令和3年7月1日からの大雨に係る支援策とりまとめ

(最終更新日:令和3年7月30日)

1.基本方針

主旨
  • 新型コロナウイルス感染症の影響下で発生した令和3年7月1日からの大雨に対し、被災者の生活と生業の再建に向け、被災地のニーズや地域ごとの特性を踏まえつつ、できることは全てやるという姿勢の下、緊急に対応すべき施策を取りまとめます。
  • 引き続き被災者の目線に立ち、被災自治体等とともに、一日も早い被災地の応急復旧、生活の再建、生業の再建等に全力を尽くしていきます。
  • さらに、今回の災害対応を教訓として、今後起こり得る豪雨や台風等への対応に万全を期し、被害の発生を最小限に抑えるよう、関係機関が一体となって取り組みます。

令和3年7月1日からの大雨は、静岡県熱海市の土石流災害をはじめ、全国各地において土砂災害や浸水被害を発生させ、道路やガス、水道等のライフライン、農業や観光業等地域の産業に大きな被害をもたらしました。

これまで政府としては、新型コロナウイルス感染症への対応にも配慮しつつ、被災自治体と連携し、人命救助や行方不明者の捜索、避難生活環境の整備、応急復旧に全力で取り組んできたところですが、今なお、多くの方が避難生活を強いられ、不安な日々を過ごされています。また、被害を受けた中小・小規模事業者等には、事業の再開に向けて、様々な障害が立ちはだかっています。住まいの確保をはじめとした被災地の方々が安心して生活を再開できるような環境の整備、廃棄物・土砂の処理、中小・小規模事業者や農林漁業者の事業再開に向けて、政府として、被災者に寄り添った支援を一刻も早く行わなければなりません。

今回、新型コロナウイルス感染症の影響下における被災地のニーズや地域の特性を踏まえつつ、被災者の生活と生業の再建に向け、できることは全てやるという姿勢の下、緊急に対応すべき施策を取りまとめ、速やかに対応を進めていきます。

政府としては、被害の実態が明らかになるにつれて顕在化する課題にもしっかりと対応しつつ、引き続き、被災者の目線に立ち、被災自治体等とともに一日も早い被災地の応急復旧、生活の再建、そして生業の再建等に全力を尽くしていきます。

さらに、今回の災害対応を教訓として、今後起こり得る豪雨や台風等への対応に万全を期し、被害の発生を最小限に抑えるよう、関係機関が一体となって取り組みます。盛土による災害防止については、直ちに総点検を実施した上、土地利用規制含め必要な対策について早急に検討を行うとともに、線状降水帯の予測精度向上に向けた取組を強化・加速化します。

2.緊急対応策

(1)生活の再建

主旨
  • 住まいの確保
    • 応急仮設住宅の供与等及び公営住宅等の確保による応急的な住まいの確保と空室情報の提供 等
    • 被災者生活再建支援金の支給(最大300万円)
    • 被災者の住宅に関する相談窓口の設置、現地相談実施への支援 等
  • 災害廃棄物の処理
    • 宅地内の廃棄物・土砂の迅速な撤去による生活の早期再建促進
  • 切れ目のない被災者支援
    • 仮設住宅に入居する被災者等の見守り・相談支援等
    • 学習・就学支援 等
  • 金融支援等
    • 金融機関の返済猶予等の柔軟な対応、自然災害債務整理ガイドラインによる被災者の債務整理支援 等

しろまる住まいの確保

被災された方々にとって、住まいの確保は喫緊の課題です。

被災地のニーズに応じて、応急仮設住宅の供与や住宅の応急修理といった応急救助を行うとともに、被災者が利用可能な応急的な住まい等(公営住宅、国家公務員宿舎、民間賃貸住宅等)を確保します。住まいが確保できるまでは、新型コロナウイルス感染症対策も踏まえ、避難所としてホテル・旅館を活用することとし、その要する費用につき支援します。

被災者生活再建支援法が適用された自治体において、住宅が全壊した世帯等に対して最大300万円の被災者生活再建支援金を支給します。また、災害により亡くなられた方の遺族に対する災害弔慰金や、重度の障害を受けた方に対する災害障害見舞金を支給するとともに、生活再建のための災害援護資金の貸付けを行います。

加えて、住宅金融支援機構による低利融資や、被災者の住宅に関する相談窓口の設置・現地相談等の実施への支援、応急的な住まい等の空室情報についての被災者への情報提供等を行います。

しろまる災害廃棄物の処理

生活再建を進めるためには、今般の災害によって生じた大量の廃棄物、がれき、土砂の生活圏内からの撤去を一刻も早く行う必要があります。廃棄物、がれき、土砂の収集・運搬・処分や全壊家屋の解体を行う市町村に対して的確に財政支援を行います。宅地内に堆積した廃棄物及び土砂を迅速に撤去するため、国土交通省及び環境省が連携して、一括での撤去を支援します。

