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調査シリーズNo.219
派遣労働者の同一労働同一賃金ルール施行状況と
コロナ禍における就業状況に関する調査

2022年3月31日

概要

研究の目的

本調査は、派遣労働における同一労働同一賃金施行の状況と新型コロナウィルス感染拡大下の就業状況を、派遣元事業所調査から掴むことを目的とする。

同一労働同一賃金が2020年4月に施行された。本調査(20年度調査)では、施行前の状況を把握した前回調査(19年度調査)と、施行後の状況との比較分析を行う。また、2020年初頭からの新型コロナウィルス感染拡大下における派遣労働への影響と、雇用対策の状況を把握する。

研究の方法

派遣元事業所へのアンケート調査による。調査対象は、2019年度調査と同じである。

調査期間:
2021年2月1日〜3月20日
調査対象事業所数:
23,805件
有効回収数:
8,389件
有効回収率:
35.2%

主な事実発見

  1. 賃金と派遣料金の傾向について:賃金よりも派遣料金の上昇が顕著

    2018年度(19年度調査)の数値と比較すると、賃金は平均値で514.35円、中央値で864.0円増加しており、平均値でみると3.3%上昇している。派遣料金は平均値で2,816.97円、平均値の上昇率は11.7%で賃金より大きい。

  2. 同一労働同一賃金実施状況について

    <賃金決定方式は「労使協定方式」が8割以上を占める>

    派遣労働者の待遇を決定する方式として、「派遣先均等・均衡方式」 、「労使協定方式」 のいずれかの方式によって決めることになっているが、派遣元事業所の83.3%が「労使協定方式」のみ、5.7%が「派遣先均等・均衡方式」のみ、4.0%が「2方式併用」(3選択肢の合計)となっており、大半が「労使協定方式」によって派遣労働者の待遇を決定している。

    <賃金総額が「増えた」とする派遣元事業所が約半数、「労使協定方式」を選択した事業所で「増えた」とする割合が高い。>

    同一労働同一賃金施行後の賃金と派遣料金について、約半数の事業所で「増えた」、もう半分が「変わらなかった」が占め、「減った」割合は極めて少なく1%未満であった(図表1)。また、「派遣先均等・均衡方式」を選択した事業所よりも「労使協定方式」を選択した事業所で「増えた」の合計が、派遣料金では8.7ポイント、賃金(交通費を除く)で10ポイント高くなっている。

    図表1 派遣料金と賃金水準の変化

    [画像:図表1画像]

    <能力や成果の賃金への反映割合が上昇>

    19年度調査から20年度調査への変化をみると、「職務の内容」「能力・経験」「職務の成果」ともに、賃金に反映されているとする割合が10ポイント以上増えている(図表2)。同一労働同一賃金施行の影響により、この1年で急激に能力評価制度や賃金表が整備されたと考えられる。

    図表2 職務内容、能力、成果の賃金への反映

    [画像:図表2画像]

    <手当類で適用割合が高まったのは、通勤手当、技能手当、賞与、退職金>

    同一労働同一賃金の施行により、19年度調査と20年度調査を比較すると多くの手当等で適用割合が増えている。無期雇用派遣の方が有期雇用派遣に比べて適用割合が高く、最も適用割合が高いのは「通勤手当」で、上昇幅が大きいのは、「退職金」である。その他、「賞与」や「技能手当」などの職務関連手当の適用割合が上昇している(図表3)。

    図表3 手当等の変化(通勤手当、技能手当、賞与、退職金)

    図表3画像 画像クリックで拡大表示

    <過半数代表者を派遣労働者から選出している事業所は約半数>

    同一労働同一賃金の賃金決定方式で「労使協定方式」を採用した場合、派遣元は労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と労使協定を締結し、派遣労働者の待遇を決定しなければならない。ほとんどの事業所では過半数代表者を選出しており、派遣労働者を代表者として選出している事業所は51.8%となっている。

    <派遣先均等・均衡方式を選択した理由と課題>

    同一労働同一賃金の賃金決定方式で「派遣先均等・均衡方式」を採用した事業所は1割に満たない。これらの事業所で「派遣先均等・均衡方式」を選択した理由は、「取引している派遣先の数が少ないから」が46.5%で最も高い。派遣先均等・均衡方式を採用した事業所に課題を聞いたところ、「ルールが複雑すぎて、派遣先への説明が難しい」が30.3%、「派遣先から情報提供されるまでに時間がかかる」が30.1%となっている。

