平成25年7月31日
日本原子力発電株式会社
原子力規制委員会からの報告徴収命令に対する報告について
当社は、本日、平成25年5月29日付文書により原子力規制委員会からあ
った報告徴収命令に対し、添付の報告を行いました。
しろまる添付資料:核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第67
条第1項の規定に基づく報告の徴収について(報告)
以 上
平成25年7月31日
原子力規制委員会 御中
日本原子力発電株式会社
取締役社長 濱田 康男
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第67条第1項の規定に
基づく報告の徴収について(報告)
平成25年5月29日付「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法
律第67条第1項の規定に基づく報告の徴収について」
(原管P発第 1305297 号)
に基づき、別添のとおり報告いたします。
添付書類
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第67条第1項の規定に
基づく命令に対する報告について
以 上
添付書類
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する
法律第 67 条第 1 項の規定に基づく命令に対する
報告について
平成25年7月31日
日本原子力発電株式会社 1 当社は、原子力規制委員会より、平成 25 年 5 月 29 日付「核原料物質、核
燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第 67 条第 1 項の規定に基づく報告
の徴収について」
(原管P発第 1305297 号)を受領した(以下、上記文書を
「本件文書」といい、これに基づく命令を「本件処分」という。)。
本件処分は、本件文書に記載されているように、平成 25 年 5 月 22 日に開
催された平成 25 年度第 7 回原子力規制委員会において、
「日本原子力発電株
式会社敦賀発電所2号機直下の破砕帯が耐震設計上考慮する活断層である
と判断した」ことを前提にして行われている。しかしながら、当社は、本件
処分は、その前提となる原子力規制委員会の判断が、D−1破砕帯が耐震設
計上考慮する活断層であるとの誤った判断に基づいているなど、
その内容及
び手続に重大かつ明白な瑕疵があり違法であるとの認識に立って、
行政不服
審査法第 6 条の規定に基づき、
本件処分を取り消すとの決定を求める異議申
立て及び本件処分の執行停止の申立てを平成 25 年 7 月 16 日付で原子力規制
委員会に対し行っている。現時点で原子力規制委員会からは、当社の異議申
立てに対する判断は出されていない。
当社は、以上のとおり、あくまでも異議申立てにより本件処分の違法性を
主張してやまないものであるが、他方、本件処分に伴う行政不服審査法第
48 条の規定により準用する同法第 34 条第 1 項の規定によるリスクを回避す
る観点から、異議申立ては維持しつつも、下記のとおり、本件文書に則り、
冷却水が喪失した場合における評価を行った。
なお、本報告書の提出は、行政不服審査法に照らし、先の異議申立ての理
由を些かも減ずるものでないことを申し添える。 2 記
1.敦賀発電所2号機の使用済燃料貯蔵設備について、冷却水が喪失した場合
の、同設備内に貯蔵される燃料体の健全性及び周辺への放射線影響の評価 (1)冷却水が喪失した場合の燃料体の健全性及び周辺への放射線影響の評価
1 冷却水喪失時の流出流量の評価
a.評価における前提
本件文書で求められた報告事項は、冷却水喪失に至るメカニズムにつ
いて何の条件設定もなく、
これでは評価が困難であることから、
当社は、
以下のとおり合理的な前提条件を設定して評価を行った。
・何らかの原因でライニング溶接線近傍から冷却水が流出する。
・流出した冷却水は漏えい検出系配管に流出する。
・漏えい検出系配管に設置されている隔離弁は通常「閉運用」として
いるため、使用済燃料貯蔵設備からの冷却水の流出が継続すること
はほとんどないが、何らかの原因で漏えい検出系配管の隔離弁 1 弁
が閉止されていないと想定し、この配管から冷却水が流出すること
を想定する。
(添付資料 1)
b.評価条件
使用済燃料貯蔵設備は、
厚さ約 150〜210cm の鉄筋コンクリート製で、
更に厚さ約 4.0mm のライニングで内張りされた構造となっている。
評価で使用する使用済燃料貯蔵設備の主要寸法等を表 1 に示す。
表 1 使用済燃料貯蔵設備の主要寸法等
項 目 主要寸法等 ×ばつ横(m) 約 ×ばつ約 26.8
水位(m) 約 11.9
使用済燃料貯蔵設備底
