03/02/19 第9回社会保障審議会議事録 第9回社会保障審議会 しろまる日時 平成15年2月19日(水)15:00〜17:08 しろまる場所 厚生労働省 専用第18・19・20会議室(17階) しろまる出席者 <委員:五十音順、敬称略> 浅野史郎、阿藤 誠、糸氏英吉、岩田正美、翁 百合、奥田 碩、貝塚啓明、 鴨下重彦、岸本葉子、京極高宣、??木 剛、中村博彦、長谷川眞理子、樋口恵子、 廣松 毅、星野進保、宮島 洋 <事務局> 水田邦雄 政策統括官(社会保障担当)、青柳親房 社会保障担当参事官、 高原正之 統計情報部企画課長、中村吉夫 雇用均等・児童家庭局総務課長、 宇野 裕 社会・援護局総務課長、足利聖治 障害保健福祉部企画課長、 松田茂敬 老健局総務課長、外口 崇 老健局老人保健課長、 間杉 純 保険局総務課長、高橋直人 年金局総務課長、木倉敬之 年金局年金課長、 伊原和人 政策企画官 しろまる議事内容 1.開会 (伊原政策企画官) 政策企画官の伊原でございます。 本日、冒頭の間、司会をさせていただきます。 お断り申し上げますが、本日、年金部会が開かれ3時に終了予定のため、その部会に 所属されている先生方が若干遅れてご出席の予定でございます。 定足数は揃っておりますので、始めさせていただきたいと思います。 2.委員紹介 (伊原政策企画官) 委員の皆様におかれましては、1月28日をもって任期が満了となりましたことに伴 い、この度ご就任のお願いをさせていただきましたが、快くお引き受けいただきありが とうございました。 今回、小宮英美委員、高久史麿委員が任期満了をもって退任されまして、新たに岸本 葉子委員にご就任いただきましたので、ご照会いたします。 (岸本委員) よろしくお願いいたします。 (伊原政策企画官) また、本日は欠席されておりますが、国立循環器病センター総長の北村惣一郎委員に も新たにご就任いただいております。 本日は、青木委員、稲上委員、岩男委員、北村委員、清家委員、永井委員、西尾委 員、堀委員、山本委員及び渡辺委員がご欠席というご連絡をいただいております。 しかしながら、出席いただきました委員が1/3を超えておりますので、会議は成立 しておりますことをご報告申し上げます。 3.会長選出及び会長代理の指名 (伊原政策企画官) それでは、本審議会の会長の選出をお願いしたいと思います。社会保障審議会令第4 条に定めるところによりますと、「審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。 」このような規定になっております。選出の方法についてはこのように委員の互選と なっておりますが、お諮りしたいと思いますが、いかがでございましょうか。 (阿藤委員) 委員の互選ということですので、ご推薦をさせていただきます。 これからの社会保障制度審議会は、社会保障全般の見直しという重要課題の審議をス タートさせる、そういう段階でございます。審議の継続性という観点からも、引き続き 貝塚先生に会長をお願いしてはいかがかと思います。 (伊原政策企画官) ただ今、阿藤委員から、貝塚委員に会長をお願いしたらどうかとのご発言がございま したが、いかがでございましょうか。 (「異議なし」の声あり) では、ご異議がないようでございますので、貝塚委員に本審議会の会長をお願いした いと存じます。よろしくお願いいたします。 恐縮でございますが、会長席にお移りいただき、以後の進行についてお願いいたしま す。 (貝塚会長) 一言ご挨拶をいたします。 私は、前から社会保障関係の会議や審議会に関係しておりますが、現在も今後もます ます社会保障の問題は、重要かつかなり難しい問題が多いわけですが、皆さまのご協力 をいただきましてこの全体の委員会の中でうまく方向性が出せればと思っております。 よろしくお願いいたします。 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。 社会保障審議会令第4条第3項には「会長に事故があったとき、あらかじめその指名 する委員がその職務を代理する。」ということにされております。この会長代理につき ましては、本日、ご欠席ではありますが、国際基督教大学の西尾委員にお願いいたした いと思います。よろしくお願いいたします。 4.社会保障をめぐる最近の動き (貝塚会長) それでは、次の議題に移りたいと思います。 本日の議題は、基本的には議事の4番目が一番重要でして、社会保障に関する制度横 断的検討について、今後この審議会の場でやる中心事項になります。 その前に議題3について、皆さま方に最近の社会保障、この審議会はいろいろな分科 会がございまして、いろいろな議論がなされておりますが、最近の動きにつきまして各 所管の局からご説明いただくことになります。 それでは事務局からお願いします。最初に保険局ですか、どうぞ。 (間杉課長) 保険局総務課長の間杉でございます。よろしくお願いいたします。 私からは、医療制度改革に関する動きということで、資料1と資料2を準備いたして おります。資料1−2の表紙だけをご覧いただきたいのですが、これを役人用語でホン チャンと呼んでおりますが、厚生労働省の試案、たたき台でございます。昨年の12月17 日に私どもで試みの案ということでたたいていただくために提出をしたものでございま す。 ここの表書きにございますように、ご案内のとおり、先般の健保法改正法で14年度中 に、この3月末までに政府方針を策定をすることになっております。中身は3点、1つ が保険者の統合再編、医療保険制度の体系論でございます。2点目が新しい高齢者医療 制度の創設。それから診療報酬の体系の見直しということで、この3点についてこの3 月の末までに政府として基本方針をとりまとめる。そのための幅広いご議論をというこ とで、去年の暮れにご提示をさせていただいたと思います。たしか昨年に坂口大臣私案 という形で案を出しましたときにもご報告を申し上げたかと思いますが、それに引き続 いてとりまとめたものでございます。 長くなるといけませんので、資料1−1ということで、役所の方でもカラーコピーが できるようになりましたので、概要版を用意いたしました。これで要点を簡潔にご説明 申し上げたいと思います。 まず1ページが、医療保険制度の体系の在り方ということでございます。今、さまざ まに保険者が分立をし、それぞれに大きな問題を抱えてきておりますが、中ほどの「対 応の方向」にありますように、保険者の財政的安定、地域の医療提供のまとまりに即し た形になるように保険者を再編・統合をするといった点、それから保険者の年齢、ある いは所得の相違に基づく保険料負担の差異を是正をする。等々の問題認識に基づきまし て、一番下に制度改革とございますが、2つの大きな制度改革、保険者の再編・統合問 題、新しい高齢者医療制度を含む制度改革ということで、下に(注記)がついておりますが、 この3月の基本方針の策定後、概ね2年を目途として改革に着手をする。それから、現 在、進行中でございますが、先の健保法で高齢者医療の姿が、今変わりつつございます が、これが完成した段階で改革の実現を目指す。こんなタイムスケジュールで議論を進 めていったらどうかということでございます。 2ページでございますが、その中の大きなテーマの1つが、保険者の再編・統合問題 でございます。今、保険者の規模、財政力、それぞれ区々でございますが、保険者を再 編・統合していく際の軸として、ひとつ今の医療提供の実態等々を考えたときに、都道 府県単位ということを考えてみたらどうかということでございます。 そして具体的には、国保は現在、市町村でございますが、将来的な新たな枠組みとし て都道府県といったものが考えられないかどうか。政管健保についても、現在、全国一 本ということでございますが、都道府県を単位とした財政運営を導入し、都道府県ごと の保険料率の設定が可能になるような仕組み、それから健保組合についても、都道府県 単位の一つの受け皿として地域型の健保組合といったものが考えられないか。こういっ た保険者が都道府県単位にまとまることによって、地域における医療提供と連携をとっ て進めていくという形ができないだろうかということを1点ご提案をいたしておりま す。 2ページ、もう1つの大きなテーマは、新しい高齢者医療制度を含む制度改革でござ います。現在、構造的に医療保険制度の中でどういうことが起こっているかということ で、3ページの下に図が2つございます。左は、年齢階級によりまして1人当たり医療 費に大きな差があるということで、特に60歳代をすぎましたところから急激に上昇する ということでございます。それから、右の図でございますように、就業構造の変化等々 を経まして、今日、被用者保険と国保との間に年齢構成に大きな不均衡が生じている。 国保が非常に頭の重い形になっている。こういう構造要因がございます。こうした構造 要因に対処していくために、いずれの形であるにしても年齢構成に着目して制度間の調 整を実施をしてはどうかということで、試案という形でA案、B案の2つの案をお示し をいたしました。 今の構造問題に全年齢を通じて対応しようというのが、4ページのA案でございま す。「制度を通じた年齢構成や所得に着目した財政調整を行う案」と書いております が、国保、被用者保険の間で全年齢を通じて、年齢差に起因します先ほどご覧いただき ましたような医療差については財政調整をしようという案でございます。被用者保険と 国保は分立はしておりますが、いずれの制度も日本全体の人口ピラミッドと同じような 形をしていると仮定して財政調整をしようという案がA案でございます。 5ページはB案ということで、先ほどご覧いただきました一番1人当たりの医療費と か年齢構成の歪みが激しく表れている後期高齢者に着目した集中的な対応をしたらどう なるかということで、作ったものでございます。75歳を過ぎますと独立の高齢者医療制 度に入って、特色としては高齢者一人ひとりがそれぞれ保険料をそこに支払っていただ く、公費は5割入る、残りの不足前を若年世代支援という形でそれぞれ若い制度から応 援をするといった案でございます。 ただ、この案の場合には完全に、先ほどご覧いただきましたような国保と被用者制度 との間の年齢的な歪みが解消されないということで、その点についてはもうひと工夫は 必要になろうかと思います。 今はこんなA案、B案という2つの案でご提示をいたしております。 最後に「診療報酬体系の見直し」ということで、多分に図式的なポンチ絵で誠に恐縮 でございますが、いくつかの軸で分けてございます。医療機関の機能という意味で、下 に外来医療、入院医療とございます。外来医療については、たとえば診療所、中小病院 についてはプライマリーケア機能を重視をする、大病院については専門外来的な機能を 重視するといった点、それから入院医療については、急性期、慢性期それぞれ、疾病特 性を反映した診断群分類とか、あるいは慢性期については病態ADL、看護の必要度等 に応じた評価、こんな形で包括化を進めていく。 その中で、上に出来高払いの技術的な要素が乗る、こんな形を今回、ご提示いたして おります。茶色い部分が出来高払い、水色の部分が包括払い的な部分ということでござ います。 茶色の中で、医療技術の適正な評価ということで、たとえば難易度とか時間、技術力 といった要素を重視をしていく、水色部分の中で運営コストとか機能といったものを反 映をしていく、こんな体系を今回、ご提案をいたしております。 中身は省略して誠に恐縮ですが、以上でございます。この1月中旬に、国会が始まる 前にということで、大臣が是非直接医療関係の団体、あるいは保険者、被保険者の団体 の方々と意見交換をしたいということで、大臣は直接対話方式と言われましたが、それ ぞれ意見交換を行ったところでございます。 それから、この2月の上旬から順次、与党へのご説明も始めておりまして、時間がご ざいませんがなんとか3月末の基本方針のとりまとめに向けて最大限の努力をしたいと 考えているところでございます。よろしくお願いいたします。 (貝塚会長) どうもありがとうございました。医療保険改革というのは、一昨年、ある部分が先行 したわけですが、その後のその先の全体像をどう描くかというのは、今日お話しになっ たところだと理解しております。 