01/08/07社会保障審議会 第1回人口部会議事録 社会保障審議会 第1回人口部会 ○しろまる日 時 平成13年8月7日(火) 16:02〜17:34 ○しろまる場 所 日比谷松本楼 2階 花水木 東京都千代田区日比谷公園1−2 ○しろまる出席委員 阿藤 誠 市川 尚 岩渕勝好 小川直宏 高橋義哉 津谷典子 永瀬伸子 廣松 毅 向山孝史 山?ア泰彦 山路憲夫 山田昌弘 雪下國雄 (五十音順、敬称略) ○しろまる議事内容 1.開 会 小川 政策企画官 定刻を過ぎましたので、ただいまより第1回社会保障審議会人口部会を開会します。 私は、厚生労働省社会保障担当参事官室の小川でございます。部会長選出までの間、 議事進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。 委員の皆様には、本日はご多忙のところお集まりいただきましてありがとうございま す。 2.委員紹介等 小川 政策企画官 まずはじめに、委員のご紹介をさせていただきます。右側から、 阿藤誠・国立社会保障・人口問題研究所所長、 市川尚・日本母性保護産婦人科医会副会長、 岩渕勝好・産経新聞社論説委員、 小川直宏・日本大学経済学部教授・人口研究所次長、 高橋義哉・第一生命経済研究所代表取締役社長、 津谷典子・慶応義塾大学経済学部教授、 永瀬伸子・お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授、 廣松毅・東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授、 向山孝史・日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長、 山?ア泰彦・上智大学文学部教授、 山路憲夫・毎日新聞社論説委員、 山田昌弘・東京学芸大学教育学部助教授でいらっしゃいます。 なお、雪下國雄・日本医師会常任理事にも委員をお願いしておりますが、本日は遅れ てご到着とのご連絡をいただいております。 また、本日はご欠席とのご連絡をいただいておりますが、秋山弘子・東京大学大学院 人文社会系研究科教授、駒村康平・東洋大学経済学部助教授、小宮英美・NHK福岡放 送局チーフディレクター、長谷川眞理子・早稲田大学政治経済学部教授にも委員をお願 いしております。 次に厚生労働省の事務局を紹介させていただきます。 政策統括官の石本でございます。社会保障担当参事官の河でございます。そのほか、 社会保障担当参事官室、国立社会保障・人口問題研究所が事務局として出席させていた だいております。 議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。 配席表、議事次第のほか、 ・資料1−1 人口部会委員名簿 ・資料1−2 社会保障審議会関係法令・規則 ・資料2−1 人口部会について ・資料3−1 平成12年国勢調査抽出速報集計結果 ・資料3−2 平成12年人口動態統計月報年計(概数)の概況 ・資料3−3 日本人の平均余命 平成12年簡易生命表 ・資料4−1 将来人口推計の方法と平成9年推計の基本的な考え方 ・資料4−2 同資料編 ・資料4−3 同参考資料 となっております。 なお、それぞれ、委員の辞令は封筒に入れさせていただいております。ご確認のほど よろしくお願い申し上げます。 いま、雪下委員がご到着になりましたので、ご紹介いたします。 3.部会長選出及び部会長代理氏名 小川 政策企画官 それでは議事に移りたいと存じます。 お手元の資料1−2の3ページ、社会保障審議会令第6条3項に「部会長は部会に属 する社会保障審議会の委員の互選により選任すること。」とされております。本人口部 会においては、4名の社会保障審議会委員がいらっしゃいますが、予めこの4名の方々 で互選をしていただいたところ、廣松委員が選出されましたので、本部会では廣松委員 に部会長をお願いいたします。 それでは、以後の議事運営につきましては、部会長にお願いいたします。 廣松 部会長 ただいま、部会長を仰せつかりました廣松でございます。大変な大役でございますが 、委員の皆様方のご協力によりまして、円滑な運営に努めたいと思います。何卒ご協力 のほどよろしくお願い申し上げます。 おそらく、今回の将来人口推計の期間中に日本の人口がピークを迎えることは確実だ ろうと思います。その点に関して、間近になりますと、いろいろ話題になろうかと思い ますが、人口の動向だけではなくて、釈迦に説法かと存じますが、将来人口推計値は年 金とか保険関係の社会保障費の将来推計に関して基礎となる数字でございます。その意 味で、これから10年間の日本社会全体の大きな動きを見通すための基礎的な数字だと 思います。何卒委員の先生方のご協力並びに事務局のご尽力によりまして、予測で正確 というのはあまり適当な表現でないかもしれませんが、説得力のある推計ができるよう な形にもっていければと考えております。 それでは、早速、この部会の運営に関しまして、資料1−2の社会保障審議会関係法 令第6条第5項ですが「部会長に事故があるときは当該部会に属する委員又は臨時委員 のうちから部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理する」という規定がなされ ています。この部会長代理につきましては、阿藤委員にお願いしたいと思います。何卒 よろしくお願いいたします。 4.人口部会について 廣松 部会長 それでは、お手元の議事次第にしたがいまして進めたいと思います。 1の「部会長の選出及び部会長代理指名」は、以上で議事運営を終わりましたので、 2の「人口部会について」に移りたいと思います。本日は第1回目の会合でございます ので、まず本部会設置の主旨及び審議事項等について確認をしたいと思います。これら の点について事務局からご説明をお願いいたします。 小川 政策企画官 それでは説明させていただきます。皆様既にご案内のとおりでございまして、我が国 の将来人口推計につきましては、5年に1回、国勢調査の人口をベースとして推計を行 っております。この推計結果につきましては、年金の財政再計算、雇用対策基本計画、 経済計画等の労働力人口推計、その他の各種計画の需要予測等の基本的なバックデータ として用いられる極めて影響の大きいものでございます。 従来その推計は国立社会保障・人口問題研究所(旧人口問題研究所)で行っておりま したが、本人口部会におきましては、国立社会保障・人口問題研究所が行う次期将来人 口推計の考え方や推計の前提について検証を行うことを目的として開催するものでござ います。 今後の進め方は、平成13年8月から平成14年1月までに4回程度開催し 、推計公表後閉会します。 第1回、本日でございますが、(1)部会長選出及び部会長代理指名 (2)人口部会につ いての説明 (3)各種報告の聴取 (4)国立社会保障・人口問題研究所から将来人口推計 の方法と平成9年推計の基本的な考え方を説明します。 第2回は、9月頃を考えておりますが、将来推計人口について、基本的な考え方、即 ちどういうふうに人口推計を行うか、またそのバックデータ、基本になります平均初婚 年齢とか夫婦の完結出生率とか生涯未婚率等について国立社会保障・人口問題研究所か らご説明をし、それについてご議論賜ればと思います。 