平成25年10月24日
日本原子力発電株式会社
原子力規制委員会への意見書の提出等について
当社は、敦賀発電所敷地内破砕帯調査に係る審議等に関し、本日、当社副社長の市村
が原子力規制庁櫻田審議官と面談を行いましたので、その概要をお知らせいたします。
1.平成25年7月16日付異議申立ての却下決定に対する意見書の提出について
当社の敦賀発電所2号機使用済燃料貯蔵設備に関する報告徴収命令に関し、当
社が行った異議申立てに対し、原子力規制委員会は、平成25年10月2日付で
当該異議申立てを却下するとの決定を下しました。当社は、本件決定は違法な行
政処分であると考えていることから、
添付の意見書を原子力規制委員会に提出し、
文書でのご回答をお願いしました。
⇒原子力規制庁からは、
委員長宛文書であるので委員長に報告したうえでどう
対応するか考えたい旨のご回答がありました。
【意見のポイント】
異議申立てに対する却下決定は違法であること、当社は、なお異議申立ての利益を有してい
ること。
(1)平成25年5月29日付報告徴収命令に応じた後であるからといって、異議申立ての利益が
消滅することにはならない。
原子炉等規制法上、原子力規制委員会による平成25年5月29日付報告徴収命令に対
する報告が強制されている(報告しなかった場合には罰則が科される)ことから、当社と
しては、異議申立てを提起しつつ、この命令に応ずる以外に選択肢はなかった。一方、原
子力規制委員会は、当社が平成25年7月31日付で報告したことをもって、異議申立て
を却下した。
今般の却下決定は、行政不服審査法の目的(国民の権利利益の救済及び行政の適正な運
営確保)に反し、また、行政庁の処分に不服がある者には広く不服申立てが認められると
の規定にも反する、行政庁として違法な判断である。
したがって、報告徴収命令に応じた後であるからといって、異議申立ての利益が消滅す
ることにはならない。
(2)当該報告徴収命令が完了したのか合理的に判断できず、また、将来の不利益な取扱いのおそ
れが存することから、当社は、なお処分の取消しによって回復すべき異議申立ての利益を有し
ている。
本件では、適法に事業遂行している事業者が、突然報告徴収命令を出され、行政庁が求
める報告内容は何か、その後に後続処分が予定されているのか、それはいかなる後続処分
なのか、
そして事業者はいかなる対応をすればよいのか、
具体的な判断材料を与えられず、
行政庁の一方的な裁量に委ねられた状態に留め置かれているといった杜撰さがある。
また、平成25年5月29日付報告徴収命令に対する報告が強制され(報告しなかった
場合には罰則が科される)、報告したことをもって異議申立てを却下して争う途を排除した
ことを鑑みれば、今後も、同様の扱いとされることは必定と考える。
このように、報告徴収命令が完了したのか合理的に判断できず、また、将来の不利益な
取扱いのおそれが存することから、なお処分の取消しによって回復すべき異議申立ての利
益を有している。
2.敦賀発電所敷地内破砕帯調査に関する審議の実施等について
平成25年10月9日開催の原子力規制委員会の定例会合において、
当社が平
成25年7月31日に原子力規制委員会に提出した敦賀発電所2号機の使用済
燃料貯蔵設備に関する報告が了承されたことは、
当該報告の前提となっているD
-1破砕帯が活断層でないことを認めたものと理解していることを前提とし、平成25年9月30日の面談の際にお願いした、
敦賀発電所敷地内破砕帯調査に関
する審議の実施、それに先立つ審議の進め方の提示、関係する専門家による現地
の早期確認等について、その後の検討状況、段取り等についてお聞きしました。
⇒原子力規制庁からは、
現在事務方において論点整理を行っているところであ
るが、その中で事務方による現地確認が必要であると考えており、今後の
段取りを含め検討している旨のご回答を頂きました。
3.鈴木毅彦首都大学東京教授とのメールのやりとりに関係する文書、情報の公表に
ついて
9月30日の面談の際、
評価書においてD-1破砕帯が活断層であると判断し
た最大の根拠としていた鈴木教授とのメールのやりとりに関係する文書、
情報は
すべて公表して頂くようお願いしました。本件に関しては、平成25年10月7
日付行政文書開示決定通知書(原管地発第 1310071 号)により一部が開示されま
したが、特に宮内教授と鈴木教授との間での具体的なやり取り、鈴木教授からの
コメントを有識者会合の配布資料に記載するに当たっての検討過程等、
