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  5. 第120回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

第120回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

1.日時

令和7年9月18日(木) 10時00分〜11時00分

2.場所

厚生労働省専用第22〜24会議室((注記)一部オンライン)
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 18階)

3.出席委員

公益代表委員
  • 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 小畑 史子
  • 明治大学法学部教授 小西 康之
  • 大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
労働者代表委員
  • 日本科学エネルギー産業労働組合連合会副事務局長 金井 一久
  • 日本食品関連産業労働組合総連合会副会長 白山 友美子
  • 全日本海員組合中央執行委員政策局長 立川 博行
  • 日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長 冨髙 裕子
  • 全国建設労働組合総連合書記次長 松尾 慎一郎
使用者代表委員
  • 三菱マテリアル株式会社イノベーションセンター長 足立 美紀
  • 一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹 笠井 清美
  • 東京海上ホールディングス株式会社人事部シニアマイスター 砂原 和仁
  • 日本通運株式会社人財戦略部次長 武知 紘子
  • 日本製鉄株式会社人事労政部部長 福田 寛
  • 西松建設株式会社安全環境本部安全部担当部長 最川 隆由

4.議題

  • (1)労災保険制度の在り方について

5.議事

しろまる小畑部会長 定刻となりましたので、ただいまから「第120回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」を開催いたします。本日の部会は、会場及びオンラインの両方で実施いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、武林委員、中野委員、宮智委員、平川委員が御欠席と伺っております。出席者は現在14名ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の御出席がございますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
それでは議題に入ります。本日の議題は、労災保険制度の在り方についてです。事務局から資料の御説明をお願いいたします。
しろまる労災管理課長 資料を御覧ください。労災保険制度の具体的課題につきまして、今回は、給付関係を中心にまとめています。まず、遺族(補償)等年金についてです。2ページを御覧ください。
現行制度では、遺族(補償)等年金の支給要件について、妻は被災労働者の収入によって生計を維持していたのであれば、年齢にかかわりなく、受給権者となることができるのに対し、夫は、生計維持要件に加えて、労働者である妻の死亡時に55歳以上又は一定の障害がある状態でなければ受給権が発生しません。さらに、受給資格者となる遺族は妻のみの場合、満55歳又は一定の障害があり、かつ、生計を同じくする他の受給資格者がいなければ、給付基礎日額について153日から175日に増額されますが、受給者となる遺族が1人かつ夫等妻以外の場合には適用されません。論点としまして、1遺族(補償)等年金について、夫と妻の支給要件の差を解消することについてどのように考えるか。2給付期間について、現行の長期給付を維持すべきか。3受給権者が1人の場合、妻のみに認められた特別加算についてどのように考えるか。この3つを記載しています。
これらは研究会中間報告書で、遺族(補償)等年金における夫と妻の支給要件の差を設ける合理的理由を見出すことが困難であり、夫と妻の要件の差については解消することが適当。具体的な解消方法については、夫に課せられた支給要件を撤廃することが適当であるとの意見が大宗を占めた。遺族(補償)等年金の制度趣旨をどのように解するのかという点はあるが、給付の期間については、現行の長期給付を維持することが現時点では適当。ただし、中長期的には公正な保護の検討に当たって、有期給付化についても考慮要素の1つになり得るという少数意見があったことに留意が必要。特別加算の取扱いについては、昭和45年の創設時の考え方は、現代では妥当しないという意見で一致したものの、特別加算による夫と妻の差の解消の具体的な方策については、対象範囲を配偶者以外にも広げるのか、障害を持つ遺族に加算することの意義をどう考えるのか、さらには、年金本体給付の水準との関係をどう考えるのかなど、将来の受給者に広い影響を与える事項であることから、労使を含めて更に議論を深める必要があるとされたことを受けての論点です。
3ページです。遺族(補償)等年金に関して、研究会中間報告書で、専門的見地から議論を行うことが必要とされた事項を記載しております。上から遺族(補償)等年金の趣旨・目的、生計維持要件、労働基準法の遺族補償との関係となっております。