第3回については、11月頃を考えておりますが、第2回の議論を受けまして、新た に国立社会保障・人口問題研究所からご報告をいたします。 第4回につきましては、平成14年1月に「日本の将来推計人口」推計結果というこ とで国立社会保障・人口問題研究所からご報告をいたします。その後、直近の社会保障 審議会においても推計結果を報告することを考えております。 河 参事官 一点だけ申し訳ございません。全体の社会保障審議会の運営規則が先ほどの関係法令 規則の後の方についてございます。その運営規則によりまして、この社会保障審議会及 びそれぞれの部会の会議は原則公開するということが第5条で定められております。た だし、著しく支障を及ぼすおそれがあるときは非公開とすることができるとされていま す。もう一つ、第6条で、議事録について、これこれのことを記載し、公開とするとい うことが定められております。 従いまして、本人口部会においても会議・議事録は公開にすることをご報告させてい ただきます。 廣松 部会長 どうもありがとうございました。次に「報告聴取」ですが、報告聴取を3点受けてか ら、まとめてご質問、ご意見を伺う時間をとりたいと思います。 5.報告聴取 廣松 部会長 まず、第1点目として、平成12年国勢調査抽出速報集計結果について、事務局より ご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。 小川 政策企画官 それではお手元の資料3−1 平成12年国勢調査、抽出速報集計結果について簡単 にご報告します。 今日は報告事項が多数ございますので、特に人口推計に関係のあるポイントに絞って 、ご報告します。 まず、1の「65歳以上人口は15歳未満人口を初めて上回り、総人口の17.5% に」ですが、今回の特徴としては、65歳以上人口が調査開始以来初めて15歳未満人 口を上回ったことがあります。また、15〜64歳、いわゆる生産年齢人口が平成7年 に比べて117万人、1.3%の減少となり、これも調査開始以来初めての減少となっ ています。 ちなみに、平成7年においては、65歳以上人口は14.5%だったのが17.5% に、15歳未満人口は15.9%だったのが14.5%に変わっています。 次に、2の「65歳以上人口の割合はイタリアに次ぎ高水準」ですが、我が国は先進 国ではおそらく世界の中でイタリアに次いで65歳以上人口の割合が高い国となったと いうことでございまして、2000年におきましては、イタリアが18.2%で、我が 国がそれに次ぐ17.5%、スペインが17.0%、ドイツが16.4%となっており 、我が国は2000年においては世界第2の高齢化が進んだ国であるということです。 次に、3の未婚率の件でございますが、15歳以上人口の配偶関係をみると25〜2 9歳女性の未婚率が50%を超え、未婚率は男性が31.5%、女性が23.4%で、 平成7年と比べると、男性はすべての年齢階級で未婚率が上昇しています。特に30〜 34歳は5.6ポイントの大きな上昇ということです。女性もほとんどの年齢階級で上 昇して、特に25〜29歳は5.9ポイント上昇して54%と半数を超え、30〜34 歳も6.7ポイントと大きく上昇して、今後の人口推計上、影響が大きいのではないか と思われます。 以下は、サービス就業の割合が拡大、職業別では事務・技術・管理関係就業者の割合 が最も多い、等々ありますが、とりあえず、人口推計には関係ございませんので、省略 させていただきます。以上でございます。 廣松 部会長 ありがとうございました。引き続き2点目の「平成12年度人口動態統計月報年計」 、3点目としてごく最近公表された「日本人の平均余命、平成12年の簡易生命表」に ついて、厚生労働省大臣官房統計情報部の田村哲也人口動態・保健統計課長よりご説明 をいただきます。よろしくお願いします。 田村 人口動態・保健統計課長 人口動態・保健統計課長の田村でございます。よろしくお願いします。 資料が2つございます。それぞれについて簡単にご説明したいと思います。 まず資料3−2「人口動態統計月報年計」です。これは、毎月毎月作成、公表してい る月報を1年間まとめ、速報として去る6月20日に発表したものです。 1ページは、人口動態統計では2の調査対象にございますように、出生、死亡、婚姻 、離婚、死産の全数について調査しております。調査期間は平成12年1月から12月 までの暦年で調査しています。そして、利用上の注意の欄の真ん中あたりに四角が3つ ありますが、今回は真ん中の太い線で囲んだ人口動態統計月報を足し上げたもので、内 容的には、日本国内における日本人に関する発生分について調査しております。 2,3ページが結果の要約です。3ページの表1が全体像です。平成12年の出生数 は119万人余りで、前年に比べますと、1万3千人ほど増えています。死亡は逆に9 6万1千人と、前年より2万人ほど減少しております。その結果として、自然増加は、 昨年は20万人を切りましたが、今年は回復して、22万8千人、23万人弱になって おります。死産はほとんど変わらない。それから、婚姻は、3万6千組ほど増えて79 万8千組、80万組近くになっています。離婚が1万3千組ほど増えて26万を超えて います。 合計特殊出生率ですが、これは1.35で、昨年に比べて0.01増加しています。 ちなみに、合計特殊出生率というのは、一人の女性が一生に生むであろう子どもの数を 瞬間的に推計した数字です。 以下、簡単にそれぞれの事象についてご説明したいと思います。 4,5ページは出生数についてみたものですが、出生数は5ページの図1にございま すように、戦後の第1次ベビーブーム、その子どもの第2次ベビーブームがありまして 、最近、平成に入りましてからは、ほぼ横這いの動きをしております。一方、合計特殊 出生率は実線のように徐々に下がってきています。 平成12年の出生が119万人ほどと申しましたが、お母さんの年齢別にみたものが 、4ページの表2です。年齢5歳階級別にみております。一番多いのは25〜29歳の ところでして、約47万人、30〜34歳がその次です。これを昨年と比較しますと、 右端の欄にありますように、20代では減少傾向にあります。これは昨年もそうです。 30代では増加傾向にあるということで、出生がちょっと遅れてきているということが わかるかと思います。 6,7ページは合計特殊出生率の動きです。7ページの図2を見ていただきますと、 一番上の線が合計です。先ほどの図1と同じものですが、縦軸を広げていますので、き つく動いているかと思います。年齢階級別にみますと、25〜29歳がぐっと減ってき て、その上の階級の30〜34歳が伸びている。ただ最近は横這いになっています。一 方、20代前半はかなり前から減少していまして、これもほぼ横這いになってきている 。また、35〜39歳のほうは徐々に伸びてきていますが、まだ如何せん、数値が少な いということかと思います。20代と30代で動きが逆転しているということがわかる かと思います。それを数字にしたのが6ページの表4です。 8,9ページは死亡です。9ページの図4ですが、戦前の死亡数はもっと多かったの ですが、戦後すぐ改善しています。また、図は年齢階級別に示していますが、若いほう の死亡が減ってきているということがおわかりいただけると思います。