未だ判然
としていない重要な事実があることから、
鈴木教授とのメールのやりとりに関係
する文書、情報はすべて早急に公表して頂くよう、重ねてお願いしました。
⇒原子力規制庁としては、
これまでに公開の場に提供している資料及び発言に
加え、10月7日までに当社の請求に基づき開示した情報が全てであり、
当庁として公開できるものは全て出し尽くしている旨のご回答でした。
4.平成25年10月2日に当社が提出した2つの文書について
10月2日開催の原子力規制委員会定例会合で当該異議申立てを却下すると
の決定に至る過程においては、議論された形跡がうかがわれないなど、当社とし
て、大変遺憾と考えており、また、当該異議申立てに関連して平成25年10月
2日に当社が提出した2つの文書(「『本件処分に対する異議申立ての理由』の補
充について」及び「参考人の陳述に関する申立てについて」
)は、以下のとおり、
適法に提出されたものであり、原子力規制委員会においては、法律に従い早急に
審理を行って頂くよう、改めてお願いしました。
【10月2日に提出した「2つの文書」についての当社の考え】
(1)原子力規制委員会は、10月2日に開催された定例会合で本件決定を行ったが、審議の予
定も意図的に公表せず、原子力規制委員会の決定が抜き打ち的に行われたため、文書の提出
がそれと前後したかのように見えるが、当社としては、予定の行動として法律の規定に則っ
て適法に提出したものであり、それを「手続上、また内容的にも原子力規制委員会が審議、
判断する必要はない」と一方的に判断されたことは、国民の権利利益の救済法である行政不
服審査法の趣旨、精神に真っ向から反する、行政庁として不適切な対応であると考える。
(2)また、審議の中で市村管理官は、
「異議申立てに対する決定を行った後に異議申立人から受
けた書面について、行政庁が審理、判断しなければならないというような行政不服審査法の
規定はない」と発言されているが、田中委員長も市村管理官も認めておられるとおり、本件
決定の効力は、決定書が翌3日に当社に到達したことによりはじめて発生したのであり、そ
れ以前に適法に提出された文書については、行政庁が審理、判断しなければならないのは、
法律に基づく義務である。したがって、この発言は、法律の解釈を誤ったものであり、取り
消されるべきと考える。
(3)しかも、さらに「2つの書面でございますけれども、この内容につきましても、これを背
景にいたしますと、ご覧のとおり何れも異議申立ての争点でございました、異議申立ての利
益があるかどうかについての判断とは何ら関係のないもの」と発言されているが、これは異
議申立ての趣旨を曲解した判断と思われる。当社が異議申立てを行った趣旨は、その理由書
で明らかにしているとおり、活断層であるとした判断は誤りであること、その判断に至る審
議過程が適正でなかったこと、さらには当該命令が法的根拠を欠いた違法な行政処分である
ことが争点であったのであり、決して「異議申立ての利益の有無」が争点であった訳ではな
く、当社としては受け入れることはできない。
また、これに関し、当社から、10月9日の原子力規制委員会定例会合及び記
者会見の発言には前提となる事実関係及び法律解釈に誤りがあることを指摘し
ました。
⇒原子力規制庁からは、
10月9日の会合で事務方として判断したものを委員
会に報告したことで処理は終わっている旨のご回答がありました。
・添付資料(本日の提出資料)
添付1:
「本日のお願い事項」
添付2:
「平成25年10月2日付異議申立て却下決定に対する意見」
添付3:
「10月2日の原子力規制委員会に対する当社からの2つの文書の提出に
ついて(当社の考え)」 (10月9日付当社ホームページ掲載資料)
添付4:
「原子力規制委員会から送付された異議申立て却下決定通知の送達記録」
以 上 -1-平 成 2 5 年 1 0 月 2 4 日
日 本 原 子 力 発 電 株 式 会 社
本 日 の お 願 い 事 項
1 . 去 る 1 0 月 9 日 の 原 子 力 規 制 委 員 会 に お い て 平 成 2 5 年 7 月 3 1 日
付 の 当 社 報 告 が 了 承 さ れ た こ と は 、 当 該 報 告 の 前 提 と な っ て い る D -
1 破 砕 帯 が 活 断 層 で な い こ と を 認 め た も の と 理 解 し て お り ま す 。
ま た 、当 社 が 報 告 書 を 提 出( 7 月 1 1 日 )し て か ら 3 ケ 月 半 、第 1 回