部から燃料有効部上端
までの高さ(m)
約 4.05
漏えい検出系配管径
20A Sch20S
(外径 27.2mm、肉厚 2.5mm) 3 また、流出流量の評価については、以下の式を用いた。
Q=×ばつ ×ばつg×ばつ3600
Q:流出流量(m3/h) S:配管断面積(m2) g:重力加速度、9.80665(m/s2) h:使用済燃料貯蔵設備水位(m)
c.評価結果
上記b.で想定した漏えい検出系配管からの流出流量は約 21.4m3/hである。
使用済燃料貯蔵設備から冷却水の流出が発生した場合は、まず通常の
補給水ラインから冷却水補給を行うが、これが使用できないなどの場合
においては発電所に配備している大容量ポンプ車、消防自動車(可搬式
動力ポンプとの組合せ使用)を用いて冷却水補給を行う。
ここで、大容量ポンプ車の補給能力は約 240m3
/h、消防自動車の補給
能力は約 60m3
/h であるが、
上述の流出流量は約 21.4m3
/h であることか
ら、大容量ポンプ車、消防自動車のいずれによっても使用済燃料貯蔵設
備の水位を回復させることができる。
2 燃料体の健全性の評価
1の流出流量の評価結果に基づき、流出開始から、使用済燃料貯蔵設備
の水位が燃料有効部上端の更に上部 2m(以下「TAF+2m」という。
)に至る
時間を評価した。その結果、TAF+2m に至る時間は約 76 時間(約 3.1 日)
である。
大容量ポンプ車、消防自動車による冷却水補給開始に必要な時間は約 2
時間であることから、
TAF+2m に至るまでの間に、
使用済燃料貯蔵設備の冷
却水補給作業に着手することは十分に可能である。
以上のことから、冷却水の喪失を想定した場合においても、使用済燃料
貯蔵設備の水位を TAF+2m 以上に保つことができ、燃料体の健全性は維持
される。
3 周辺への放射線影響の評価
使用済燃料貯蔵設備の水位が TAF+2m まで低下したと想定した場合の敷
地境界付近での線量率を評価した。その結果、線量率の上昇はわずか(約
0.01μSv/h)であり、周辺公衆への放射線影響は無視し得る程度である。
(添付資料 2) 4 (2) なお念のため、冷却水の喪失に至るメカニズムを一切無視し、あえて
仮想的に冷却水がすべて喪失すると想定した場合の燃料体の健全性及
び周辺への放射線影響について確認した。
(イ)燃料体の健全性
燃料体は気相冷却状態となるが、
原子炉停止から長期間経過し発熱量
が小さいため、燃料被覆管温度は約 420°Cにとどまり、燃料体の健全性
は維持される。
(添付資料 3)
(ロ)周辺への放射線影響
敷地境界付近での線量率は約 3μSv/h にとどまる。
なお、燃料取扱棟近傍については、使用済燃料貯蔵設備への冷却水補
給作業が可能な線量率であることを確認した。
(添付資料 4)
2.1.の評価において放射線影響が想定される場合の、これを防止するため
の対応策
上述したとおり、
既存の冷却水補給手段により放射線影響を無視し得る程度
とすることが可能であると想定されることから、新たな対応策は不要である。 以 上
添付資料 1 漏えい検出系配管の概略系統図
添付資料 2 冷却水が喪失した場合の線量について
添付資料 3 冷却水がすべて喪失した場合の燃料体の健全性について
添付資料 4 冷却水がすべて喪失した場合の線量について
添 1−1
添付資料 1
漏えい検出系配管の概略系統図
隔離弁
通常「閉運用」 シンク
使用済燃料貯蔵設備
燃料体 燃料体
廃棄物処理設備へ
添 2−1
冷却水が喪失した場合の線量について
1.評価条件
敷地境界付近の線量率は、SCATTERINGコードにより保守的な条件に基づき
評価する。
また、燃料体の線源強度はORIGENコードにより評価する。燃料体は原子炉から
取り出されてから約 2 年以上経過しているが、すべて冷却期間 2 年として評価する。
1.1 線源強度
燃料体の線源強度の評価条件を表 1 に示す。
表 1 評価条件
項 目 評価条件 備 考
燃料体数 PWR 燃料 1,645 体
・全量 PWR 燃料体と想定
2号機: 1,287 体
1号機: ,358 体
合 計: 1,645 体
燃焼度 48GWd/t ・PWR 燃料体最高燃焼度を想定
冷却期間 2 年 ・全燃料体 2 年冷却と想定
1.2 線量評価モデル
使用済燃料貯蔵設備の水位が燃料有効部上端の更に上部 2m
(以下
「TAF+2m」
という。)まで低下するものとし、敷地境界付近の線量率を計算する。燃料体は点線源とし、燃
料体の自己遮へい効果は考慮するが、燃料取扱棟の天井、側壁、隣接する原子炉格納
容器の遮へい効果は考慮しない。 線量評価モデルの概要を図 1 に示す。
添付資料 2 ×ばつ
評価点
(スカイシャイン線)
水位:TAF+2m
燃料取扱棟
原子炉格納容器
燃料体(燃料、被覆管等)の自己遮へい
効果を考慮
