05/11/08 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会第19回議事録 第19回厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会 日時:平成17年11月8日(火)9:00〜11:00 場所:虎ノ門パストラル 鳳凰の間西(新館1階) ○しろまる出席委員 石井みどり委員、加賀谷淳子委員、加藤尚武委員、加藤陸美委員、菊田信子委員、 木村隆次委員、坂本雅子委員、笹月健彦委員、澁谷いづみ委員、新道幸惠委員、 高橋清久委員、高橋滋委員、多田羅浩三委員、田中平三委員、土屋隆委員、 富永?ハ民委員、中村丁次委員、久道茂委員、松本和夫委員、村田昌子委員、 渡邊昌委員(21名) ○しろまる参考人 佐藤誠記(日本たばこ産業株式会社) ピーター・ニクソン(フィリップモリスジャパン株式会社) 矢野涼子(フィリップモリスジャパン株式会社) ○しろまる厚生労働省出席 (健康局)中島健康局長、岡島審議官、中島参事官、 矢島生活習慣病対策室長、北地域保健室長、野村保健指導室長 ○しろまる次第 I 開会 II 議題 (1)医療制度構造改革試案について (2)糖尿病予防のための戦略研究について (3)たばこ対策について (1) 日本たばこ産業株式会社及びフィリップ モリス ジャパン株式会社からの 意見陳述 (2)質疑応答 ※(注記) フィリップ モリス ジャパン株式会社の回答は通訳を通じたものです。 (4)その他 III 閉会 矢島室長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第19回厚生科学審議会地域保健健康増 進栄養部会を開催させていただきます。 まず本日の出欠状況ですが、定員定数、委員定数、25名でございます。現在20名の委 員の御出席を得ております。1名おくれておりますが、過半数に達しておりますので会 議は成立しておりますことをまず御報告いたします。 次に配付資料の確認をお願いいたします。 最初に議事次第がございます。次に座席表。委員名簿のほかに、資料1としまして、 医療制度構造改革試案。資料2としまして、糖尿病予防のための戦略研究。資料3−1 としまして、たばこ・喫煙に関する日本たばこ産業株式会社の見解等。資料3−2とし まして、フィリップモリスは包括的たばこ規制を支持します、でございます。なお、参 考資料としまして、今後の生活習慣病対策の推進について(中間取りまとめ)を配付し ております。もし不足・落丁等がありましたら事務局までお申しつけいただきますよう お願いいたします。 それでは、以後、部会運営については部会長にお願いいたします。よろしくお願いし ます。 久道部会長 おはようございます。それでは議事を進めたいと思います。まず議題1ですが、医療 制度構造改革試案について、中島参事官よりお願いいたします。 中島参事官 おはようございます。中島でございます。私からは医療制度構造改革試案について説 明申し上げます。 先月の19日に取りまとめさせていただいたものでございます。この試案は、広く国民 の議論に供するため、厚生労働省として今後の医療制度構造改革の考え方について取り まとめさせていただいたものでございます。広く各界での御議論をいただいて、平成17 年中に成案を得、所要の法律改正を次期通常国会に提出させていただきたいということ でございます。そういう観点から、本日私どもの試案を説明申し上げ、御意見をいただ ければと思っております。 本冊子の16ページをお開けいただけますでしょうか。この試案の基本的な骨格を目次 として掲載させていただいております。第2、試案というところでIでございますが、 予防重視と医療の質の向上・効率化のための新たな取り組みということで、予防と患者 本位の医療の提供体制の実現ということで、今後、国民に対して提供すべき保健医療サ ービスの方向性について書かせていただいております。 IIで、医療費適正化のための総合的な対策の推進ということで、ここは大きく2つに 分かれてございます。一つが、中長期的な医療費の適正化ということで、生活習慣病予 防、さらには医療提供体制の改革を踏まえて、中長期的に医療費を適正化していく必要 性を書かせていただいております。 (2)公的保険給付の内容・範囲の見直しにつきましては、短期的な効果が期待され る医療費適正化方策について考え方をお示ししているところでございます。 17ページ、IIIとして、医療費適正化と並ぶ大きな課題でございます、医療保険者の 再編統合のあり方ということで、都道府県単位を軸としていく形で再編統合等を進めて いくべきではないか。 IV、そうした中で、新たな高齢者医療制度というものを創設していくということの枠 組みを示させていただいております。 Vで、診療報酬体系のあり方の見直しという形で考え方を整理させていただいており ます。 当部会に関連しますのは、Iのところの(1)、生活習慣病予防のための本格的な取 り組みというところが、主として本部会に密接に関連する部分であろうと思っておりま す。 21ページからが生活習慣病予防のための本格的な取り組みということで書かせていた だいておりますが、御参考までにお配りしております、本部会で9月15日におまとめい ただいた中間取りまとめという冊子がございます。これの4枚目のところに、本部会と して中間取りまとめをしていただいたポイントが書いてございます。生活習慣病対策に ついて、厚生労働省の試案においては、本部会で御議論いただいた中間取りまとめの方 向性に沿って私どもの試案を作成させていただいたというつもりでございます。 復習までに申し上げますと、本部会として中間取りまとめといただいたポイントは5 点かと思っております。 一つが、メタボリックシンドロームの概念を導入した対策を推進していくべきだ。 2つ目が、健診、保健指導の重点化と効率化を図っていくべきだ。 3つ目が、医療保険者による保健事業の取り組み強化を図るべきだ。 4つ目が、都道府県の総合調整機能の発揮と、都道府県健康増進計画の内容充実を図 るべきだ。 5つ目に、国は科学的根拠に基づいた効果的プログラムの開発・普及に一層取り組む べきだ。 という形でメタボリックシンドロームの概念を導入し、ポピュレーションアプローチ とともに健診、保健指導の重点化と効率化も図るべきだ。そして、関係者の役割とし て、医療保険者の役割、都道府県の役割、国の役割といった形で整理していただいたも のという形で理解しているところでございます。 こうしたお示しいただいた考え方に即しまして、私どもの改革試案の21ページ以下、 生活習慣病対策の今後のあり方について試案をまとめさせていただいたということでご ざいます。 21ページの(1)のところでございます。糖尿病・高血圧症・高脂血症の予防に着目し た健診及び保健指導の充実ということでございます。いわゆるメタボリックシンドロー ムという概念を念頭に置いてございます。ただ、もう少し言い方があるのではないかと いうことで、本部会の中間取りまとめでも呼称については検討すべきということになっ ておりますが、今のところどういうふうに読み換えたらいいのかということがあります ので、ここでは糖尿病・高血圧症・高脂血症という形で書かせていただいております。 近年我が国では中高年の男性を中心に肥満者の割合が増加傾向にある。肥満者の多く がこうした糖尿病等の危険因子を複数あわせ持ち、その危険因子が重なるほど心疾患や 脳血管疾患という重症疾患を発症する危険が増大していく。 これらの疾病を予防するには、一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後に薬という 形で御議論いただきましたが、運動習慣の定着、バランスのとれた食生活など、生活習 慣の改善が効果的だ。 こうした効果をねらって健診、保健指導の充実を図る必要がある。 3つ目。具体的な方策として、国が示す基本方針のもとで県の健康増進計画で糖尿病 等の患者・予備群の減少率の目標や、その実現につながる内容の健診及び保健指導の実 施率の目標を設定し、これらの達成に向け、医療保険者、都道府県、市町村等の具体的 な役割分担を明確にし、連携の促進を図る。特に国保及び被用者保険のいわゆる医療保 険者においては、保健事業の本格的な実施を図るということでございまして、健診、保 健指導、メタボリックシンドロームに着目した健診、保健指導の実施義務というものを 医療保険者に課すという方向でございます。 4つ目。健診及び保健指導の実施については、適切な主体への外部委託を含め、民間 活力を生かし、効果的で効率的なものとする必要がある。また、保健指導については、 個々の対象者の生活習慣等を理解した上で、効果的な支援を行うものでなければならな いことから、国においては早急に保健指導プログラムの標準化を行うとともに、都道府 県においては保健指導の質の向上を図るための研修事業等の取り組みを行うということ で、保健師、管理栄養士等の研修をしっかり担っていただきたいということを書いてご ざいます。 (2)でございます。いわゆる普及啓発等の充実ということでございます。1つ目。運 動、食事、禁煙といった健全な生活習慣の定着に向け、現在、富永先生をチーフに作業 チームで進めていただいております健康日本21の中間評価結果を踏まえた取り組みを充 実・強化する。 都道府県健康増進計画において、運動、食生活、喫煙等に関する目標を設定し、市町 村を中心に積極的に普及啓発事業を展開していただく。たばこに起因して医療費が増大 することを勘案し、たばこ対策についての取り組みを強化するということで、本部会で もお触れいただいた方向性を明記しているところでございます。 (3)ということで、仮称ですが、健やか生活習慣国民運動推進会議の設置ということ で、生活習慣予防、長期的には介護予防といったものを国民運動として展開していくこ とを目指し、推進会議を設置したらどうかということを書かせているところでございま す。 24ページでございます。こうした生活習慣対策の方向性に沿って、(1)中長期的な 医療費の適正化ということで、医療費の適正化に取り組む仕組み、すなわち、都道府県 に医療費適正化計画を策定していただくということではいかがかということでございま す。 国は都道府県医療費適正化計画の策定に資するため、次の事項を示す。 まず一つ、政策目標について都道府県が参酌すべき標準。 2つ目、関係当事者の役割。 3つ目、こうした政策目標の実現効果としての医療費の見通しということでございま す。 2015年度における医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標。全国目標として は、糖尿病等の患者・予備群の減少率ということで、2008年と比べて2015年には25%減 少させることを目標とすべきではないか。医療提供体制の方では、平均在院日数を短縮 していく。長野県と全国平均との差を半分に短縮していくというようなことでございま す。 