その後、昭和4 0、50年代あたりは安定していましたが、平成になりかかった頃から、高齢化の影響 によって死亡数がやや増えてきている。75歳以上の死亡がぐっと増えてきているとい うことがおわかりいただけると思います。平成12年は96万人ということで昨年より だいぶ減りました。昨年は98万人ということで戦後では昭和22年に次いで多かった のですが、それが少し減っています。その年齢階級別の動きが下の表6ですが、各年齢 階級で見ていただいてもほとんど前年に比べて減少している。死亡率で見ると全年齢階 級で減少しているということがわかります。これが後の生命表に影響してくるというこ とです。 10,11ページは死因です。図5を見ていただきますと、悪性新生物はどんどん増 えています。心疾患は過去ずっと増えてきましたが、下の注に書いてあるとおり、平成 7年に死亡診断書の書き方に注意書きをつけましたので、そこでは段差がある。その後 、また増加傾向にあったのですが、12年は11年に比べて減少しています。脳血管疾 患、肺炎も同じです。文章に書いてありますが、平成11年にはインフルエンザが非常 に流行った。その結果、肺炎、それに併発するような形で心疾患、脳血管疾患で死んだ 方が多かったんじゃないか、ところが、平成12年はインフルエンザはあまり流行りま せんでしたので、その結果減少しているということがいえるかと思います。その結果が 2万数千人の死亡数の減少に結びつくということになります。 次の、死因別分析、悪性新生物は今回のテーマにあまり関係ないと思いますので、省 略したいと思います。 16,17ページが婚姻です。婚姻は79万8千組、約80万組ございまして、これ は昭和46年から49年ぐらいまでの第2次婚姻ブームの最後の昭和52年以来の高い 数字です。ただ、内容的にみますと、12年というのは2000年、ミレニアムであり まして、ミレニアムで結婚したとか届けたというのがかなり多くなっています。200 0年1月1日の届けが非常に多くなっているということがあります。婚姻件数は図8の ような動きをしております。出生と同じような動きをしていると思います。 17ページの一番下の図9は、10年ごとに初婚の妻の年齢分布を見たものですが、 ピークが低くなって、かつ右の方へシフトしている。つまり、高年齢の方に分布が広が っているということがおわかりいただけるかと思います。初婚年齢につきましても、毎 年約0.1歳ずつ上がってきているということが上の表10で示されています。 18,19ページは離婚です。離婚は一時、昭和58年、59年あたりに山がありま すが、最近はほぼ単調増加、非常に順調に増加しているということが言えるかと思いま す。昨年は1万4千組ぐらい増加しているということで、特に期間の長い方の増加が目 立つということはいえると思います。 以上が平成12年の結果でございます。ちなみに、先ほど、出生が1万3千人ほど増 え、死亡が2万人ほど減ったというご説明をしました。ただ、今年の5月分までで見ま すと、出生がこれ以上に減少しておりますので、元の状況に戻っている。そして死亡は 減少気味であるという状況でございます。 なお、資料の最後のページに参考までに、人口動態総覧の国際比較、それから、分母 に用いた人口、というのを載せています。 次に、資料3−3の「日本人の平均余命」という資料をご説明したいと思います。 これは先週、8月2日に発表したものです。合計特殊出生率と同様で、平成12年に おける死亡状況が今後も変化しないとした場合に、あと何年ぐらい生きられるかという のを平均寿命として出したものです。 2ページにありますように、平成12年は男が77.64年、女が84.62年とい うことで、昨年に比べて非常に伸びています。表2で男女差も6.98年と、これも拡 大している。平成2年、つまり10年前に比べて、男が1.72年、女が2.72年伸 びていて、男女差が1.0年拡大しています。この大きな伸びは、表1でもわかるので すが、女でも男でもそうですが、高齢のほうで伸びが大きいということが言えます。 次の4,5ページは国際比較です。 6,7ページは説明は省きますが、死因分析、どういう死因で死亡することが多いか 、また、ある死因がなくなった場合にはどのくらい余命が伸びるかというような分析を しております。 8,9,10,11ページは生命表の本体でございます。 以上でございます。 廣松 部会長 どうもありがとうございました。それでは、議事の2「人口部会について」のご説明 、それから、議事の3「報告聴取」の3点、それらに関してご質問、ご意見ございます れば、ご発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。資料が大変多いものですか ら、いまこの場でご覧になっていただいてすぐに質問というのは難しいかと思いますが 、何かお気づきの点がございますれば、ご発言いただきたいと思います。 口火を切る意味で私から1つ質問です。先ほどミレニアム婚とかミレニアムベビーの 話がちょっと出ましたが、おそらく平成12年の数値だけでは、つまり13年、14年 ぐらいの数値が出て来ないと明確に言うのは難しいかと思いますが、もしその影響があ るとするならば、13年、14年あたりでまた落ちる、出生数、婚姻数が減るというよ うなことは予想されるのでしょうか。 田村 人口動態・保健統計課長 予測は難しいと思いますが、短期間なので私からお話します。平成12年1月、平成 13年1月の婚姻数を見ますと、約47%が1月1日の届出でございます。婚姻につい てはそういう効果があった。もう一つ、婚姻は平成12年12月12日という並びの日 も影響しました。それで非常に多かったということがあります。 一方、出生のほうはある日を目標として生むというのはなかなか難しい話ですので、 あまり影響はなかったというふうに考えています。まだよくわからないのですが、12 年でみますと、9月以降、9、10、11、12月が11年に比べましてぐっと増えて いるということが、何らかの影響があったということになるかもしれません。これは今 年の動きを見てみないと何とも言えないという気がいたしております。 廣松 部会長 ありがとうございました。ほかにご発言ございますでしょうか。 山路 委員 平均寿命のところで2点、基本的なことで恐縮ですが、教えていただきたいんですが 、平均寿命の年次推移をみますと、男女差がどんどん広がっているんですが、これはど ういうわけなんでしょうか。それからもう一点ですが、これもなかなか難しい話だと思 うんですが、平均寿命はどんどん右肩上がりで伸びているわけですよね、長期的にみま すと。これはどこまで伸びるのかという予測はなかなか難しいと思うんですが、まだま だ伸びるんでしょうか。その2点です。 田村 人口動態・保健統計課長 これは伸びる原因ではなくて、男女差のある原因ですけれども、男女差の原因はよく わからないというのが事実でございます。先週、2日に記者発表したときも記者の方々 からかなり質問されたのですけれど、よくわからないということです。よく言われてい るのは、生物学的な差がある、それから社会的な差があると。女性はもともと強く生き る、長く生きるように設計されているというのが一つです。それはホルモンの影響とか 、あと染色体の話も昔からあります。