では老健局の方からよろしくお願いします。 (外口課長) 老人保健課長の外口でございます。よろしくお願いいたします。 私からは、介護報酬の見直しについて報告いたします。 介護報酬の見直しについては、一昨年10月から介護給付費分科会においてご審議いた だいております。先月1月20日に諮問をし、1月23日に答申をいただいたところであり ます。お手元の資料の2−2が諮問書、2−3が答申であります。資料2−1の介護報 酬の見直し案の概要を参照しながら報告いたします。 資料2−1の見直し案の概要でございますが、平成15年度の介護報酬の見直しについ ては、介護サービスの増大、これに伴う保険財政への影響、あるいは近年の賃金・物価 の下落傾向等を踏まえまして、保険料の上昇幅を抑制する方向で全体としてはマイナス 2.3%、その内訳として、在宅分の平均がプラス0.1%、施設分の平均がマイナス4.0% の改定を行うこととなりました。 次に、主な見直しの内容について説明いたします。1ページのIIでございますが、最 初に、居宅介護支援、いわゆるケアマネジメントでございますが、17.1%の引き上げと なります。居宅介護支援は、経営実態調査の結果では、平均して20%の赤字でありま す。また、96%の事業所が他の事業所と併設されているという実態があります。こうい ったことから、公平性・中立性を維持できるようにするために大幅な引き上げを行って いるところであります。 一方で、居宅サービス計画を利用者に交付しない場合などは、2ページの(2)の?A) でございますが、居宅サービス計画を利用者に交付しない場合、あるいは居宅訪問を1 か月間、全くしない場合、ケアプランのアセスメントを3か月も記録しない場合といっ た場合には、3割の減算とすることとしております。 2の(1)訪問介護でございますが、訪問介護は全体では 2.3%の引き上げとなります。 訪問介護は、従来は身体介護、複合型、家事援助の3類型ございましたが、このうち複 合型を廃止しまして、家事援助は生活援助と名称を改めました。なお、単位について は、短時間のサービスを重点的に評価する体系としまして、家事援助が新しい名称と なった生活援助では相当の引き上げとなっております。ただし身体介護中心型の場合で は、1時間半以上の部分は従来より引き下げられております。 次に3ページの(2)、いわゆる介護タクシーについてでございます。これは従来、身 体介護の単位で算定されているという実態がありましたが、これを適正化するために、 適切なアセスメントに基づくケアプラン上の位置づけを前提とし、要支援の場合は算定 対象から除外することとし、また、単位も従来の身体介護型で算定した場合の半分以下 の 100単位としております。 次に(2)通所サービスです。通所サービスは全体としては引き下げとなりますが、新 たに延長サービスというものを導入しました。これは預かり機能が主体となりますが、 従来の6時間から8時間といういちばん長い単位に、さらに2時間まで延長サービスを 算定できるようにしております。 4ページの(2)通所リハビリテーションについては、集団を対象としたリハビリテー ションは基本単位部分に包括することとしました。そして個別リハビリテーションを 行った場合に、退院・退所後1年以内は130単位、そのあとは100単位の算定としており まして、個別リハビリテーションを評価する体系としております。 次に、4ページの(6)グループホームでございます。グループホームは全体としては 2.7%の引き上げとなります。基本単位の部分は一定の引き下げをしておりますが、夜 間ケア加算を新たに1日に71単位設定しました。これは、現行の場合は夜は宿直体制を 前提としていた体系でありましたが、実態として夜勤の体制が現在、5割から6割を占 めているということがありますので、算定要件である適切なアセスメントに基づく介護 計画や夜勤職員の配置、評価結果の公表を行った場合には、夜間ケア加算が算定できる ようにいたしました。 次の5ページからが施設サービスです。介護福祉施設については 4.2%の引き下げと なります。まず最初に、小規模生活単位型介護福祉施設、これがいわゆる個室ユニット ケア型の介護福祉施設ですが、この個室ユニットケアの場合は介護報酬は現行の単位よ りは若干下がりますが、従来型の特養よりは引き下げ幅が小さくなっております。 一方で居住費については新たな自己負担が導入されますので、低所得者の方の場合に は、負担軽減のため、保険料区分第1段階の場合は66単位、第2段階の場合は33単位が 加算されます。 5ページの下の段に示した介護福祉施設サービス、いわゆる従来型の特別養護老人 ホームについては全体として引き下げとなっておりますが、要介護度が高くなるほど引 き下げ幅が小さくなっております。 6ページが介護老人保健施設です。老人保健施設は、全体としては特別養護老人ホー ムと同様にマイナス 4.2%であります。老人保健施設の役割として期待されるものの代 表例としてリハビリテーションがありますが、今回の改定では理学療法士等を増員加配 して個別リハビリテーション計画を作成し、その計画に基づきリハビリテーションを行 う体制にある場合に加算をすることとしております。 次に介護療養型医療施設ですが、これは全体ではマイナス 3.2%の引き下げになりま す。介護療養型医療施設は、今回の改定では、長期にわたる療養の必要性が高く、要介 護の高い患者さんの場合に高い単位の体系とし、逆に要介護度が低い場合には従来より かなり低い単位の体系としております。 7ページは、今回新たに重度療養管理加算というものを設定しております。これは、 常時頻回の喀痰吸引を実施している場合などの方が対象となりますが、現在の要介護度 が4あるいは5の入院患者さんの場合では、そのうちの約3%の方が対象となると推定 しております。 この重度療養管理加算は、介護療養型医療施設の行うショートステイの場合にも算定 されます。 最後に(4)、特養、老健、療養型の3施設に共通で新設した加算として、退所(退院) 前連携加算というのがあります。これは、退所(退院)の前から利用者の希望する居宅 介護支援事業所、いわゆるケアマネジャーさんですが、ここと連携して退所(退院)後 の居宅サービスの利用に関する調整を退所(退院)前から行った場合に、 500単位加算 するという体系を設けてとおります。在宅復帰が円滑に進むことを目的としたものであ ります。 今回の改定では、経済の情勢や保険料の動向を考慮し、経営状況も参考にし て、全体としては一定の引き下げとなっているところでありますが、引き下げるなかで も当初の設定で実態からみて是正すべき部分を改善し、さらに今後の介護のあるべき姿 を念頭に、在宅重視、自立支援の観点から改善すべき部分を改善することを目指しまし た。 以上でございます。 貝塚会長 どうもありがとうございました。介護保険については、制度全体の見直しはまた後の 時点で行いますが、とりあえず現在のところ生じた問題点をある程度、報酬のところで 考慮しようということだと思います。 では続きまして年金局、お願いいたします。 高橋課長 年金局の総務課長の高橋でございます。 私からは、昨年の12月5日に公表いたしました「年金改革の骨格に関する方向性と論 点」の概要について簡単にご説明申し上げます。 1ページでございます。次期年金改正は来年、平成16年に予定しておりますが、その 年金改革に向けて昨年からずっと議論を続けております。これまでの各方面の議論を参 考にいたしまして、厚生労働省において改革の骨格に関して今後の議論のたたき台とし て方向性と論点をとりまとめたものでございます。今日は、資料3−2としてその概要 をつけております。本文は 150ページほどのものでございますが、今日は配付はいたし ておりません。 この議論のたたき台としてとりまとめまして、昨年の12月に出したわけでございま す。前回の年金改正は平成12年、提案は11年にやっておりますが、1年がかりで国会で ご審議がございまして、成立は平成12年の3月末でございますが、その時点から状況は 変化しておりまして、少子化の傾向が一層顕著になっている。特に夫婦の出生力の低 下、予想外の長寿化が進んでいるということで、そういったところから次の年金改正に おいてどういう取り組みをするか、その基本的な視点として1ページのまん中に5点ほ ど書いてございます。若い世代を中心とした現役世代の年金制度への不安、不信を解 消、あるいは、少子化の進行などの社会経済情勢の変動に対して柔軟に対応でき、かつ 恒久的に安定した制度とすること、等々でございます。 下に「特に取り組むべき課題」と書いてございますが、これは前回の改正法からの大 きな宿題になっておりまして、2点ほどございます。 まず1つが、基礎年金の国庫負担割合の問題でございます。現在は基礎年金の国庫負 担割合は給付費の1/3でございますが、前回の平成12年の改正法では、安定した財源 を確保してこの基礎年金の国庫負担割合を平成16年度までに1/2に引き上げるものと する、という規定がなされております。それを実際にどうするか、それが大きい課題に なっているということでございます。これは最終保険料、現在は保険料を引き上げてい く途中の段階にあるわけでございますが、その最終保険料を過大にしないように、かつ 給付も適切な水準を保つためには、この1/2の引き上げは不可欠だという認識に立っ ております。 もう1つは、保険料の引上げ凍結の解除の問題でございます。これは、前回、平成12 年の改正では、厚生年金、国民年金の保険料については引き上げ計画は凍結をしており ます。厚生年金は年収ベースに対して 13.58%の水準のまま、国民年金も1万3300円レ ベルのままでずっと凍結いたしました。ただこれは将来に目を転じますと、現在の保険 料では年金財政はやっていけませんので、その凍結の解除が必要であるという認識に 立っております。 2ページにまいります。この方向性と論点の中では、年金改正のなかで制度の体系に 関していろいろなご議論が出ておりますので、その整理を行っております。現行の制度 体系、各方面での議論、次の改革の方向と整理しておりますが、現行の体系は、右の図 をごらんいただくとお分かりになりますように、国民皆年金の下で保険料納付が年金給 付に結びつく社会保険方式をとっています。保険料を出したとかあるいは負担をしたと かそういうことに関係なく、無拠出の給付を一定年齢になったら全員に行うという制度 ではなくて、保険料納付を求めて、それが給付に結びつくという社会保険方式をとって おります。それから、統一的な定額の基礎年金に所得比例年金を上乗せしている。基礎 年金に一定の1/3の国庫負担を入れている、それから賦課方式を基本にして積立金を 保有している、こういった特徴を有するわけでございますが、現在、各方面での議論が よくこの体系論にございます。 大まかに整理をいたしますと、1つは基礎年金を税方式としてはどうか。税方式とい いますのは、財源を税に置き換える。それと同時に給付については、ご本人の過去の納 付の記録とか、働いたか働いていなかったか、そういうことを問わずに、拠出の有無に かかわりなく一律の保障を行う、そういった体系でございます。それから、定額の公的 年金とその上乗せの私的年金の組合せ、あるいは所得比例年金と補足給付の組合せとい うものがございます。特にいちばん右側のスウェーデンの例でございますが、これは一 番左の体系とはむしろ逆でございまして、基礎年金をやめて2階の厚生年金を全国民に 広げるという体系になるわけでございます。 それぞれの体系について大まかな議論が書いてございますが、いろいろな問題もある ということで、厚生労働省としては16年の改革の方向としては、現行の社会保険方式に 基づく制度体系を基本として改革を進めていきたいと考えております。ただし、国庫負 担1/2への引上げ、あるいは国民年金の保険料の多段階免除導入など、こういった保 険料収納対策に取り組んでいきたい。こういった体系論については、なお今後とも議論 をしていかなければいけないという認識はもっております。 3ページにまいりますが、特に大きい問題となっているのは、少子化の進行に対して どのように政府として対処していくのかということでございます。