4ページは、遺族(補償)等給付の概要です。制度の目的は1のとおり、労働者の業務上の死亡によってもたらされる被扶養利益の喪失を補填することです。年金と一時金がありますが、支給対象者はそれぞれ2の表のとおりで、年金の支給対象者の内の1と7のとおり、夫と妻に差異が生じているということです。年金額につきましては、3の表のとおりです。
5ページは、遺族(補償)等年金の支給要件の夫と妻の違いについてです。その差が設けられた考え方を参考に記載していますが、1つ目のしろまるのとおり、男は60歳未満であれば、障害等の場合を除き、独力で生計を維持しうると判断されたことが理由となっております。
6ページは、遺族(補償)等年金に関する改正経緯です。昭和40年改正によりまして年金化し、その後、表のとおり改正が行われ、平成7年改正で現在の給付水準となっております。
7ページは、遺族(補償)等年金の金額の考え方です。算定方法は昭和55年改正時に採用されておりますが、遺族1人の場合の給付率は、被災労働者が労働能力を完全に喪失した場合の基本的な給付水準である被災前における労働者の収入の約67%に、被災後の遺族の家庭の消費支出水準は、被災前に比べて被災者本人の消費支出額を除いた消費支出の水準となるという考え方から、家族数2人の家計の消費支出額に対する家族数1人の家計の消費支出額の割合を乗じて42%としております。
8ページは、特別加算についてです。遺族(補償)等年金の受給権者たる妻が、55歳以上又は一定の障害の状態のある場合に、生計を同じくする他の受給資格者がいないときには、下のイメージのとおり、給付基礎日額22日分の加算がなされた区分が適用されます。高齢又は一定障害の妻の区分は、昭和45年の改正時に設けられたものですが、当時の生計費調査等に基づきまして、生活実情に即した額が設定されました。単身者は家族のある者に比べて生計費はかからないため、給付基礎日額の30%に据え置かれましたが、単身者のうち、高齢又は一定障害の妻は就労が困難であるということから、50歳以上55歳未満の妻の場合は同35%、55歳以上又は一定障害の妻は同40%とされたところです。その後、昭和55年改正で、50歳以上55歳未満の妻に対する区分は、遺族1人の場合に統合され、現行制度では55歳以上又は一定障害の妻に対する区分のみとなっております。当時の考え方は参考に記載のとおり、若年の妻は単身の場合には身軽なため、就労が可能であって、年金以外にも相当程度の所得が期待されるのに対し、高齢等の妻は、就労の機会が困難の度を高めるので、その妻という特別の身分に着目し、その生活の安定を資するためとされております。
9ページは、2006年に成立した石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金の概要です。本給付金は死亡労働者等の遺族であって、労災保険法の規定による遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅した者に対して、その請求に基づき支給するものです。年金と一時金があり、その支給対象は2の表のとおりですが、年金については、1のとおり、妻と夫で差があるところです。また、年金額は3の表のとおりとなっております。
10ページは、妻が64歳以下の世帯の推移です。1980年代は紫色の線ですが、「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」のほうが、「雇用者の共働き世帯」に比べて多かったところ、1990年代を境にして逆転し、2024年では3倍程度の差となっております。
11ページは、遺族(補償)等年金を支給している受給権者数です。属性別で見ますと、妻が全受給者の約88%、年齢別に見ますと、70歳以上の受給権者が75%となっております。
12ページは、遺族(補償)等年金の支給決定件数です。被災者の男女別に2013年度から2023年度までの件数を表にしています。給付の原因となる死亡労災事故については、男性が多くなっています。また、2023年度に被災者が女性で一時金を支給決定した件数は60件となっておりますが、注5)にあるように、受給者の内訳を見ますと、夫が受給している件数は2件ということです。このため、仮に夫の支給要件を撤廃した場合、一時金が年金になるという件数は2件という状況です。
13ページは、年金額の分布を被災者が男性の場合と女性の場合に分けてグラフにまとめています。平均値で約70万円、中央値で約80万円の差があるという状況です。
続きまして、消滅時効です。15ページを御覧ください。現行制度ですが、労働基準法の災害補償請求権は、行使できるときから2年間行わない場合に消滅する。また、労災保険法上の給付請求権は、療養補償給付などについては行使できるときから2年。障害補償給付などについては、行使できるときから5年を経過したときに消滅すると定められております。論点として、1災害補償請求権及び労災保険給付請求権に係る消滅時効について、期間の見直しの要否をどのように考えるか。2仮に、消滅時効期間を見直すとした場合の方策についてどのように考えるか。3他の社会保険と異なる労災保険特有の事情についてどのように考えるか。この3つを記載しております。これらは研究会中間報告書で、現行の時効期間の見直しは必要か、何らかの手当を行う場合に考える方法について、他の社会保険と異なる労災保険特有の事情があると考えられるかについて検討をしていただきましたが、いずれも、委員の皆様の意見が分かれ、統一的な結論を得るには至らなかった。消滅時効期間の在り方については、被災労働者の保護の観点から、これらの意見も踏まえて、労使を含めて更に議論を深める必要があるとされたことを受けての論点です。
なお、16〜18ページに研究会におけるそれぞれについての主な意見を記載しております。