検 討 会 合 ( 8 月 3 0 日 ) か ら 1 ヶ 月 半 以 上 が 経 過 し ま し た 。 敦 賀 発 電
所 敷 地 内 破 砕 帯 調 査 に 関 す る 審 議 の 実 施 、 そ れ に 先 立 つ 審 議 の 進 め 方
の 提 示 、 関 係 す る 専 門 家 に よ る 現 地 の 早 期 確 認 等 に つ い て 、 9 月 3 0
日 の 面 談 の 際 に お 願 い し ま し た 。 そ の 後 1 ヶ 月 近 く が 経 過 し て い ま す
が 、 そ の 後 の 検 討 状 況 、 今 後 の 段 取 り 等 に つ い て お 教 え い た だ き た い
と 思 い ま す 。
2 . 鈴 木 教 授 か ら の メ ー ル に 関 係 す る 文 書 、 情 報 の 公 表 に つ い て 、 特 に
宮 内 教 授 と 鈴 木 教 授 と の 間 で の 具 体 的 な や り 取 り 、 鈴 木 教 授 か ら の コ
メ ン ト を 有 識 者 会 合 の 配 布 資 料 に 記 載 す る に 当 た っ て の 検 討 過 程 等 、
未 だ 判 然 と し な い 重 要 な 事 実 が 多 々 あ り ま す 。
つ き ま し て は 、 当 社 と し て は 、 鈴 木 教 授 か ら の メ ー ル に 関 係 す る 文
書 、 情 報 は 早 急 に す べ て 公 表 し て 頂 く よ う 、 重 ね て お 願 い し た い と 思
い ま す 。
3 . 平 成 2 5 年 5 月 2 9 日 付 報 告 徴 収 命 令 に 関 し 、 当 社 が 平 成 2 5 年 7
月 1 6 日 付 で 行 っ た 異 議 申 立 て に 対 し 、原子力規制委員会は、平成25
年 1 0 月 2 日 付 で 当 該 異 議 申 立 て を 却 下 す る と の 決 定 を 下 し ま し た 。
当 社 は 、 本 件 決 定 は 違 法 な 行 政 処 分 で あ る と 考 え て い る こ と か ら 、
本 件 に 関 す る 意 見 書 を 提 出 い た し ま す 。 そ の 要 旨 は 、 次 の と お り で あ
り ま す 。
(1)平 成 2 5 年 5 月 2 9 日 付 報 告 徴 収 命 令 に 応 じ た 後 で あ る か ら と
い っ て 、 異 議 申 立 て の 利 益 が 消 滅 す る こ と に は な ら な い 。
添 付 1 -2-(2)当 該 報 告 徴 収 命 令 が 完 了 し た の か 合 理 的 に 判 断 で き ず 、ま た 、将
来 の 不 利 益 な 取 扱 い の お そ れ が 存 す る こ と か ら 、 当 社 は 、 な お 処
分 の 取 消 し に よ っ て 回 復 す べ き 異 議 申 立 て の 利 益 を 有 し て い る 。
本 意 見 書 に 対 す る 原 子 力 規 制 委 員 会 の ご 見 解 を 文 書 に て 早 急 に ご 回
答 頂 く よ う お 願 い し ま す 。
4 . 1 0 月 2 日 開 催 の 原 子 力 規 制 委 員 会 定 例 会 合 で 当 該 異 議 申 立 て を 却
下 す る と の 決 定 に 至 る 過 程 に お い て は 、 委 員 長 と 委 員 と の 間 、 委 員 同
士 間 で 議 論 さ れ た 形 跡 が う か が わ れ な い な ど 、 国 民 の 権 利 利 益 の 救 済
を 目 的 と し た 法 律 の 立 法 趣 旨 、 精 神 を 踏 ま え て お ら れ な い と 思 わ れ る
と こ ろ が あ り 、 こ の 点 に つ い て は 、 当 社 と し て 、 大 変 遺 憾 に 思 っ て お
り ま す 。
ま た 、 当 該 異 議 申 立 て に 関 連 し て 平 成 2 5 年 1 0 月 2 日 に 当 社 が 提
出 し た 2 つ の 文 書 (「『 本 件 処 分 に 対 す る 異 議 申 立 て の 理 由 』 の 補 充 に
つ い て 」及 び「 参 考 人 の 陳 述 に 関 す る 申 立 て に つ い て 」
)は 、適 法 に 提
出 さ れ た も の で あ り ま す 。 そ れ を 行 政 庁 が 審 理 す る の は 、 行 政 不 服 審