特にこれは給付と負 担の問題でいわれますが、今までの年金改正のやり方は、これまでの方式として書いて ございますように、5年ごとの財政再計算の際に、将来の状況を踏まえまして、まず給 付水準をどの程度に設定するかを考えて、それを賄うための保険料水準をどうするかと いうやり方をとってまいりました。これは、左の方式I−1に書いてございますが、現 在の人口の状況、あるいは経済の状況を前提にいたしまして将来を見通し、保険料水準 を見直しながら現在の給付水準を維持するものでございます。現在の給付水準とは、サ ラリーマンでいいますと、現役の手取り賃金の約6割、59%の水準でございますが、こ れを維持していった場合には、厚生年金の保険料率は 13.58%から、2030年度以降、 23.1%に向かって引き上げなければいけない、こういう結果になっています。国民年金 については、1万3300円の保険料が2万500 円になる。 もう1つ、今までのやり方とは別に、先ほど申し上げましたような給付をまず決め て、それを賄うための保険料水準はどうなるかというやり方ではなくて、逆に、よく ヨーロッパあたりで、年収の2割程度が負担の限界という議論がかなり出ていますが、 この負担をまず決める。現実にヨーロッパの年金の保険料水準は大体年収の2割程度で 収まっています。方式IIと書いてございますが、最終的な保険料水準を決めて、給付は 収入の中で見合って動くようなシステム、給付水準は自動的に調整される仕組みを制度 に組み込んでやっていってはどうかという逆のやり方であります。まず負担の方を決め て、その結果として給付が決まるようなもの、そういうやり方を提案いたしておりま す。この場合には、保険料水準は最終的には20%まで引き上げて、そこで固定をすると いうやり方でございます。 給付を自動的に調整していった場合にどういう姿になるかを書いたものが、4ページ にございます。いろいろなケースがございまして、これは1つの基準的なケースでござ いますが、厚生年金の最終保険料を20%に抑えまして、国庫負担は1/2という前提で ございますが、給付は、今の物価スライドなどをスライドで上げる場合に少し調整をし ていく、抑制をしていくというやり方でございます。黒い棒が現役の賃金の伸びを表し ております。白い棒が40年加入のモデル年金を示しております。グラフの下に所得代替 率と書いてございます。現在は現役労働者の手取り賃金の59%ぐらいのところで平均的 な年金をセットしておりますが、それが緩やかに下がっていきまして、2025年時点で 56%。スライドを調整すると、2032年時点で、それから先はほぼ収支均衡しそうだとい う見通しが立ちまして、現在の59%が52%程度まで調整されて、以降はそのままで財政 が均衡するという、このような自動調整のやり方を考えております。 これは概要版の15ページにその細目が書いてございますので、後でご覧いただければ 幸いでございます。 スライドの調整を端的に申し上げますと、今まで年金は現役の1人当たり賃金の上昇 率に見合って年金額を上げてきたのですが、1人当たり賃金ではなくて現役集団全体の 賃金の伸びに併せて一人ひとりの年金を変えていこうという考え方をとっております。 現役の高齢者を支える力は人口減少によって、だんだん弱まってきますので、その支え る力に見合った給付にするということで考えているということでございます。 そのほか、簡単に申し上げますが、給付と負担の関係が分かりやすい年金制度という ことで、ポイント制の導入を1つ提案をいたしております。 6ページにまいりますが、しばしば年金改正のたびに、将来に向けての給付水準の抑 制を行っているわけでございますが、今現在、受給している方の年金の取り扱いをどう するかというのがいつも議論になります。今回のスライドの調整あるいは年金課税と いったことによって、既にもらっている方の年金水準についても若干の調整が可能とな るのではないかという認識に立っております。 少子化、女性の社会進出、就業形態の変化に対応するということで、公的年金制度に おける次世代育成支援策として、育児休業期間中の者については、将来の年金額計算に おいて配慮を行う、あるいは年金資金を活用した次世代育成支援策の検討なども、まだ 提案の段階でございますが、盛り込んでおります。 それから、制度の支え手、あるいは社会の支え手という意味でございますが、支え手 を増やす取り組みとして、1つは、短時間労働者に対する厚生年金の適用をどうする か、あるいは高齢者の就労促進について、現在の在職老齢年金の仕組みの見直しをどの ようにしていくべきか、ということも検討課題として挙げております。 そのほかもう1つ、前回の改正からやはり宿題になっております第三号被保険者制 度。これはほとんどサラリーマンの奥さんでございますが、サラリーマンの専業主婦の 方が現在、ご自分自身には保険料負担がないわけでございますが老齢基礎年金を受給し ているという形になっており、これについてさまざまな意見がございます。それについ て四つの見直し案を整理をいたしております。 概略は今申し上げたとおりでございます。年金改革についての今後のスケジュール は、7ページでございますが、今日も本審議会の年金部会で議論がございましたが、今 後、夏にかけて本審議会の年金部会における制度改革の各論の議論、あるいは与党など の議論があると思います。今回の方向性と論点は、いくつかの方向をお示しして今後、 世の議論を仰ごうということでございますが、秋ごろには厚生労働省としての年金改革 案を提示して、その後、政府与党での調整、あるいは当然、世論での議論もあります が、年末12月には政府案のとりまとめをいたしたいという今後のスケジュールで進めた いと考えております。 以上でございます。 貝塚会長 どうもありがとうございました。3つの制度のそれぞれ改革の進み具合がいろいろ違 いますが、現状はどうなっているかということでご説明いただきました。 あまり時間がございませんが、現在まで進行中の点についてご質問あるいはご意見が ありましたら、どなたからでもどうぞご自由にご発言ください。 ??木委員 2、3、質問、意見、両方入るかもしれませんが。1つは、医療保険の関係を3月末 までにとりまとめるということですが、たとえば保険者の整理統合問題にしても、それ ぞれいろいろな課題があるのだけれど、3月末にまとめるというのは、どこをどの程度 までこなれたものになるのか、またそれをどこでどんな形で議論をしていくのか、その 辺を教えていただきたい。 介護の関係については、報酬の関係は先ほど報告がありましたが、制度の見直し検討 を行うというお話ですが、その辺はどういう段取りでお進めになろうとしているのか、 教えていただきたい。 年金については、今も保険料固定方式等のご説明があったのですが、たとえばこの方 式だと、世代という意味で後ろにいくほど負担が重く、給付が少なくなる、そんな仕組 みかなと思っているのですが、ただでさえ年金に対する若い世代の信頼感みたいなもの が問題になっているときに、1つのお考え方だとは思うけど、こういう仕組みはどうな のかなと思っておりますので、その辺、お考えがあれば聞かせてほしい。 未納、未加入者対策もいろいろございますが、たとえばパートタイマーへの適用拡大 のご議論があると聞いております。それをどういうやり方でやるのかもあるのでしょう が、たとえばあるケースを想定したシミュレーションというか試算の数字等もいっぺん 教えていただきたいと思っております。 年金の議論ですが、トータルで医療なり介護と合わせて考えていこうというお考えな のでしょうが、雇用の関係に全然触れていないのです。雇用に関するセーフティネット の話なども含めてトータルでの負担論みたいなものをやらなければいかんのではないか と思っておるのですが、その辺はいかがでしょうか。 以上、よろしくお願いいたします。 貝塚会長 ほかの方でも、関連するご質問がありましたらどうぞ。 浅野委員 医療保険については、特に保険者の再編・統合で、これは「都道府県単位を軸として 」とありますので、我々としては大変関心もあるところでありまして、全国知事会とし てご意見を申し上げるべく、今、意見のとりまとめをしております。私は社会文教調査 委員長ということでとりまとめにあたっていますが、アンケート調査をいたしました。 国保について県単位で統合するのはどうか、47対0でございまして、全部反対という当 然予想される結果になっております。ただ、今回はというか、こういう議論は何度も出 ておりましたが、門前払いはしないというか、ちゃんと議論しましょうということで、 この前もかなり熱心な討議をさせていただきました。 その際に、県としての保険者としての役割みたいなもので、医療保険の運用そのもの もありますが、医療のたとえば供給体制について権限も県がもっているということに着 目して、県が国保も保険者になったらどうかという議論について、ほんとうにそうなの だろうかという議論もされました。細かく議論を紹介するつもりはありませんが、47対 0ということでありますので、今、??木委員が3月までにまとまるのか、我々からいう と、この案ではまとまらないのだろうということを思いながら、引き続きぎりぎり議論 をさせていただきたいということです。 それから介護保険について、もう何度もされた議論なのかもしれませんが、私はフォ ローしていないで感覚でいうところもあるので、お教えいただきたいところと、また議 論なのです。今回の介護報酬の見直し、これは私の理解では、在宅支援、居宅介護支援 を重視するということなのですが、しかしそういうふうに機能するだろうかというのが 心配です。というのは、居宅介護のほうの報酬を上げましたね。利用者からすれば、介 護保険の制度は9割引でサービスを受けられるという制度ですから、そうすると報酬を 上げたということは費用値段が上がったということなので、高くつく、ますます利用し にくくなるのではないかということと、その逆に、施設への非常に大きなプレッシャ ー、バイアスがかかって、特養の前に門前市をなしてラインが長くなった、これを少し 抑えようということで報酬を下げるということになれば、報酬を下げるということは、 先ほど言ったように利用者にとっては利用料金の実質の払いが下がるということですか ら、ますます利用のインセンティブが逆に働くのではないかと思っています。 疑うらくは、どうも介護保険の報酬についてもあまりにもこの考え方が供給者にばか り目が向いていて、利用者の方の状況が勘案されていないのではないかと。 その1つとして、実は前のこの機会にも案が出ているときにご質問したのですが、細 かい話ですが、4ページの(6)痴呆対応型共同生活介護、グループホームで夜間介護の 話がありましたね。夜間ケアを評価して、夜間ケア加算をします。そのときに質問した のをまた繰り返しますが、夜間で夜勤するような人を入れるから、そこに払われるグル ープホームの報酬は高くなるわけですよね。利用者からすれば利用料も高くなるわけで すね。だけど利用者もいろいろいて、夜間のあれを全く必要としない人も入っている可 能性がありますよね。その人からすると、直接的メリットもないのに利用料金だけ上が るのはおかしいではないでしょうか。利用者の方に着目していくと、そういうおかしい ところが出てくる。これは前にご質問とご指摘をしたとおりなのですが、このような案 にまたやはりなったということから逆算していくと、どうも今回は利用者という観点で はなくて、サービス提供者の方を中核にして見直しがされたのかなと考えてしまうので すが、そんなことについてもし、いや、あんた、違うよと言うなら、教えて下さい。 貝塚会長 あまり時間がございませんが、ほかにこれだけはということを手短によろしくお願い します。 樋口委員 私も実は給付部会に身を置いておりましたので、そのとき、もっとしっかり言えばよ かったのですが、こういう案が示されたら、今おっしゃられましたように、施設の割安 感というのはますます増えるばかりで、行列ができる法律事務所じゃないけれど、行列 ができる特養がますます広がるばかりで、なにが在宅重視ですかと、毎日、会員から抗 議の声を受けておりますということが1つです。 