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国内NEWS
17 Oct 2025
462
QST 米企業らと新たな協力取決めを締結 26年にプラズマ加熱開始へ
海外NEWS
17 Oct 2025
403
米X-エナジー 加アルバータ州でのSMR導入の実現可能性を確認
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17 Oct 2025
334
インド 小型炉の民間提案期限を再延長
海外NEWS
16 Oct 2025
417
スロバキア ボフニチェに米国製炉導入を計画
国内NEWS
16 Oct 2025
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JAEA 水素製造技術の確立へ一歩前進
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15 Oct 2025
712
原子力AI学シンポジウム 都内で初開催
海外NEWS
15 Oct 2025
853
米GNF 次世代燃料「GNF4」を発表
海外NEWS
15 Oct 2025
446
インド マヒ・バンスワラ発電所建設プロジェクトが始動
米X-エナジー社傘下のX-エナジー・カナダ社は9月25日、加アルバータ州にあるTransAlta社の火力発電所のサイトにX-エナジー社が開発する小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」を導入する実現可能性を確認できたことを明らかにした。これにより、さらなる計画策定および規制当局との協議の基盤が築かれたとしている。実現可能性調査は、アルバータ州政府のTIER(Technology Innovation and Emissions Reduction)基金を原資に、州政府系機関ERA(Emissions Reduction Alberta)から助成を受け、カナダを拠点とする電力事業者のTransAlta社、エネルギー・エンジニアリング会社のHatch社、建設会社のPCL社、原子力サービス会社のKinectrics社と共同で実施した。調査の結果、アルバータ州特有のエネルギーおよび産業構造とXe-100の特性との間に高い親和性があることが確認され、同州のエネルギー経済と長期的な競争力強化に直接貢献できる分野を特定できたという。Xe-100は、出力8万kWeの高温ガス冷却炉。電力供給に加え、565°Cの熱および蒸気を安定供給可能で、同州の産業や石油・ガス分野で幅広く応用できる。また、Xe-100では空冷システムの効率的利用により、水使用量が大幅に削減できる見込みで、従来の軽水炉と比較して立地選定の柔軟性を高めるという。燃料には、米エネルギー省から「地球上で最も堅牢な燃料」とされるTRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料を使用。運転時や事故時を含むあらゆる状況での極端な高温にも耐えられるよう設計されており、次世代型の固有安全性を確保する。アルバータ州にはサプライチェーンが確立されており、X-エナジー社の技術の製造および建設を支える体制が整っている。X-エナジー社のB. レインキ上級副社長は、「Xe-100の利点を最大限に活かせる地域である」と指摘している。X-エナジー社は、電力会社、産業顧客、ハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)向けにXe-100を系統連系と同規模のエネルギーソリューションとして推進しており、米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社、大手テック企業のAmazon社や英国のエネルギ―供給会社のセントリカ(Centrica)社とすでに導入や投資、電力購入をめぐって合意している。X-エナジー社の最初の計画としては、ダウ社のテキサス州シードリフト・サイトにXe×ばつ4基の発電所を建設。北米で初めて産業サイト向けに導入され、クリーンな電力と高温蒸気を供給する。ダウ社とのプロジェクトに続き、Amazon社と2039年までに合計500万kWeの導入を計画しており、その一環としてワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社と協働。同社が運転するコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kWe)の傍に「カスケード先進エネルギー施設」と称するSMRの施設を建設する。その第1フェーズでXe-100を4基(合計32万kWe)設置し、続く第2、第3フェーズと併せて、最大12基(合計出力96万kWe)を設置するオプションを有する。2020年代末までに建設を開始し、2030年代に運転を開始したい考えだ。今年8月にはAmazon社とともに、米国内でのXe-100展開の加速を目的に、韓国水力・原子力(KHNP)および斗山エナビリティ社と協力合意を交わし、翌9月には、英国のセントリカ社とイングランド北東部のハートルプールにXe-100を最大12基建設することで合意している。燃料部門では、自社開発のTRISO-X燃料の製造施設TX-1をテネシー州オークリッジに建設するプロジェクトを進めており、米原子力規制委員会が許認可の審査中である。
17 Oct 2025
403