19ページです。労働基準法の災害補償請求権と労災保険法の保険給付請求権に係る消滅時効の根拠条文です。各条文の行使することができるときとは、権利を行使するのに法律上の障害がなくなったときであり、権利者が権利の存在を知らない場合にも、原則として時効は進行するという客観的起算点となっております。
20ページは、労働基準法と労災保険法の関係と消滅時効期間について図示したものです。上の業務上の負傷で、4日以上休業した場合、労働者は労基法の規定に基づきまして事業主に対し、待機期間3日分の休業補償を請求し、4日以上の分は労災保険の休業補償給付を請求することになりますが、時効の起算点は休業した日の翌日となること。また、下の遺族補償であれば、労働者が死亡した日の翌日が時効の起算点となること。遺族(補償)等給付及び障害(補償)等給付は、支給が長期間にわたる、高額であるなど、労働者や遺族の長期的な生活保障の目的があるため、消滅時効期間は5年とされていることが記載されております。
21ページです。消滅時効が2年である労災保険給付の時効の起算点をまとめています。休業(補償)等給付は、業務上の傷病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日ごとに受給権が発生し、それぞれの請求権について、療養のために休業した日の翌日から時効が進行します。療養の費用は、療養の費用を支出した都度等に受給権が発生して、それぞれ、その翌日から当該費用ごとの支給請求権の時効が進行します。ただし、(注)に記載のとおり、健康保険等からの切替の場合、保険者から返還通知がなされるまで、請求人は保険者への返還義務や具体的な返還額を知り得ないということから、保険者から費用の返還通知があったときを、当該費用の支出が具体的に確定した日として取り扱っております。介護(補償)等給付は月単位で支給されるため、受給権を行使し得るのは、支給事由が生じた月の翌月の初日以降であることから、支給事由が生じた月の翌月の初日から時効が進行します。葬祭料等は、労働者が死亡した日の翌日から受給権の時効が進行するということになります。
22ページです。消滅時効の見直しに関するこれまでの経緯をまとめています。平成29年民法改正では、一般債権の消滅時効につきまして、期間の統一化や短期消滅時効の廃止等が行われましたが、それに伴いまして、令和2年の労働基準法改正によりまして、賃金請求権の消滅時効期間を5年間、当面は3年間とするなどの見直しが行われたところです。
一方、災害補償請求権の消滅時効につきましては、現行2年間が維持されたところです。改正に先立つ労働政策審議会の建議では、その考え方につきまして、労働者の負傷又は疾病に係る事実関係として、業務起因性を明らかにする必要があるが、時間の経過とともに、その立証は労使双方にとって困難となることから、早期に権利を確定させて、労働者救済を図ることが制度の本質的な要請であるとされております。
23ページも、これまでの経緯ですが、令和2年の労働基準法改正法における附帯決議において災害補償請求権の消滅時効期間について、施行後5年を経過した際に、労災保険法における消滅時効期間と併せて検討することが求められております。なお、同法は、国会審議では、例えば、メンタルヘルスに係る疾患を発症した場合については、すぐに災害補償請求はできないので、労災保険と併せて見直す必要があるのではないかといった指摘を受けております。24ページも国会審議でのやり取りです。
25ページは、令和2年度から令和5年度までの不支給決定のうち、時効期間を徒過し、支給に至らなかった件数をまとめております。各給付の件数は御覧のとおりですが、そのうち理由が把握できた件数と理由につきましても、中段の表にまとめております。請求人の制度の不知・誤解や手続を失念していたことが理由となっております。
26ページは、民法上の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についてです。人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の期間は、損害及び加害者を知ったときから5年間、かつ不法行為のときから20年間とされております。不法行為による損害賠償請求権は、従前、人の生命又は身体が侵害された場合であるか、その他の利益が侵害された場合であるかの区別はされていませんでしたが、人の生命・身体という利益は、財産的な利益などと比べて保護すべき度合が強く、権利を行使する機会を確保する必要性が高いと言えることなどから、平成29年の民法改正によりまして、特別に権利行使できる期間を長くするよう改正されております。
続いて、遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額についてです。28ページを御覧ください。現行制度ですが、休業(補償)等給付などの給付額算定の基礎となる給付基礎日額は、原則として、労働基準法第12条に定める平均賃金に相当する額とされ、平均賃金を給付基礎日額とすることが適当でないと認める場合は、異なる方法で算定をされております。労働者が疾病の発生のおそれのある作業に従事した事業場を離職している場合は、疾病発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日以前3か月間の賃金を基礎に算定されます。論点として、1有害業務に従事した最終の事業場を退職した後、別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合における給付基礎日額について、疾病の発症時の賃金ではなく、ばく露時賃金を基礎に算定する現行の取扱いについてどのように考えるか。2有害業務に従事した事業場を退職した後、就業していない期間に発症した場合における給付基礎日額について、どのように考えるかの2つを記載しております。