それから、これは別なご質問ですが、この間、障害者の支援費制度をめぐりまして、 かなり厚生労働省の前にも人が陳情といいましょうかそういう流れができて、介護に関 する費用の出し方などは厚生労働省の案を引っ込めてようやく収まったと聞いておりま すが、今後、介護保険を論議していきますときに、障害者の介護と、あるいは所得保障 など、広い意味での社会保障の範囲内で、介護保険の問題とどうしてもそこを含めなが ら論じなければならないと思うのですが、支援費制度をめぐる障害者福祉保障の問題に ついて、もし概略、社会保障制度審議会として知っておかなければならないことがござ いましたら、ご報告の中にはありませんでしたが、教えていただければと思います。 貝塚会長 まだほかにご質問があるかと思いますが、先ほど来ご質問がありました点で、??木委 員から1つは、今後いったいどういう形で進めていくかという点について、医療につい ても、たぶんすべてにわたってそういうことがご質問されると思いますが、今後の改革 あるいは制度をどのようにやっていくか、やや具体的にご説明いただければと思いま す。 間杉課長 保険局でございますが、まず??木委員、浅野委員から共通のお話がございまして、大 変難しい問題を含んでいると私どもも思っております。ただ、47対0ではあっても、昔 のような門前払いではなくて、47対0で終わらずに、では県は県でどうしていったらい いのだろうかというところまでのご議論は是非したいと思っております。そんな対話を 続けさせていただきながら3月末までに、難しい問題ばかりでございますが、できるだ けまとめるところはまとめたいと思いますし、全部が全部、私どももたたき台のような 形でまとまるかどうか、そこはこれからやってみないと分かりませんが、まとまる範囲 で基本方針を策定をし、さらにその後、具体的な制度改革の間にまたさまざまな形でい ろいろなご意見をいただきたいと思っております。 貝塚会長 どうそ老健局。 松田課長 老健局総務課長でございます。 介護保険制度の見直しの今後の進め方についてのご質問でございますが、介護保険法 の附則においては、法律の施行後5年、平成17年の3月を目途として被保険者の範囲、 保険給付の内容及び水準、保険料等の負担の在り方を含めて全般に関して検討を加え、 見直しを行うということが規定をされております。現在、論点整理など、内部的に準備 を行っておりますが、今後、できるだけ早く社会保障審議会に部会の設置をご承認いた だきまして、制度見直しの作業を進めてまいりたいと考えております。 浅野委員からのご質問がございました介護報酬の関係でございますが、1つは費用負 担の問題につきまして、これは在宅重視という考え方で介護報酬の見直しを行っており ますが、当然、介護報酬だけでさまざまな問題が解決できないということもございまし て、そういう意味でも今後の制度の見直しの中での検討も加えてまいりたいと考えてお ります。 個別のグループホーム等、ご質問について老人保健課長からお答えをいたします。 外口課長 介護報酬についてのご質問でございますが、まず在宅の方が引き上げになって施設が 引き下げになると、在宅重視というのが逆方向にいくのではないかというご質問、これ はいろいろなところから実際にいただいております。定性的には、おっしゃるとおりだ と思います。ただ、定量的に考えると、たとえばケアマネジメント、今回、上がってお りますが、ケアマネジメントというのは実は1割負担ないのです。それを考えると在宅 で居宅介護支援を抜いた部分は少しマイナスになるわけです。ですから、プラスには なっていますが、影響はそれほど大きくないだろうというのが1つあると思います。 それから、たとえばホームヘルプサービスとか上がっていますが、一緒に通所サービ スなどを併用されている方はトータルで考えるとどうか、これも1つあります。それか ら、施設サービスのマイナスの影響ですが、平均で4%というと、その4%の引き下げ の中の1割分が個人の自己負担になりますので、それで考えると、平均すると1日当た り50円ぐらいになると思います。一番引き下げ幅が大きいのは、たとえば特養の従来型 の要介護1ぐらいになると思うのですが、それでも1日当たり百数十円。このぐらい が、もちろん影響ないとはいいませんが、どのぐらいかというのはいろいろ意見が分か れるのではないかと思います。 いずれにしましても、施設と在宅の自己負担等による負担感の問題については、たし かに問題になっているところでありまして、これは制度改正の議論のなかでも十分検討 していくことになると思います。 それから夜間ケア加算のグループホームのところでございますが、これも画一的にそ の体制について付けるというのではなくて、1人1日当たりの夜間ケア加算で、アセス メントをきっちりしてやった場合にという条件がつきますので、ご指摘の点も踏まえま して、今後、通知等を細かく解説してまいりますが、画一的に全部かかってしまうとか そういうことにならないようには配慮していきたいと思っています。 浅野委員 意味がわかりません。 外口課長 夜間ケアの必要のない人について画一的に加算がかかるようなことにならないように しよう、そういうことでございます。 浅野委員 それはどうやってやるのですか。 外口課長 夜間ケアを加算をするときの算定要件がございます。そのときに、この人は夜間ケア が必要ないというアセスメントがあった場合には、ほかの、たとえば10人なら10人のう ち7人なり8人がすべて夜間ケアが必要だったとしても、それ以外の人が画一的に一緒 にとられるようなことはない、そういう体系になるかと思いますが、詳細について今、 通知をつくっているところでございますので、それを含めてご説明したいと思います。 貝塚会長 現行制度の今の運用のところでどういう問題があるかご意見を伺ったのですが、最終 的には介護保険は制度改正というものが基本的にありますので、いろいろな問題点が出 てきていることは間違いがないので、それらをいろいろ考えながら今後の議論をするこ とになるのではないかと思います。 浅野委員 すみません、先ほどの樋口委員のご発言に触発されて、先ほど言うのを忘れたので、 介護保険の17年の見直しの際、この会でも毎回言っているのですが、「障害者福祉は介 護保険で」という名前のシンポジウムを土曜日に7県の知事でやってきて、実は今日こ れが終わったあとにそのアピールを要路に届けるというミッションを帯びて私はここに 来ています。 それで、この社会保障審議会でも議論されるのかもしれませんが、1点だけ是非申し 上げておきたいのは、こういう議論がされると思うのです。そんなこといったって、障 害者自身が反対してるよ、と言われるはずです。この制度ができたときもそうでしたか ら。ただそこで、先ほど言う門前払いをしないでほしいというか、なぜ反対しているの かということをしっかりとみてもらわないと議論として成り立ちません。つまり、障害 者が反対しているというか心配しているのは、現行の介護保険という制度の中でとらえ られている介護、ここの中に押し込められて、そのいっている介護というサービスを受 けるために障害者を入れるのです、というのであると、我々障害者にとっては間尺に合 いません、ということで強く反対なのですね。 だとすれば、議論はもうちょっと発展をしなくてはいけないので、では、障害者を入 れたときの介護という範囲は、障害者用に別途メニューを作らなくてはいかんでしょう ということで、たとえばですよ、これも議論になりますが、障害者がデートをするため の介護というか外出介護というのも介護保険でみるのかどうか。みるといったら、喜ん で入ってくる部分があるでしょうし、知的障害者に対する介護というのは、介護でなく てもっと支援という名前でいわれるような生活支援でしょうと、それもこの保険制度で みますといったら、また答えは違ってくるでしょう。 ということなので、是非この議論をする際に、現行の介護保険というガチガチの枠組 みの中に障害者を取り込むということを議論の枠組みに固定的に考えないでいっていた だかないと、のっけからそんなことは障害者自身が反対しているんだ、ということにな りかねません。ということを心配して、あらかじめ言うだけ言わせていただきたいと思 います。 貝塚会長 障害者の問題というのは、普通の意味では介護保険の元来の視野にはあまり入ってい なかったという話は聞いておりまして、これは1つの問題であることだけは十分認識し ていただきたい。 5.社会保障に関する制度横断的検討について 貝塚会長 それでは、次の話題に入りたいと思います。社会保障制度をめぐる横断的な問題は今 後どういう点があるかということについて、まず事務局からご説明をいただきます。 青柳参事官 参事官の青柳でございます。 先ほど、??木先生のご質問の最後のところでお答えをしようと思ったのですが、まさ にこれからの議論の中で、年金、医療、介護、できれば雇用も、厚生労働省になったも のですからイメージができればと思っているのですが、全体のトータルでの負担の議論 をまさにしていただきたいとお答えをしようと思っておりましたが、会長から整理をし ていただきましたので、私からそういう議論につながるようにご説明をいたしたいと思 います。 資料4−1から4−3まで用意をいたしております。社会保障制度の横断的な検討を 行っていただくに際しまして、これまでいろいろな検討の場で行われました議論を、こ の際、レビューをいたしまして、併せてそれを具体的な政策にどのように反映させてき たかということを、まず資料4−1で整理をいたしました。これらの議論を踏まえまし て、引き続き推進すべきもの、あるいは今日において付け加えるような議論があるかと いうことでご議論願えればと考えております。 対象としました報告は、最近10年間のうちに社会保障全般についてご検討いただいた もので、公表されたものでありまして、かつ何らかの形で厚生省が、あるいは現在は厚 生労働省でございますが、事務局をさせていただいたものという整理でございます。な お、社会保障制度審議会の平成7年の勧告及びそのフォローアップであります9年の小 委員会報告は、私ども事務局という立場では加わらせていただきませんでしたので、参 考という形でいちばん最後に添付をいたしております。 なお、11年の厚生白書以外の各報告書については、委員の先生のお手元にはそれぞれ の原文を添付をいたしておりますので、ご参照いただければと存じます。 まず資料の4−1からご説明いたします。社会保障の機能をめぐる議論というのを最 初に整理いたしましたが、ひと言でいえばセーフティネットという言葉で共通するよう な機能というものがご議論をいただいていると思います。その中には、所得の再分配あ るいはリスクの分散を通じて社会の安定、経済の成長に寄与するといったものを、広く セーフティネットという形でご認識をいただいているものかと存じます。 これを少しデータでみてみたいと思います。資料4−3の1ページからでございま す。 まず、所得再分配による所得格差是正効果ということでジニ係数というのがあるので すが、何かなというところで2ページを最初にお開きいただきますと、当初のさまざま な経済活動によります所得分配が、税あるいは社会保障によりまして再分配をされて、 最終的に再分配所得という形で把握がされておる。これをどのくらい変化があったかと いうことを示す1つの目安として、2ページに書いておりますジニ係数、こういう係数 が使われておりますので、これで所得の再分配効果という介護保険の最も基本的な機能 をみてみたもの、1ページに戻っていただきまして、その変化をみたものがそのデータ でございます。当初所得は、最近よくいわれておりますように不平等社会日本というよ うなことで、さまざまな経済活動の結果は残念ながらジニ係数の数値が大きくなる、す なわち不平等化が進んでおることを反映いたしまして、再分配所得についても残念なが らジニ係数そのものは傾向的に数値が大きくなる、すなわち不平等化は進む傾向にある ことは否定できません。しかしこれを改善度ということで、当初の所得を再分配によっ てどれほど改善できたかということでみていただきますと、幸いなことにその改善度は 比較的大きな数値が傾向的には出ております。