そして、出生を見ますと、男子のほうが1.05 倍ぐらい多くなっていますので、それからも自然的にも女性が死亡しにくいということ になるかと思います。社会的には、女性の方がいらっしゃいますので、怒られるかもし れませんが、男性の方が社会的なストレスが多いとか、酒、たばこの影響が多いとか、 そういうことも言われていますが、定説となると寡聞にして聞いていません。ただ、先 進国になればなるほど伸びるという傾向は見られると思います。というのは、発展途上 国では若い女性があまり優遇されていないこともあります。先進国では、それがなくな って、高齢者になると差が出てくるのかなという感じがします。 それから、将来の動きは、インフルエンザとか、海外でいえばエイズの流行等、それ から、平成7年、1995年は大震災の影響ですが、そういうものがなければ、しばら くは伸びるんじゃないかと思っています。 廣松 部会長 ありがとうございました。他にございますでしょうか。 雪下 委員 出産が女性の平均余命に与える影響というのは、何かそういうデータはあるでしょう か。出産があるかないかによっての女性の余命への影響、伸びるのか、縮むのか。 田村 人口動態・保健統計課長 ないというのがお答えかと思います。というのは、死んだ人が過去に出産したかどう かという統計はとっていません。特別の集計をして、研究されればわかるかと思います 。 廣松 部会長 さっきちょっとコメントがありましたが、出生の性比そのものは安定して1.05ぐ らいということなんでしょうか 田村 人口動態・保健統計課長 出生性比は後でご説明があるかもしれません。一時ちょっと高くて1.07ぐらいま でいったこともございますが、その後また減っています。資料4−2の16ページでは 、105から106なので、図では大きく見えますが、まあ変動の範囲内かなあという 気はします。もうちょっと古くは1.07ぐらいまでいったことがありますが、その数 値だと諸外国と比べても高いのかなという気もいたします。 6.将来人口推計の方法と平成9年推計の基本的な考え方 廣松 部会長 ほかにご質問はございますでしょうか。 それでは、資料4にちょっと入ってしまったようですが、この人口部会の役割という か、目的のところに掲げられているとおり、今回の将来人口推計を行う際の基本的な考 え方に関してご審議をいただくわけですが、現時点では既に平成12年の国勢調査の、 速報ですが集計結果、それから平成12年の人口動態統計の概数が出されましたので、 いわば材料が揃ったというところかと思います。それらに基づいて、どういう形で将来 人口の推計を行うかということが、この部会の主たる任務となるわけですので、その基 本的な考え方に関して、国立社会保障・人口問題研究所の高橋重郷人口動向研究部長に ご説明いただいた後で、質疑等お願いをしたいと思います。 それでは、高橋部長、よろしくお願いいたします。 高橋 人口動向研究部長 国立社会保障・人口問題研究所の高橋です。これから資料に基づいて説明させていた だきますが、パワーポイントを使うため、ちょっと準備をさせていただきます。 この報告で用います資料は3つございまして、資料4−1、4−2、4−3でありま す。資料4−3がただいまからご説明申し上げますパワーポイントでお示しする資料で す。適宜説明の途中で資料編等参照していただくことになります。 それでは、将来人口推計の方法と平成9年推計の基本的な考え方についてご報告させ ていただきます。 国立社会保障・人口問題研究所は旧人口問題研究所以来、11回の人口推計を報告し ておりまして、ここでは将来人口推計はどのような枠組みでやっているのかというお話 をまずさせていただきます。 将来人口推計の方法としてはいくつかやり方がございます。 一つ、代表的なものは、過去の人口趨勢に数学的な指数関数をあてはめて推計する方 法があります。これは一般に総人口だけを推計するような場合に用いています。 2番目としては、年齢階級別の人口が年ごとに変化していきますから、その変化率を 用いて推計する方法がございます。一般にはコーホート変化率法と呼ばれています。 3番目としては、いわば人々の死亡、日本全体の人口に対しては、外国と日本の移動 、それらを加味したコーホート変動要因による推計方法、これを通常コーホート要因法 といいますが、この方法がございます。 資料編の1ページの図表1に、国連、アメリカ合衆国、フランス、イギリスの政府で 行った推計について簡単に書いてございますが、一般に政府等が行う推計に関しては、 このコーホート要因法という方法が用いられています。 この方法はどういうふうに行うのかといいますと、まず、ここではt年とありますが 、最初のスタート時点の男女年齢別人口がございまして、それに対して、一つは、年齢 別の国際移動率を掛け、さらにもう一つ、年齢別に生き残る、生存率を用いて、1年先 の1歳以上の人口を推計します。そして、それと同時にt年の人口と、計算されたt+ 1年の人口を用いて、それに出生率を掛け合わせて出生数を推計します。そして、その 出生数を男女の出生性比によって、男の子と女の子に分け、0歳の人口を推計する。こ の手法を毎年毎年繰り返し前進させていくことによって人口推計というのは成り立って おります。 したがいまして、将来人口推計をするための前提条件としては、まず、前提となるの が、(1)男女年齢別各歳の基準人口、これは国勢調査から得られる人口によって用います 。そして(2)将来の男女年齢別生残率、つまり、将来の死亡率によってどのように人々が 年齢別に生き残っていくかということを仮定しなければなりません。(3)将来の男女年齢 別国際純移動率、これから年齢別に男女は国際間の移動をどのようにしていくのかとい う前提が必要になってきます。(4)将来の女子の年齢別出生率、将来、年齢別の女性がど のぐらいの子どもを産むのか。そして(5)将来の出生児の男女性比、この前提が必要にな るわけです。 その前提がありますと、この計算がすべて可能になるというのがコーホート要因法の 概念です。 その中でも、これまでの前回推計、あるいは前々回の推計においても一番大きな議論 の中心になっているのが出生率仮定の考え方であります。その前提として、出生率をど のように考えるのかということをまず説明させていただきます。 出生率の人口学的な概念として、合計特殊出生率というものがございます。英語では Total Fertility Rate 略してTFRとも記述いたします。この出生率ですが、 人口学的に定義をしますと、難しい数式が出てくるんですが、母親の年齢別の出生数 を分子にして、年齢別の女性の人口を分母にして割り算をします。これを年齢について 足し上げたものが合計特殊出生率。それを言葉で書き表すなら、合計特殊出生率とは、 母親の年齢別出生数を女性の人口で割って、それを合計したものであるということにな ります。 これが実際に1975年に観察された母親の年齢別出生数で、この当時は2 6歳のところが一番赤ちゃんが生まれていて、このような凸型のカーブをしています。 これが1975年時点の年齢別の人口です。ちょうど団塊の世代が20代後半にいま したから、そこが飛び抜けて多いという図柄になっております。 先ほどの出生数を年齢別人口で割ったもの、これが年齢別出生率で、このように25 歳を中心とした凸型のカーブを描いており、これを年齢について足し上げたもの、つま り、この面積が合計特殊出生率になります。 