これらも研究会中間報告書におきまして、論点1のケースについて、給付基礎日額の考え方については、労災保険の社会保障的性格や生活保障の観点から、発症時賃金を原則とし、発症時賃金がばく露時賃金より低くなる場合は、例外的にばく露時賃金を用いることが適当であるという意見が大宗を占めたところですが、その後の働き方の違い等で給付基礎日額の扱いが異なるのは公平ではないという少数意見があったことにも留意が必要。また、論点2のケースについては、労災保険法が想定しないケースとも考えられるという少数意見もあったが、労災保険法が使用者の災害補償責任を担保していることを踏まえれば、当面は現状を維持することが適当。一方、今後、各種給付の制度趣旨を検討することと併せて、本ケースにおける給付の在り方について再度検証することが望ましいとされたことを受けての論点となります。
29ページは、給付基礎日額の根拠などについてまとめております。給付基礎日額は労災保険法第8条第1項によりまして、労基法の平均賃金とされ、同条第2項では、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、政府が算定する額とすることが規定されております。具体的には、資料の1〜5までが労災則に規定されておりまして、このうち本件につきましては4に赤字で記載している取扱いに関するものです。昭和50年9月23日付の通知に基づき運用されているものです。
最後は30ページです。通知による取扱いを図示したものです。下の図は、20代にA、B、Cの事業所で疾病発生の原因となる有害作業に従事し、最後の事業場である事業場の給付基礎日額は8,000円だった労働者が、50代に有害作業の従事がないDという事業場で発症し、給付基礎日額が1万2,000円であるケース1の場合、給付基礎日額は昭和50年通知では、D事業場の1万2,000円ではなく、C事業場の8,000円で算定するという取扱いになっております。また、同様の事例で定年退職後、未就労で賃金収入がない70代に発症したケース2の場合も同様に、C事業場の8,000円で算定される取扱いになっております。資料についての説明は以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございました。それでは、各テーマについて議論を進めたいと思います。多岐にわたるテーマがありますので、遺族(補償)等年金、消滅時効、遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額の3つに区切りたいと思います。
まずは遺族(補償)等年金につきまして、資料の2ページ目にある論点に沿いまして、意見をお伺いできればと思います。御意見、御質問等がございましたら、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインから御参加の委員におかれましてはチャットのメッセージから「発言希望」と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡をお願いいたします。それでは御意見、御質問など、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。冨髙委員、お願いいたします。
しろまる冨髙委員 ありがとうございます。まず論点1ですけれども、現行の遺族(補償)等年金の支給要件は、制度創設当時には夫が仕事をして妻が家事と育児をするという就労や家族形態であったことを前提に作られたものだと考えております。しかし、資料10ページにあるように、今や共働き世帯が多数となるなど、制度設計の前提が完全に崩れています。
また、ジェンダー平等という観点も踏まえますと、夫婦間の支給要件の違いというのは、解消することは当然であり、夫のみに設けられている要件を撤廃して、解消を図るということが適当であると考えております。
その上で論点2の「長期給付を維持すべきか」という点です。これは被扶養利益の喪失の補填という遺族(補償)等年金の目的をどのように考えるのかというところに直結するものであると考えておりまして、なかなか短期間で結論が出るものではありません。したがって、まずは夫婦間の要件の格差というのを是正することに注力するということが必要ではないかと考えております。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。白山委員、お願いいたします。
しろまる白山委員 ありがとうございます。私から2点、意見させていただきたいと思います。まず論点3の特別加算についてです。現行の特別加算制度は、55歳以上または一定の障害状態にある妻に対して、遺族(補償)等年金が通常の153日分に22日分が加算されるという仕組みです。こうした現在の制度が作られたのは1970年であると資料7ページで御説明いただきましたけれども、その背景として高齢の妻は働くことが難しいという事情がございました。それから50年以上経過し、女性の就労促進やジェンダー平等が進んでいる現代において、妻のみに加算を設けるということは合理性がないのではないかと考えます。
加えて、働くことができずに生活困窮度が高いという意味では、高齢の妻以外にも障害のある御遺族や子供のみの場合のほうが加算の必要性が高いとも考えられます。それにもかかわらず高齢の妻のみに加算することが政策的に適切なのかは疑問です。今回の見直しでは、夫と妻の解消という面だけではなくて、対象の範囲を拡大する方向で見直していくべきではないかと考えております。