こうしたメタボリックシンドロームの患者・予備群を減少させていくための取り組み レベルの目標として、糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導の実施率も医療費適 正化計画の中に書いていただくということでございます。 25ページでございます。国が都道府県に対して医療費適正化計画において設定してい ただく政策目標の参酌標準については、3計画(都道府県の健康増進計画、都道府県の 地域医療計画、都道府県の介護事業支援計画)に関して国が示す基本方針との整合性を 確保するということでございます。 3つ目、医療費適正化関係についての生活習慣予防の部分について、糖尿病等の予防 対策に関する政策目標については、健診、保健指導については医療保険者に義務づけを するということなので、主な実施主体となっていく。また、都道府県においても、今後 一層積極的な役割を担うこととし、医療保険者への指導、助言、保険者協議会での関係 者間の調整、市町村が行っていただく普及啓発活動の支援等を行っていただくというこ とを書いてございます。 25ページの(2)のところですが、医療保険者による保健事業の本格実施ということで、 40歳以上の被保険者及び被扶養者を対象とする、糖尿病等の予防に着目した健診及び保 健指導の事業を計画的に行うことを義務づける。あわせて、実施結果に関するデータ管 理を義務づけるということでございます。国は、県の健康増進計画に関する基本方針と 整合性のとれた糖尿病等に着目した健診、保健指導に関する基本指針を提示するという ふうに書かせていただいております。 3つ目。その際には保険者協議会の活用を図っていくということでございます。医療 保険者は40歳未満の者に対しても事業実施に努めていくものとするということでござい ます。 以上、私どもの医療制度構造改革試案の生活習慣病予防部分について説明申し上げま した。 久道部会長 どうもありがとうございます。ただいまの説明に何か御質問ございませんか。どう ぞ。 多田羅委員 25ページの、医療保険者による保健事業の本格実施の点でございますが、この場合、 特に40歳以上の被保険者及び被扶養者となっておりますが、被扶養者を対象とした健診 及び保健指導についての事業実施においてはどのようにお考えなんでしょうか。 中島参事官 いわゆる健診及び保健指導については、一つは健診が受けっぱなしになっているとい う問題、保健指導が徹底していないので行動変容に至っていない。かつ、健診及び保健 指導を受けておられる方もサラリーマン御本人はともかく、奥さんの部分がかなり受診 率が低いのではないかということでございます。そういう観点から、対象者の把握が市 町村と比べると簡単にできる。医療費適正化に向けた健診及び保健指導のインセンティ ブが働く。医療費データを含めたデータ管理といったものが一貫してできるという観点 から、医療保険者に健診及び保健指導をやっていただくということでございます。基本 的には保険料財源を活用していただいて、医療保険者の保健事業として、これまでおや りいただいた健診及び保健指導の取り組みを一層充実・強化していただくんだろうと思 っております。 ただ、26ページの上から2つ目の○しろまる、自営業者等の健診については、これまで市町村 が老人保健事業として実施してきていただいたという実態も踏まえまして、自営業者等 の健診を担っていただくのは基本的には市町村国保だと思っておりますので、市町村国 保等には公費を一定部分入れさせていただくということを考えているところでございま す。 多田羅委員 今までの老健法の概念からしますと、被用者は健康保険組合なりのところで考えられ ていたと思うのですが、被扶養者は老健法の負担で行われてきたというのが現実だと思 います。そこのところは変更ということでしょうか。それはもう、そう決定されている んでしょうか。 中島参事官 まずサラリーマン御本人については労働安全衛生法で事業者が健診を行うことが義務 づけられている。一方で、それぞれの被用者保険においても健診なり人間ドックをされ ているパターンも多いということでございます。被扶養者については健康保健法で努力 義務が課せられているということですので、やる気のある健保組合や政管健保あたりは 努力義務として保健事業を展開しておられる。しかし、必ずしも十分カバーされている わけではない。そこの部分を老健法が市町村が行う保健事業として実施するという形で 規定しておりますので、そこでやっていただいているということになります。しかし、 この改革試案の考え方では、本人については事業者健診が義務づけられているし、従来 から一定部分は医療保険で健診、保健指導をやっていたということで、最大の問題の被 扶養者の部分については、まさに健康保険法上きちっと医療保険者が被扶養者に対して も健診をしてくださいよという形で、ある意味では制度を変えるということになりま す。 多田羅委員 法律にも手をつけられるんですか。 中島参事官 今は努力義務になっておりますので、健保法及び国保法で実施義務という形で書いて いくことを検討しております。 笹月委員 同じところですが、25ページの(2)、40歳以上の健診、糖尿病等の予防のためにこれ を義務づけ、データの管理も義務づけるということで、例の糖尿病予防に関する戦略的 研究を実施しようとする人たちからは非常に熱い視線で期待されているわけです。実際 にこういうことが義務づけられると、非常に戦略的研究を勧める上で活用できるだろう ということなんですが、これは実施はいつからを考えておられるんでしょうか。 中島参事官 この医療制度構造改革試案についていつから実施するかということは、36ページに具 体的な施行時期について書かせていただいております。生活習慣病予防及び、それと整 合性をとった医療費適正化計画は平成20年4月からスタートできればいいなと思ってお ります。 高橋(清)委員 21ページの(1)生活習慣予防のための本格的な取り組み、その中で運動習慣とかバ ランスのとれた食生活ということがうたわれているわけですが、私は大事なところがば っさり落ちているような気がするんです。それは、ストレスとか休養とか睡眠とか、こ ういったものは視野に入れなくていいかどうか。高血圧は半分以上はストレスが原因に なっているんじゃないかと私は思いますし、1週間休養すると高血圧が治るというよう なこともあるし、糖尿病の患者さんでも最近は不眠を伴う人が多いとか、あるいは不眠 症の患者さんに糖尿病が発症しやすいというエビデンスが少しずつ出てきていますの で、その部分を入れなくていいかどうかということですね。 中島参事官 御指摘のとおりでございますが、メンタルヘルスの重要性については、本部会として の中間取りまとめをしていただいた際にも触れていただいている。かつ、34ページに別 添2として、健康日本21における代表目標項目という形で、9分野70項目の中から21の 代表目標項目を選んでいただいたわけです。その中に、睡眠による休養を十分とれてい ない人の減少という形で、メンタルヘルスについても代表項目の中に入れさせていただ いている。今後、都道府県健康増進計画の内容を充実させていただくという観点から は、睡眠の問題等々の重要性についても都道府県の健康増進計画にしっかり盛り込んで いただくように努めてまいりたいと思います。 坂本委員 今回の医療制度構造改革も、生活習慣病対策の中間取りまとめも、基本的には国の方 向性を県がきちっと責任を持っていくということが非常に強調された形になっていると 思うんですね。従来からの市町村国保の問題、介護保険の市町村の役割、健康づくりの 市町村の役割を、県がきちっと束ねて推進に関しての役割を果たすということが非常に 大きくなっていると思うんですね。そうであるならば、もう少し県の責任を明確にして もいいんじゃないかと思います。また、私は政令指定都市ですけれども、政令指定都市 は県と違う形で行政のシステムが成り立っておりますが、政令指定都市はどういう取り 扱いになるのかをお尋ねしたいと思います。 中島参事官 今後の医療費適正化の策定その他について、都道府県さらには政令指定都市がどのよ うになるのか、担当局にも聞いて後ほどお返事させていただきたいと思います。今の私 では明確にお答えすることが難しいです。 石井委員 今後の生活習慣病対策の推進についての中間取りまとめのときも発言させていただい たんですが、糖尿病、循環器病というのは歯周疾患との関連が深いということを発言し ましたが、そうしますと25ページの国保及び被用者保険の医療保険者に対しというとこ ろの、健診及び保健指導の事業に関しては、残念ながら歯周病に関しては労働安全衛生 法では職業起因疾病ということでのみの健診ということになっておりますので、また、 老健事業でも40、50、60、70の節目でしか扱わないということになっておりますので、 健診及び保健指導を義務づけるというところを、どう歯科保健対策を取り扱われるのか お教えいただきたいと思います。 中島参事官 本部会の中間取りまとめをしていただくときにも歯周疾患のお話がありましたが、今 後メタボリックシンドロームに着目した健診及び保健指導について、具体的にどういっ た健診項目を考えていくのかということは、今後お時間をいただいて検討していきたい と思っているところでございます。また、それとあわせて、老人保健事業で現在幾つか の種類の健診を市町村に担っていただいておりますが、それについてもあわせて見直し が必要なものについては見直しをしていくということになろうかと思っております。 松本委員 今聞いておりまして、地方の立場で申し上げておきたいと思います。生活習慣病対策 について、我々市町村も従来から糖尿病対策などを推進してきたところでございます。 また、厚生労働省試案で示された方向性は評価していいのではないかという感じを持っ ております。また、住民の健康を増進するために、市町村が国保の保険者としての健 診、保健指導を充実させるととともに、住民に対する普及啓発活動もしっかりと進めて いかなければいけないと思います。そのためには都道府県がリーダーシップを発揮して いただいて、しっかりした都道府県の健康増進計画を策定していただき、市町村、医療 保険者、都道府県が一体となって生活習慣病対策を強力に推進していくことが必要だと いう感じを持っております。 久道部会長 それでは次の議題にまいりたいと思います。議題2、糖尿病予防のための戦略研究に ついて。矢島室長よりお願いします。 矢島室長 それでは資料2に基づきまして、糖尿病予防のための戦略研究について説明させてい ただきます。これは厚生労働省における新たな研究の枠組みを設けたものでございまし て、まず1ページをお開きいただきたいと思います。 平成17年度科学技術関係施策でございますが、総合科学技術会議というのがございま す。これは全省庁横断的な組織でございますが、科学技術分野の重点事項ということ で、4つの大きなテーマがございます。それぞれ基板研究となる研究開発の着実な推進 ですとか、我が国の経済を発展させる国際競争力を確保するための科学技術活動の推 進、次が大事なんですが、これは主に厚生労働省になりますが、安心・安全な生活を実 現する科学技術活動の推進。科学技術のシステム改革等ということで大きな柱がござい ます。