査 法 に よ り 「 国 民 の 権 利 利 益 の 救 済 」 の 観 点 か ら 行 政 庁 に 課 さ れ た 義
務 と 考 え ま す の で 、 原 子 力 規 制 委 員 会 に お い て は 、 法 律 に 従 い 早 急 に
審 理 を 行 っ て 頂 く よ う 、 改 め て お 願 い し た い と 思 い ま す ( 1 0 月 9 日
付 当 社 プ レ ス 文 「 1 0 月 2 日 の 原 子 力 規 制 委 員 会 に 対 す る 当 社 か ら の
2 つ の 文 書 の 提 出 に つ い て ( 当 社 の 考 え )
」 参 照 )。以 上 -1-平成25年10月24日
原子力規制委員会
委員長 田中 俊一 殿
日本原子力発電株式会社
取締役社長 濱田 康男
平成25年10月2日付異議申立て却下決定に対する意見
平成25年10月2日付の原子力規制委員会による当社異議申立てに対する
却下決定(以下「本却下決定」という。
)は違法であり、当社の異議申立ての利益
は失われていません。以下、申し述べます。
当社は、原子力規制委員会が当社に宛てた平成25年5月29日付報告徴収命
令(以下「本件処分」という。
)が違法な処分であるとして本年7月16日付で異
議申立てを行いましたが、一方、原子炉等規制法上、本件処分に対する履行が強
制されていたため、当社としては、異議申立てを維持しつつ本件処分に応ずる他
なかったと考えています。
したがって、
本件処分に応じた後であるからといって、
異議申立ての利益が消滅することにはならないのであり、
このことは判例1でも認
められています。
時系列をたどると、本件処分は本年5月29日に出され、これに対する異議申
立ての期限は本年7月28日であり、一方、本件処分に対する報告期限は、原子
力規制委員会により本年7月31日とされました。すなわち、異議申立ての期限
とほぼ同じ期限が、
本件処分に対する履行期限として設定されたことになります。
当社は、異議申立てに対する原子力規制委員会の判断が出される前に本件処分に
対する履行が強制されないよう、同委員会に対し、異議申立てとともに本件処分
に対する執行停止の申立てを行いましたが、当該申立ては本年7月24日に却下
されたため、当社としては、異議申立てを維持しつつ本件処分に応ずる以外にと
りうる選択肢はなくなりました。当社は、異議申立てをあくまで維持することを
1 仙台高判平成 7 年 1 月 26 日(最判平成 10 年 1 月 22 日上告棄却)
。行政事件訴訟法に基づく取
消訴訟の事案であるが、法的評価に関して基本的に本件と相違すべきところはない。
添付2 -2-明示した上で、本件処分に対する報告を行いました。
しかるに、原子力規制委員会は、当社に対し、本件処分に対する履行を強制し
ておきながら、当社が報告したことをもって、当社の異議申立てに対し却下決定
を下しました。これは、行政不服審査法が定める「行政庁の違法又は不当な処分
その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服
申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済
を図るとともに、行政の適正な運営を確保する」
(第1条第1項)という同法の目
的に真っ向から反し、また同様に、行政庁の処分に不服がある者には広く一般的
に不服申立てを認めている同法第4条第1項の規定にも反する、行政庁として許
されない違法な判断であります。これでは、本件のような事案において、行政庁
がいくら違法な処分を行っても、国民は処分の違法性を争う途を閉ざされている
ことになります。原子力規制委員会の判断が正義及び立法趣旨に反する違法なも
のであることは明らかであります。
本却下決定が違法であることの議論は上記にて尽くされていると考えますが、
なお念のため、本件処分の内容等からも、本件において当社の異議申立ての利益
が失われていないことを申し述べます。
原子炉等規制法第67条第1項に基づく報告徴収命令として、本件処分ほど唐
突に出され、趣旨及び内容が曖昧なものは、過去に例を見ないと考えます。本件
処分において報告を命ぜられた事項には、あるべき前提条件が欠如しており、当
社は独自に条件設定して報告を行わざるを得ませんでした。
なお、原子力規制委員会の本却下決定の理由書(以下「理由書」という。)によれば、