内訳をみますと一目瞭然でございます が、税よる再分配効果が改善度という点では非常に低下をしておるというのを社会保障 がカバーをする形になっていることが、この資料からごらんいただけるかと思います。 3ページに移りまして、当初所得からの改善度合いを年齢階級別でみてみます。そう すると、端的にあらわれておりますのが60歳以降のところでの大きな改善効果というこ とでございまして、公的年金で所得の相当部分を賄う60歳以降における改善効果が顕著 であることがお認めいただけるかと思います。 今度は、年齢ではなくて所得階層別にみた場合の効果をみたのが4ページでございま す。当初所得のところでは、たとえば 100万円未満という世帯が当初所得15%も実は分 布しておりますが、これが再分配によりまして5%程度に低まっております。全体とし てそこの平均値のところにあるような金額に向けて、当初所得が再分配によって全体が 右のほうにシフトしていることがお見とりいただけるかと存じます。 今度は、社会保障の給付が総収入に再分配によってどのくらいウエイトを占めること になっているかというのを、5ページで少しみてみました。年齢階級別、所得階級別で とってございます。どの年齢層でも、低所得層ほど全体の総収入に占める社会保障給付 のウエイトは高くなっでおります。当然でございますが。とりわけ、先ほど来申し上げ ておりますように、所得の相当部分を公的年金で賄っております高年齢層はその傾向が 大変顕著で、第1四分位の方々でいうと、60歳〜69歳で8割近く、70歳以降では8割を 超えた依存度となっていることがお見取りいただけるかと存じます。 6ページ、今度は再分配効果について国際比較をいたしてみました。注に書いてござ いますように、国際比較をするために1人当たり実質所得に換算してジニ係数を置き換 えております。この数値をご覧いただければお分かりのように、我が国ではジニ係数で 比較する限りは、アメリカあるいはイギリスといったところに比べますとジニ係数が低 い。すなわち再分配がより進んでいるといえますが、ヨーロッパと比べた場合には、 ヨーロッパよりはかなり低いということになっております。 しかしながら、7ページの資料と併せてお読み取りいただきたいと存じますが、ヨー ロッパの各国、フランス、ドイツ、スウェーデンについては、当初所得が比較的不平等 度が高いものを、社会保障、税等によりまして非常に大きな改善をすることによって、 先ほどの6ページのように再分配が大きく進む形になっておる。一方、アメリカ等にお いては改善度も大して高くないわけで、これは当初所得の不平等度をさほど改善してい ない。日本の場合には、当初所得がそれなりに傾向的に不平等感が高まっているとはい うものの、平等度が高いがために、改善度そのものは大して大きくありませんが、6ペ ージでご覧いただきましたように中くらいの再分配度になっていることがお酌み取りい ただけるかと存じます。牽強付会な解釈をいたしますと、日本の場合には大変に社会保 障が進んで再分配が進み過ぎていないかというご心配をときどきお聞きしますが、現在 のところをみる限りでは、そこそこの再分配効果を社会保障制度は果たしていると読ん でよろしいのかと考えております。 一方、資料4−1の1ページにございました経済社会との関係でございます。経済社 会と社会保障の関係については、各種の報告において、社会保障が消費や経済を安定さ せ、労働力の確保に資するとともに、特に高齢社会に対応して新たな産業、あるいは雇 用機会を創出させることが期待をされておりますが、これは本当かどうかということで 検証いたしましたのが、資料4−3の8ページ以降でございます。 8ページをまずご覧いただきますと、産業連関表において比較をした場合、医療・保 健・社会保障というジャンルの生産波及効果、これは1次効果でございますが、これは 運輸業並みで、農林水産業や電力、ガスよりは大きい。国内生産額でみましても、金融 ・保険と並びましておよそ36兆円規模のボリュームをもっていることが分かります。 別の研究で、9ページをご覧いただきたいと思いますが、2次、3次の波及効果まで 合わせた総波及効果をみたものがこれでございます。若干細かく医療以下、分解をして ございますが、それぞれの総波及効果、ひと言で公共事業並みと申し上げて間違いはな いのではないだろうかと考えております。 また雇用については、10ページをご覧いただきたいと存じます。現在、およそ 600万 人を超える従事者がこの社会保障分野に従事をしているものと推計をしております。か つ、この30年間の伸びをみますと、1970年から2000年のあいだに3倍強の伸びを示して おりまして、全就業者の伸びがおよそ 1.3倍でございますので、伸びだけを比較します と 2.5倍となっております。 11ページ、特に内訳をみますと、近年における社会福祉関係の伸びは大変著しくござ いまして、保健・医療関係者と合わせて、1996年から2000年までの4年間だけで 170万 人を超える就業者の増を示しております。これは私ども考えるに、介護保険の実施が 2000年でございましたので、これに向けて民間企業を含む多様な事業者の参入が相次い だことが数字に現れたものと考えております。 続きまして12ページ。これは、先ほど来、資料4−1でお示しをしております各種の 報告・提言がどのように具体的な政策に反映したかということを示したもので、ある意 味では、私どもがこれまでやっておりました施策を皆さんに評価していただくための通 信簿をお示ししたものと認識をしております。 資料4−1の2ページ以降に改革の基本的な考え方が整理をしておりますが、これと 対比をいたしますと、たとえば21世紀福祉ビジョンの考え方の中には、公民の適切な組 合せによる適正給付あるいは適正負担というものがうたわれております。これは、先ほ ども申し上げました、たとえば介護サービスの担い手として民間企業を含む広範な事業 実施主体の参入につながったろうと思っております。 また資料4−3の13ページをお開きいただきますと、特に給付に関しては、21世紀福 祉ビジョンでは、資料4−1の3ページにもちょっとございますが、年金・医療・福祉 のバランスの変更を21世紀福祉ビジョンで初めて提言をしていただきました。年金・医 療・福祉の給付構造を、従来の5:4:1というところから、医療のウエイトを下げて 福祉のウエイトを高めることで5:3:2へ向けていこうということが提言されまし た。資料4−3の13ページでご覧いただきますように、1990年から2000年にかけての10 年間だけの比較でみましても、5:4:1というウエイトを、介護保険の導入が非常に 大きな要素でございますが、5:3:2に向けて改善をはかっていることをお読み取り いただければと存じます。 社会保障関係審議会の会長会議報告が平成8年に行われましたが、ここでも、個人の 自立支援と制度横断的な再編成等による効率化ということが繰り返し提唱されてまいり ました。これも高齢者施策については、介護保険を導入することによりまして大きく前 進ができたものと承知をしております。平成12年の21世紀に向けての社会保障、いわゆ る総理のもとでの有識者会議で提起された支え手を増やす、あるいは高齢者の負担を分 かち合うという考え方については、昨年の医療保険改革の、特に老人医療の見直しにも 反映されたものと考えております。また、支え手を増やす政策は、旧厚生省と旧労働省 が一体になりました現在の厚生労働省といたしましては、長期的には少子化対策の推 進、そして短期的には女性や高齢者の就労環境の整備ということによって、さらに推進 をしてまいりたいと考えております。 先ほど??木委員からもご指摘がございましたが、税制を含め、社会保障を総合的、包 括的に検討するということを、まさにこの審議会で今後ご議論いただきたいと考えてお ります。 続きまして、資料4−1の3ページを開きながらご説明をいたしたいと存じます。資 料4−3では15ページでございます。社会保障給付費について、給付の機能別の構成割 合を諸外国と比較したものが15ページでございます。 我が国は、従来からご指摘がございますように、高齢者関係の経費のウエイトが非常 に高く、たとえば家族関係経費のウエイトは非常に低いというご指摘をいただいており ます。これは、12月の審議会でも岩田委員からそういうご指摘をいただきました。高齢 者関係経費の増大は、残念ながら96年から2000年だけを比べてみましてもさらに一層、 全体の社会保障給付費が上がるなかでもウエイトが高まっていることが現れておりまし て、これがさらに高まっていくのではないかと懸念をされるわけでございます。 この給付に裏返しになっております負担の問題について申し上げたいと存じます。負 担の問題については、まず平成8年の社会保障の関係審議会会長会議の報告にも「国民 負担率が高齢化のピーク時において50%以下とする」というのが一つのメルクマールと なっておりまして、私どもも1つの政策的なメルクマールとしてこれを念頭に置きなが ら政策を進めてきたわけでございます。 資料4−3の16ページの国民負担率の推移をご覧下さい。現在でも日本の場合、この 数値は30%台の後半にとどまっておりまして、アメリカとほぼ同水準、ヨーロッパに比 べればかなり低いというのが実態でございます。しかしこの問題につきましては、現在 でも、財政赤字を含めれば潜在的な国民負担率は50%に近くなっているじゃないかとい うご指摘もございます。あるいは今後、我が国が高齢化を急速に進めていくなかでこの 国民負担率も急増するであろうというご懸念も示されておりますが、一方、国民負担率 の高さがそのまま国全体の経済パフォーマンスの低下を意味するものではない。むしろ 社会保障の中身の問題をきちんと論ずるべきだというご意見も頂戴をしているところで ございます。 税の方は、私どもが直接に議論するには限界がありますので、社会保障財源だけを取 り出してみたものが17ページでございます。項目別に国民所得に対する割合の推移をみ てみますと、被保険者の負担あるいは事業主の負担は一貫して増大している一方で、国 庫負担は80年代に縮小傾向が生じまして、近年また若干増大傾向にあるかなとみられる ものの、70年代ぐらいまでは、個別にみますと、被保険者や事業主の保険料負担をしの いで国庫負担があった状況と比べますとそこまでは到底及んでいない。 18ページは、内訳別でこの点をより鮮明に推移をみたものでございます。70年代以 降、事業主負担が概ね30%前後、被保険者の負担が30%弱ぐらいで推移しているのに対 して、国庫負担は、多いときは1/3、少ないときは1/4弱までかなり大幅にその内 訳が変動していることが分かります。 この負担の問題については、たとえば平成12年の社会保障のあり方について考える有 識者会議のなかで、社会保険方式を主として、これに公費負担を合わせて従としてやっ ていくことの必要性が示されましたし、その後、平成13年の社会保障改革大綱でも、財 源の適切な組み合わせによる確実かつ安定的な財源確保が要請されておるところでござ います。 なお、委員のお手元に先ほど申し上げましたように各報告書の原文をお届けしており ますが、これと併せて、昨年7月に社会保障負担等のあり方に関する研究会報告書とい うものをお届けをいたしております。これは厚生労働省の公式見解を示すものではござ いませんが、たとえば社会保険になぜ税財源を投入するのか、それから、税と社会保険 の問題を考えるときには、財政方式と財源調達の問題は区別して議論する必要があるの ではないだろうか。あるいは、能力に応じて公平な負担を実現するために、賦課の対象 を従来の所得税中心の税、あるいは保険料ということだけではなくて、たとえば資産課 税といったものも含めてかなり幅広く議論すべきではないかという指摘、それから、税 における各種控除における負担軽減のあり方の問題、負担水準の考え方、こういった論 点を幅広く整理してございますので、今後の検討の材料に是非供していただければとい うことでお届けをいたしました。 最後に、諸外国との関係で資料4−2をお届けしております。