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これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第19回) 議事録

1.日時

平成20年10月30日(木曜日)14時〜16時

2.場所

文部科学省 5階 5F3会議室

3.議題

  1. 大学関係者からの意見聴取
  2. 「博物館に関する科目」の見直しについて
  3. 学芸員資格認定の見直しに関するワーキンググループ(仮称)の設置について
  4. その他

4.出席者

委員

中川主査,水嶋副主査,青木委員,小川委員,猿渡委員,高田委員,榎本委員,
佐々木(秀)委員,菅原委員,鷹野委員,高安委員,名児耶委員,長谷川委員

文部科学省

森社会教育課長,栗原社会教育課企画官,ほか 関係官

オブザーバー

【ヒアリング者】
全国公立短期大学協会
(財)私立大学通信教育協会

5.議事録

(1)大学関係者からの意見聴取

(全国公立短期大学協会から意見発表が行われた)

【委員】 保存科学論は資料論、展示論は実習ないし概論、博物館と地域社会も同様に他の科目の中で扱えるというご意見だが、例えば博物館概論は、今までの内容に更に他の内容をつけ加えて、それが15コマで収まると考えているのか。

【ヒアリング者】 現状として吸収が難しいのであれば、単独で科目にするのではなく、例えば概論に対して専論というような、統合的な科目を構成してみてはどうか。

(私立大学通信教育協会から意見発表が行われた)

【委員】 移行措置に関係して、早急に実施するのは困るというご意見だが、どのくらいの猶予期間を望むのか。

【ヒアリング者】 予算措置等の準備で1年以上。翌年度予算が確定して、現場の準備と適正な予算執行という立場を考えて1年、最低でも2年は必要だと考える。

(2) 「博物館に関する科目」の見直しについて

(事務局から資料に基づき「博物館に関する科目の見直しについて」説明があり、その後、委員による意見交換が行われた)

【委員】 博物館概論は、博物館学概論と、「学」を入れてほしい。内容も単に博物館に関する概論ではなく、博物館学という体系を構成するように検討していかなければいけない。

【委員】 博物館と地域社会という科目については、むしろ、これを経営論、あるいは教育論の中に入れ込んだほうが、総合的な視点から今後の地域社会との関係というようなことを探れて、活きてくるのではないか。展示論と教育論について、美術館、博物館の中で、展示と教育というのは、車の両輪のようなもので、この言葉を外したくない。科目の中に何らかの形で展示という言葉と教育という言葉が入るのが望ましいと思う。

【委員】 博物館保存科学論について、水族館や動物園、昆虫館などで保存科学と言われてもピンと来ない。生きている資料を保存するという立場から言うと、保存科学という概念がそぐわないので、どちらかと言えば、生きている資料を保存、つまり飼育する科学、飼育科学的な教科で、この教科を読みかえさせてほしい。

【委員】 展示論や教育論、あるいは博物館と地域社会が、単に事例紹介するだけの内容にならないように、やり方の工夫を促すようなことが必要かと思う。

【委員】 博物館現場では、学芸員みずからが保存処理等をすることがほとんどなく、外部に委託するのが実態なので、保存技術については最低限の基礎としては学ばなくても良いというような意見があったが、学芸員が現場に行って一番大事なのは、管理している人間がある程度対応できる、判断できることである。さもなければ、美術館、博物館の根幹である資料を学芸員が一番だめにしてしまう可能性がある。したがって、大学でも基礎的なことをしっかり学ばなければならない。

【委員】 改正案では、その内容の例示で調査研究に関する手法等がほとんどないのが気になる。資料保存科学で学習させたいことは、科学的な論拠に基づく保存学を、館種を超えて共通的に学ぶということではないか。その点では、動物園や水族館が扱う、生きている資料の保存がこの中に入ってきても、当然やるべきではないかと思う。 博物館教育論については、内容でも、教育の本質ということを最初にやることになっている。教育学概論の内容は、そこで取り扱うこととして社会教育または博物館特有の教育論を学ぶ博物館教育論というものも十分に学んでもらいたい。