この足し上げたものを時系列で並べてみますと、このような経緯をたどっておりまし て、ちょうど1973年の2.1を超える水準から1974年に2.1を割り込んで、 その後、ゆるやかな減少傾向を描いて1980年代の半ばにきてやや持ち直しかけたん ですが、その後の出生率は下方へと趨勢が動いてきているということになります。 合計特殊出生率、先ほどこの式でご説明したんですが、日本のように出産のほとんど がいわば婚姻内で起きる社会では、この式をやや変形させまして、結婚した女性を分母 と分子に同じものを入れますと、2つの構成要素を合計特殊出生率から見てとることが できます。1つは、結婚した女性が赤ちゃんをどれぐらい産んでいるかという発生率、 右側は女性の中で何人が結婚しているかという構成割合の2つの要素によって出生率が 成り立っているということです。 つまり、合計特殊出生率というのは、結婚した人の出生率、有配偶出生率と女性の有 配偶率、結婚している人のパーセンテージを掛け合わせたものから成り立っているとい うことです。 先ほどの式が成り立つためには、日本でどれぐらいの出産が結婚の中から起きている かということを確認しなければなりませんが、非嫡出子、つまり法的な婚姻関係のない 女性から生まれてくる赤ちゃんのパーセンテージというのは、現在のところ、99年の データですけれども、日本では1.6%、つまり、出産の98.4%はいまのところ結 婚の中から起きている。やや増加傾向にありますけれども、それは極めて少ないパーセ ンテージである。したがって、日本の場合は、結婚の中の出生行動と、それから結婚の 動向という2つの要因が極めて重要になってくるということであります。 つまり、合計特殊出生率の水準を決めるということは、結婚した女性の年齢別出生率 と、女性の年齢別有配偶率、裏返せば、未婚率。この2つの動きが今後の出生率を見通 す際に重要な意味をもっているということになります。 さらにもう一つ出生率を考える上で大きな問題があります。すなわち、2つの出生率 の問題です。1つは(1)期間合計特殊出生率と呼ばれる出生率、もう一つは(2)コーホー ト合計特殊出生率と呼ばれる出生率です。前者の(1)のほうは、人口動態統計で観察され ています年次別の合計特殊出生率のことです。(2)のコーホート合計特殊出生率というの は、世代別にその世代の人々が年齢の経過とともにどれぐらい最終的に産んだかという 出生率です。 これは先ほどの期間合計特殊出生率の計算のベースになる期間別にみた年齢別出生率 でありまして、奥側が1950年前後の年齢別出生率、そして一番手前が2000年の 年齢別出生率でありまして、このように輪切りにして観察したものが期間の出生率とい うことになります。 これを足し上げたものが先ほど見た、いわゆる合計特殊出生率の年次推移というもの であります。 期間合計特殊出生率というのは、ある年次に観察された年齢別出生率によって算定さ れている指標である。つまりそれは人口動態統計による指標であるということです。そ してもう一つの条件としては、実際、この指標というのは生まれた年が異なる女性の年 齢別出生率を合計した指標であるということです。そうして、そのことが意味すること は、仮にある年の女性の年齢別出生率が1人の女性の結婚・出産行動であると見做した 、いわば合成した出生率指標であるという性質を持っています。 しかしながら、結婚・出産行動の単位というのは、どういうふうに起きているのかと いうと、世代別に異なります。例えば、1980年代、日本では女性の労働力率が高ま って、就業行動を続ける女性が増えたわけですが、そういう時代に結婚・出産行動を迎 えた世代と、さらに1950年代、60年代、女性が外で働く機会の少なかった時代に 結婚・出産した人々では、出産行動が世代別に相当異なっています。したがって、同一 年に生まれた出生集団の出生率を経時的に観察する必要がある。人口予測では基本的に こうした世代別の出生率、出生コーホート別の出生率を見通して、生涯にわたる出生率 を予測し、人口推計に用いています。 コーホートの出生率にはどういうものがあるかといいますと、それを年齢別にばらし たコーホート年齢別出生率と、それを年齢について足し上げたコーホート合計特殊出生 率がございます。 これがコーホートに組み替えたコーホート年齢別出生率です。向こうの軸に生まれ年 が入っており、生まれ年別に出生率が年齢経過とともにどのように子どもを産んだかと いうことを見ることができます。もちろん、最近の若いコーホートに関してはまだ出産 の途上にありますから、途中で途切れる形になっています。 これをある特定のコーホートについて例示的に示したもので、ここでは1950年出 生コーホートに関して出生率が示してあります。ここで特に注目していただきたいのは 、1965年生まれのコーホートです。1965年生まれコーホートは、現在35歳に なっておりまして、実はこのコーホートは既に1.46生んでおります。1965年コ ーホートというのは、実は1980年代、90年代にいわゆる晩婚化の先頭を走った集 団でありまして、極めて未婚化が進んだ世代です。しかしながら、その人々は既に35 歳の時点で1.46生んでいます。現在の合計特殊出生率の水準は1.34、あるいは 2000年のデータでは1.35ですけれども、それよりも相当高い水準でこの世代は 生んできている。したがいまして、ここには年次別に観察するものと、実際に世代が経 験したものとの間にはギャップが存在しているということになります。したがってコー ホートで観察するほうがより安定的であるというのが人口研究ではいわば一般的な見方 です。 期間合計特殊出生率とコーホート合計特殊出生率、この2つの出生率の関係について もう少し確認をしておきたいと思います。 期間の年次別の合計特殊出生率には、見掛け上の変動が伴うという性質がございます 。コーホート合計特殊出生率、つまり、1人の女性が一生の間に生む子どもの数が一定 であったとしても、結婚や出産のタイミングが移行している間というのは、期間別合計 特殊出生率はいったん減少して、タイミングの移行が止まると反転する性質があります 。 これを簡単な模型で示したものが年次別出生率の変動ということです。ここでは、第 1コーホートから、第2コーホート、第3コーホートというように、コーホート出生率 を示しています。第1コーホートでは、最初の期間に1人の子どもを生み、次の期間に 2人目の子を生み、3番目、4番目、5番目の期間には子どもを生まない。したがって 、第1コーホートに関して、最終的に生んだ子どもの数は2人ということになります。 第2コーホートも同じような出産行動をして最終的には2人生む。これを年次で見てい きますと、ここまでは、年次別の出生率は変わりません。 ところが、この世代から結婚行動、出産行動が変わって、結婚して子どもを生む時期 が1単位上の方向にずれたといたします。そうしますと、合計特殊出生率はここでは1 に低下しています。その次の世代も1単位ずれ、その次の世代も1単位ずれるとします 。それが続きますと、しばらくの間、合計特殊出生率が極めて低い数字になります。そ して、この移動が終わったあとからはまた2という出生率に回復するということになり ます。