しろまる切れ目のない被災者支援

仮設住宅に入居する被災者等がそれぞれの環境の中で安心した日常生活を営むことができるよう、孤立防止等のための見守りや日常生活上の相談支援、住民同士の交流の機会の提供等を行います。また、今般の災害により家計が急変し修学が困難となった学生等に対する授業料等減免や給付型奨学金、学習支援や心のケア等に必要なスタッフの配置等を通じ、学習・就学支援等を実施します。このほか、現在も被災地で生活する方々が安心して日々の生活を過ごすことができるよう、引き続き、きめ細やかに支援を行っていきます。

しろまる金融支援等

災害救助法が適用された都道府県内の金融機関等に対して、日本銀行と連名で、預金の払戻時の柔軟な取扱いや貸出金の返済猶予等の条件変更対応、保険金支払いの迅速化や保険料払込みの猶予期間の延長等を要請しています。

また、自然災害による被災者の債務整理を円滑に行い、生活や事業の再建を支援するため、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を活用した債務整理支援を実施するとともに、債務整理を行う場合における弁護士等の登録支援専門家による手続支援に要する経費等の補助及びその周知広報を行います。

このほか、納税者の申請に基づき、国税に関する申告や納付等の期限の延長を行うとともに、納税者の実情に応じた申告相談等も行います。

(2)生業の再建

主旨
  • 中小・小規模事業者の支援
    • 小規模事業者支援推進事業の補助上限・補助率の引き上げ
    • 小規模事業者持続化補助金の優先採択
    • 中小企業団体等への特別相談窓口の設置
    • 日本政策金融公庫等による資金繰り支援等
    • 事業者支援の体制を迅速に整備し、継続的に支援を実施
  • 農林漁業者の支援
    • 被害を受けた山林、林道等の復旧、荒廃林地における森林整備、治山対策
    • 漁場環境の回復に向けた支援
    • 日本政策金融公庫等による資金繰り支援等
  • 観光復興に向けた支援
    • 被災観光地における「地域観光事業支援」を活用したクーポン券の上限金額のかさ上げ
    • 地域と連携したSNSやHPを通じた正確な被災地情報の発信等による観光需要回復や風評被害の払拭

【林道施設の法面崩れ等】

【街中の土石流被害】

しろまる中小・小規模事業者の支援

災害救助法が適用された9市2町を含む各県の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会及びよろず支援拠点並びに全国商店街振興組合連合会、適用地域内の中小企業基盤整備機構本部及び経済産業局に特別相談窓口を設置し、中小・小規模事業者等に各種支援策を案内します。

このほか、日本政策金融公庫による災害復旧貸付の実施、信用保証協会が実施するセーフティネット保証4号の実施、小規模企業共済の契約者に対する低利貸付け等の資金繰り支援を行うことに加え、新型コロナウイルス感染症により影響を受けている場合には新型コロナ対策の実質無利子・無担保融資について資金使途を災害復旧資金まで拡大する等の被害実態に合わせた十分な支援を行います。また、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫、信用保証協会において、被災した中小企業・小規模事業者の実情に応じた返済条件の緩和や貸出手続の弾力化等を行います。

災害救助法の適用を受け、局地的に多数の建物が倒壊するなど、再建が極めて困難な状況にある地域については、地方公共団体による小規模事業者支援推進事業の補助上限や補助率を引き上げるとともに、災害発生日以降の経費も支援対象とするほか、小規模事業者持続化補助金について、こうした地域の事業者を優先採択するなどの措置を講じます。

さらに、事業者支援の体制を迅速に整備し、現地の復旧状況や事業者ニーズなどを十分に把握しつつ、引き続き、困難な状況に置かれている事業者に寄り添いながら生業再建に向けて支援していきます。

しろまる農林漁業者の支援

農林水産業については、農業共済の早期支払や農業経営収入保険に係るつなぎ融資の実施、日本政策金融公庫による農林漁業セーフティネット資金等の貸付け等の資金繰り支援を行うとともに、日本政策金融公庫等における既往債務の返済条件の緩和、農林中央金庫等における貯金の払戻時の柔軟な取扱い等の要請、就農支援関連事業の弾力的運用の周知等を行います。

被災した木材加工流通施設や特用林産振興施設等の復旧・整備等について支援を実施するとともに、被害を受けた山林、林道等の復旧・整備をはじめ、災害発生の危険性が高い荒廃林地における治山対策・森林整備等を通じ、林野関係被害に対する支援を行います。