もう一点、論点1に関しては、冨髙委員が発言したとおり、夫に課せられている要件を撤廃する形で、夫婦間格差の是正をすべきと考えますけれども、課題を提起したいと思います。具体的には同性パートナーへの支給の検討を考えていただきたいということです。現行民法では同性婚は認められておりませんし、それに伴って同性パートナーには、遺族(補償)等年金の受給権が発生しておりません。ただ、性自認や性的指向に関わる社会の取組は進んでおりますし、昨年は犯罪被害者遺族への給付金の支給対象に同性パートナーが該当しうるという最高裁の判断もあったと理解しております。同性パートナーの課題は、もちろん労災保険単体で検討することは難しいと思いますが、その課題解決に向けた検討は進めていくべきではないかと考えております。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。福田委員、お願いいたします。
しろまる福田委員 では、論点1についてですけれども、夫と妻の支給要件の解消については、一般的な社会通念から言えば当然のことだと思いますし、その解消の方法として多数意見にもありましたけれども、夫のみに課せられた要件について解消するという方向ということは、一つの出口としては理解するところではあるのですけれども、一方で労災保険の財源という、国の財源を使うことである以上、安易な考え方でやるということは、いかがなものかなと思っております。5ページ目に過去の考え方が示されておりますけれども、従来は男が独立して生計が得られると、維持できるという判断があったので、そういう要件を入れていたということなので、この考え方をもし維持するとすれば、今回は男性について生計維持能力がなくなったのかというようにも捉えかねないという部分もありますので、このときの判断を変えるなら変えるという、しっかりとした考え方を整理した上で、変更するなら変更するということの判断をすべきだろうなと考えるところです。
ですので、従来の考え方を変えるのかどうするのか、若しくは、この考え方を変えないのであれば、小数意見でありました妻の要件を夫に合わせるということも検討に値するのではないかなというように思います。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。足立委員、お願いいたします。
しろまる足立委員 足立です。私もこれまでの御発言のとおり、夫と妻の支給要件を撤廃するというのには賛成です。これまでの議論でありましたけれども、今は主婦の婦の字が、婦人の「婦」から夫の「夫」に替わって働いているような方もいらっしゃいますので、そこを違う形で考えるというのは、やはりちょっと今の社会通念上には合っていないのではないかというように思うこともありますので、そこは賛成です。
ただ、長期給付とか、そこはやはりいろいろな御意見がありましたけれども、財源等の話もありますでしょうし、あと12ページに、今の支給されている方の数がありましたけれども、これはあくまでも今の規定で認められている方々の支給の決定件数ですので、ここが変わったときにどうなるのかというところは、試算等ができるのであれば、そういったこともして、考えるべきかと思います。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
しろまる笠井委員 論点の1から3について、意見を申し上げます。初めに論点1につきまして、遺族(補償)等年金の創設から半世紀以上が経過し、夫が単独で家計を担う世帯を共働き世帯が大幅に上回るようになったと同時に、研究会においては昭和40年当時と現在のデータを比べたときに、女性は独力で生計維持できるように思われるとの見方も出されたと承知しています。中間報告書が指摘するように、夫と妻との支給要件の差を設ける合理的理由を見出すことは困難と考えられ、その解消を図るという方向性に異論はありません。
ただし、論点2にも関わりますが、支給要件の差を解消するに当たり、夫にのみ課せられた支給要件を撤廃すればよいという結論を、単純に導くのは必ずしも適切ではないように思います。その点、研究会で水島委員も同様の指摘をされていたのではないかと存じます。先ほど申し上げたように、労災保険制度を取り巻く環境は変化しております。その変化を適切に踏まえた見直しが求められると考えます。
また、労災保険と同じく社会保障制度を構成する遺族厚生年金においては、御案内のとおり60歳未満の死別に際して、原則5年間の有期給付とする制度の大幅な見直しが行われました。こうした動きを踏まえますと、遺族(補償)等年金における長期給付の妥当性を検討すべき時期に来ていると考えます。
中間報告書では、遺族(補償)等年金制度の制度全体の在り方について、専門的な見地から引き続き議論を行う必要があると結論付けています。夫と妻の支給要件の差の解消方法についても、遺族(補償)等年金の今日における趣旨・目的に照らし、学識経験者による議論の蓄積を踏まえて判断していくのが本来の在り方だと思います。
次に、論点3に関する意見です。研究会の意見が一致したように、特別加算について昭和45年の制度創設時の考え方は妥当せず、妻のみに加算を設ける合理性は失われています。この点、労側の白山委員も御指摘になったと思います。
資料の8ページ、創設当時の考え方には、諸外国においても同様の制度を認めている例が、かなり見受けられるとの記載がありますが、本年7月にJILPTが公表した調査報告書によれば、調査対象としたアメリカ、ドイツ、フランス、イギリスの4か国において、特別加算に相当する制度は行われていないとのことでした。こうした状況を踏まえますと、特別加算制度は廃止が妥当であると考えます。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。一旦マイクの修理を入れさせていただきます。少しお待ちくださいませ。