この4つの大きな柱の中の、健康の安心のところを推進するという意味で、私た ちは健康フロンティア戦略というものを厚生労働省として掲げております。 これは平成17〜26年度までの10カ年を念頭に置いた計画でございまして、我が国が超 高齢化社会に向かっている中で、明るく活力のある社会を構築して、健康寿命を延伸す ることを目標に、例えば糖尿病やがんなどの疾病の罹患や死亡を減らす、要介護になる ことを防ぐということにつきまして、数値目標を設定し、それぞれの分野について先端 技術を導入し、生活習慣病や介護予防の研究を推進していくというものでございます。 健康寿命を延ばす科学技術の振興ということで、これは厚生労働省の健康フロンティ ア戦略におけるロードマップでございます。その中で糖尿病でございますが、次のペー ジに大きくまとめてございます。健康フロンティア戦略の中で糖尿病の分野につきまし ては、目指すべき方向性としては、患者数の増加、重症化への対策の全体像作成と研究 の位置づけの明確化をするということと、最終目標として、糖尿病発生率を20%改善す るということを最終的な目標にしております。 これを踏まえまして、戦略研究というものを設けました。左側が従来のものでござい ます。一般公募課題には従来このような形で研究課題を公募しまして、研究者の方を選 んで、その方に実際に研究をしていただき、最終的に成果を評価するという仕組みだっ たわけですが、今回の戦略研究では、まず行政のニーズについて、先ほどの大局的政策 目標、ここでいいますと糖尿病の発生率を20%改善するためにはどのような研究が必要 化という観点から、想定される3つのアウトカムを想定しまして、それにふさわしい研 究のプロトコールを定めさせていただきます。ここまでを定めた上で研究の実施団体を 定め、その後公募をさせていただくという手順をとらせていただく、従来にはない戦略 研究でありまして、想定されるアウトカム、成果の達成度を評価する仕組みを導入する ものでございます。 この戦略研究の課題を決めるまでの実施経過でございますが、平成16年の総合科学技 術会議で基本的な方針が定められました。その後厚生労働省として健康フロンティア戦 略を策定し、これを厚生科学審議会科学技術部会などで御審議いただきまして、最終的 にことしの3月に技術部会で、自殺関連うつ対策の戦略と、糖尿病対策というものの戦 略研究課題の成果とプロトコールが定められました。 これを受けまして、ことしの6月に厚生科学審議会技術部会で実施団体の選定が行わ れまして、実施団体として国際協力医学研究振興財団、ここに実施を委託するというと ころまで決まっているわけでございます。 このアウトカムを設定するために、特別研究をさせていただきまして、これは黒川先 生を主任研究者とする研究班で、どういう手法でやるかということについてまず研究を していただきました。それに基づきまして具体的に、糖尿病予防のための戦略研究とい う形で、平成17〜21年度の5カ年を想定しまして、研究をさせていただきます。先ほど 10年の計画と申しましたが、5カ年の研究成果をもとにして最終的には10年で糖尿病発 生率を20%減少させることを目指すものでございます。 そういう意味で、5年間で研究し方向性を出すということで、今年度の予算は約8億 円を確保しております。実施団体は国際協力医学研究振興財団で、事務をやっていただ くことになっております。 この糖尿病予防のための戦略研究の組織イメージでございます。厚生労働省が実施団 体に研究委託をするわけでございますが、そこに運営委員会ですとか評価委員会、倫理 委員会等を設置させていただきまして、データマネジメントセンター、各研究リーダ ー、3つある課題のそれぞれのリーダーをお決めいただきまして、そのもとで3つの大 きな研究をさせていただくというものでありまして、この3つの研究については10ペー ジをお開きいただきたいと思います。 課題が3つございます。3つの成果を設定しておりまして、まず研究課題1は、耐糖 能異常から糖尿病への移行率を半減させることを目標とする研究でございます。研究方 法としましては、地域・職域健診要指導者で、30〜64歳の耐糖能異常の方を4500名設定 させていただきまして、対面型個別指導群ですとか、非対面型特別指導群、そういうも のを無作為に割りつけしまして、生活習慣病のいろんな保健指導について介入すること によって移行率半減を目指す方法について研究していただくということでございます。 2番目が、糖尿病患者の治療中断率を半減するということでありまして、人口10〜20 万程度在住されていて、かかりつけで治療されているII型糖尿病患者さんに対して、地 区医師会全体で共有し、目標達成のための支援として患者指導のコメディカル派遣です とか、IT診療支援群を対照群に割りつけることによって中断率の半減を目指すもので ございます。 3番目は、糖尿病合併症の進展を30%抑制するという目標でございます。ヘモグロビ ンA1cですとか血圧、脂質代謝異常、こういうふうなものを念頭に置いて、40〜69歳の 3000名を対象にしまして、治療強化群に無作為に割りつけしまして、この方々に対して 生活習慣への介入を行うというふうな手法でございます。こういう戦略研究を行うとい う形で、それぞれの研究エリアを現在公募させていただいておりまして、このリーダー について決める段階まで来ております。 最後のページに募集・選定のスケジュールがございます。リーダーを決定するところ まで今来ております。課題1、2、3、それぞれのリーダーになっていただく方につい て公募させていただいておりまして、その方々について審査をさせていただいておりま す。リーダーの方々が決まった段階でそれぞれへの参加募集をさせていただき、具体的 な研究内容についてこれから各班で決定していただいて、それで研究に取りかかってい ただくという形で進めさせていただいているところでございます。以上でございます。 久道部会長 どうもありがとうございます。ただいまの説明に御質問、御意見ございませんでしょ うか。 よろしいでしょうか。 それでは、ないようですので次の議題に進みたいと思います。議題3、たばこ対策に ついてであります。かねてから日本たばこ産業株式会社及びフィリップモリスジャパン 株式会社より、たばこ対策のあり方について本部会で意見表明する機会を与えてほしい というお申し出がございました。特にこのたび取りまとめました中間取りまとめの内容 に関しても御意見があると伺っております。そうしたことから、事務局と相談しまし て、本日、日本たばこ産業株式会社及びフィリップモリスジャパン株式会社より御意見 を表明していただくことを決めさせていただきました。 それでは、まず日本たばこ産業株式会社の佐藤さんより、資料3−1、たばこ・喫煙 に関する日本たばこ産業株式会社の見解等について御説明をお願いいたします。どうぞ お願いします。 日本たばこ産業株式会社 ただいま御紹介いただきました、日本たばこ産業株式会社の佐藤でございます。本日 は当部会にお呼びいただき、発言の場を与えて頂きまして誠にありがとうございます。 今回このようなお時間を頂戴しましたので、私から弊社を代表しまして、JTのたばこ ・喫煙に関する基本的考え方等を御説明さしあげたいと存じます。 最初に、弊社がたばこあるいは喫煙を、どのようなものと認識しているのか御紹介申 し上げます。たばこは世界じゅうで約13億人と推計される愛煙家の方々が、気分転換や ストレスの解消など、様々な形で楽しんでおられる嗜好品でございます。我が国におい ても喫煙者率は年々低下し、先進国の中でも低い水準となっておりますが、全国で約 3000万人もの方々が楽しんでおられます。 現在の主要国の喫煙率は、お手元の資料の5ページにまとめてございますので、ご覧 ください。日本における喫煙者率の推移のグラフ、上段の青い線は男性でございまし て、中断が国民全体、下段が女性でございます。このプリントにそれを書いておりませ んので、それをおわび申し上げます。 多数の方が喫煙されておりますけれども、一方、喫煙は喫煙者自身の健康に対して重 大な疾病を引き起こす危険性=リスクがあるということは弊社としても十分認識してお ります。従いまして、弊社としましては、「喫煙するかしないかは、喫煙の健康への影 響・リスクに関する情報に基づいて個々の成人の方がお決めになるべきもの」と考えて おります。なお、弊社のたばこに対する考え方につきましては、お手元の資料にいろい ろ書いてございますので、後ほど御参照いただければと思います。 次に、今申し上げました認識の下、弊社がたばこに関してどのような取り組みを行っ てきたのかということに関して、その概要を2つの分野に例を挙げまして御紹介申し上 げます。 まず第1に、未成年者喫煙防止対策の分野における取り組みでございます。我が国に は100年以上の歴史を持つ未成年者喫煙禁止法がございますが、一方、未成年者の喫煙 が社会問題化しているということもまた事実でございます。弊社は従来から、「未成年 者は決して喫煙すべきではない」と考えて参りました。このため、弊社としましても、 その防止のために、様々な自主的取り組みを実施して参りました。 具体的に御紹介申し上げますと、先月の末に関係団体による記者発表が行われまし た、成人識別機能つき自動販売機の全国導入に向けた取り組みがございます。これは資 料の14ページをご覧ください。これは私どもたばこ会社の業界団体であります「日本た ばこ協会」たばこ販売店の皆様がつくっておられます「全国たばこ販売協同組合連合会 」及び自動販売機のメーカーさんで組織されております「日本自動販売機工業会」この 3団体が財務省からの御指導も受けつつ協同で推進しているプロジェクトでございま す。未成年者喫煙防止問題の解決に向けまして、2008年に全国すべての自動販売機に 「成人であるかどうかを識別して、成人だけに販売する」といった特別な機能をつけよ うと取り組んでおります。 ここで、識別方式の概略について少々具体的に御説明いたしますと、成人向けにたば こ専用の「カード」を作成しまして、これを自動販売機にかざすことにより、初めてた ばこが買える状態になるといった方式でございます。カードの発行には年齢を証明する 書類が必要でございまして、未成年者には発行されません。また、このカードには代金 決済機能、いわゆる電子マネーの機能を搭載することも決定されておりまして、これに より貸与にも歯止めがかけられるものと考えております。 千葉、鹿児島において導入検証をいたしました。その結果から、成人識別機能を持つ 自動販売機は未成年者による喫煙の防止効果を十分に備えている、ということが実証さ れたものと評価しております。本プロジェクトには約800〜900億円という大変な額の費 用がかかると見込まれておりますが、業界一同連携しまして、未成年者喫煙の一層の防 止に向け、積極的に推進して参りたいと考えております。 未成年者喫煙防止に関しては、この他にも啓発のための新聞広告の実施、たばこ販売 店頭などでの啓発ステッカーの貼付、また、各地域において自治体・警察署等関係機関 との連携により「未成年者喫煙防止協議会」を設置するなど、弊社として長年にわた り、さまざまな取り組みを行ってまいりました。