水産業共同利用施設等の再建・修繕や再建の前提となる損壊した施設の撤去等に要する経費を支援するとともに、漁場環境の回復に向けた支援を行います。

しろまる観光復興に向けた支援

大雨で大きな被害を受けた観光地における観光需要・経済活動の回復や風評被害の払拭等を図るため、現行の「地域観光事業支援」を活用して、当該観光地において、クーポン券の上限金額のかさ上げの措置を講ずることと併せ、観光庁のウェブサイトやSNSを通じ、地域と連携し、被災地域における観光地や交通機関の現状に関する正確な情報を発信します。また、宿泊事業者等の不安を解消するため、地方運輸局内に設置している特別相談窓口において、関係省庁と連携し、活用可能な支援策の紹介等を行います。

(3)災害復旧等

主旨
  • 公共土木施設等の迅速な災害復旧等
    • 被災した公共土木施設・農林水産業施設等の災害復旧
    • 大規模な土石流災害が発生した逢初川において、再度の災害防止のため国直轄の緊急的な砂防工事を実施
  • 被災した地域の復興まちづくり
    • 住宅地に局所的かつ甚大な土石流災害が生じ、更なる災害発生に警戒する必要がある熱海市について、まちづくりの方針策定を重点的に支援

【逢初(あいぞめ)橋付近の土石流被害】(静岡県提供)

しろまる公共土木施設等の迅速な災害復旧等

被災した公共土木施設や農林水産業施設等について、査定前着工を活用しつつ、災害復旧事業を行います。実施に当たっては、必要に応じて、机上査定限度額の引上げ等の「大規模災害時の災害査定の効率化」の事前ルールに準じて、被災自治体の災害査定に要する業務や期間等を縮減します。また、被災自治体からの要請に応じ、国土交通省の緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)、農林水産省のサポート・アドバイスチーム(MAFF-SAT)等を派遣するなど、被災状況調査や復旧方法、発注事務の助言等を通じ、災害復旧の迅速な実施を支援します。さらに、今回被害を受けた河川等については、必要に応じて再度の災害による被害を防止するため、改良復旧等の対応を行います。

国道135号の通行止めの影響を受ける地域における住民の生活に必要な足を確保するため、国道135号の代替路となる一般自動車道について、国道135号の通行規制が解除されるまでの間、無料通行が可能となるようにするとともに、運休となっている路線バスの円滑な代替交通等の運行や125cc以下の自動二輪及び原動機付自転車の通行が可能とするなど道路運送法の弾力的運用を実施しました。国道135号については通行規制が解除されましたが、残る道路の通行止めについても一刻も早く解消します。

大規模な土石流災害が発生した静岡県熱海市伊豆山の逢初川においては、再度災害の防止に当たり高度な技術力が必要であるため、源頭部における不安定な土砂の崩壊による再度災害を防止するための監視機能の強化を含む、国直轄による緊急的な砂防工事を実施します。被災自治体において実施する再度災害が懸念される箇所での緊急的な対策についても、技術的な助言も含めて支援します。

また、医療施設、水道施設、学校施設、文化財、社会福祉施設、交通安全施設等の災害復旧等を支援します。

しろまる被災した地域の復興まちづくり

静岡県熱海市における大規模な土石流災害は、住宅地に局所的かつ甚大な被害を生じさせ、更なる土砂災害の発生に警戒する必要がある中、早期に復興まちづくりの方針を策定する必要があることに鑑み、市町村が行う被災した地域の現況調査及び専門家の派遣により、当該地域の災害リスク等を踏まえた適切な土地利用のあり方を含む今後のまちづくりの方針策定について、重点的な支援を行います。その上で、策定された方針に基づき、必要な対応策を検討します。

しろまるその他

警察、消防及び自衛隊において、引き続き行方不明者の捜索・救助活動等を実施します。

(注記) 本施策により生ずる地方負担については、被災自治体の財政運営に支障が生じないよう、適切に地方財政措置を講じます。

3.今後の課題

主旨
  • 盛土による災害の防止に向けた総点検と対応策の検討
  • 線状降水帯の予測精度向上に向けた取組の強化・加速化

今回の災害対応を教訓として、今後起こり得る豪雨や台風等への対応に万全を期し、被害の発生を最小限に抑えるよう、関係機関が一体となって取り組みます。

しろまる盛土による災害の防止に向けた総点検と対応策の検討

国土交通省において盛土の可能性のある箇所を概略的に抽出し、抽出結果を関係省庁・地方公共団体に提供します。これを受け、危険な盛土の総点検を行うとともに、有識者会議・関係省庁連絡会議を立ち上げ、点検状況等を踏まえ、危険箇所への対応や土地利用規制など安全性を確保するために必要な対応策を検討します。

しろまる線状降水帯の予測精度向上に向けた取組の強化・加速化

近年、線状降水帯等大雨による甚大な被害が発生していることから、線状降水帯観測・予測システムの開発も含め、線状降水帯の予測の実現に向けた取組を強化・加速化させます。

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