ありがとうございました。ほかに御意見、御質問等はありますか。よろしいですか。事務局からは何もございませんか。ありがとうございます。特にないということでしたら、続きまして次の論点に移りたいと思います。消滅時効につきまして、議論してまいりたいと思います。資料の15ページ目にある論点に沿いまして、御意見をお伺いできればと思います。御意見はいかがですか。冨髙委員、お願いいたします。
しろまる冨髙委員 ありがとうございます。事務局から御説明がありましたように、民法改正で一般債権の消滅時効は2020年から原則5年とされましたが、災害補償請求権と労災補償請求権の消滅時効は2年に据置かれています。労災保険請求権の消滅時効が、対等な市民相互間を規律する民法よりも短いという課題は早期に解決すべきであり、5年に延長するということが当然だと考えているところです。
そもそも労災の事案の中には、自分で気付くということも当然あるのですけれども、年月を経て周りからのアドバイスを受けて、自分のけがとか病気が労災請求の対象事案であることに気付くというパターンもあるのではないかと考えております。
また、資料の23、24ページに2020年改正時の消滅時効の見直しに関する国会審議の内容を入れていただいておりますけれども、そこでも指摘されている通り、精神障害などの場合はすぐに御自身も含めて請求手続を取れるかというとなかなか難しいケースもあるのではないかいう課題もあります。そういった中で、2年で労災保険給付の請求権消滅というのは不合理ではないかと考えております。
さらに、改正前の労基法では賃金請求権と災害補償請求権の消滅時効期間は2年で同一でしたけれども、2020年改正で賃金請求権は原則5年、当面の間は3年に延長され、いわば災害補償請求権だけ取り残されている状況です。労基法の中でもともと同一であった時効期間が、災害補償請求権だけ延長されず、ずれてしまっているという状態に合理性はないと考えておりますので、早期に5年にすべきだと考えております。
なお、研究会の中間報告書では、被害者の早期の権利実現を目指すべきという理由で、時効の見直しは不要というような意見もあるようですが、これは労働側からすると理解し難いところです。そもそも時効による請求権の消滅によって、労災保険給付という債務の履行を免れ、利益を得るのは国です。逆に、時効によって権利を喪失して不利益を被るのは、被災労働者と遺族となります。なぜ国の利益を、被災労働者とその遺族が被って実現をしなければいけないのか。そこについては理解し難く、請求権を早期に消滅させることは、被災労働者の早期の権利実現にはつながらないと我々としては考えています。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。立川委員、お願いいたします。
しろまる立川委員 私も、冨髙委員から発言があったとおり、労災保険請求権の消滅時効は5年に延長すべきだと考えております。労働者の中には、そもそも労災保険制度の存在を知らない、又は仕事中に被災したものの、業務起因性の認識がないケース、さらには被災労働者が亡くなってしまった場合に、遺族が私的な原因で亡くなったと思い込み、労災の対象とは思っていなかったというようなケースもあると耳にするところです。そうした中で、請求権を早期に消滅させることが妥当とは思えません。
また、論点3にも関連しますが、労災保険制度では、他の社会保険制度と異なりまして保険証がありません。そのため、労働者は、自分が労災保険制度の適用対象であるか否かを明確には意識していないし、そして遺族がそれを認識しているかどうかも分かりません。このため、労働者性が曖昧にされている労働者は、労災と思われる事故などに遭っても、自分が労災保険給付の対象となり得ることに、直ちに気付かないというケースも考えられるところです。
こうした状況を踏まえれば、やはり請求権を早期に消滅させることは、合理性がないと言わざるを得ません。時効は5年へと延長するのは当然であると言えると思っております。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
しろまる笠井委員 論点1について発言いたします。資料の23ページから24ページに掲載されている、2020年の労基法改正時の国会審議における政府答弁にもありますように、災害補償の仕組みでは、被災労働者の負傷・疾病の業務起因性を明らかにする必要がありますが、時間の経過により、その立証は困難となります。当時、消滅時効期間を維持する理由とされた、早期に権利を確定させて被災労働者の救済を図る必要性や、早期の労災保険給付請求を通じた事業主の安全衛生対策、再発防止対策の促進の必要性については、今もなお妥当すると認識しています。
また、労基法の改正に先立つ労政審の建議では、災害補償請求権や労災保険給付請求権の消滅時効期間の見直しに当たり、他の労働保険や社会保険を含め、一体的に検討が必要であるとされています。研究会においては、労災保険制度特有の事情の有無も含めて、統一的な意見を得るには至っておりません。消滅時効期間の延長ありきではなく、ただいま述べた視点も含めて、当部会において十分な議論が必要だと考えております。なお、資料25ページの時効期間を徒過した理由を見ますと、「事業主等の手続漏れ」「請求人の制度の不知・誤解」「請求人が手続を失念していた」が上位となっています。厚生労働省には、事業主、労働者を含めて、労災保険請求手続に関係する方々に対し、現行制度の一層の周知・広報に注力いただきたいと思います。