このように、年次別にはいったん下がるんですが、世代別には全く変化がない、 というメカニズムを持っています。これが年次別出生率の見掛け上の変動のメカニズム であります。 しかしながら、実際の世代別の出生率もこのように全く変化をしていないわけではな くて、こちらも日本の場合はだいぶ下がってきておりますが、実際に観察される年齢別 出生率にはこうしたメカニズムが相当反映されているんだということをここではご理解 しておいていただきたいと思います。 次に、出生率の推定そのものをどのように人口予測では行っているかということです 。 私どもの人口予測では、コーホートの年齢別出生率、あるいはコーホート合計特殊 出生率の推定を行いますが、それを推定するために、これは統計的な手法ですが、一般 化対数ガンマモデルという、いくつかのパラメータを用いて年齢別出生率を推定してい ます。具体的に用いているのはこの数式です。 将来の出生率を推計するためには、将来のパラメータ、先ほどのモデルを動かすため にパラメータの推定というものが必要になります。そのパラメータの推定に関しては、 データが得られる、例えば、40歳までに既に子どもを生んでいるという世代について は、出産過程のほとんどの情報は既に得られていますから、パラメータを統計的に推定 することは可能です。十分な情報が得られない若い世代については、例えば、前回推計 では1980年コーホートに関して推定を行っていますが、それらについては、目標コーホ ートというものを定めて、その世代についての結婚の、あるいは出産のプロセスに関し て、その過程を分析してパラメータの推定をして先ほどのモデルに投入して、将来の出 生率を推定しております。 これが実際に前回推計で用いた、先ほどのモデルにあてはめたデータです。これは、 1960年生まれコーホートに関しての年齢別出生率をモデルによって推定したもので す。1960年出生コーホートに関しては、年齢でいいますと、35歳までは出生率の 情報が出生順位別に既にわかっておりますので、このデータを用いて、その残りの出生 率を推定してやっているということです。 これは1970年生まれコーホートについてのものですが、前回推計時点においては 、1970年生まれの人々については25歳までしか情報がありません。そこから先、 この出生率がどのように表れるかに関しては、先ほどいいましたように、1980年出 生コーホートに関して分析を行い、その人々の結婚・出産行動に関して推定をして、そ こから得られたものとつなぎ合わせる形で将来値が予測されています。 したがいまして、目標コーホートの仮定設定ということが人口予測では極めて重要に なります。平成9年推計では、1980年出生コーホートをその目標コーホートとして おります。 ×ばつ印が集まっていると思いますが、これは戦前から団塊の世代ま でのところに該当しますが、その人々の初婚年齢と生涯未婚率を計算しました。その結 果得られた情報というのは、それらの世代では、生涯未婚率に関しては4%少々、平均 初婚年齢については24.2歳で推移してきた。ところが、団塊の世代以降の世代にな ると、生涯未婚率を徐々に上昇させながら、平均初婚年齢も上昇するという結果が前回 得られました。そして、それは1960年出生コーホートまでデータとして得られてい ます。そして、その後5年間に関しては、先ほどのガンマモデルを使って推定を行うと 、ほぼこうした右肩上がりに、生涯未婚率を上げながら、平均初婚年齢を上昇するとい う、いわば世代別の変動が観察されたわけです。 これをもとにして将来に延長していく。そして、別途、1980年出生コーホートに 関して、結婚の変動のパターンをさまざまあてはめまして、おおよそ1980年出生世 代がとり得る生涯未婚率と平均初婚年齢の関係をシミュレーションで想定しております 。 そうして、前回推計の中位仮定としては、この交点の部分を中位仮定として採用して 、結婚年齢に関しては27.4歳、生涯未婚率は13.8%というパラメータ値を得ま した。そして、人口推計では、高中低の3種類の仮定を持っていますので、低位推計に 関しては、東京都の大卒以上の人々の結婚年齢をパラメータとして採用して生涯未婚率 を推定しています。そして、高位仮定に関しては、1960年出生コーホートの生涯未 婚率と平均初婚年齢を用いて人口予測に使っております。 では、先ほどのように平均初婚年齢が定まり、その平均初婚年齢で結婚した人はいっ たいどれくらいの子どもを生むのかということが次のテーマになりますが、我々の研究 所で行っている出生動向基本調査から、過去数回にわたるデータを用いて、初婚年齢別 の生涯出生数、平均子ども数、最終的に生みあげる子どもの数をモデル化して、平均初 婚年齢の動きと子どもの数を連動させたモデルをつくりあげて、結婚した女性が生む子 ども数を推定しています。 そうして、1980年出生世代に関しては、中位推計においては、最終的に夫婦が生 む子どもの数は1.96人という推定を行っております。 したがいまして、将来の出生率動向を想定するに非常に重要なものとしては、結婚し た女性がどのように子どもを生んでいるかという夫婦出生行動の変化、これをどう見る かということが大きなテーマです。そして、もう一つは、結婚行動がどのように変化し ていって、生涯未婚率がどう変化し、平均初婚年齢がどう変化するのかということが重 要になって参ります。 結婚の変化については、結婚の反体側、未婚率の動きですが、このように1970年 代、20代後半の女性の平均未婚率は2割前後でしたが、それが現在既に54%になっ ている。30代前半も上昇中であるという変化があります。 女性の年齢別初婚率、結婚がどこで起こっているかということに関しては、この図の ように、70年代から90年代にかけて、大きな低下が見られ、25歳以上では、逆に 上昇傾向がみられる。つまり、結婚の発生が20代前半から20代後半、30代へと大 きく変化した。これはただ単に結婚が減少するのではなくて、20代後半、30代で結 婚が起きているという現象を示しています。 夫婦の生む子どもの数ですが、前回推計の時点においては、これはあまり顕著ではあ りませんでしたけれども、実は1985年、ちょうどバブル経済が始まった頃からです けれども、これ以降の夫婦の子どもの生み方がやや減少傾向にある。いままでは、人口 予測においては、夫婦の生む子どもの数というのは、出産年齢が上昇する効果によって 落ちているという想定を行っていましたが、新たな情報を加味するなら、結婚した女性 の出産行動もやや低下現象にあるということが近年の特徴になっています。 さて、人口推計全体に関してもう一度確認しておきますと、まず、(1)男女年齢別各歳 の基準人口が必要である。これは国勢調査人口によって得られる。そして、2番目とし ては、(4)将来の女子の年齢別出生率、これをどう組み立てるか。これに関しては、いま 述べたような手法によって前回推計を行っております。 3番目としては、将来の男女年齢別生残率。将来の寿命がどうなるのかということで す。将来の寿命に関しては、先ほど、生命表の報告がございましたが、こちらが女性、 こちらが男性ですが、男女とも平均寿命は右肩上がりに上昇中である。ただし、年次に よっては、先ほどございましたように、感染症の影響、例えば、インフルエンザの流行 等によって比較的がたがたしながら右肩上がりに上がっているという状況です。 