【委員】 例えば15回の授業ですべての内容について終了するように考えている科目に、他の科目の内容を、例えば博物館と地域社会の内容を持ってくるとすると、果たしてそれで2単位という枠の中で授業ができるのか。保存科学論は、「科学」という言葉を入れてしまうと、どうしても科学的な保存技術に引きずられてしまい、全博協からの意見にもあるように、それを担当できる者が一体どれくらいいるのかという懸念もある。名前から来る誤解をなくすため、博物館資料保存論というふうに変えてしまった方が受け入れられやすい。

【委員】 改正案の科目というのは、必要な内容の要素はそろっていると思う。あとは、その軽重を考えて、科目をどういうふうに体系づけていくか、どういうふうにまとめていくか、どういうふうに統合したりしていくかという作業が必要だと思う。

【委員】 それぞれの館に就職すれば、それぞれの領域があるので、大学でやることは基礎に絞って、もう少し科目や単位数を絞っても良いと思う。 そうした上で、次は科目の中身をもう一度精査する必要があると思う。どの館種でも通じるベーシックス、応用のきく基本中の基本というのを整理して、体系化する必要がある。中を細かく見ていくと軽重が混在しているところかあるので、レベルを2段階に分けるとか、中項目を立てて、小項目を立てるように、精査する必要がある。ICOMのそういったカリキュラムをつくる国際的な委員会が作った"Museum Basics"という本が出ているので、参考にしながら作業を進めたら良いと思う。

【委員】 科目を統合するときに、もともとの科目で学習させたい内容が、統合した科目でもきちんと触れられるように、内容を例示するなどして、より具体的に定める必要がある。

【委員】 本日の発言を、まとめると3点に集約できる。

1番目は、カリキュラム体系を、再構築し、内容を精査する必要であるということ。
2番目は、科目案から博物館と地域社会を削除し、9科目19単位とするということ。
3番目は、移行措置は1年だけではなく、十分に配慮し再度検討するということ。

【委員】 保存科学論の名称について、意見をまとめると、「科学」という言葉を削除して、博物館資料保存論とすることで良いか。

【委員】 科学的保存に重点を置くというような考えの方もあると思うが、私はむしろ伝統的保存法に重点を置くべきではないかと思っている。そういう意味で科学という用語を割愛して良いと思っている。

【委員】 資料保存論については、人文系博物館に偏った保存科学的な内容のみならず、動物園や水族館などで扱う、生き物も対象にするし、伝統的な保存についてもやるといった科目にするべきだと思う。

【委員】 科学は除いても問題ないとは思うが、議論の中で科学の定義が非常に狭く捉えられているかと感じている。科学の定義をもっと広くとらえたほうがいいと思う。

【委員】 科目が増えることに抵抗がある人がいる中で、「資料」が付された科目が2つあり、対外的に受け入れられにくいイメージを持たれかねないことは気になる。

【委員】 はじめに科目案を考えたとき、どういう内容が必要かを出し、それを科目に集約するという作業をした。そうしたところ、例えば資料論の中だけだったら、15回の講義の枠の中で必要な内容を全部教えることができないということがあって、別に科目を設けた。これは同じような科目だととられかねなくても、同じような名前の科目が別に2つあって、それだけ重要なのだという主張になるのではないか。

【委員】 博物館資料保存論は、展示環境とか、収蔵環境とか、地域の環境とかものも対象とした保存の内容なので、「資料」を入れるというのは避けた方が良いのではないか。

【委員】 資料は入れなければならないと思う。博物館資料の「資料」の概念はものすごく広いわけで、これは我々の共通認識としてあると思う。まさに環境といったものも含めて博物館資料というふうに見ることもできる。ただ博物館保存論では焦点がぼけてしまって何だかわからなくなると思う。