これらに関しては後ほどお手元の資料 の10〜15ページまでに記載してございますので、ご覧いただければと思います。 さて、こういった未成年者喫煙防止に向けた取り組みに加えまして、弊社では適切な 分煙の推進にも積極的に取り組んでおります。受動喫煙に関しては後ほど詳しく触れま すが、弊社としましては、たばこの煙は周囲の方々、特にたばこを吸われない方々にと って迷惑になることがあり、たばこを吸われる方々は、たばこを吸われない方に十分配 慮すべきであると考えております。 この「迷惑」ということに関しまして、弊社の調査によりますと、3分の2を超える たばこを吸われない方々が「迷惑をかけなければ喫煙者の嗜好を尊重する」とお答えに なっておられます。こういったご意見を踏まえまして、たばこを吸われる方、吸われな い方が共存できる調和する社会の実現を目指して自主的にさまざまな取り組みを行って いるところでございます。 具体的に申し上げますと、自治体との共同による喫煙場所設置、駅や空港、商業施設 などへの分煙コンサルティングの実施、喫煙マナー向上のための啓発活動、空気清浄機 の開発など、幅広く取り組んでいるところでございます。この詳細についてはお手元の 資料の16〜22ページまでに書いてございますので、後ほど御参照いただければと思いま す。 弊社は「喫煙は健康上のリスクを伴う」と認識しております。この点においても、た ばこ・喫煙は適切に規制されることが必要であると考えております。では「適切な規制 」とはどういうものであるべきなのか、ということになりますけれども、弊社の考え方 を「法律が適正につくられること、それが経済の成長や消費者保護の観点から不可欠で ある」という考えに基づいて発表されたOECDのガイドライン、これを参考にして御 説明申し上げたいと思います。 このOECDのガイドラインでは、適切な規制の要件として「問題が適切に把握され ていること」というのが挙げられています。この観点からしますと、規制を導入する場 合に、その規制が合理的と言えるのか、科学的事実に基づき検討する必要があるという ことだと考えております。公衆衛生の世界におかれましても、政策は「エビデンス・ベ ース」でなければならないと、大変重視されている考え方であると理解しております。 この点に関しては私どもも同じ考えでございます。 私どもは、皆様と同じく、科学的合理性を尊重するという立場でございますが、この 点から御指摘申し上げたい点が2点ございます。 まず「受動喫煙」に関する問題でございます。これはお手元の資料の25、26ページを ごらんください。世界的に行われております統計的・疫学的な学術研究において、受動 喫煙のリスクの有無・程度に関しては、25ページの表が示しておりますとおり、結果は 様々でございます。統計の誤差を超えて有意に差があると報告している論文はむしろ少 数に過ぎないといった状況にございます。また、有意差ありとする論文におきまして も、そのリスクの程度は低いといった状況にございます。 26ページに、米国環境保護庁なり国際がん研究機関なり、この辺の結果も載せており ます。これに関しましては、これら報告がなされたときに新聞等で報道がなされており ますので、それを27ページ以降に参考資料としておつけしております。後ほどごらんい ただければと思います。 弊社としましては、受動喫煙の肺がん等のリスクに関しましては、科学的に明らかな エビデンスが得られているということは、この状況ではまだ言えず、「受動喫煙が重大 な疾病のリスクを伴う」かどうか結論付けますためには、今後更なる研究が必要である と考えております。これら「環境中たばこ煙」に関します弊社の基本的考え方に関しま しては、資料の24ページに書いてございますので、後ほどお読みいただければと思いま す。 次に、科学的合理性の観点から御指摘申し上げたい第2の点は、いわゆる「喫煙の社 会コスト」に関するものでございます。「社会コスト」において「超過医療費」と「労 働力損失」の2つが大きなウエートを占めております。 1つ目の「超過医療費」につきましては、疫学研究結果を用いまして間接的に試算す る方法と、たばこを吸われる方、吸われない方の実際の医療費を調査する直接的な方法 との2つの方法がございます。お手元の資料31、32ページをご覧ください。疫学データ を用いて試算する方法を31ページに書いておりますが、この場合、超過医療費は相当高 い金額が出る傾向にございます。一方、32ページに医療費を直接調査した報告を載せて ございます。吸われる方と吸われない方では総じて医療費に大きな差はない結果となっ ております。 ×ばつ喫煙者及び非喫煙者の平均余命の差」とし て計算されております。ここでは外国の統計データから、「平均余命の差」が12年ある ということで試算しております。一方、日本で実施されました疫学のデータからは、平 均余命の差が3年程度であるとする報告もあります。こういった前提の置き方一つで大 幅に試算結果は変わってまいります。 いずれにしても、我が国においては、日本人の喫煙者・非喫煙者の平均余命の差を算 定しまして、また、その年齢層に見合った実際の所得、あるいは費用、これらの統計デ ータを用いて計算された報告は存在しないものと弊社は認識しております。こういう観 点からは今後さらなる研究が必要かと考える次第でございます。これら「喫煙の社会コ スト」に関する弊社の基本的考え方につきましては、資料の30ページに見解をまとめて ございますので、後ほど御参照いただければと思います。 さて、「適切な規制」の要件に戻りますと、OECDのガイドラインでは「全ての利 害関係者が自らの見解を述べる機会が与えられていること」これも定めております。こ の観点から、何らかの規制を導入するに当たっては、その規制により影響を受ける様々 な関係者が存在することから、規制当局は、これら規制の影響を受ける者それぞれから も意見を聴取し、これらを尊重した形で規制を行うことが必要であると考えておりま す。 「適切な規制」に関してOECDのガイドラインで掲げられている要件として最後に 申し上げたいのが、「規制によって得られる利益が規制によるコストを正当化できるも のでなければならない」ということでございます。これは、「スズメを撃つのに大砲を 用いるべからず」と例えられますように、「規制の目的の科学的合理性さえ示されてい れば達成のやり方はどのようなやり方をしてもいいのだということではない」という考 え方でございます。 以上見てまいりましたように、「適切な規制」には「科学に基づいて規制の影響を受 ける者の意見を尊重しつつ、バランスのとれた手段による規制」を行うことが必要であ ると考えております。 なお、当部会におきましても厚生労働省は、「健康の増進は国民の主体的な努力によ るものであり押しつけではないということ、そして、国、地方公共団体、企業等がその 努力を支援していくのだ」という旨の御発言をされていると理解しております。この御 発言の趣旨は、弊社の基本的考え方として申し上げました「喫煙は、リスクに関する情 報に基づいて個々の成人の方々判断されお決めになっていくものである」ということに 相通じるものであるというふうに考えております。 我が国では「たばこの消費や喫煙者の数を削減すること」自体が政府によるたばこ規 制の目標となったことはなく、あくまでも法令に基づき権限を有する御当局が、関係当 局と協議され、適切な規制を実施・推進してこられたものと理解しております。 先ほど、健康増進は国民に「押しつける」ものではない、とございましたが、例えば 喫煙者率の低下自体に目標値を設定するということが仮に行われるとするならば、これ は国民に対する押しつけなのではないかと危惧している次第でございます。 さて、最後になりましたが、こういった機会をせっかく頂戴いたしましたので、私ど もから1点お願いがございます。弊社は以前から、喫煙について自主的・主体的に諸対 策に取り組んでまいりました。特に未成年者喫煙防止、分煙に関する知識や経験は屈指 の水準にあると自負しております。当部会における先生方の御審議に際しましても、た ばこについて具体的政策を検討される折には、弊社も様々な形で貢献できるものと考え てございます。 また、先ほど御紹介しましたとおり、健康づくりのあり方に関しては「国民の主体的 な努力とともに、国、地方公共団体、企業等がその努力を支援する」と位置づけられて おります。弊社としましても、たばこに係る諸問題の実効ある解決に向けて、可能な限 り貢献して参りたいと考えております。 さらに「適切な規制」の観点からも、たばこ規制により影響を受ける側におります弊 社の意見、これも十分尊重していただきたいということも考えております。 以上の観点から、弊社としましては、今回のような一時的な意見の陳述に留まらず、 当部会、検討会、あるいは作業チーム、これらに正規のメンバーとして参加させていた だくなど、今後たばこ規制に関する議論に関して、より積極的な形で参画させていただ けますよう強く希望しております。何とぞ前向きな御検討をよろしくお願い申し上げま す。 本日はこのような機会をいただきましてまことにありがとうございました。重ねて御 礼申し上げます。 久道部会長 どうもありがとうございました。御意見等あろうかと思いますが、後でまとめて述べ ていただきたいと思いますので、次の説明をお聞きしたいと思います。 資料3−2、フィリップモリスは包括的たばこ規制を支持しますという、フィリップ モリスジャパン株式会社のピーター・ニクソン氏より説明をお願いいたします。なお、 英語でお話しなさるそうですので、卓上にある装置を耳にあてがっていただいて、オン を押していただいた上で右側のボリュームを上げていただければ聞こえるようになろう かと思います。それではニクソンさん、よろしくお願いします。 フィリップモリスジャパン株式会社 まずおわび申し上げなければいけません。英語で話すことを御容赦ください。日本語 が十分に話すことができませんので、英語で発言させていただきますことをお許しくだ さい。 プレゼンテーションをさせていただきたいと思います。まず資料をお配りしておりま す。これは、私が今後お話しする内容の背景資料として、ウェブサイトに載せている情 報すべてをこちらに配付しております。これは公に、皆さんに見ていただけるもので す。そして1ページ目、こちらが私のプレゼンテーションの基本となります。 おはようございます。フィリップモリスジャパン株式会社コーポレートアフェアーズ ディレクターのピーター・ニクソンと申します。私は責任分野の一つとしまして、財政 政策並びに規制関連の渉外活動を統括しており、今回のように、重要な公的機関におい て社を代表して意見を述べさせていただく幹部にもなっております。 弊社についてよく御存じない方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明させてい ただきます。フィリップモリスジャパンは、フィリップモリスジャパンインターナショ ナルの日本における子会社です。