冨髙委員の御指摘に関連して、事務局に1点質問させていただきます。精神障害について消滅時効期間を徒過し、労災保険給付を受けられなかったケースがどの程度あるのか、把握していれば教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
しろまる小畑部会長 御質問ですが、事務局から御回答はありますか。
しろまる労災管理課長 本日の資料の25ページで、時効の期間を徒過した件数あるいは理由を提示しています。そのうち疾病ごと、今、例示があった精神障害についてデータが取れるかどうかについては、我々の中でも検討中ですので、把握できた際には提示させていただければと考えます。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。笠井委員、お願いいたします。
しろまる笠井委員 御回答ありがとうございます。仮に消滅時効期間を見直すのであれば、相応のエビデンスの存在が前提となるべきだと考えております。よろしくお願いいたします。
しろまる小畑部会長 ほかにはいかがでしょうか。金井委員、お願いいたします。
しろまる金井委員 今ほどの消滅時効の論点3と2にも絡む意見です。時効の在り方は慎重な議論が必要だという御意見がありましたけれども、立川委員が指摘したとおり、労災保険制度については保険証がないという点もありますし、その違いに加えて、労災保険と他の社会保険では、支給要件の明確さが違うと考えております。つまり厚生年金は年齢、健康保険は病気やけが、雇用保険は失業という形で、基本的には外形事実だけで支給の有無が判断されるようになっております。だからこそ被保険者の立場としては、自分が保険給付を受けられるか否かの予測が、比較的容易なのです。これに対して労災保険では、支給要件として業務遂行性、業務起因性があり、外形事実だけで容易に支給されるか、されないかの判断ができないところです。
また、労災保険の場合については、労災申請をすることによって不利益な取扱いを受けるのではないかと危惧をして、申請をためらう被災労働者の心理面の課題もありますが、他の社会保険制度では、基本的にこうしたことはないと認識しております。こうした労災保険制度の特性に照らせば、労災保険給付請求権の時効期間を、他の保険給付制度の時効期間等にそろえる必要はないとも考えられますし、むしろほかの社会保険より時効期間を長く設定することが妥当だと考えております。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。足立委員、お願いいたします。
しろまる足立委員 私も期間延長のところに絡んで、25ページです。先ほど笠井委員からもありましたけれども、こちらは時効期間を御存じない方が申請してきた形で、どういう分類かということをされていると思います。ですから長期間にしたところで、本来、どのような方々が救済されるかというのは、この時効期間を正しく理解されていた方は申請してきていないので、データとして出していただくというのは難しいかもしれません。しかし、それをきちんと認識した上で、どうしていったらいいかというのを議論する必要があるかと思っています。むしろこのデータだけを拝見する限り、先ほどのお話にもあったとおり、周知や制度をきちんと徹底させることのほうが重要とも思えてしまいますので、その辺も含めて議論させていただけたらと考えています。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。砂原委員、お願いします。
しろまる砂原委員 私も、3番のほかの社会保険制度との関係について述べたいと思います。日本には様々な社会保障制度がありますが、この制度だとこの期間に請求、この保険だとこの期間に請求などとなってしまうと混乱が生じかねず、デメリットもあるのではないかと思います。制度周知がうまくできてない、若しくは被災者の心理的な面で難しいという話がありましたが、そこはむしろ労使で協力して周知し、この制度はいつまでに請求しなきゃいけないのかというようなことを心配せずに、「労災保険をちゃんと申請しましょう」ということを周知していく中で解決するべきだと思います。この制度はこの期間、この保険はこの期間ということを全国民が理解して行動することのほうが、むしろ社会的コストが大きくなり、無駄なコストが発生する可能性があるのではないかと感じます。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。特にないようでしたら、最後に、遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額について議論していきたいと思います。資料の28ページにある論点に沿って御意見をお伺いできればと思います。いかがでしょうか。松尾委員、お願いいたします。
しろまる松尾委員 論点2です。アスベストの疾患も含めて記載されているように、遅発性、いわゆる、ばく露してから発症までの期間が、一般的に30〜40年と言われていますけれども、私の知人などだと、若くしてばく露歴10年で亡くなった方もいらっしゃいます。ですから必ずしも30〜40年ではなく、人によって、個体によって発症の期間が大分違うと思っています。実態との関係できちんと給付が受けられるかどうかというのは、その後の補償あるいは遺族の関係も含めて、非常に問題だと思っています。そうした意味では、ばく露時よりも実際に発症したのが、かなり遅れるケースもありますし、どういう働き方だったかということで、大きく左右されることがありますから、ここは是非、きちんとその方の生活保障ができるようにする。