次に、将来の男女の年齢別国際純移動率をどう見込むかということが前提となります 。 これは日本人と外国人別に見た入国超過数であります。1960年から2000年ま でございますが、出国と入国の差ですが、これも比較的、社会経済的な影響を受けて変 動しやすい性質を持っています。例えば、バブル経済が崩壊しはじめるまでは、例えば 、外国人の入国超過が多かったわけですが、バブル経済が終わると同時に若干減少して しまう。そしてまた若干増えてきたんですけれども、また減って、2000年はまた増 えている、というふうに入国超過数自体は波があります。したがって、これをどのよう に将来推計に見込むかというのはなかなか困難な問題なのですけれども、前回推計にお いては、過去の趨勢に関して、これを一定として仮定するというやり方で人口予測を行 っております。日本人に関しても、年次によって動きがございます。 最後は、将来の出生児の男女性比です。男女性比に関しては、ご覧いただくとわかる ように、105から106の間で推移しております。男女出生性比に関しては、これも さまざまな影響があるといわれていますが、いまのところ、近年に関してみますと、お よそ105.6ぐらい、女性100に対して男性105.6ぐらいで105から106 の間におさまっているというのが現状でございます。 将来の出生率の見通しの論点に関してが、この人口推計に関する検討では非常に重要 になってきますが、目標コーホートの考え方をどうするかということが基本的に重要に なってきます。 一つは、結婚行動の変化の見通しに関してどのように評価を下すか。晩婚化、未婚化 はいつまで続くのかという見通しであります。晩婚化自体に関しては、以前ほどのスピ ードでは未婚化は進んでいなくて、最近では若干落ちぎみではありますけども、これが いったい今後どのような展望が描けるのかということ。2つ目は、未婚化の水準はどの ぐらいまで達するかという、20代後半女性の未婚率が54%に達しましたが、これが 60%になるのか、70%を超えるのか。あるいはもう一つは、生涯未婚率はいったい どのくらいまで増えるのか。前回推計では、中位推計において13.8%を仮定しまし たが、この数字がもっと高まるのかという問題。あるいは、日本では欧米のように同棲 や婚外子が若干上昇傾向にありますけれども、こうした同棲や婚外子というのは今後増 えるのかどうか。これに関する見解が、目標コーホートの仮定設定に関しては重要にな ってきます。 もう一つは、夫婦の出生行動の変化の見通しでありまして、子どものいない夫婦が今 後増えるのか。私どもの出生動向基本調査では、結婚して就業を継続する女性の中では 、結婚5年未満の子どものいないカップルのパーセンテージは相当高くなってきており ますけども、これが一生にわたってそういうふうになっていくのか。あるいは、もう一 つは、実際に結婚した人々は、かつては結婚すれば夫婦は子ども2人を持つという図式 が見られたわけですが、これは果たして安定的なのか。それとも、結婚した夫婦の子ど もの数は減少していくのか。これに関する見通しが論点として重要になってきます。 さらにもう一つは、社会経済的環境と出産行動との関係であります。社会経済環境と いうのは、高度経済成長という時期、男女の性別役割分業が明確にあって、そうした時 代から低成長期という就業する女性が増えてきた時代への移行というものがございまし た。それがいわば、結婚・出産行動にどのように影響を与えるのか。 あるいは、バブル経済の崩壊後の経済環境というものが、結婚・出産行動に影響を与 えているのか。一つは、いわゆる家族形成の変化それ自体、いわゆる高度経済成長期に は、日本の近代家族というものが成立したというふうに家族社会学者は指摘しています が、近代家族というものがどのような形で変容していくのか。それが、結婚や出産行動 に対してどのような影響を与えるのか。 さらに、先ほど言いました、高度経済成長期から低成長期になるにつれ、いわばサー ビス産業化するなかで、女性の働き方が大きく変化をしてくる。女性の雇用労働力化が 起きた。そのことが結婚・出産行動との間でどのような関係をもって今後の出生行動を 考えたらいいのか。 あるいは、これは山田先生がおっしゃったことですが、パラサイト・シングル化とい う状況がもう一方であって、いわばポスト青年期の出現というものが結婚・出産行動に 影響を与えているのではないかということ。これをどう考えるか。 あるいは、結婚・出産の機会費用が上昇してきている。これは主として経済学者が指 摘しているところですが、これが今後の結婚・出産行動にどのように影響を与えるか。 あるいは、少子化対策という形でさまざまな対策が打たれております。例えば、育児 休業制度であるとか、出産と子育てにやさしい社会環境づくり、保育所等の待機児童を なくすような施策が行われています。こうした効果が今後の結婚・出産行動にどのよう な効果をもたらすのか。 あるいは、もう一方、別な観点からみますと、いわば、自然環境などの変化がある。 一つは、不妊の動向というのがあります。不妊症は増えているという指摘がありますし 、さらに、結婚・出産年齢の上昇に伴って子宮内膜症等の事例が増えてきて、それが不 妊の増加につながっているという指摘もあります。こうしたことが今後の結婚・出産年 齢が上がるなかで、結婚・出産行動にどのような影響を及ぼすのか。 あるいは、生殖医療全般の変化ということもございますので、そうした生殖環境その ものが、あるいはそれを含めて、例えば、女性化ということもいわれていますが、そう した生殖環境全体が変化するなかで、結婚・出産行動はどのような影響を受けていくの か。 こうした全体像の中で今後の日本の結婚・出産行動に関して考えて、整理していかな ければならない状況に立っております。 パワーポイントを使った説明はここまででございます。あと若干補足的に資料のほう から説明させていただきます。 資料4−1の最後の7ページですが、平成9年1月推計がその後の実績との関係でど のようになっているのかということを簡単に書いてございます。 併せて、資料4−2、資料編の19ページを開いていただければと思います。 総人口に関して、前回、平成9年推計と、その後の総務庁推計、あるいは2000年 の1%推計の結果との関連でどうなっているのかといいますと、図表36に実際の数値 が書いてありますが、おおよそ総人口レベルに関しては人口予測に沿った数値で推移し ている、1999年の10月1日時点での人口に関しては約2万2千人ほど人口推計の ほうが下回っていますが、おおよそ即している。1%抽出結果との差は2万8千程度で あるということです。 資料編の20ページをご覧いただきますと、出生数の数字がございます。出生数に関 しては、いまのところ、中位推計と低位推計の間を経由しながら推移しているというの が現状でございます。 21ページに合計特殊出生率の動きがございますが、合計特殊出生率に関しては、年 次的にブレがございますけれども、いまのところ中位推計と低位推計の間にあるという 現状でございます。 22ページは死亡数の動向がございます。