当社製品には、マルボロ、ラーク、パーラメント、フ ィリップモリス、バージニアスリムなどがありまして、日本においては第2位のたばこ 会社であり、市場シェアは約24%となっております。 本日はたばこ問題及び日本におけるたばこ業界への規制に関しまして、フィリップモ リスの見解を皆様方と共有できる機会をいただきまして、まことにありがとうございま す。この機会をお借りして、私どもが公衆衛生当局と共通した基盤を持つと考えられ幾 つかの点について御説明したいと考えております。 私どもフィリップモリスは、たばこが公衆衛生上大きな問題となっていることを認識 しております。喫煙は、がん並びに肺気腫、心臓病などの重大な病気を引き起こし、依 存性があります。すべてのたばこ製品の製造、販売、価格、流通、並びにマーケティン グの方法を規定する規制上の枠組みを築き上げることは重要なことであります。包括的 な規制上の枠組みにより、たばこ市場の削減を含む重要な公衆衛生上の目的を達成する ことができると考えております。 包括的な規制は、たばこ業界で必要とされる安定性並びに事業の予測可能性をもたら すことから、たばこ会社にとっても資するものであると考えます。たばこ規制枠組み条 約が発効したことを考慮しますと、現在こそ、たばこ関連政策及び規制に新たなアプロ ーチを採用されるよい機会ではないかと考えます。 この政策を形成していく上で私どもに果たせる役割があると考えております。社会は たばこ会社に、たばこ製品について人々が抱いている当然の懸念に取り組むよう期待し ています。人々はたばこ会社に、喫煙の健康への影響について常に情報提供すること、 また、未成年者喫煙防止の取り組みにおいてその役割を果たすこと、そして、より害の 少ない製品開発に向けて努力することを期待しています。 私どもフィリップモリスはこのような懸念を理解し、当社製品に関するさまざまな問 題に責任を持って取り組んでいく所存です。そうすることでこそ、私どもが事業を継続 していく権利を維持できると考えております。 厚生科学審議会では、国民の健康増進を目指して活動されており、この一環として喫 煙による健康への悪影響を低減していく意図を述べられております。現在まで討議され ている取り組みには次の4点があると理解しております。 1、喫煙のリスクについて人々の意識を高める。 2点目、喫煙者に禁煙を促し、それを支援する。 3、未成年者喫煙をなくす。 4、公共の場、職場での分煙の徹底、効果的な分煙についての知識の普及。 フィリップモリスジャパンは、このような取り組みは重要であると考えております し、これらの問題について貴審議会と協調して取り組んでいくことを希望しておりま す。また、私どもの参加が、その目的達成に向けてお役に立てるのではないかと考えて おります。これから各問題について私どもの見解を述べさせていただきます。 まず、たばこ問題に関する人々の意識を高めることについてですが、喫煙に関連する すべての事柄は一貫した公衆衛生上のメッセージに基づいて決断されるべきであると考 えております。だれもが喫煙は病気を引き起こし、依存性があるという事実を含めた、 たばこ消費のリスクについて常に知らされる必要があります。たばこ製品のパッケージ において規制される注意文言は明瞭であるべきですし、その内容については政府が決定 されるべきことと考えます。 禁煙に関しまして、政府は喫煙者に禁煙を促し、それを支援するべきと考えます。た ばこ使用は依存性があり、喫煙の健康リスクに懸念がある方にとって唯一の方法は、禁 煙するか、初めから喫煙しないことであると明確に伝えられるべきです。また、人々は 安全なたばこというものはないということを十分に知らされておくべきと考えます。貴 審議会は、禁煙希望者に禁煙指導を行うプログラムの策定を推進されております。喫煙 者はそのようなプログラムを知り、利用できるようにするべきです。私どもフィリップ モリスも、禁煙を希望し、情報やサポートを求めておられる方々に情報を提供しており ます。 次に、未成年者喫煙の問題についてお話しします。ここで一つ明確にさせてくださ い。私どもは子供に喫煙してほしくはありません。また、子供に喫煙してもらうことを 必要としません。子供に喫煙をやめさせるのが正しいことです。この問題は複雑であ り、個人や一組織で解決できる問題ではありません。これからお話しさせていただくよ うな方法で私どもは問題解決に貢献できると考えており、また、私どもはそうするべき であり、実際に取り組んでいるところであります。これは私どもが長期にわたりたばこ 事業を継続していくために行わなければならないことなのです。そして、弊社の社員、 株主、規制当局、成人喫煙者、社会全般から期待されていることです。 フィリップモリスは日本を含むおよそ70カ国で未成年者喫煙防止プログラムを展開し ています。その活動は、子供たちに対してたばこを販売させない法律の施行など、子供 のたばこ購入を防ぐことと、子供たちに喫煙しないと決断させるための教育をすること に主眼を置いています。 しかしながら、未成年者喫煙は簡単に解決できない問題であることも認識しておりま す。厚生労働省が2000年に発表した調査によると、この問題は以前として大きいもので あり、例えば高校3年生男子の37%がたばこを吸っているという結果が出ています。こ の問題を解決していくためには、たばこ会社、保護者、公衆衛生機関、販売店、規制当 局、教育者、法執行機関など、多くのステークホルダーによる総体的なアプローチを必 要とします。私どもは未成年者喫煙は非常に深刻な問題だと受けとめており、貴審議会 と協力して、現在行われている活動とあわせて効果的な解決策をつくり上げてまいりた いと思っております。 未成年者へのたばこ製品販売を規制する法律で非常に重要なことは、法の実効性と制 裁措置です。それ相応の罰金が科せられ、たび重なる違反にはたばこ製品販売のライセ ンスを失うこともあるということを販売店が理解すれば、法令遵守は強化されることに なるでしょう。 これに関連して、日本では自動販売機の利用が広範に普及しています。自動販売機は たばこ製品販売総数のかなりの部分を占めており、実際、未成年者のたばこ購入の70% 以上が自動販売機を利用してのものであると推定されています。私どもはこの問題に対 処する規制を含む措置を支持しておりますが、自動販売機の利用を完全に禁止すべきで あるとは考えておりません。現在、業界全体で解決策となる技術を開発し、未成年者が 自動販売機からたばこを購入できなくするよう取り組んでおり、2008年には日本全国で 展開される予定です。 それと並行しまして、2008年の前に、自動販売機のあるすべての販売店にこの解決策 への参加を義務づける規制が策定されることを強く支持します。しかし、残りの30%が 店頭でたばこを購入していることを見逃すべきではありません。自動販売機での購入が できなくなれば、店頭で購入する未成年者がふえる可能性もあります。ですから、この 問題への対応には、法律を強化し、店頭販売を管轄する法律並びにその実効性を強化す ることによる包括的なアプローチが必要とされます。 次に、公共の場での喫煙規制についてお話しさせていただきます。私どもは公共の場 での喫煙は制限されるべきだと考えていますし、全面禁煙が適切なケースも多々あると 考えております。公衆衛生機関は、環境中たばこ煙が非喫煙者に肺がんや心臓病を含む 病気を引き起こすと結論づけています。政府、各事業者、人々は、この見解を踏まえて 公共の場での関連した決定をすべきだと考えます。病院、学校、子供向けの施設におい て喫煙は禁止されるべきです。そのような制限が採用される場所では、その制限は実効 的であり、また、人々にその制限や違反に対する罰則を知らせる表示が掲示されるべき と考えます。 同時に、このような規制では、非喫煙者と喫煙者とのバランスがとられるべきだと考 えます。非喫煙者が環境中たばこ煙にさらされずに済むこと、そして、バー、ホテル、 レストラン、ナイトクラブといった、あるタイプの接客業が喫煙者にサービスを提供で きるようにすることとのバランスがとられるべきだと考えています。喫煙が許可される 場所では環境中たばこ煙が非喫煙者に有害であるという公衆衛生当局の見解を伝える表 示を掲げるようにするべきです。日本における屋内の喫煙制限は、より改善できる分野 があるのではないかと考えております。このためには、政府によって明確に定義された 政策が必要であると考えておりますし、そのような規制を確立するためにステークホル ダーの皆様とともに協力していきたいと考えております。 次に、貴審議会で取り上げられております上記の問題に加えまして、公衆衛生上の観 点並びに私どもの事業にとって重要と考えられる問題についてお話しいたします。たば こ税の問題についてです。 政府はしばしば、たばこの消費を減らし、同時に税収を確保するためにたばこ税政策 を利用します。以前行われた貴審議会のセッションでも、たばこ税について討議があっ たかと思います。たばこ規制枠組み条約でも次のように記されております。価格と税金 政策はたばこ消費を削減する効果的で重要な方法である、と。私どもは公衆衛生上の政 策に沿った租税政策を支持いたします。例えば、たばこ消費を削減することを意図した 税引き上げには反対いたしません。しかし、そのような引き上げは、なだらかなもので あって、好ましくない結果を避けるように構築されるべきです。また、実質的な禁止と なるような額であるべきではないと考えます。 EU諸国での最近の経験では、かなりのたばこ税増税による価格上昇によって、意図 しない悪影響がもたらされ、これが公衆衛生上、さらには歳入上の目的にもダメージを 与えかねない状況になっています。これらの国々では多くの消費者が、禁煙するかわり に低価格たばこや、偽造品を含む非合法製品などの安い製品に移行しました。例えば私 の母国イギリスにおける1990年代のたばこ税政策は、インフレ率を上回る急激なたばこ 税増税に基づいていました。この増税の目的はたばこ消費を削減することではありまし たが、数年後、結果として消費の削減が見られたのは市場のわずか一部、税払い済みの 高価格帯たばこであり、低価格たばこ、手巻きたばこ、偽造品を含む非合法製品の消費 は増加しました。 政府はまた、禁煙するかわりに安い製品に移行する消費者のことを考慮する必要があ ります。事実、EUの幾つかの国々では最低価格の概念を導入しました。最低価格と は、設定された価格を下回る価格でたばこを販売してはならないというシステムです。 アイルランド、イタリア、フランス、ベルギーなどの国々で導入されています。ベルギ ー政府が述べているように、最低価格の導入により、政府はEU、世界保健機関、世界 銀行が推奨する方策を実施しており、これらの機関が、価格政策はたばこ対策の観点か らも最も効果的な措置であると結論づけています。 諸外国の経験に基づきますと、市場を混乱させ得る急激な税の引き上げを採用するよ りも、計画的でなだらかな予測可能な増税を通して、日本政府はその財政及び公衆衛生 上の目的を達成することができると考えております。そして、そのような税引き上げは 消費者に禁煙を促すとともに、消費者が非合法製品を含む安い製品に移行することを防 ぐために、最低価格のようなメカニズムとともに実施されるのが適切であると考えてお ります。 