図 1 線量評価モデル概要図
使用済燃料
貯蔵設備 約8.4m
燃料体
点線源
▽通常水位
燃料取扱棟の天井、側壁、原子炉格納
容器の遮へい効果は考慮しない
添 2−2
2.評価結果
周辺公衆への放射線影響を考慮して評価した敷地境界付近の線量率を表 2 に示す。
表 2 敷地境界付近の線量率
評価場所 評価距離 線量率(μSv/h) 評価位置
浦底方面 約 550m(標高 3m) 約 0.005 1
立石方面 約 550m(標高 140m) 約 0.01 2
なお、
使用済燃料貯蔵設備への冷却水補給作業を行う燃料取扱棟近傍での線量率は約 5
μSv/h であり、冷却水補給作業が可能であることを確認した。
図 2 敷地境界付近の線量率評価位置 12
敷地境界
使用済燃料貯蔵設備
添 3−1
添付資料 3
冷却水がすべて喪失した場合の燃料体の健全性について
1.評価条件
使用済燃料貯蔵設備の冷却水がすべて喪失した場合の燃料体健全性は、MAAP5コ
ードにより評価する。主要な評価条件を表 1 に示す。
表 1 評価条件
項 目 評価条件 備 考
燃料体数
PWR 燃料 1,287 体
BWR 燃料 358 体(注記)
(注記)評価では1号機燃料を直接入力条件と
することができないため、
1号機燃料用
ラック内に2号機燃料 144 体を貯蔵し
たとして入力
(冷却期間が短い燃料とす
るなど保守性を考慮し体数を換算)
初期水位 0m ・冷却水がすべて喪失していることを仮定
崩壊熱
2号機原子炉停止日
より 747 日(約 2 年)
時点
・2号機原子炉停止日:2011 年 5 月 7 日
燃料グループ設定 20 グループに分割
・貯蔵している燃料体の照射サイクル、冷
却期間を考慮しグループ化
燃料チャンネル設定
燃料ラックを
18 チャンネルに分割
・使用済燃料貯蔵設備内のラックの位置に
応じて 18 チャンネルに分割
2.評価結果(図 1)
冷却水がすべて喪失することによって、燃料被覆管温度は上昇することになる。しか
し、ラック下端からラック上端までの気相自然循環によりラック内に収納されている燃
料は冷却され、燃料被覆管温度は約 420°Cにとどまる。
図 1 仮想的に冷却水がすべて喪失した場合の評価結果
添 4−1
冷却水がすべて喪失した場合の線量について
1.評価条件
敷地境界付近の線量率は、MCNPコード[1]
により現実的な条件に基づき評価する。
また、燃料体の線源強度はORIGENコードにより評価する。燃料体は原子炉から
取り出されてから約 2 年以上経過しているため、冷却期間 2 年、3 年、5 年、10 年の燃料
体に分類して、冷却期間を考慮した燃料体の線源強度を評価する。
1.1 線源強度
燃料体の線源強度の評価条件を表 1 に示す。
表 1 評価条件
項 目 評価条件 備 考
燃料体数
PWR 燃料 1,650 体(注記)
((注記)計算上 75 列 22 行に配置)
・全量 PWR 燃料体と想定
2号機: 1,287 体
1号機: ,358 体
合 計: 1,645 体
燃焼度 48GWd/t ・PWR 燃料体最高燃焼度を想定
冷却期間
2 年、3 年、5 年、10 年の
燃料体に分類して線源を評価
1.2 線量評価モデル
使用済燃料貯蔵設備の冷却水がすべて喪失するものとし、敷地境界付近の線量率を
計算する。燃料体は体積線源とし、燃料ラック、上部ノズル等の遮へい効果並びに燃
料取扱棟の天井・側壁、隣接する原子炉格納容器の遮へい効果を考慮する。 線量評価
モデルの概要を図 1 に示す。
添付資料 ×ばつ
評価点
(スカイシャイン線)
使用済燃料貯蔵設備の冷却水はすべて
喪失することを想定
燃料取扱棟
原子炉格納容器
燃料ラック、上部ノズル等の遮へい効
果を考慮
燃料体
体積線源
図 1 線量評価モデル概要図
使用済燃料
貯蔵設備 約8.4m
燃料取扱棟天井、側壁、原子炉格納容器
の遮へい効果を考慮
添 4−2
2.評価結果
周辺公衆への放射線影響を考慮して評価した敷地境界付近の線量率を表 2 に示す。
表 2 敷地境界付近の線量率
評価場所 評価距離 線量率(μSv/h) 評価位置
浦底方面 約 550m(標高 3m) 約 2 1
立石方面 約 550m(標高 140m) 約 3 2
なお、使用済燃料貯蔵設備への冷却水補給作業を行う燃料取扱棟近傍での線量率は約
8mSv/h であり、冷却水補給作業が可能であることを確認した。
参考文献
[1] 木下郁男、植木紘太郎「モンテカルロコードEGS,MVP,MCNPによるガンマ
線スカイシャイン線量評価性能の比較検討」
(INSS JOURNAL、Vol.16、P282(2009)) 図 2 敷地境界付近の線量率評価位置 12
敷地境界
使用済燃料貯蔵設備

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