それから、実際に給付するアスベストについては、建築基準法で定められた要件の中で働かざるを得なかった方々が、今、実際に疾患されている。まだ残っているアスベストの関係のリフォーム等を中心にして、今後も発症の危険はまだまだありますから、そういった意味では是非、この遅発性に係る論点については、きちんとした対応をお願いしたいと考えております。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。金井委員、お願いいたします。
しろまる金井委員 資料28ページの論点1です。研究会の中間報告書にもあるとおり、発症時賃金を原則とし、発症時賃金がばく露時賃金よりも低くなる場合は、ばく露時賃金を用いるという方向で見直すべきと考えております。年齢や勤続年数に応じて賃金が上昇する賃金体系が一般的である中で、資料の30ページの下の図で言えば疾病を発症した50代の賃金は、疾病の原因となる有害作業に従事していた20代の賃金よりも高くなっているのが一般的です。それにもかかわらず20代の賃金で労災保険給付が算定されるという扱いは、労働者にとって酷で、研究会中間報告のとおり見直すことが妥当だと考えております。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。福田委員、お願いいたします。
しろまる福田委員 私のほうからは論点1から一言。先ほどと同じように、若干揚げ足を取るような理屈の話になってしまうかもしれないのですけれども、ばく露時よりも発症時の賃金が高くなっている場合においては、その時点での生活を保障してあげるという観点で、発症時の賃金を用いるという考え方は、労災補償給付というのが生活保障であるという考え方に立てば、十分理解できるところと思うのです。そういう立場や考え方に立ったとき、逆にばく露時よりも発症時のほうが、賃金が低くなった場合に、あえてばく露時賃金を使うという考え方は、生活保障という考え方に基づいたときに、どういうようにそれを理解すればいいかということに関しては、同じ考え方でそれを語るのは難しいのではないかと思います。先ほども申したとおり、国の制度として公の財源を使うという観点からすれば、そういうところはきちんと考え方の整理をした上で、制度としてしっかり運用していくべきではないかと思います。その点だけ御留意いただければと思った次第です。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
しろまる笠井委員 福田委員の指摘に加えて私からも発言いたします。有害業務に従事したときから疾病が発症するまでの潜伏期間が、著しく長期にわたるという遅発性疾病の特性を踏まえると、労災保険の社会保障的性格や被災労働者の生活保障の観点から、現行の取扱いを変更し、発症時賃金を原則にすること自体は理解できます。ただし、発症時賃金を原則とする見直しを行うのであれば、中間報告書の記載のとおり、被災労働者が有害業務に従事した最終事業場に対するメリット性の適用に際しては、当該労働者のばく露時賃金を基礎とした給付のみを加味すべきだと考えます。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。冨髙委員、お願いいたします。
しろまる冨髙委員 まず論点1については先ほど金井委員が発言されたとおり、発症時とばく露時とで、高いほうの賃金額を採用して計算すべきだと私も考えております。その上で論点2です。研究会の中間報告でこの点は、当面は現状を維持することが適当、つまりばく露時賃金で計算するとされています。しかしこの点についてはもう少し詳細な検討が必要ではないかと考えているところです。なぜなら、発症時にたまたま無職で収入がないから、数十年前の賃金をベースに算定するということになりますと、十分な補償を受けられない可能性も高いのではないかと考えられるからです。
そもそも給付基礎日額というのは、資料の28ページにあるように、原則として労働基準法第12条に定める平均賃金に相当する額とされております。この労基法第12条の条文を見ますと、平均賃金の算定方法が詳細に書かれた上で、最後の第8項で平均賃金を算定できない場合は、厚生労働大臣の定めにより設定するとされております。この条文に基づいて、通達が発出されており、そこでは例えば離職時の賃金額が不明な場合は、同種業務に従事している労働者の賃金から推認するという方法が示されております。この通達の考えに照らせば、例えば、ばく露時賃金と発症時の推認賃金で、高いほうをとるといった方法も考え得るのではないかと考えています。発症時に無職である場合、数十年前のばく露賃金を基準とすることが良いかというのは疑問であり、そのほかの方策も含めて被災労働者が十分な補償を受けることができるよう検討すべきではないかと考えております。以上です。
しろまる小畑部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。特にありませんか。それでは、本日議論をした点の全体を通して何か御意見、御質問などはありますか。特にありませんか。ありがとうございます。本日議題とした各テーマについて、委員の皆様方から大変様々な御意見、御指摘を頂きました。事務局におかれましては本日の議論を踏まえて整理をしていただき、次回以降の資料に反映していただくようにお願いしたいと思います。それでは、本日予定した議題は以上ですので、部会は終了します。事務局より次回の日程についてお知らせをお願いいたします。
しろまる労災管理課長 次回の日程については、事務局より追って連絡させていただきます。
しろまる小畑部会長 本日は以上といたします。皆様お忙しい中、どうもありがとうございました。

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