであれば消防署の方で指導ができないということになろうかと思いますが、地方自治体における一定の指導は行っていただいていると思います。

しろまる萩原座長

10 年前の整理では、認可と認可外があって認可外のその基準にも満たないものは営業をやめてもらうという整理をして、実効性があるかどうかという話はこれに限らず建築の法令についてもそうだし消防の法令についてもそうなので、そういう法令を遵守させるシステムの話ともう一つ個人的にはありますが、どういうものが危ないのかというのを広く一般の人が知るということがとても大事だと思います。だから、最低基準ではこうだけれども、実際の保育園で階段を緩くしているのは必要上からやっているわけです。どういうものであるべきだというのが法律とは別に世の中に普及していけばだんだん減っていくのではないかというか、こういうところはやめておきましょうとなっていくというのも一つあるのではないかと思います。

他に言っておきたいことはございますでしょうか。一応みんな一とおり発言する機会はあったと思います。

それでは、大体予定している時間になりましたので、今日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。次回については、今日の議論では、いろいろな意見・視点を踏まえた指摘がございましたので、事務方で設備運営基準の見直しについてや規定を見直す場合の留意点についてまとめていただいて再度、議論させていただきたいと思います。

それでは、次回の日程について事務局から説明をお願いいたします。

しろまる橋本保育課長

大変ありがとうございました。第 2 回の検討会でございますが、 1 10 日金曜日 16 時から 18 時という日程で開催します。場所等につきましては、追って御連絡させていただきます。よろしくお願いします。

しろまる萩原座長

ありがとうございました。ちょうど時間になったと思いますので、特に何か他に事務局から連絡事項があれば。ないようでしたら、第 1 回の検討会を終わりにさせていただきたいと思います。御協力ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課

03-5253-1111(内線:7918)

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