さて、これまで貴審議会で取り組まれておりますたばこ関連の幾つかの問題につい て、私どもの見解を説明させていただきました。それらは、人々の認識を高めること、 禁煙支援、未成年者喫煙を防止すること、公共の場での喫煙規制であります。これら4 つの取り組みは、世界各国の公衆衛生機関が焦点としている事柄と一致するものです。 しかしながら、このプレゼンテーションを締めくくる前に、国際機関で認識が高まりつ つあるもう一つの新たなトピックについて触れたいと存じます。 それは、喫煙者がさらされる環境中たばこ煙の有害物質を減らし、たばこ関連の病気 にかかるリスクを減らす可能性のある製品の開発とマーケティングについてでありま す。私どもを含む多くの会社がそのような製品の開発に取り組んでおります。私どもは 政府がこのような製品の規制並びに製品コミュニケーションの定義に関して重要な役割 を担っていると考えます。 このような製品の規制については世界保健機関や幾つかの国々で現在議論されている ところであります。例えば、米国機関に最近提案されたのが、リスク改良したたばこ製 品に関する規制上の枠組みです。この提案はまだ議会を通過しておりませんが、貴審議 会で参考にしていただける興味深い例ではないかと存じます。 喫煙によって引き起こされる害は、協調を通じてすべての関係者が害を低減させると いう共通のゴールに向かっていくことで最も効果的に取り組むことができると、私ども フィリップモリスは強く信じております。私ども全員にとっての課題は、共通の基盤を 見いだし、これを認識することであります。そうすることで皆様方の公衆衛生上の目的 の達成をサポートし、また私どものビジネスに予測可能性をもたらす包括的な規制の枠 組みの策定に取り組んでいけるものと考えております。 これで私のプレゼンテーションを終わらせていただきますが、御質問などありました らお知らせください。本日はありがとうございました。 久道部会長 どうもありがとうございます。代表的なたばこ産業の方お二人から御説明いただきま した。このような機会はめったにないと思いますので、貴重な機会だと思います。多分 いろいろ御意見あるいは質問があろうかと思いますが、これから11時まで、きょうの部 会は何かを審議して決めるという部会ではありません。したがって、自由に御質問なり 御意見をいただいて、11時になりましたら意見があってもやめるということをやります ので、その時間に近づいたときに発言する方は十分注意してお願いしたいと思います。 それではどうぞ。はい、どうぞ。 渡邊委員 両者の方の興味深いお話をお聞きしたわけですが、佐藤さんは今日はJTを代表して いらっしゃっていると聞きましたけれども、たばこ協会及び自動販売機工業会、販売協 会等も一応代表していらっしゃっているわけですか。 日本たばこ産業株式会社 いいえ。私は日本たばこを代表して参りましたわけでございまして、TIOJ、自動 販売機の方を代表しているわけではございません。 渡邊委員 わかりました。両者の一番違ったという印象を受けましたのは、フィリップモリスの 方はSurgeon Generalのたばこのリスクに関する報告とか、EPAの間接喫煙に対する 報告を完全に受け入れて、いろいろな予防策をとられていますよね。JTもSurgeon General及びEPAはサイエンティフィックだということで受け入れているわけですか。 資料によりますとところどころ反論があるような記載になっておりますが。 日本たばこ産業株式会社 私どもはフィリップモリスさんがどういう科学的根拠を基に今のポジションにお立ち になっているかわかりませんけれども、私どもとしましては、疫学のデータも結果が様 々であるということから、まだ結論づけるには早いのではないか、ということを申し上 げております。 それと、EPAのことに関しては、資料の26ページに書いてございますけれども、環 境保護庁の報告書に関しては、アメリカの議会調査機関、Congressional Research Serviceの方で、統計的データは、受動喫煙が健康に影響を与えると結論づけていない、 十分でない、というふうに結果が発表になっております。それと、訴訟の第一審におき ましても、この報告書の信頼性を否定しているといった状況がございます。この辺に関 しては次のページの、これはワシントンタイムズの新聞記事、あるいはその次のページ のニューヨークタイムズの新聞記事、これらの報道がなされております。こういう観点 から、EPA報告自身についても、これをそのまま受け入れることに若干疑義をいだい ているというところでございます。 渡邊委員 それからもう一つ、WHOのたばこ規制条約に日本も調印して参加しておりますが、 これはOECDをベースにしておりますけれども、この方針については日本たばことし ては賛成なんですか、反対なんですか。 日本たばこ産業株式会社 適切な規制が必要だということは私どもも賛成しておりまして、その規制の範囲をど のようにしていくかということが、これからWHO枠組み条約においても議論されてい くものと考えております。その内容がバランスの取れたものである限り、私どもはその 規制に反対するという立場にございません。 加藤(尚)委員 JTの見解では、たばこは有害であるけども、成人である人がその有害性を承知した 上で喫煙することに対しては、それは喫煙する権利がある。したがって、たばこの全面 禁止というのは許されるべきではないという考えにのっとっていると思うんですが、し かし、現在の世論の中では、たばこは喫煙する人にとっての自己危害、harm to self と、同時に喫煙しない人に対するharm to othersを含んでいるので、たばこを全面的に 禁止することは許容されるべきであると。したがって、未成年者だけではなくて、たば こを喫煙する年齢制限をだんだん高めていくと。それから、屋内だけではなくて、屋外 でもたばこの禁止をもっと強化すること、それらはすべて正当化されて、将来喫煙とい う習慣をなくすという目的を追求すること自体が許容されるべきだという意見が既に出 ていると思うんですけれども、どういう点でフィリップモリスさんやJTさんはそうい う考え方に反対なさるのか、理由を聞かせていただきたいと思います。 日本たばこ産業株式会社 いろいろな御意見をお持ちの方がいらっしゃることは存じ上げております。その中で 受動喫煙の問題、他に危害を与えているんだという考え方が、禁止を主張される方の大 きな論拠になっているということも理解しております。そういうことから、私どもは今 日の説明におきまして受動喫煙の疫学結果、今まで手に入るものをほとんどすべて並べ たつもりでございますけれども、客観的にこういう数字になっておりますということを 御説明させていただいたことと、リスクがあるないということに関して、同時にリスク がどのくらい大きいのかということも問題になろうかと思っております。バランスのと れた規制というのは、この世の中にリスクがあると言われているものは多々ございま す。それら他のものともあわせて、そのもの自体のリスクに照らしてどのようにバラン スのとれた規制をするか、ということが大事であろうと思っております。 久道部会長 ニクソンさん、どうぞ。 フィリップモリスジャパン株式会社 最初の御質問、公共の場所での喫煙についての御質問だったかと思いますが、それに ついてお答えさせていただきます。 私どもは環境中たばこ煙が非喫煙者に病気を引き起こすという公衆衛生機関の見解を 理解しております。そういった結論に基づいて私どもは公共の場所での喫煙は制限され るべきであると考えておりますし、また、多くの場合、禁煙が適切なケースも多々ある かと考えております。大事なことは、非喫煙者及び喫煙者の間のバランスがとられるべ きことだと考えております。すなわち、非喫煙者の方が環境中たばこ煙にさらされずに 済むことと、喫煙者の方が喫煙場所を持てるということとのバランスがとられるべきか と考えております。この問題を解決する方法は、やはり規制であり、皆様方と協力して 効果的な解決方法を探していきたいと考えております。 2番目の質問は、たばこの全面禁止ということであったかと理解しております。WH Oあるいは世界銀行といったところでも同様の議論がなされていたかと思います。そこ での結論といいますのは、喫煙・たばこを全面禁止するというのは現実的な解決策では ないということだったと理解しております。だからといって、これは私どもが何もしな いということを意味するものでは決してございません。私どもは何かをする必要がござ います。それが喫煙によって引き起こされる害を減少させていくということであると考 えております。それは、喫煙者の方にとっても非喫煙者の方にとっても、全体で喫煙に よる害を減らしていくということに向けて努力をしていきたいと考えております。長く なってしまいましたけれども、今お話ししたようなことが、私どもが今後公衆衛生当局 と協力して進めていきたいというところのベースでございます。 渡邊委員 少なくとも未成年者にたばこを吸わせるべきではないという点は全員一致していると 思いますが、佐藤さんにちょっとお聞きしたいんですが、ベンディングマシンは日本に 何台あるんですか。 日本たばこ産業株式会社 約62万台だと思います。 渡邊委員 それは全国の小学校の1クラスずつに入れるぐらいの数だとか聞きましたが、そうな んですか。 日本たばこ産業株式会社 小学校のクラスの数を私は存じ上げておりませんもので、何とも申し上げられませ ん。 渡邊委員 わかりました。それで、未成年者に吸わせるべきではないということで、12、13ペー ジにポスターの例が出ていますが、基本的には、法律的に20歳以下は禁止されているか ら吸うべきではないというニュアンスで伝わってくるんですけど、実際は、たばこは依 存症だからとか、成人になってから病気になる可能性が高いということは、このポスタ ーのどこからも見えないですけど、どこかに書いてあるんですか。小さくて読めません が。 日本たばこ産業株式会社 10ページに私どものポジションが書いてございまして、これはウェブサイトでも一般 に流させていただいております。未成年者は単に法律で禁止されているからということ ではございません。心身の発達過程において、それぞれの性格及び生活様式が未確立で あり、かつ判断力も十分ではございません。こういうことからも、未成年者は吸うべき ではないというふうに考えております。こういう点はさまざまな機会に弊社としまして もコミュニケートさせていただいているという状況でございます。 渡邊委員 私の家の近くにベンディングマシンが何台かあるんですけど、きのう見てみました ら、たばこの3分の1に健康表示をすることになっていますよね。ベンディングマシン の中に本物たばこが一つも入ってないんですよ。形だけ全く同じカードが入っていまし て、それには健康表示が全くないのですが、そういうことを御指導なさっているわけで すか。 日本たばこ産業株式会社 指導しているといいますよりも、コラムも限られておりますし、お客様の目につきや すいようにということでそういうふうにしたものと考えております。