「同年8月14日に開催された第18回原子力規制委員会の会議録におい
ても、
『原子炉等規制法の規定に基づいて命じていたものについては、
回答された』
と報告され、これに対して原子力規制委員会委員長が、本件報告徴収命令に対す
る報告は完了した旨の発言をし、これが同委員会において何らの異議なく了承さ
れていることにかんがみれば、同年7月31日をもって当委員会に対して異議申
立人から同命令に対する報告が行われたことにより、同命令により異議申立人が
負っていた法律上の報告義務は消滅したものと認められる」とされていますが、
そもそも同委員会の了承の法的意味は不明であり、またその後、当社は、原子力
規制庁の要請により、同庁から6回にわたるヒアリング(説明、質問、要求等) -3-を受け、数百万円の支出を要する追加解析を行うことを余儀なくされており、理
由書の記載と明らかに矛盾したことが行われています。
当社は、罰則の付された行政処分を何故突然課せられたのか理由が分からない
まま報告義務を負うことになり、また報告事項も曖昧であったため、何をもって
本件処分に対する履行と言えるのかの合理的な判断基準を終始持ち得ませんでし
た。このことは、本年10月9日開催の原子力規制委員会において「現時点にお
いて、当委員会として早急に追加の対応を求める必要はないと判断する。」とさ
れても何ら変わるものではありません。
また、後続処分について、理由書では、原子炉等規制法上、報告徴収命令の発
令により必然的に何らかの後続処分が行われる法的仕組みも、同命令を後続処分
を行う不可欠の要件と位置づける法的仕組みも、報告徴収命令を受けた者を不利
益に取り扱うことを認めた法的仕組みもない旨述べています。しかしながら、そ
もそも報告徴収命令を前提とする規定や法的仕組みは、
原子炉等規制法に限らず、
我が国の実定法上存在しないことは明らかであるため、原子力規制委員会におか
れては、むしろ報告徴収命令の趣旨・内容と運用実態、被規制者が被る不利益の
おそれ等を具体的に考慮することが必要です。
本件では、適法に事業遂行している事業者が、突然報告徴収命令を出され、行
政庁が求める報告内容は何か、その後に後続処分が予定されているのか、それは
いかなる後続処分なのか、そして事業者はいかなる対応をすればよいのか、具体
的な判断材料を何ら与えられないまま、行政庁の一方的な裁量に委ねられた状態
に留め置かれています。このような本件処分の杜撰さこそが、問題の核心なので
あります。
理由書は、原子力規制委員会が今後当社に追加の報告を求め、また、何らかの
後続処分をした場合に、それが不服であれば、それ自体について争えば良いと言
っていると思われますが、本件処分について罰則をもって履行を強制しながら、
履行したことをもって異議申立てを却下して、
争う途を排除したことに鑑みれば、
何らかの後続処分等においても同様の扱いとされることは必定と考えます。
当社は、このように、本件処分が完了したのか合理的に判断できず、また、仮
に本件処分の効果がなくなったとしても、将来の不利益な取扱いのおそれが存す -4-ることから、なお処分の取消しによって回復すべき異議申立ての利益を有してい
ます。
以上のとおり、当社の異議申立ての利益は失われておらず、本却下決定は違法
であると考えます。
なお、当社が行った本年7月23日付検証の申立て、同年8月30日付参考人
の陳述に関する申立て及び同年9月25日付異議申立人の審尋の申立てについて
は、異議申立ての利益がないという誤った判断のもとに、いずれも証拠調べの必
要性なしとして却下されておりますが、これらは本却下決定と同様、違法な判断
であります。
最後に、当社が行った本年10月2日付参考人の陳述に関する申立てに対する
判断は、未だなされていないことを申し添えます。
以 上 -5-(参考)
「報告徴収命令に応じた後であるからといって、異議申立ての利益が消滅することにはならない
ことを明示した判例」
(仙台高判平成 7 年 1 月 26 日労働判例 675 号 59 頁(最判平成 10 年 1 月 22 日上告棄却))
会社が賃金等について組合員を差別したこと等を不当労働行為とした労働委員会の救済
命令に対する会社側による取消訴訟である同事件で、仙台高裁は、「救済命令の 取消訴
訟は、規定上これを履行しつつ提起するほかないと解されること...などに鑑みれば、控訴
人が右命令を履行した後であるからといって本件訴の利益が消滅することにはならな