  3. コロナ禍の派遣労働への影響について

    <有期雇用派遣労働者の急激な減少と無期雇用派遣労働者のじわじわ続く減少>

    派遣労働者の2020年1月〜12月の四半期ごとの前年比の増減をみると、全体的に有期雇用派遣で「減少」したとする事業所割合が高くなっている。四半期でみると、有期雇用派遣はII期(2020年4〜6月)のコロナ禍のインパクトに即応して減少割合が急激に高まり、その後の回復もみられるものの、無期雇用派遣では期が深まるにつれ「減少」割合がじわじわと高まっている(図表4)。

    図表4 派遣労働者数の増減、事業所割合(上図:無期雇用派遣、下図:有期雇用派遣)

    [画像:図表4画像]

    <「製造系」と「販売・サービス系」減少が顕著、それに関連した業務も減少>

    四半期のII期(2020年4〜6月)、IV期(2020年10〜12月)について派遣労働者数の増減を「主な事業」でみると、「製造系」や「販売・サービス系」では無期、有期雇用派遣労働者ともに「減少」とする事業所割合が高く、また、派遣労働者が減少した職種をみたところ、「製品製造・加工処理従事者」、「接客・給仕職業従事者」、「機械組立従事者」、「飲食物調理従事者」、「商品販売従事者」、「製品検査従事者」と、上位を製造系業務や接客、販売、飲食等の業務が占めており、コロナ禍の影響がこれらの職種に強く出ている。

    <雇用調整助成金を利用した事業所は全体の約3割、4月から約4か月利用>

    雇用調整助成金を利用した派遣元事業所は全体の約3割(29.2%)、「利用した」割合が高いのは、「製造系」と「販売・サービス系」であった。雇用調整助成金を利用し始めた月は「4月」が圧倒的に多く、1人あたりの利用した月数は、平均値が4.58か月(中央値4か月)となっている。

    <休業になった派遣先が「ある」とした事業所は全体の約3分の1>

    休業になった派遣先が「ある(あった)」割合は36.5%で、「主な事業」別でみると、「製造系」で72.4%と圧倒的に割合が高く、次に「販売・サービス系」が58.9%となっている。派遣先が休業になった時、平均賃金の6割を超えて支払うケースが全体の66.8%と過半数となっている。

    <コロナ禍の影響により派遣先都合で契約を打ち切られた労働者がいる事業所は全体の約1割、契約不更新は約3割>

    契約打ち切りになった労働者が「いる」派遣元事業所は13.1%で、「製造系」「販売・サービス系」で契約打ち切りになった労働者がいる事業所割合が高い。一方、コロナ禍の影響で派遣先との契約が不更新となったと推測される案件が「ある」とした派遣元事業所は26.3%となっている。有期雇用派遣労働者がいる事業所では、契約不更新が「ある」割合が高く、「製造系」「販売・サービス系」で割合が高い。

政策的インプリケーション

  • 派遣労働の同一労働同一賃金施行により、賃金と派遣料金の引き上げの効果がみられ、特に「労使協定方式」を選択した事業所での引き上げ効果が高い。また、能力・成果等の賃金への反映や手当等の適用が拡大してきており、約8割の派遣元事業所が選択している「労使協定方式」の影響が大きいと考えられる。
  • コロナ禍での有期雇用派遣と無期雇用派遣では雇用減少のスピードが異なる。有期雇用派遣は雇用の調整弁としてより弾力的に時々の需給の増減に対応するが、無期雇用派遣は徐々に減少していく傾向にあり、より長期的な視野で雇用動向を観察する必要がある。

政策への貢献

派遣法の改正、政策提言の根拠となる資料として貢献する。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「人口・雇用構造の変化等に対応した労働・雇用政策のあり方に関する研究」
サブテーマ「非正規労働者の処遇と就業条件の改善に関する研究」

研究期間

令和元〜3年度

執筆担当者

小野 晶子
労働政策研究・研修機構 副統括研究員
古俣 誠司
労働政策研究・研修機構 リサーチアソシエイト

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.153)。

関連の研究成果

入手方法等

入手方法

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
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成果普及課 03-5903-6263

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