いずれにしても、 それをもとにお買い上げになりますとパッケージにはすべて書かれているわけです。 久道部会長 富永委員、どうぞ。 富永委員 11時になると発言できなくなりますので発言させていただきます。先ほどJTさんと フィリップモリスさんからの御発表を聞きましたが、フィリップモリスさんの包括的た ばこ規制を支持しますという表明に大変敬意を表します。私はJTさんがおっしゃった 受動喫煙とか、いろいろ反論があるんですが、時間がありませんのでその反論は今日は いたしません。そのかわり、当部会としてたばこ対策にどう取り組むべきか、具体的に どういう対策を進めるべきかについて話をさせていただきます。今日資料を持ってきま したので配ってよろしいですか。 久道部会長 どうぞ。急いで配ってください。 富永委員 部数が少なくて、委員の先生方にしか回らないかもわかりませんが、PowerPointのフ ァイルを厚生労働省の事務局へ送っておきましたので、もし傍聴の方などで今配付して いる資料が欲しい方は厚生労働省の事務局の方へ御連絡いただきたいと思います。 この資料を説明する前に、今後の生活習慣病対策の推進についての中間取りまとめ、 17ページをお開きいただきますと、ここにたばこ対策のことがコンパクトに書いてござ います。これは平成14年12月25日に厚生科学審議会の健康増進栄養部会で、今後喫煙率 を下げ、たばこ消費を抑制し、国民の健康に与える悪影響を低減させることが必要であ るということをはっきり断言しております。その後何年かたちましたが、下の数行にご ざいますように、この部会で過去何回か議論いたしまして、その主なものが(1)〜(5)ま でに示されております。 まず、喫煙率の低下について数値目標を設定すべき。これは平成12年に健康日本21が 開始されたときに、いろいろ事情がございまして数値目標の設定ができなかったという ことで、私どもは大変遺憾に思っております。この数年間にたばこをめぐる社会環境も 相当変わってまいりましたので、今年はちょうど健康日本21の中間見直しの年に当たっ ておりまして、過去の進捗状況をレビューしてまいりましたが、中間見直しを機会に新 しい項目が必要あれば追加したいと思っております。その第1点が喫煙率の低下につい ての数値目標設定、これはこの部会で方針を決めていただきましたら、健康日本21の中 間評価作業班におろせばいいと思っております。 2番目の未成年者喫煙防止として、自動販売機の規制を大幅に強化すべき。これは先 ほどJTさんからの御説明がございましたけれども、渡邊委員が御指摘になりましたよ うに、自動販売機のところでは警告文書が全く見えないようになっていたり、ひどいの になりますと写真で警告文書のところだけぼかしが入っていて読めないんですね。私は 写真を撮っております。これについては後ほどたばこ価格のところで触れます。 3番目の、受動喫煙防止対策の取り組みが遅れている施設について積極的に対策を推 進すべき。遅れているところはたくさんございますけれども、特に遅れているのは飲食 店、ホテルなどでございます。名古屋駅近辺の飲食店に入りますと、禁煙席すらないと ころが非常に多くて、ろくろく食事も楽しめないような状況になっておりますので、強 力に行政指導を進める必要があります。ほかにもまだ遅れているところがございますの で、これは一層推進すべきと思います。 それから、受動喫煙防止対策の推進に向け、公共の場の禁煙・分煙状況の調査を進め るべき。これもぜひやっていただきたいと思います。 それから、5番のたばこ価格または税を引き上げ、その財源を生活習慣病予防対策に 充当することを検討してはどうか。これは冒頭に中島参事官から、医療制度構造改革試 案の中でもそれに関係することを触れられましたが、健診後の保健指導、事後指導など は非常に必要でございまして、それをやらないと生活習慣病への進展を防止できませ ん。そのためにはかなり予算を要しますので、たばこ価格を上げることによって、増税 になった部分の財源を保健指導に充てていいのではないかと思っております。それがお 手元にお配りした資料の一番のねらいでございます。 現在、9学会合同で、喫煙対策に関する合同委員会が禁煙のガイドラインをほぼまと めまして近々印刷されますけれども、ここでは明らかに「喫煙病」という概念を導入し まして、喫煙者の6〜7割の方は依存症になっておりまして、やめようと思っても簡単 にやめられないんですね。依存症は明らかな病気である。喫煙の結果、いろいろな健康 障害が出ているので、それを合わせて「喫煙病」という概念を導入しております。喫煙 病でありますから、それに対する医療費、実際は予防に近いんですけれども、これは医 療費で見るべきではないかというのが学会の主張でありまして、値上げ部分は医療費の 方へ転換することも非常に重要でございます。 中島参事官の御説明でも、特に生活習慣病の中でメタボリックシンドロームを中心に して、特に重症化、合併症を防止するために生活習慣改善のための事後指導などをきち っとやりたいということでございましたが、私は露骨に黒い大きな矢印でたばこを入れ ておりますけれども、最終的なエンドポイントが心筋梗塞、狭心症のような虚血性心疾 患と呼ばれるもの、これは1960年代のフレミングハム調査の結果から、喫煙と高血圧と 高脂血症、特に高コレステロール血症が三大危険因子ということもわかっております。 虚血性心疾患の予防には、肥満、高血圧、高脂血症だけではなく、たばこは非常に重要 であり、たばことメタボリックシンドロームはかなり密接に関係しておりますし、相乗 作用があってリスクが非常に高くなっております。 一番下に棒グラフで、滋賀医科大学の上島教授らがまとめられたNIPPON DATA80に基 づく結果を出しておりますけれども、これをごらんいただいても、喫煙者では脳卒中及 び虚血性心疾患のリスクが非常に高くなることがわかります。これについてはほかにも データがございます。 おめくりいただきまして、喫煙によりがん死亡のリスクが上昇する。以前は昭和40年 から開始された平山先生らによる計画調査の結果しかなかったのでございますが、最近 になって国立がんセンターの津金先生らが行っている、多目的コホート研究の結果か ら、喫煙の健康への影響が明らかになりました。その結果、大きく前の結果と変わって いないんですけれども、男も女もがん全体では喫煙者は非喫煙者に比べて1.5〜1.6倍が んにかかりやすくなっておりますし、肺がんも前の計画調査と同じ、男では4.5倍、女 でも4.2倍となっております。また、喫煙本数別の肺がんリスクの上昇、これも以前の 平山先生の結果とほとんど同じでございます。 いよいよここからが私の主張したいところでございますけれども、先ほどJTさんの 報告の中でも喫煙による過剰医療費、超過医療費が出されておりましたけれども、医療 経済研究機構の油谷先生らによる平成13年度厚生労働科学研究費補助金の報告書から抜 粋したものでございますが、この推計からは超過医療費が1兆3000億。超過死亡数が、 これはピト、ロペスらによる推計ですが、11万4000人。経済的損失、これは直接的な医 療費のほかに労働損失等による間接費用等々を加えると合計7兆3700億円余になるとい う推計でございますが、いろいろな推計がございますけれども、大体1兆円を下らない ことは間違いないと思います。 その次に、油谷先生らの報告では、たばこ価格をどのくらいアップするとたばこをや めるかというアンケート調査をやっておられます。このときは250円ですから、50円ア ップで300円、あるいは倍で500円、あるいは1000円という数字が出ておりますが、黄色 い部分が、これだけ上がればやめるというところでございまして、500円くらいにしま すと4割強の方がやめるつもりだと言っているんですけれども、実際には依存症が非常 に強烈なものですから、フィリップモリスさんの報告の中にも書いてありますように、 なかなか禁煙しようと思っても成功しないんですね。これは「つもり」であって、実際 に500円にしたからといって4割がやめるのではなくて、せいぜい2割ぐらいにとどま るのではないかと思います。 その下の方はアメリカのハリス、チャンらの研究結果でございまして、これは、たば こ価格が上昇すると若年者ほどたばこを吸わなくなるというデータでございます。これ は一例ですけれども、世界銀行の報告書などでも明確にこの傾向が示されておりまし て、未成年者はたばこ価格の上昇に極めて敏感ですので、自販機の規制もございますけ れども、たばこ価格を上げると未成年者の喫煙率はかなり低下します。 そのことは最後のページの上の方に、これは今別府さんのレポートで、今別府さんと いう方はJETROの現地駐在員として活躍されておられまして、その人が雑誌に書か れたものから作っておりますけれども、イギリスではたばこ税収が約60億ポンドから103 億ポンドにまで上がっておりまして、税率も相当上がっております。価格は倍以上にな っておりますが、消費本数は1983億本から664億本ですから、3割くらいは減っており ますけれども、そんなに大きく減っておりません。その結果、相当税収がふえておりま す。たばこ価格を大幅にアップした結果、禁煙者が相当出たところで税収が大幅に伸び るということです。 その下に、これはちょっと不完全で申しわけないんですが、私が知り得たものだけを ここにまとめております。たばこ税を目的税化しているところがございます。必ずしも 税金そのものじゃなくて、基金を設置して、基金の方へお金を入れて、基金から費用を 出しているところもございます。韓国では、関係者の話を聞きますと、大規模な億以上 のお金のかかるがんの疫学研究をたばこ関係のところからお金をもらっていると言って おりましたので、それをいろいろ聞いてみますと、健康増進基金というところからもら っていると。たばこ売上の約10%がこの基金へ入ると私は聞きました。それは日本の4 兆円にしますと4000億に匹敵するわけでして、それを基金で上手に活用しているという ことで、なかなか日本ではできないことだと思いました。 フィンランド、タイ、イギリスなどでもかなり目的税化しておりますし、地方自治体 レベルではオーストラリアのビクトリア州、ここでは1988年に第3回国際健康増進学会 が開かれまして、私も参加しましたが、ビクトリア州ではたばこ売上の10%を基金にし て、たばこ会社が音楽祭やF−1レースなどのスポンサーにならないように、反たばこ のコマーシャル代から何から、すべて基金のお金で運営しているということを聞きまし た。 基金は大変難しいと思いますのでそれは別にしましても、我が国ではたばこ事業法と いう法律が定められておりまして、第1条にたばこ事業の健全な運営、税収がきちんと 入るように、しかも葉たばこ生産農家などを保護する形でうたってございますけれど も、たばこ事業を保護するための法律そのものがあって、禁煙を推進する法律がないと いうのは大変不本意なことです。未成年者に対しては未成年者喫煙禁止法、受動喫煙対 策として平成15年の健康増進法がございますけれども、禁煙支援に対する法律がござい ませんので、今後はたばこ事業法を大幅に見直す、あるいは廃止しまして、そのかわり に喫煙対策を包括的に推進するような法律が必要ではないかと思います。 