各国の個々の制度の改 正については、資料の2ページ以降に細かいこれまでの改革の流れ及び現行の制度概要 をつけておりますのでご参照いただければと存じます。 この資料の1ページに、非常にアバウトに総括させていただければ、各国とも年金・ 医療に関して、それぞれの財政方式の違いはございますが、それを超えて給付の引き下 げをどうするか、あるいは給付の中身の効率化をどうはかっていくか、財源の確保をど うしていくか、大変苦労していることがこの資料からみてとれるかと存じます。 なお、先ほど資料4−3の15ページでお示ししましたように、フランスやスウェーデ ン、最近はイギリスもそういう傾向があるようでございますが、家族・児童対策に大変 力を入れて、それなりの社会保障のウエイトを出していることもお分かりいただけるか と存じます。 特に資料4−2の財源のところでは、詳しくご覧いただくとお分かりのように、最近 は諸外国では税財源の確保を進めて公費負担割合の引き上げをはかっている傾向がみら れます。この点、資料4−3の19ページに、社会保障財源の対GDP比の国際比較がご ざいますが、既に医療・年金とも社会保険方式をとっているということでは、日本との 比較がより意味のある比較になるドイツ、フランスを特にご覧いただきたいと存じます が、保険料負担がかなりの水準に達しております。こういう状況のなかで最近、ドイ ツ、フランスとも、環境税を含む新しい税財源の確保に大変力を入れているという事情 を承知しております。 しかしながら、この状況は19ページにありますように、既にかなり保険料負担をして おる状況のなかで、今後、安定的な税財源確保という観点からのアプローチと認識をし ておりますので、日本の場合には保険料負担の水準からみても税負担の水準からみて も、ドイツ、フランスと同じような議論をするためには、そこら辺を十分に考慮しなけ ればならないのかなと承知をしております。 最後に、20ページで、1970年から2000年にかけての高齢化と年金保険料率の変化をプ ロットしたものをお示しいたしました。すでにある程度、1970年段階でも高齢化が進ん でおりましたドイツやスウェーデンが、この絵でお分かりのように線の傾き、つまりも う比較的緩やかで線の長さもあまり長くないというのはある意味では当然かと存じます が、フランスやイギリスはこの間の高齢化に対応してかなり急激に年金保険料を上げて きたということは、この傾きの急さでご覧いただけるかと損じます。 我が日本に目を転じますと、高齢化率がこの間に10ポイント以上あがっております。 それから保険料率もフランス並みに9ポイント近い上げ幅を示しているということで、 特に線の長さをみてみると、この間の日本のおかれていた状況を視覚的にご理解いただ けるかと存じます。 この30年間、しかしながら年金の財政運営が積み立て的な運営から賦課的な運営に切 り替わったという事情はございますが、端的に申し上げてまだ保険料率を上げきれてい ないと総括するのかなと存ずる次第でございます。 以上、本日はどちらかと申しますと社会保障についての機能、あるいは経済、社会と の関係、あるいはマクロ的な意味での給付と負担の関係を中心にご説明をいたしまし た。今後、前回の審議会でもご指摘をいただきましたように、家計ベースでみるとどう なるか、あるいはミクロ的な意味での給付と負担の関係については、次回以降に整理を して、またご議論に供したいと存じます。以上でございます。 貝塚会長 どうもありがとうございました。ただ今のご説明は、主として所得再分配効果で社会 保障はどのように全体として効果をもつか。それから、社会保障サービスは現在、産業 という言葉が使えるかどうかですが、日本におけるある種の新しいサービス産業として 相当の地位を持ちつつあるということです。あとは、社会保障全体としての給付と負担 の話、あるいは税金を含めた問題ということで、主として日本の過去の動きと過去から 現在までと、諸外国との比較ということで、今後、この場でいろいろご議論いただくと きのバックグラウンドになる事実といいますか、読み方はそれ自身、それほど簡単では ないのですが。 どうぞご自由にご質問あるいはご意見をお願いします。 中村委員 少し小さい議論ですが、緊急性ということで提案させていただきます。昨日、厚生労 働大臣が閣議後に、特別養護老人ホームへの株式会社参入、特区に限らず全国レベルで 解禁という話をされております。介護保険を含めあらゆる社会保障制度の供給体改革が 叫ばれていますが、供給体の21世紀像については、早急に議論しなくてはいけないと私 は再三言わせていただいています。介護保険の受け皿である社会福祉法人1つとって も、3年前、介護保険導入時に在宅サービス部分は民間企業の参入がなされながら、社 会福祉法人に対する規制改革は、なんらなされていないのです。民間企業とサービスの 質を競い合うためには規制改革が必要。最近になってようやく、社会福祉法人改革が省 内で議論をされ始めました。本当に遅いのではないかということです。社会保障制度を 担ってきた供給体改革があって、民間企業参入の議論ならよく分かるのだけれども、唐 突にポンと大臣が発表される。このような逆転現象が起こらないよう、社会保障改革の 議論を始めていただきたい。それでないと時代の波に押し流されてしまいます。 貝塚会長 ただ今の中村委員のご発言の趣旨は、供給の主体はどうするかという問題が、従来、 どちらかというとあまり明示的に議論されてこなかったのですが、これから先はこの問 題は非常に重要でありますし、事実、現在まさにそういう動きがあるし、そこをどのよ うに将来像を描くかということが1つの問題提起として考えなくてはいけないというの は、そうだろうと思います。 ほかにどうぞ。 奥田委員 社会保険全体の改革でございますが、現状のままでは維持不可能になるという国民の 理解ははっきりしておりますし、この国民の理解を得て痛みを伴う抜本改革をせざるを 得ない、ということは私は事実だと考えております。その際、国民が本当に知りたいの は、今言われた年金・医療・介護、こういうものを合わせた社会保障全体でみて負担と 給付がどうなるかということだと思いますが、こういった制度改革をばらばらに検討す るのもいいことなのでしょうけれども、同時に、一度にパッケージとして示すことも必 要だと思います。 その際に、持続可能な負担と給付の水準、財源のあり方を示すことは非常に重要で す。経済社会の活性化をはかる観点や、あるいは世代間、世代内の不公平を是正する観 点、あるいは消費税の引き上げ、こういうことをタブー視することなく議論して、広く 国民の理解を求めていくべきだと考えております。この問題につきましては、経済財政 諮問会議あるいはさまざまな審議会、与党で議論されることになっておりますが、この 審議会からも全体パッケージと財源論について積極的に提案する必要があるのではない かと思っております。 貝塚会長 どうもありがとうございました。ただ今の奥田委員のご意見は、この社会保障審議会 のなかでかなり重要でして、要するに社会保障の制度は、一見するところかなり分立し ておりますが、そのなかでどの制度が一番基本になってというのは当然あり得る話で、 私自身の個人的な見解は年金が一番重要で、年金でどの程度保障できるか。その枠の中 で、それでは医療保険の自己負担はどの程度できるでしょうかとか、介護保険はどの程 度負担ができるでしょうか、そういう相互の関係が今後ますます重要になってくるので はないかというのはご指摘のとおりです。それはけっこう難しい問題ですが、やはり非 常に重要だとおもいます。 奥田委員 そういう点は、今、会長が言われたように問題が非常に難しいものだから先送り的に なってきたと思うのですが、特に財源論などを考えてみますと、もうここへきて、これ 以上先延ばしすれば日本は大変なことになる、そういう緊迫感が現在出てきているわけ ですから、ちょうどいいタイミングで、パッケージ論で財源も含めて検討すべきだと思 います。 貝塚会長 ほかにどうぞご意見がごさいましたら。 岩田委員 今の点で一つ確認なのですが、先ほどちょっと話に出ましたが、雇用保険はこの射程 に入れていいということでよろしいのでしょうか。年金プラス医療プラス介護、これが これまでの日本の社会保障のきた道だと思うのです。それはまず1つのモデルとしてあ ると思うのですが、社会環境は非常に変わっていますので、もう1つの問題として、若 年世帯の問題が年金を負担する人口としてしかとらえられていないのは大変おかしい、 あるいは子育てをするということでしかまたとらえられていないというのは大変おかし いわけで、若い層にも生活リスクというのは当然あるわけです。これはまた別の仕組み が必要で、日本はたまたまこれまで比較的雇用の状態がなんとかきたので、それが問題 にならなかったというだけですが、そうなりますと、失業保険、プラス、生活保護、プ ラス、家族に対する福祉サービスというのが別の視野でもう1つのパッケージにならな いとおかしいのではないかと思います。 それと、制度間のパッケージというときに、たとえばスウェーデンのように年金と生 活保護のようなものを制度的にきちっとジョイントさせるというような意味ではなくて も、今、ちょっとご意見がありましたように、ミクロレベルでみるといずれにしても パッケージになってしまうわけです。これは若年層と高齢層でもそうだと思うのです。 家族という構成でみますと、1つのワンセットになっていく、あるいはライフサイクル からみますと、当然その2つがまたくっついていくわけです。ミクロレベルでは必ず くっつきますね。 たとえば先ほど年金のご報告のところで、今の基礎年金の 6.7万円というのが夫婦で 13万ちょっとになりますと、大体の衣食住を賄っているのだというふうな表現がありま した。これは、たとえば生活保護の生活扶助は1人 7.6万円、1級地でいきますとたぶ んそれをちょっと超えていると思いますが、これは住宅費が入っておりませんから、そ ういうものとどのように整合をつけていくのか、つけていかないのか。これまで、年金 は所得代替率、生活保護は最低生活費という仕分けをしてきましたが、そういうことで 国民が理解できるのかというのは大変私は疑問に思うのです。 そういう意味では、せっかく制度間の調整というテーマを出していただきましたの で、できればなるべく総合的に、そして日本がこれまでどちらかといえばやらなくてす んだといいますか、ちょっと別枠にしていたものをもう少し組み込んで、高齢者を中心 とした年金・医療・介護パッケージと、働いている層へのリスクを最小限にし、なんら かの場合の生活保障が入っていく、それと雇用保障がセットになっているというのが、 今日の欧米のひとつのトレンドなわけで、日本がどういうものをそこから教訓として汲 み上げていくかというのは難しい問題ですが、しかしそこに踏み込まないと今日の社会 変動は越えられないのではないかと思います。 貝塚会長 ただ今のご意見は、私も個人的には以前から雇用保険というのは社会保障に入ってい ないのはおかしいのではないかと思っており、雇用保険は非常に重要な役割をもってい まして、現在は厚生労働省ですので、なるべくそこを取り込んでいければと思います。 それから生活保護は費用は別枠として取り扱われて、社会・援護局かどこかに1つ担当 の課がありまして、社会保障の中ではカウントされていないですが、経済の実態は相当 変化しておりますので、そういうことも含めてできる限り議論した方がいいのではない かというのは、私も個人的には思っています。事務局は賛成であるかどうか存じません が、今のところ雇用保険はどのように考えておられますか一言だけお願いします。 青柳参事官 社会保障給付費の中には、当然のことながら雇用保険も生活保護も含まれております から、その意味では射程には入っていると理解しております。 ただ、今の岩田先生がおっしゃったことを実はやりたいと思って、先ほど予告編だけ 申し上げましたが、来月にはそういう世帯のミクロレベルでの給付と負担の様子をやろ うと思って作業はしておるのですが、なかなか正直申し上げて難しいところがあって、 そうやっていったときに、今は雇用のところまでお話しをされましたが、たとえば教育 の問題とか住宅の問題だとかはどのように入れていったらいいのかというあたりが、広 げれば広げるほど生活実態には近づくのでしょうけれども、我々の政策的な射程からは 離れていく部分ができてしまうものですから、そういうところはどうやるというイメー ジと具体と責任ある政策提言がほどよいところに収まるのかなという、まだみえないと ころがございますが、今おっしゃったような問題意識で私どもも今、作業をさせていた だいております。 