社長メッセージ
皆さまには日頃から、日本赤十字社の活動にご理解とお力添えを賜っておりますことに、心より御礼を申し上げます。
2024年は各地で地震や大雨など多くの自然災害がありました。中でも石川県では、元日に能登半島地震、9月には大雨災害と引き続きの災害に見舞われ、また2025年2月には、東日本大震災の被災地でもある岩手県大船渡市において大きな山林火災なども発生しております。
近年はこうした例にもあるように、以前にも増して風水害は大規模化、頻発化しており、その一因は地球温暖化によると考えられます。そこで日本赤十字社では、2023年11月には「日本赤十字社における気候変動対応基本方針」を策定し、また2024年12月には「日本赤十字社の気候変動対応にかかるアクション・プラン」を作成しました。これらの方針のもと、引き続き、人道支援団体として気候変動対応に全力で取り組んでまいります。
国外においても、さまざまな自然災害による人道危機は世界各地で発生しております。2025年3月には、ミャンマー中部で発生した大きな地震により多くの人命が失われました。この災害に対して日本赤十字社からは、被災地での巡回診療を支援するための機材の提供や職員の派遣を行いました。
また、収束の兆しの見えない武力紛争による人道危機はますます深刻さを増しております。そのような中、誠に残念なことに、2025年3月に、イスラエル・ガザ人道危機下において赤新月の標章をつけた救急車で移動中のパレスチナ赤新月社の救急隊員が攻撃され、8名が犠牲となり、1名が拘束されるという事案も発生しております。この事案に対し、国際赤十字・赤新月社連盟は、「人道支援要員の殺害は、国際人道法に対する容認し難い違反であり、今回の殺害および拘束に関して悲しみと連帯、そして憤りをもって、このようなことが繰り返されないよう一致団結する」という内容の声明を直ちに発表しました。日本赤十字社はいち早くこの声明に賛同するとともに、紛争下における人道支援活動の保護を訴える声明を発表したところであり、日本政府とも連携のうえ、国際人道法の普及に今後もいっそう努めてまいります。
日本赤十字社は、2027年5月1日に創立150周年を迎えます。それに向けて2024年には、「日本赤十字社創立150周年プロジェクト」を立ち上げました。創立200年までを見据えた「新しい時代の赤十字」の構築を目指しています。赤十字運動に携わる全ての皆さまと一緒に力を合わせてこの記念事業をつくりあげてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本赤十字社の起源は、西南戦争において政府による救いの手の届かない戦傷者の姿に心を痛めた佐野常民が、一人でも多くのひとを救うために博愛社を創設したことに遡ります。苦しんでいるひとたちに手を差し伸べ、その最後のよりどころになるという、その創立理念は時代を経ても決して色あせることはありません。いつの時代にも変わることのないこの創立理念を、将来に向けて実現し続けられるよう、日本赤十字社は、さらに進化を続けていかなければならないと考えています。
そのためには皆さまのお力添えは欠かせません。今後とも引き続き赤十字運動へのご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
せいけ・あつし◎にじゅうまる 1954年生まれ。1978年慶應義塾大学経済学部卒業、博士(商学)。慶應義塾大学商学部教授などを経て、2009年から2017年まで慶應義塾長。現在、全世代型社会保障構築会議座長なども務める。