なお、私は以前から、2000年の5月13日に朝日新聞の論壇にも書きましたけれども、 たばこ価格を大幅に上げるべきだと。そうすると喫煙率はがたっと低下して、増収にな る。これは増税の部分と、たばこ業界の増収、両方になるので一石二鳥ではないかとい うようなことを書いておりますけれども、全くその考えは変わっておりませんで、税金 だけを上げますと、それで相当の方が禁煙し、たばこ業界、葉たばこ生産農家、JT、 小売業界の収入が激減するといけませんので、最近は徐々にたばこの消費が落ち込んで おりますけれども、その延長路線より大幅に下がらないように、今の傾向が維持できる くらいにたばこ業界の収入も確保できるようなことに配慮しながらたばこ価格を上げる べきだと思います。そうすれば年齢証明のカードを使わなくても自動的に未成年者の喫 煙率は下がっていくと思います。 ちょっと時間が長くなりましたけれども、日ごろ思っていることを延べさせていただ きました。 久道部会長 はい、どうもありがとうございました。どうぞ、木村委員。 木村委員 今の富永委員のたばこの値上げに関しては賛成します。私は、中間とまとめの17ペー ジにあります、平成14年12月25日の厚生科学審議会における意見具申「今後のたばこ対 策の基本的な考え方について」をまとめた一人であります。そのときから富永委員がお 出しになったPowerPointの資料をずっと見ていました。私は薬剤師です。未成年対策の ところですけれども、たばこは入門ドラッグで麻薬、覚醒剤乱用へ入っていくゲートド ラッグとしてあるわけです。2008年から自動販売機の規制が入るというのを待っていら れない状況ですので、ここのデータにもありますとおり、たばこの価格を値上げして早 く手を打たなければなりません。今は国を挙げて少子化問題に取り組んでいます。少な い子どもたちを健康な状態で成人させていくという責任があるわけですので、そのため にもたばこの価格を上げて未成年者へのたばこ対策を前に進めるべきと考えます。ま た、きょうフィリップモリスさんの考え方も、JTさんも、未成年対策に関しては、良 いのではないかということがあるわけですので、ぜひそこのところを推進していただけ ればと思います。以上です。 中村委員 私どもは日本栄養士会でございますが、6月の総会決議で禁煙道をするということに しました。早速ポスターをつくりましたので配らせていただきたいと思います。なぜ私 どもが禁煙宣言をしたかといいますと、専門家の立場として2つございます。 一つは、ウエートコントロールというのは生活習慣予防に大変重要なことなんです が、ダイエットのためにたばこを吸うという人たちが随分いらっしゃいます。栄養指導 をやっていますと、たばこを吸うとダイエットがやりやすいということになって、実際 にたばこは食欲を低下させますし、口寂しいときに間食をするかわりにたばこを吸うと いうことが起こってくるんだろうと思います。私たちは、たばこでやせるのではなく て、正しいダイエットでやせてもらいたいということでそういうPRをしております。 もう一つは、たばこを味覚を低下させてしまいます。そのために食事の内容が変化 し、栄養状態を悪化して、低栄養状態がいろんな弊害を起こすということになっていま すので、禁煙をしてもらっておいしく食べ物をとってもらって栄養状態をよくするとい うことをこれから進めていきたいと思っておりますので、先ほどの富永先生の、そうい う財源を生活習慣病対策に回したらどうかという案は大変いい案だと思っております。 以上でございます。 久道部会長 多田羅委員。 多田羅委員 せっかくのチャンスなのでJTの方とフィリップモリスさんにお願いしたいんです が、JTの方、8ページに、「私たちは喫煙が特定の疾病のリスクファクターであると 考えています」と記載されていますが、後の受動喫煙などではエビデンスが不十分だと おっしゃっています。このリスクファクターであるとお考えになっている根拠のペーパ ーを明確に報告していただきたいんです。何のペーパーをもってこう考えられているの か。まさにエビデンスをはっきり示していただきたい。これはフィリップモリスさんに もお願いして、きょうお答えいただけなければ次回の審議会までにペーパーを明確に報 告していただきたいと思います。 日本たばこ産業株式会社 お伺いいたします。8ページにも書かれておりますとおり、疫学的に一貫した傾向が ...... 多田羅委員 だから、一貫した疫学なんていうのは抽象的でわからないので、どのペーパーをもっ てリスクファクターであると考えられたのか、そのペーパーを示してください。そうし ませんと一貫的と言われても何のことかわかりません。各論で答えてください。 それと、21ペーパーとか20ペーパーの表に、JTさんの方で「共存」という言葉を使 っておられるんですね。その背景には、有害であることがわかって吸うのであれば、そ れは個人の問題だということで、有害であることを認識された上で吸うことについては 認められるんじゃないかというお考えで共存と言っておられると思うんですけれども、 私、公衆衛生をずっとやってきた人間として、公衆衛生というのは、有害であるとわか っていながらやっておられる方をその状態から脱皮させるために努力する行為だと思う んですね。その人が有害であるとわかりながら有害である習慣を続けているのは、多 分、社会、生活、経済、そういう環境がその人にそういう形をもたらしているんだろう という認識に立っているわけです。ですから、そういう人に対して社会が関与して、そ の環境からその人たちを解放していくというのが公衆衛生の基本姿勢だと思うんです。 そこでは、吸われる方と吸われない方の共存ということは絶対ありません。追放の方向 にしかないんです。ただ、時間のファクターというのはあるんですね。物事には断面的 な状況と時間のファクターがあるので、一挙にできないというところは社会としての判 断がございますので、時間のファクターを入れていくところに若干共存を認めているよ うなところが結果的に見えるのであって、共存を公衆衛生の立場で認めるわけにはいき ません。その点、共存と言われるのはどういう意味なのか、ここが非常に課題だと思う んですね。吸う人が吸うのは勝手じゃないかと。それならば今日のBSEでも、輸入し ておいしいと、将来BSEをもらってもいいと思う人なら食べてもいいじゃないかなん ていうことでは国民は守れないんですよ。それでは公衆衛生を貫徹できないんです。あ るいは麻薬にしたって、売春にしたって、本人が楽しんでるんだから共存したらいいじ ゃないかと、それでは社会の公衆衛生は成り立たないんです。共存というのは非常に危 ない考え方なんですね。その点は安易に共存というような言葉を使っていただくことは 非常に危険であり、リスクファクターとされているペーパーなどは、恐らく死亡率が高 いという結果になっていると思うんですよ。国民を死亡に追い込む慣習と共存というこ とを社会としても、公衆衛生としても認めることはできないと思いますので、その点は 共存ということについて御検討いただきたいと思います。以上です。 久道部会長 佐藤さん、意見ありますか。 日本たばこ産業株式会社 いろいろお立場によって御意見が違う点はあろうかと思っております。私どもが「共 存」と申し上げておりますのは、現実にたばこを吸われている方の中に、例えばストレ ス発散のためとか、いろいろ理由はあろうかと思います。一方で、リスクがあることは 我々十分承知しておりまして、それも事実でございます。その中で、公衆衛生として、 こういうリスクがあるんですよと、それでおやめになった方がよろしいのではないです か、というふうに本人の納得を得る形で周知していくことに私どもは一切反対する立場 にはございません。ただ、悪いから絶対あなたはやめなさいと押しつけること自身が... ... 多田羅委員 それは方法の問題であって、目標としては共存は目標にならないんです。方法は考え ないといけません。各人間のあり方ですから。しかし、それは最終的に共存ということ を前提とすることにはなりません。共存ということを前提とすれば、そういう態度その ものがとれませんから。 日本たばこ産業株式会社 世の中にはリスクファクターを持つと言われている物質が様々あろうかと思っており ます。例えばアルコール等もあろうかと思います。このようなものをすべてこの世から なくすこと自体が、本来的に、公衆衛生の観点からはそういうことかもしれませんが、 いろいろな観点から考える必要があろうかと思っております。 久道部会長 あと30秒くらいで時間がまいります。ここでやめたいところなんですが、ニクソンさ んの御意見も聞かないと片手落ちなので、発言をしていただきますが、余り長くならな いようにどうぞ。 フィリップモリスジャパン株式会社 今おやりになっていた議論の大部分を私は理解していたと感じております。それで一 言、公共の場所での喫煙についてコメントさせていただきたいと思います。 一番重要なことは、喫煙に関連するすべての事柄が公衆衛生上のメッセージと一貫し たものでなければならないということでございます。そのメッセージを一貫したものと して私どももいろいろな形でコミュニケーションしていきたいと考えております。公共 の場所での喫煙に関して一言申し上げさせていただきますと、喫煙が許可される場所で は掲示が掲げられるべきだと考えています。その掲示というのは公衆衛生当局の結論、 環境中たばこ煙は非喫煙者に有害であるという掲示が掲げられるべきだと考えておりま す。 これはさまざまある方法の中の一つでございます。喫煙の害を減らすということに関 してはこれ一つだけではなく、包括的な方法で取り組んでいくということが非常に重要 なことであると考えています。 久道部会長 どうもありがとうございました。時間がオーバーしましたけれども、この問題は利害 関係者が同席しますと時間がある分議論が続くということになろうかと思います。不十 分なところもあったかもしれませんが、この部会においでいただいて御発言いただいた ということは今までなかったことですので、そういう意味では、皆さんこれから考える 上でも参考になったのではないかと思います。佐藤さんもニクソンさんも十分な御意見 の時間を差し上げられなくて申しわけなかったと思うんですが、こういう機会はまた何 かのときにあろうかと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思いますし、先ほど 委員から注文のあったデータについても、ぜひお願いしたいと思います。 それではこれできょうの部会は終わりにしたいと思います。事務局から何か連絡を。 矢島室長 今後の日程につきましては、詳細が決まり次第御連絡させていただきますので、よろ しくお願いしたいと思います。以上でございます。 久道部会長 それでは閉会といたします。どうもありがとうございました。 (終了) ○しろまる問合せ先 健康局総務課生活習慣病対策室 調査総務係 主藤・松浦 電話 03−5253−1111 内線2346・2342