い。」と判断し、門前払いされずに、本案審理がなされた。
平成25年10月9日
日本原子力発電株式会社
10月2日の原子力規制委員会に対する当社からの2つの文書の提出について
(当社の考え)
本日の原子力規制委員会の定例会合及び田中委員長の記者会見において、敦
賀発電所2号機使用済燃料貯蔵設備に関する報告徴収命令への異議申立てに関
連して10月2日に当社が行った標記の文書の提出について言及がなされまし
た。これについては、事実関係及び法律関係について、明白な誤りがあります
ので、以下のとおり当社の考えを申し述べます。
1.2つの文書の提出に係る事実関係を勘違いしている。
(1)10月2日に当社が提出した2つの文書(「『本件処分に対する異議申立
ての理由』の補充について」及び「参考人の陳述に関する申立てについ
て」
)は、7月16日の原子力規制委員会からの「報告徴収命令」に対す
る異議申立てに関する文書であり、田中委員長の言うような10月2日
の原子力規制委員会による当社の異議申立てに対する却下の「決定」に
対する文書ではない。
(2)田中委員長の定例会合での「私どもが公開でこういう形で審議をして、
それが終わった途端にこういうものが出てくる」とか、記者会見での「今
回は2日に委員会でやって、3日には届いている」という発言は、10
月2日の委員会「決定」に対して出された文書であると勘違いされた発
言であると思われる。
(3)また、10月2日に定例会合で了承された決定書は、田中委員長も市村
管理官も正しく指摘されたように、翌3日に当社に送達されてはじめて
効力を発生した(注1)
ものであるが、
当社の先の2つの文書は、
その以前、
すなわち10月2日の午後に提出したものであって、その文書の有効性
については些かの疑義も生じえないものである(注2)。(4)したがって、市村管理官の「異議申立てに対する決定を行った後に異議
申立人から受けた書面について、行政庁が審理、判断しなければならな
いというような行政不服審査法の規定はない」旨の発言は、事実関係の
認識と法律解釈が明らかに誤っていると考える。
添付3
10月9日付当社ホームページ掲載資料
2.2つの文書を「異議申立ての利益の有無」と関係付けるのは一方的な決め
付けである。
市村管理官は、
「二つの書面でございますけれども、この内容につきまし
ても、これを背景にいたしますと、ご覧のとおり何れも本件異議申立ての争
点でございました、
異議申立ての利益があるかどうかということについての
判断とは何ら関係のないもの」と発言されている。これは異議申立ての趣旨
を曲解した判断と思われる。当社が異議申立てを行った趣旨は、その理由書
で明らかにしているとおり、活断層であるとした判断は誤りであること、そ
の判断に到る審議過程が適正でなかったこと、
さらには当該命令が法的根拠
を欠いた違法な行政処分であることが争点であったのであり、決して「異議
申立ての利益の有無」が争点であった訳ではなく、当社としては受け入れる
ことはできない。3.「したがって、手続上、また内容的にも審理、判断する必要はない」という
のは、全く理解しがたい。
上記1、2から明らかなように、当社の先の2つの文書は適法に提出さ
れたものであり、
それを行政庁が審理するのは、
行政不服審査法により
「国
民の権利利益の救済」の観点から行政庁に課された義務であるので、原子
力規制委員会においては、法律に従い早急に審理を行って頂くよう、改め
てお願いしたい。
以 上
(注1)
:送達主義(行政不服審査法第48条によって準用される第42条1項に規定)に
よる。
(裁決の効力発生)
第四十二条 裁決は、審査請求人(当該審査請求が処分の相手方以外の者のした
ものである場合における第四十条第三項から第五項までの規定による
裁決にあつては、審査請求人及び処分の相手方)に送達することによつ
て、その効力を生ずる。
(注2)
:田中委員長が会見で「普通は、法的な判断は、判断が出てそれが郵送なら郵送
で。今回は2日に委員会でやって、3日には届いているのですよ、配達証明から
言うと。
」とし、
「要するに、3日にもらってから出してくるのならまだ話は別な
のだけれども、そういうことが起こるようだと」と発言されているが、これこそ
が事実関係を全く勘違いしていることの証左である。
原子力規制委員会から送付された異議申立て却下決定通知の送達記録 添付4

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