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THE SITE

工期を15ヵ月短縮させる「施工の合理化」

中野セントラルパークサウス

中野区では「東京の新たなエネルギーを生み出す活動拠点」を目指し,
大規模な再開発を進めている。この5月末には,約16.8haの警察大学校跡地で
当社施工のメガオフィス「中野セントラルパークサウス」が竣工する。
この工事では,「施工の合理化」をキーワードに工期を15ヵ月短縮させた。
設計・施工の強みを活かした数々の取組みとは――。

[写真:全景。中央の公園を囲むように再開発が進む(2月1日撮影)]

全景。中央の公園を囲むように再開発が進む(2月1日撮影)

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工事概要

(仮称)中野四丁目開発計画区域5新築工事

場所:
東京都中野区
発注者:
中野駅前開発特定目的会社
設計・監理:
当社建築設計本部
用途:
オフィス棟―事務所,店舗,集会場,駐車場/レジデンス棟―共同住宅(17戸)
規模:
オフィス棟―S造(CFT構造)一部SRC造,
制震構造 B1,22F,PH1F 延べ151,577m2 /
レジデンス棟―RC造 5F 延べ1,748 m2
工期:
2010年6月〜2012年5月竣工予定

(東京建築支店施工)

[画像:地図]

全ての機能を兼ね備える複合市街地へ

新宿駅からJR中央線快速で約5分。近年,サブカルチャーの発信地で注目される中野は,都内屈指の人口密集地域だ。都心のベッドタウンとして発展し,南口側には昔ながらの商店街や木造住宅が残る一方,北口側には行政機関のほか,「ブロードウェイ」や「中野サンプラザ」,「中野サンモール」など多種多様な施設が林立する。

現在,再開発が進む警察大学校等跡地は駅の北側に位置し,五代将軍徳川綱吉の時代から国が一貫して管理してきた。2001年に大学校が府中へ移転。中野区は,ビジネス,商業,教育,医療,居住など,あらゆる機能を兼ね備えた複合市街地を目指し,約16.8haある跡地を「東京の新たなエネルギーを生み出す活動拠点」として形成する。

敷地内では既に東京警察病院が開業しているほか,明治大学,帝京平成大学,早稲田大学の3大学の進出が決まり,続々と再開発が進む。北口駅前の整備も同時に行われ,来春には中野通りをまたぐ「東西連絡路(陸路)」が完成し,信号待ちせず再開発エリアにアクセスできるようになる。2015年頃には,より近い場所に新改札が作られ,将来中野サンプラザ前にはバスターミナルを中心にした新しい広場が整備されて,駅と一体化した街が誕生する。

[写真:中野セントラルパークサウス高層階から富士山を望む]

中野セントラルパークサウス高層階から富士山を望む

[写真:北口から西へ歩くと,中野セントラルパークサウスが見えてくる(写真中央奥)]

北口から西へ歩くと,中野セントラルパークサウスが見えてくる(写真中央奥)

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[写真:再開発エリア周辺の計画図]

再開発エリア周辺の計画図

新しいワークスタイルを提供

この複数の開発事業を象徴するランドマーク「中野セントラルパークサウス」の設計・施工を当社は担当している。敷地面積約3.5ha,建物の規模は地上22階,地下1階,延床面積15万1,577m2 。オフィスが地上3〜21階に入り,1フロアの広さは5,000m2 超と日本最大級だ。1〜2階は商業施設や貸会議室用のスペースで,「賑わいのプロムナード」沿いに設けられたデッキでは緑を楽しみながらランチミーティングなどを行える。地下1階は約400人収容できるコンベンションホールと297台分の駐車場が入り,地上1階にランニングステーションも開設され,シャワールームやロッカールームを完備する。

充実した設備で新しいワークスタイルをサポートするだけでなく,災害時には防災拠点としての機能を担う。備蓄倉庫や充電施設などを備え,エリア内にある公園や病院,大学などと周辺地域を受け入れる体制を整える。

[写真:奥まで約132m続き,1フロアの面積は5,000m2 超と日本最大級]

奥まで約132m続き,1フロアの面積は5,000m2 超と日本最大級

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設計・施工の強みを活かした合理化

このメガオフィスの施工には,通常3年程度の工期が想定される。当工事は,23ヵ月と1年以上短縮して行われた。当社が全社を挙げて推進する「施工の合理化」が,超短工期を実現させたのである。現場を統括する豊田省治所長は,「設計・施工の強みを活かし,設計段階から施工図の準備を行いました。スケールメリットと,当社の合理化施工の実績をさらにブラッシュアップさせて,より安全で効率の良い作業を行えるよう練り上げました」と周到な計画について語る。

「ライザーユニット工法(竪管ユニット工法)」は,その合理化の一つ。現場で行う作業をユニット化し,鉄骨の組立てと同時期に竪管(注記) を施工する。1先に工場で竪管を床板とともに組み立て,2現場に搬入後,トラックの荷台に載せた状態から直接3階分の竪管を一気に700tタワークレーンで吊り上げて設置。衛生・空調設備工事の担当者である山下剛典機械設備課長代理は「各階に作業員を配置し,合図を行いながら慎重に揚重していきます。長さ12mにわたる竪管が所定の位置に設置されるまでの間,気が抜けません」と当時の緊張を語る。

(注記)竪管:給排水管や空調熱源などの配管

ライザーユニット工法

[写真:1タワークレーンで,3階分の長さ12mの竪管を一気に揚重する]

1タワークレーンで,3階分の長さ12mの竪管を一気に揚重する

[写真:豊田省治所長]

豊田省治所長

[写真:山下剛典機械設備課長代理]