貝塚会長 ほかにどうぞ。 ??木委員 先ほど来、雇用保険の話が出ておりますが、今、完全失業率5%台の半ば、それか ら、つい最近の新聞等の報道でも、18歳新卒者の就職がなかなか決まらない、3月末に なって最終的にどうなるのかは、まだこれからの時間の経過をみなければいかんのかも しれませんが、そういう意味で、昨今のたとえばフリーターという働き方の増加とか、 そういう雇用のサイドが社会保障の基盤を劣化させていくというスタンスで雇用問題も 少し考えてみる必要があるのかと思います。 最近、親の所得が高い人の息子さんはフリーター等に向かう比率が非常に低い、親の 所得が低い人たちが就職で苦労する率が高いなどという記事を見たような気がするので すが、どこかでそういうデータ等があるかどうか、いっぺん調べてほしいなと思ったり しております。 いずれにしても社会保障の基盤は、労働者の立場でいえば、雇用なくしてなんの社会 保障かという世界が裏返しでありますし、そういう意味では雇用と社会保障の関係がど ういう相関であるべきかということも、是非論議をしていただきたい。 もう1点、これはできたらお願いなのだけれど、先ほど 170万人程増えたというご報 告がありましたが、この雇用の中身をお教えいただきたい。どういう雇用が増えている のか、おそらく短時間の人が非常に多いのではないかなと思います。短時間でも増えた からありがたいと思えというお話かもしれませんが、中身を知りたいのでお教えいただ きたい。 貝塚会長 フリーターの話は、ちょっと話が脱線するのですが、ゲンダさんという方が本を書か れて、フリーターは大体2種類あって、ほんとうに自由でいたいというタイプの人と、 そうでなくて就職できないという若い人ですかね、2つに分かれているのだという話 で、かなり複雑なところですが、これは相当視野に入れて議論する必要があると思いま す。 京極委員 岩田委員、??木委員のご発言と同じなのですが、社会保障というとどうしても給付を 中心に考えて、しかも現行ではわりと労働関係を切り離して議論する傾向があります が、生活者の視点に立って、イギリスのソーシャルポリシーズではないですけれども、 少し幅広く議論はする。しかし担当所管が、たとえば住宅は国土交通省とか、あるいは 税制は財務省とか分かれていますのでやりにくい面がありますが、議論の中心には現行 の社会保障給付を置いてもいいですけども、広げて考えていく。 かつては社会政策という議論があって、これは恩師の隅谷先生などは、大学の講座で 社会保障というのを労働経済に変えてしまったのが罪が大きいのではないかと思ってい ますが、改めて厚生省、労働省が一緒になったところで社会政策の復権といいますか、 視点を広げて考える時期にきているのではないかと思います。 また、国民生活もばらばらにいろいろ検討してもなかなかできないということもある わけで、住宅が整っていればローンも少なくてすむとか、いろいろなことが全部関係し ていきますので、それを一度に全部議論しろといっても無理なのですが、とりあえず21 世紀でございますので、幅広に議論していければよいかと思います。 貝塚会長 ひと言、私が昔、税制調査会に関係していて、先日、主税局長がみえられまして、今 年度の税制調査会は社会保障関係の税制を本格的にやると言っていました。社会保障の 課税最低限の話と、たとえば年金をたくさんもらっている人はやはり課税すべきではな いかとか、いろいろその他の問題がたぶん出てくると思います。ですから、ある段階で ここの社会保障制度の年金、その他、税制との関係をきちんと整合的に、なるべく変な ことにならないようにということで税制を変えることはある意味では歓迎すべきことだ と思いますが、税の問題については今年は日程に挙がっている話だと私は理解しており ます。 星野委員 今の会長のお話とも関係すると思いますが、先ほど奥田委員がパッケージでこの審議 会として考えるべきではないかと、誠に私もそのとおりだと思うのです。社会保障審議 会という立派な審議会で個別の問題だけで終わって、必ずどこか議論が抜けたところで 終わってしまうというのは、ある意味ではもったいないと思うわけです。 パッケージというとどういうことになるかというと、先ほどの事務方の説明をじっと 聞いておりますと、日本は公費が少ないということをなんべんか繰り返し言われたわけ であります。たしかにこの図をずっと見ると公費は少ないです、比率でいうと。われわ れ庶民からいうと精一杯だという感覚はあっても、こういう表を並べてみれば、公費が 少ない。そうなりますと、事務方は非常に遠慮ぎみで、先生が今言われたように、税金 の話というのは、ほかに税制調査会があるからなるたけ手を突っ込まないとか、そうい うふうにある意味で役所の縦割りの限界がありまして遠慮しているのだと思います。そ れから、おそらく先生が財政審の会長になられる。 貝塚会長 財政審は社会保障の支出の方ですが。 星野委員 そうすると今度は財政審マターも、なんとなく事務方はあまり言わないで遠慮してし まう。ということになると、自分の領域だけになってしまうのですね。なにか知らない けど制度と保険料だけの話になって、公費についてはなるたけ、これはほかから降って きますよ、そういう議論だったら意味がないですね。それがおそらく奥田委員が言われ た意味なのだろうと思うので、そういうパッケージまで先生に踏み込んでいただければ 大変ありがたいし、奥田委員は財政諮問会議の有力メンバーでいらっしゃいますから、 今度は諮問会議で意見が出てくれば、それをむしろご了解されればバックアップしてい ただけるわけです。そうすると、今まで縦割りになっているいろいろな国の会議がうま くつながっていく。 しかも日本のこれから国民負担の中で、5割とはいわないでしょうけれど、4割とか そういうでかいものは扱うところが、実はそれの中身をいちばん詳しく知っているのは この審議会だと思うので、本当にやる気があるなら、是非そこまでやっていただきたい という感じがします。奥田委員のご発言に私はそういう意味で大賛成でございますの で、会長によろしくご配慮のほどをお願いしたいと思います。 奥田委員 今、そういうことを言っていただいて私どもとしまして非常にありがたいのです。 ちょっと話が違うのですが、いろいろなところでスピーチなどをするときに、私はいつ も皆さんに、特に女性の方に、家計簿というのをみられたことがありますか、と聞きま す。家計簿をつけておられる方がおりますかと言うと、ほとんどおられないのですね、 今は。そうすると、自分のカネをいったいどこへ出しているか全然分からない。それか ら、たとえば教育費とかそういう諸々の費用の中で国際比較からみても日本は異常に高 いとか、そういう問題が出て、なぜ教育費は高いのだ、それはやはり教育の問題だろう と、そういう話になってきますと、どんどん話が拡散していって、今、事務局の方が おっしゃられましたが非常に難しい話になる。関係をとるのが非常に難しいのだと。 そういうことで、私どもは若干悩んでいるところはあるのですが、いずれにしろ自分 の家計を見直してみて、家計での支出が本当に必要なものなのか、あるいは必要でない のか、あるいはそうではないものを日本人はよその国と違ってやっているのかどうかで すね。 このようなことをこの場で言ったらいけないのでしょうけど、子どもさんが2人も3 人もいると、たとえば塾などの費用に相当なお金を払わなければなりません。ところ が、もし義務教育だけで済めば、ほとんどそういう費用はかからないということです ね。だから、どうすれば義務教育だけで済むような教育体系ができるのか、そういうと ころまで話がどんどん及んでいって、日本人全体の生活態度といいますか、そういうも のについてもういっぺん見直してみることから、社会保障費の問題についての解決策も 出てくるのではないかと思って、私は申し上げているわけです。 貝塚会長 たしかにおっしゃるとおり教育の問題は非常に潜在的には重要で、その話をやってい くと、私は大学の人間なので大学教育は大丈夫かという話になってしまうのですが、た だ、今おっしゃっている話は、初等教育、中等教育。この分野は私は素人ですが、やは りかなりの問題を潜在的に抱えていて、それが経済社会にある種のマイナスの側面をか なりもってきている。コストの面でもあるし、その他の面でもあることは私も感じてい ます。社会保障審議会で教育が問題であるなどということを言えるかどうかはあります が、しかしその問題はどこかに多少は分かるような形で含めたいと思います。 長谷川委員 私は、ここしばらく殺人の研究をしておりまして、それでずっと日本の社会で殺人率 がどのように、誰がどう殺さなくなったかという変動の研究をしております。それで、 あまり知られていないのですが、本当に日本は世界で一番殺人の少ない安全ないい国 で、それが戦後一貫して特に若い人の殺人率が激減する方向で90年代まできたのです。 それが、1955年から2000年までのデータで激減する、特に若い人の殺人率が激減すると いうのはどうして日本だけで起こったのかというのをずっと不思議に思っております。 それで、社会現象は複雑だからいろいろなものを分析しているわけですが、今のところ 私が持っている分析のデータの範囲では、若い人たちが将来に対して望みがあると思っ ているか、いないか、自分の将来が安定していると思っているか、思っていないかとい うことがものすごく関係しているみたいです。 こういう国際比較などのデータを見ましても、資料4−3の15ページでも、たとえば アメリカ、ドイツ、スウェーデン、これはみんな日本より殺人率は高いです。スウェー デンなどは社会保障が進んでいい社会かと思うけれども、殺人率に関していえば日本よ り高いです。ドイツもすごく高いです。そうすると、失業率というところが、失業保険 とか生活保護とかそういうお金は非常に多いですよね。それで特にこういう国は若い人 の失業というか、若い人の生活保護が多いでしょう。これだけお金を出しても間に合わ なくて、あぶれている若い人がたくさんいる国なわけです。それから、家族、子どもと いうののお金も非常に多いですけど、これはシングルマザーとかそういう人たちが支え てもらうお金で、それもこれだけ出しても足りないぐらいという。年寄りの話は非常に 問題になりますが、若い人たちがどのくらい自分たちの将来に明るさを見い出せるか、 見い出せないかというところで、若い人がどれだけ目の前のつまらないことにリスクを とって、ものを取ったり人を殺したりする気になるかということというのは、非常に相 関していると思います。 この資料もそういうことを1つは、ラフにですが表しているのではないかと思います ので、先ほど岩田委員がおっしゃった雇用のこととか、若い人の生活リスクをどのよう に考えるか、それと不平等の問題とがセットになって全部考えないといい社会はつくれ ない。日本は、安全とか犯罪という点からみれば非常にいい社会にはなっているわけで すね。それの大きな理由が、雇用がうまくいっていて、若い人たちが他の諸外国に比べ てそんなに職業とか将来に対する強い危機感がなかったということで今までの安全性が 出てきていたのだとしたら、今後、それが変わることによって、もっともっと日本は危 険な悪い社会になっていくと思いますから、その点は社会保障というのは総合的に考え ないといけないと思います。 翁委員 私も、奥田委員と星野委員と同じ意見なのですが、年金の方でも横断的な議論が非常 に重要だということで、今、部会でも議論しておりまして、特に最小保険料率と保険料 を固定方式にする場合に、2割という水準を仮に決めた場合に、それが過度になるのか どうなのか。もっと低い方がいいのではないかというときに、介護と医療との関係が極 めて重要になってくると思うのです。先ほど貝塚会長もおっしゃった三者の関係なので すが、私は3つぐらい視点があるかなと思っています。 