99年までに関しては、人口予測と人口動 態統計の結果が並行して、即して動いていますが、2000年に関しては、先ほどご説 明がございましたように、2000年はインフルエンザ流行等がなかった関係上、死亡 数が減少したということで若干ズレがございます。 23ページは平均寿命ですが、これも同様な理由から平均寿命に関しては、特に女性 のほうで将来予測との関係でみると若干差がございます。 このような推移をたどりつつ、いまのところ平成9年1月推計と現実のデータは動い ているというのが現状でございます。 私からの説明は以上です。 廣松 部会長 どうもありがとうございました。将来人口推計の方法、平成9年の推計の際の基本的 な考え方、そして現時点での実績との関係に関して網羅的にご説明をいただきました。 同時にこの部会で検討すべき点に関してもご説明いただきました。少し時間をとって、 いまのご説明に対して、ご質問、ご意見をいただければと思います。 高橋 委員 これは質問ではなくて、ちょっと先走った話なんですが、常識的な話で、専門的な話 ではありませんが、私どもでも経済予測をはじめとしていろいろ予測をするんですが、 推計も行っていますが、何年か経ってその予測が当たっているとか外れているとかやる ときは、基本的には、過去にやった予測にどういう問題があったのかというところから 議論を始めるんですね。で、前回推計からすると中位と低位のところに出生数とか合計 特殊出生率がいっているようでございまして、資料の6ページの論点のところにも、未 婚率の動向と夫婦の関係と出生率の動向が問題だ、というふうに書いてあるんですが、 次回で結構ですが、前回予測のときは、そのへんはこういうふうにやったんだけど、今 回は若干外れた部分も織り込んでこんなふうにやりたいというふうなペーパーを是非つ くっていただきたいなというのが要望でございます。いくつか指摘したいことはあるん ですけど、それをいただいてからのほうがいいと思いますので、是非要望しておきます 。 高橋 人口動向研究部長 次回の部会において資料を提出させていただきます。 廣松 部会長 よろしくお願いします。ほかにご意見等ございますか。 山田 委員 2点お伺いしたいんですけれども、まず1つは、技術的というか、統計でどうなって いるかというのが知りたいのが一点です。報道によると、海外で日本人が、例えばハワ イ等で生んで戻ってきて二重国籍を取得する、もちろん数的には少ないんでしょうけれ ども、そういう子どもはどうカウントされて、国籍を選択した場合に、二重国籍になり ますね、アメリカなりカナダなりと。そのときに国籍を選択したとたんに減ったり増え たりするのか、というのが第1点です。 第2点は、既婚女性の出生率といった場合に、これほど離婚が増えている時代ですの で、これから離婚する人や離婚した人の出生率も、既婚女性の出生率という中に含まれ ているのか、それはやはり別なのかという点についてお聞きしたいと思います。 高橋 人口動向研究部長 まず第1点目のお話、海外で出産するケースに関して、この推計ではどのように扱う かということですが、人口予測というのは、日本国内における、外国人、日本人を含め 出生率を予測して人口推計を行っています。ですから、日本人がハワイに行って出産を した場合は、人口推計にどう反映されるかといいますと、国際移動という形で0歳人口 として戻ってきて、そこで反映されます。 2番目の、離婚のお話ですけども、離婚率が増加をしているということですが、それ を推計ではどう反映させるかといいますと、前回推計では離婚の影響度合を効果係数と して別途算定して、それをモデルの中で組み込む形で離婚の効果を導入しております。 それともう一つ、離婚に関しては、実は離婚率は高いんですけども、再婚率も同時に 高くなっているんですね。ですから、純の離婚、つまり、離婚をしてずっとそれで出産 行動に再加入しないというパーセンテージというのは、あるんですけども、相当多くな っているということではないというのが一つ。それからもう一つは、離婚した人の平均 出生率というのは、人口動態統計の社会経済面調査の特殊報告書で出ているんですが、 その人々の平均出生率も1.6前後の数値があったと思いますけども、次回そうしたデ ータも整理してご提示したいと思います。 廣松 部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 津谷 委員 人口の将来推計に大変重要であるとおっしゃいました前回の将来推計にお使いになっ ている1980年の出生コーホートが目標コーホートだと。そのときに高位、中位、低 位というときに、中位はよくわかったんですが、低位仮定が東京都の大卒以上の女子の 平均初婚年齢と生涯未婚率、そして、高位仮定が1960年出生コーホートの同じく平 均初婚年齢と生涯未婚率となっているわけですが、低位と高位、どうしてこの2つを選 ばれたのかという理由を聞かせてください。 高橋 人口動向研究部長 前回推計における高位と低位の考え方ですが、低位の考え方としては、日本全体が最 も結婚行動が遅くて、生涯未婚率が最も高い状態になる。これは極限の状態だと思うん ですが、そういう結婚・出産行動になった場合を想定して低位というものを設定しまし た。それがその当時、結婚年齢、生涯未婚率が最も高かった東京都の大卒以上の女性の 人々のデータを採用しました。高位に関しては、最も安定して得られた事実のデータと しては、1960年出生世代がございましたので、それを高位の水準として採用したと いうのが前回の設定です。 廣松 部会長 ほかにございますでしょうか。これは単純な定義の問題ですが、例えば、今朝の新聞 に60歳の女性が子どもを生んだという記事が出ていましたが、合計特殊出生率の定義 は15歳〜49歳ということになっていますね。今回のようなケースは、どのような形 でその中入れることになっているのですか。 高橋 人口動向研究部長 合計特殊出生率の計算の仕方ですが、50歳以上に関しては、50歳以上の出生件数 は数件存在しますけれども、それに関しては49歳のところに繰り入れて、49歳の時 点の出生率をいわば調整して合計特殊出生率に組み入れてあります。 ちなみに、2000年の場合、50歳以上での出産は6件ございました。 7.閉 会 廣松 部会長 ほかに質問、ご意見ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。それ では予定しておりました時間になったようでございますので、本日はこれまでにさせて いただきたいと思います。 次回に関しましては、先ほどご説明がございましたし、また、質疑の中でも出て参り ましたが、国立社会保障・人口問題研究所から、次期の将来推計人口の基本的考え方及 び、前回の推計の反省、といっていいでしょうか、も含めまして資料をご提出いただき 、それらに関してのご説明を受けたあと、議論を行いたいと思います。 次回につきましては、委員の方々との日程調整の上であらためてご連絡をいただきま す。ほかに、特に本日ご発言ございますでしょうか。よろしいですか。 それでは長時間どうもありがとうございました。本日はこれで終了したいと思います 。どうもありがとうございました。 〜 以 上 〜 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 地域政策係 代)03−5253−1111 内線7785 ダ)03−3595−2160