山下剛典機械設備課長代理

[写真:2所定位置に投入]

2所定位置に投入

[写真:3位置を調整しながら設置]

3位置を調整しながら設置

[写真:4隙間を鉄板でふさぎ,作業完了]

4隙間を鉄板でふさぎ,作業完了

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また,地上ヤードにて鉄骨の組立てと同時期に設備工事を行う「スラブユニット工法」も,合理化を図る施工技術の一つである。1小梁鉄骨を組み立ててデッキプレートを敷き込み,2耐火被覆を施す。3空調ダクトや配管,スプリンクラーなどを吊り込んだ後,4ストックヤードに移動させて段積みし,51段ごとにクレーンで揚重,所定の位置に据え付けるという,システマチックな作業だ。監理技術者の増田孝弘副所長は「設備工事は通常躯体の完成を追いかけるようにして行うので,工期の後半に集中しがちです。これをどれだけ前倒しにするか,山崩しするかが課題でした」という。作業の前倒しは仮設エレベータの使用回数を大幅に減らし,工種ごとに単品で揚重していく手間が省けた。同時に高所作業も低減し,安全性が向上。ユニット化できた部分は,フロアの事務室部分で75%になる。

[写真:増田孝弘副所長]

増田孝弘副所長

スラブユニット工法

[写真:1小梁鉄骨を組み立て,デッキプレートを敷き込む(写真右奥にはストックヤードがある)]

1小梁鉄骨を組み立て,デッキプレートを敷き込む
(写真右奥にはストックヤードがある)

[写真:2耐火被覆を施工]

2耐火被覆を施工

[写真:3空調ダクトや配管,スプリンクラーなどを施工する(写真は,消火配管施工の様子)]

3空調ダクトや配管,スプリンクラーなどを施工する
(写真は,消火配管施工の様子)

[写真:4できたユニットからストックヤードへ移動させ,6段に積み重ねていく]

4できたユニットからストックヤードへ移動させ,6段に積み重ねていく

[写真:51段ごとにクレーンで揚重し,所定の位置に据え付ける]

51段ごとにクレーンで揚重し,所定の位置に据え付ける

これら合理化を成功させた鍵は,日々の工程調整だった。山下機械設備課長代理は「天候が崩れると,作業が滞らないように調整し直さなければなりません。綿密に練った工程を再度組み替える作業は,一つひとつをパズルのようにつなぎ合わせていくものでした」と振り返る。

設計・施工であることも大きく関係している。設備工事は,通常躯体工事が完了した箇所から始まるが,この現場では鉄骨の組立て開始時から設備工事にも着手し,機器,ダクト,配管継手に至るまで,鉄骨工事開始前までに発注を完了させた。作業の前倒しは,すなわち「計画の前倒し」も意味するのだ。設計段階に建築・設備の施工計画を立てられたことが,合理化を促したといえる。

そのほか,山留・土工事において敷地の広さを有効に活用して効率化を図るなど,様々な合理化が採用された。

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少数精鋭で大規模現場を支える

「現在,26人で現場を動かしています。規模の大きさを考えると人数はごく少数ですが,少ないからこそ工夫を凝らし,1人で2〜3人分の力を発揮しています」(増田副所長)。超短工期は,所員が日々の工夫を積み重ねた賜物でもある。また,新入社員が3人在籍し,現場は活気に溢れている。「若手社員であっても責任を持って行動できるように,日々レベルの高い仕事をするよう指導している」と豊田所長。実際に2,3年次の社員は5年次レベルの仕事に従事しているそうだ。増田副所長は「高いレベルの仕事を任せられることで,各々が考えて工夫するようになり若手も伸びます」と教育にも余念がない。現場の土台はこうした教育方針の下,築かれている。

現在,工事はほぼ完了し,現場では検査が行われている。「都心に近い場所にありながら,目前には1万本の木が植えられた公園が広がり,リフレッシュできるようになっている。再開発全体が中野の街を活性化させ,オフィスもその起爆剤になれば」と豊田所長は完成を待ちのぞむ。

中野セントラルパークサウスは5月末に竣工し,中野の街は賑わい溢れる複合市街地へ着々と準備が整う。

PERSONS 若手社員に聞く!

中野の現場の若手社員は,持ち前の前向きな姿勢と上司のきめ細かいフォローアップで,少数精鋭の一員として活躍している。今回彼らを代表して,建築の荒木挙さん(3年次),八汐洋平さん(2年次),設備の金子友恵さん(3年次)に話を聞いた。

[写真:金子友恵さん 八汐洋平さん 荒木 挙さん]

Q1. 普段の仕事はどうですか?

荒木さん 「まずは自分でやり,分からないことがあったら先輩と話し合います。聞きやすい環境を常に作ってくれているので,とても話しやすいです」
八汐さん 「チーム一体となって考える体制がしっかりしています。横だけでなく,縦の連携もとれていることがこの現場の良さです」
金子さん 「建築と設備のコミュニケーションがよくとれていて,お互い分からないところはすぐ確かめ合うので仕事がスムーズです」

Q2. 先輩社員の見習いたいところは?

荒木さん 「"見る目"があるところです。自分では気付けなかったことに気付く,瞬時の判断力と言うのでしょうか」
八汐さん 「適切なアドバイスをすぐ返してくれるところです。自分も後輩に対してそうでいられるよう,見習いたいです」
金子さん 「難しいことはディテールを描いてくれるところです。分かりやすく,その丁寧さにいつも助けられています」

Q3. 最後に一言

3人 「仕事とプライベートのONとOFFをしっかりもつことが大切です!」

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