【委員】 博物館保存論というと、博物館そのものを保存するような用語に聞こえてしまう。

【委員】 英語で表記した場合どうするか。保存論の場合、欧米だとコンサベーションサイエンスと言っているが、サイエンスとすると、科学を削除するという趣旨を十分に踏まえていないことになると思う。

【委員】 欧米の場合、サイエンスというのは論という意味で使っている場合がある。いわゆる近代科学とか、現代科学のことを表しているわけではない。

【委員】 サイエンステクノロジーのようにそのまま近代科学を表す場合もある。

【委員】 コンサベーションセオリーではだめか。〜論というニュアンスに合うと思う。

【委員】 基本的には、英語を先行して考える必要はない。許される範囲の中で、日本人にわかりやすい内容、外国人にわかりやすい内容で、本質が変わらなければ、それは問題ない。

【委員】 大勢の意見としては博物館資料保存論で良いのではないかという考え方かと思う。 従来、日本には保存科学とか、保存論とか、そういうものが根づいていないことが大きな問題点としてあった。今回それを新たな科目として取り上げ、さらに保存科学という名前をつけたら、もう少し明確な整理ができるのではないかという考え方があったが、内容を狭くとらえてしまうおそれがあるということで、名称については、科学を削除した形で博物館資料保存論とすることとしたい。

【委員】 博物館と地域社会について、新しく科目として設けようしていたが、他の科目の中で包含できるものを随所に含んでいるということから、新たな科目として設けず、「博物館と地域社会」は科目案から削除するという考え方にまとまったと思うが、これについてはそれでいいか。

【委員】 博物館と地域社会の内容の中で、博物館と文化財の保存活用、地域の歴史的、文化的資産や景観、自然環境などはとても重要なものである。これは本当に人間の生存とも非常に緊密に結びついている部分で、これから、博物館や博物館人たちの役割として、積極的に担っていかないと行けないと思う。

【委員】 これは博物館学の問題であると同時に、基本的にはいろいろな分野のものが総合的にかかわってこないと達成できない分野だろうと思う。必要ないから削除するということではなくて、むしろ未成熟な分野であり、各方面にわたる分野であることから、この内容を包含できるよう他の科目の内容を整理・体系化していくことで、「博物館と地域社会」を削除し、10科目19単位としたい。

【委員】 移行期間については、とても1年2年でやれというのは無理との意見があった。いろいろな意見を踏まえると、3年ぐらいの猶予期間が必要かと思う。

【委員】 科目の内容等を精査し、体系化をするということついては、別途ワーキンググループを作り、この問題に取り組んでいただくことにしたい。

【委員】 内容の項目のところで、調査研究活動についての扱いをどうするか。資料論の中の一番下のところに博物館における調査研究の意義と方法というのが入っているけれども、内容を詰めていく中で、調査研究をどういうふうに位置づけるかというのは非常に大きな課題となる。それについては今後、内容の中で検討していきたい。

【事務局】 教育メディア学会から名称、視聴覚教育メディア論を残してほしいといったご意見が寄せられている。一見するとなくなったかのように見えるが、実態は合わせて2単位にしている。だから、なくなったわけでなくて、統合したということがわかるように、例えば博物館情報・メディア論というような名称にしてはどうかと思う。

【事務局】 現行科目と改正案のところで、現在、便宜的に入れている矢印について、例えば博物館展示論というのは必ずしも資料論だけじゃなくて、先ほどのメディアともちょっとかかわっていたりしていて、イメージとして正しく表せているか、検討する必要があろうかと思う。

【委員】 先ほどの軽重論、体系論というものを踏まえた上で、少し枠組みを見直すという考え方でよろしいか。ワーキンググループには、今の議論を踏まえて、新たな枠組み構築をお願いしたいと思う。

【委員】 無試験認定と今我々が検討している試験認定の間に関連性がない。これも非常に大きな問題だと前々から言われているが、今回この点について、文科省が手をつけて、省令改正の時期を見ながら、現状に合わせた検討をした上で改正しようという案であるが、それでよろしいか。

(委員了承)

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

指導研修係
電話番号:03-5253-4111(内線2974)

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