1つは、公的に関与するのは、市場の失敗がどの程度大きいかということがひとつ重 要かと思うのですが、たとえば介護とか医療というのは、民間保険制度ですと逆選択が 働いてリスクの高い人達が集まってしまって成立しにくいとか、そういういろいろな市 場の失敗の働く要素が、年金に比べると高いというような点が1つあるかなという気が しています。 もう1つは、それぞれの制度のサステナビリティの点でございまして、年金部会が示 された資料では、2025年の時点ぐらいまででは大体介護保険料はこのぐらいで、医療保 険料はこのぐらいで、大体3割強で収まっているというイメージ図が出ていたのです が、日本が一番大変なのは 2025年から2050年の高齢化の一番進む時期でして、高齢化が増えると介護とか医療がど の程度の負担になっていくのか、こういったところを見極める必要があって、将来世代 への視点は極めて重要なのではないかと思っています。サステナビリティと将来世代の 負担ということです。 3点目は、これは今度お話しになるかもしれませんが相互の依存関係で、どのぐらい 介護の自己負担が増えるかとか、保険料が増えるかということによって、年金の支給額 はおのずと決まってくるという点があって、これは相互に非常に複雑ではありますが、 5:3:2とかそういう議論はもう一度きちんとしておく必要があるのではないかと 思っています。 もう1つは、星野委員がおっしゃった点と全く同じなのですが、年金のところでも基 礎年金の在り方ということで、たとえば国庫負担は1/3から1/2ということが前提 になっていますということで議論が進んでいるのですが、理想として考えれば、ジニ係 数などでみたように、たとえばスウェーデンのように国庫負担を低所得の部分に重点的 において国庫負担をくさび型にして、あとは所得比例年金にするというようなものが本 当に現実的にできれば、いろいろな所得再分配の効果などを考えても、より理想的では ないかと。 そのときにネックになっているのが所得捕捉の問題で、自営業者と給与所得者の問題 という点があると思うのですが、そういったいわばテクニカルな点で議論が進まないの が非常に残念なことなので、是非そういったことの解決も含めて提言ができるような形 にもっていければという気持ちをもっております。 貝塚会長 ほかにどうぞご意見を。 糸氏委員 先ほどいろいろ負担の話がございましたが、介護保険もスタートしてだいぶなります が、去年も医療保険改革ということで健康保険法の改正でお年寄りの負担が非常に増え たということで、我々医療の現場では、特にお年寄りの負担が増えても、一般のお年寄 りはそう大きい影響はないと思うのです。ただ、医療費の非常にかかるお年寄りが致命 的なダメージを受けている。たとえば在宅で寝たきりのお年寄りとか、あるいはがん等 で非常に医療費の高くつく方々が、今までの定額制はなくなりましたから、一挙に3倍 とか4倍、あるいはもっと以上の医療費を払わなくてはいけない。そういうことで、地 方によっては、それによって夫婦自殺したといった悲惨な例も出てきておりますし、こ の負担というものもよくよく考えてあげないと大変なことになります。 今まで、厚生労働省の統計でも患者負担ということがあるものの、それだけでなく、 一方で保険料の負担があるわけなのです。そうすると家計からみれば、元気なうちは病 気をしなくても保険料は払わなくてはいけない。病気をすれば今度は患者負担も払うし 保険料も払う。この二重の支払いが出てくる。そういうことで、これからもっと患者負 担とかこういった問題の中に厚生労働省も家計負担という視点からのもっと大きい負担 率を考えてほしいなと思います。 我々の方でいろいろ研究したり調査しますと、家計負担は昨年の健康保険法改正で、 今までなんとか40%程度で収まっていたものが、完全に50%を突破したということで、 当然こういう不景気なとき、よほどのことがない限り、医療機関へ行かないだろう。そ のことにより早期診断・早期治療が遠のいていくということは、国民の生活にとって非 常に重大な問題ですので、国民の支出を単に患者負担だけではなしに、保険料とも一緒 に考えていただきたい。 保険料だけについていいますならば、ドイツとかフランスとかわが国と似たような保 険制度のところと比べますと、我が国はまだ安い方に入っているというか、非常に低い 方に入っている。これは結構なことなのですが、それがだんだん外国に近づいてくるの ではないかなと。現に去年の健康保険法改正で総報酬制がとられましたし、保険料の方 はそういう方向にいくだろうと私は思うのです。 ただ、患者負担についてはいろいろありまして、10年前まではドイツなどのように 患者負担は一切とらないといったところもあります。最近、薬剤料だけかけたのです が、ほとんど患者負担はとらない。保険料だけで保険コストを賄うというのを原則にし ておりますし、そういう方向で負担の問題はトータルで考えなくてはいけないだろうと 思っております。 もう1つ、最近、規制緩和ということで、病院の株式会社導入といったことを盛んに いわれておりますが、現に株式会社で病院をやっているところはいくらでもあります し、それはそれでいいと思うのですが、ただ、そういうところのお話を聞いてみます と、むしろ企業の福祉的な目的でやっていて、採算はなかなかとりにくいということが 実態のようです。 ただ、今の医療は、保険制度にしても介護保険制度にしても、これは国の一元的な完 全な管理医療、あるいは管理介護になっているわけです。療養担当規則というのが決 まっておりまして、それからはみ出ると医療費は支払われないということになってきま す。ですからわれわれの医療行為そのものは、手かせ足かせでみんな縛られている。ま た、薬も公定価格で薬価というのは決まっているといった具合に、また病院とかそうい うところも、国でこれだけの病床にはこれだけの看護婦とかいうように、すべてこれは 国家管理になっているわけです。 たしかに介護保険制度は国家管理によってやっているわけで、それはそれでメリット もあればデメリットもある。今、規制をすべて外そうというひとつの勢いが強いのです が、私たちから言わせていただければ、いくら経済活性のためとはいいながら、人の尊 い命とか健康を犠牲にしてまで規制を外すことは、だから、人の命とか健康であるから こそ今はかえって厳しい規制がはめられて、国民の安全を国が守ってきたと思うので す。そこのところは政府のおっしゃっていることと我々のところが話が大分違うのは、 我々は、人の命と健康のためには守るべきもの、外してはいけない規制は守らざるを得 ない点もあることを、是非ご理解していただかなくてはいけないのではないかと思って おります。 貝塚会長 自己負担の問題は、ある意味で生活の低い人にとって大きな問題になり得るというこ とは十分チェックする必要がある。それから最後に言われた点は、規制の話はかなり複 雑なのですが、社会保障の供給主体にとって規制というのは一般論としてはどの程度ま で必要なのか、いつも規制していればいいというほど単純ではない話があって、規制の 問題はどこかで触れておく必要があるということは、私も思います。 ほかに、あまり時間はありませんが、これだけはという意見がございましたらどう ぞ。 樋口委員 意見というより質問なのですが、今、雇用の問題が大切だなどということは本当に大 賛成で、是非一緒に論議していただきたいと思っております。18歳で半分の人がまだ仕 事がみつからないなどという状況で、子どもを産め産めといわれても、産むという気持 ちにならないのはあたりまえだと思うのです。ですから、そういうことは大いに論じて いただきたいし、岩田委員もおっしゃいましたが、子どもを生まないとか少子・高齢化 といいながら、本当に担い手としか考えていないようなところで、少なくともそういう 論議がされているところで、生まれてくる子ども自身がどのようにしてよい人生を送れ る社会になるかということを考えるのが基本的な社会保障のベースではないかと、つく づく思いながら伺っておりました。 どちらかというと、今度の社会保障は21世紀の一番初めをつくっていくときでござい ますので、本当は個別なことをいろいろ論議しなければならないけれど、それは部会に お任せしてというか、今まであったようなビジョンの委員会にも似たような論議をさせ ていただけるのだろうかどうだろうか。できればそういう議論をさせていただきたいと いうことが1つでございます。 急にまた個別の問題になりますが、この前の社会保障審議会が始まるころ、介護保険 が始まって間もないときだったので、私などはあまりそこに関心はなかったのですが、 介護保険を通して日本の貧困ということ、低所得層の存在はとても大事で、介護保険で 私も含めてちょっと甘かったのは生活保護以外の低所得層、2万、3万の基礎年金の部 分年金で生計を立てている高齢者は、私の感じではゴマンといる感じなのですが、1N GOでは実数まで全部つかむことができません。たしか岩田委員かどこかで、厚生労働 省の中でも貧困の現状把握のための研究会を立ち上げられたとそのころ伺ったような気 がするのですが、ご報告も伺っていないし、その後の実態を伺っていない。 やはり、本当に貧しい人をどうするかということと、2050年、これは私もぞっとする ような、2050年は絶対生きていないからいいとはいえないのですね。今、大学で教えて いた連中がちょうど67〜68、70になって、私は21世紀はおばあさんの世紀で、そのおば あさん盛りのあなた方がいったいどう働いて、どう家庭をつくって、どう生きていく か、だから、老婆は一日にしてならずといっているのです。男女の共同参画という雇用 の問題も含め、フリーターの男性、それから非常に労働条件の悪い女性、この人たちが ずうっと年をとっていくと、へたをすると2050年の我が日本政府は、貧しいじいさん、 ばあさん、特におばあさんの生活保護に追われてほかの政策はできないなどということ になりかねないのですよ、悪夢でストーリーでも書くとね。 ですから今の貧困をしっかりと把握して、少なくとも介護保険の利用料がつらいです などという、貧困といっても生活保護を受けている人だけでなく、そういう低所得層 の、なぜ低所得層になったかということをつき詰めていけば、2050年に貧しい高齢者、 つまり今の若者たちの働き方が社会保険の支えてもらう仲間に絶対入ってもらうように する政策を立てていく。それは、今の日本の貧困がどうなのかということをきちんとみ ることによって対策が立つのではあるまいかと思っておりますので、その辺を是非いろ いろ教えていただきたいと思います。 6.閉会 貝塚会長 もう時間がだいぶ経過いたしまして、ほかにどうしてもこの点だけという方がいまし たら、ご意見をどうぞ。 それでは、今日は大変有益なご意見をいただきまして、皆さんおっしゃったことを全 部うまくこなせるかどうか、事務局に対して非常に多くの問題提起があって、それをか なりこなす必要があることはたしかで、相当新しい問題が社会保障に発生するであろう ということを十分念頭において、先をみた話をやることが重要ではないか。そういう点 では非常に想像力のいる話ではありますが、よろしくお願いいたします。 それでは、時間がだいぶ過ぎましたが、今日はこれで終わらせていただきます。次回 以降の予定について、事務局からお願いします。 伊原政策企画官 ありがとうございました。次回は3月19日、1時から予定しております。詳しくは別 途ご連絡いたしたいと思います。 それから、お手元に4月から5月のご都合をお伺いしたいと思いまして紙を用意して ございます。きょうお書きいただいても結構でございますが、お持ち帰りいただきまし て今月の26日までに事務局にファクスいただければと思いますので、よろしくお願いい たします。ありがとうございました。 貝塚会長 今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。 − 以上 − 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159

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