インド原子力発電公社(NPCIL)は、9月29日、バーラト小型炉(BSR、バーラトはヒンディ語で「インド」の意)の建設に向けた民間企業からの提案依頼書の提出期限を、2026年3月31日まで延長すると発表した。より多くの企業からの参加を促すことが狙い。この募集は2024年12月から始まり、当初の締め切りは2025年3月末だったが、6月末、9月末と延長を重ね、今回で3度目の延期となる。NPCILによると、参加を検討している企業から「建設候補地の評価や設備投資、運転保守管理コストの算定などに時間が必要」との声が寄せられたほか、新たに参入を希望する企業も増えているため、期限を延長したという。これまでに提案書を提出したのは、ヒンダルコ・インダストリーズ、ジンダル・スチール・アンド・パワー、タタ・パワー、リライアンス・インダストリーズ、JSWエナジー、アダニ・パワーの6社。すでにそれぞれが建設候補サイトを選び、16サイトの予備調査報告書を提出している。NPCILは、候補地として挙がったうちのグジャラート州、マディヤ・プラデーシュ州、オリッサ州の3州に対し、現地調査や土地・水資源の確保などで協力を求めている。BSRは出力22万kWの小型加圧重水炉(PHWR)で、自家発電用に設計されている。インド政府は2047年までに原子力発電設備の容量を今の10倍以上に拡大し、2070年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする(ネットゼロ)目標を掲げ、これまで国の独占だった原子力部門の民間参入を進めている。
17 Oct 2025
334
スロバキアのR. フィツォ首相は10月7日、欧州委員会(EC)、産業界、エネルギー業界の代表者が参加した第18回原子力エネルギーフォーラム(ENEF)で講演を行い、スロバキアと欧州の将来にとって競争力を維持し、増加するエネルギー需要に対応するために原子力が重要な役割を果たすと強調。また、ボフニチェ原子力発電所に米国製炉を増設することを念頭に、政府が米国との政府間協定本文を承認したことを明らかにした。スロバキアでは、電気自動車、データセンター、バッテリー貯蔵施設の発展に伴い、電力需要が増加。フィツォ首相は、2040年までにエネルギー需要が40〜60%増加すると予想される中、新たなエネルギー源とインフラの近代化が必要になるとし、「安定かつ安価で、環境に優しいエネルギー源を望むならば、原子力を維持するだけでなく、さらに発展させなければならない」と語った。そのうえで、ボフニチェ発電所に出力100万kWe以上の原子炉1基の新設に向けて、政府が米国との政府間協定を9月10日に承認したと紹介した。今年8月には欧州委員会(EC)が同政府間協定について承認しており、これに合わせ、同首相は自身のソーシャルメディアで、新設には米ウェスチングハウス社製AP1000を採用する考えを表明している。なお政府は、2024年5月に同発電所5号機(最大120万kWe)の新設を承認している。今年9月中旬の国際原子力機関(IAEA)総会の会期中、スロバキアのD. サコバ副首相兼経済大臣は、米エネルギー省のC. ライト長官と、エネルギー分野における両国間の協力の可能性について協議。サコバ大臣は会談後、両国間の交渉は進んでおり、協定の署名に徐々に近づいていると明らかにした。新設プロジェクトには、スロバキアの産業界とサプライヤーが参加し、多くの雇用と機会の創出が期待されるという。またフィツォ首相はENEFでの講演の中で、モホフチェ3-4号機のプロジェクトとボフニチェ1-2号機の廃止措置の進捗を紹介。スロバキアの廃止措置会社JAVYS社と先進炉開発企業の英ニュークレオ社との、小型鉛冷却高速炉の開発および使用済み燃料を再利用するための処理プロジェクトについても触れ、「このプロジェクトが成功すれば、スロバキアは原子力分野におけるイノベーションのリーダーとなるだろう」と述べた。一方で同首相はECに対し、エネルギー価格に対処し、欧州産業の競争力を維持するための条件を整えるよう求め、ECのロシア産化石燃料や原子燃料依存からの脱却を推進する政策コミュニケ「REPowerEU」について、「EU加盟国のエネルギー安全保障を脅かす無意味なイデオロギー的措置」と批判した。EUの決定は、政治的な動機ではなく、合理的かつ技術的に実現可能なものでなければならず、経済に悪影響を与えるイデオロギー的な決定をしてはならないと訴え、スロバキアは今後も、エネルギーの安定供給、利用可能性、競争力を確保する主権的で現実的なエネルギー政策を推進していく方針を示した。スロバキアは、エネルギー調達先や輸送ルートの多様化に取組むもののその進展は遅く、ロシアの化石燃料への依存度(特に原油)は今なお高い。スロバキアでは現在、モホフチェ発電所で3基(1〜3号機、VVER-440)、ボフニチェ発電所で2基(3〜4号機、VVER-440)の計5基が運転中で、同国の電力需要の約6割を賄う。建設中は、モホフチェ4号機(VVER-440)の1基。両発電所の運転者はスロバキア電力で、2024年3月には石炭火力発電所をすべて閉鎖し、原子力発電、水力発電、太陽光発電による脱炭素電源100%を達成している。
16 Oct 2025
417
米グローバル・ニュークリア・フューエル(GNF、GEベルノバ社が主導する日立製作所とのアライアンス)は10月6日、次世代の原子炉燃料「GNF4」を発表した。これは、60年にわたる沸騰水型炉(BWR)×ばつ11構造の「GNF4」は、これまでの「GNF2」および「GNF3」で培われた運転実績を踏まえ、米原子力規制委員会(NRC)によって認可された2つの先進的な構成要素―「ザイロン(Ziron)製被覆管」と「アルミナシリケート(Aluminosilicate)を添加した二酸化ウランペレット」を備えている。ザイロン製被覆管は、腐食への耐性を高めるために開発され、これまでに世界中で17万5,000体以上のGNF燃料集合体に使用されてきたジルカロイ(Zircaloy)-2被覆管の改良版。アルミナシリケート((アルミニウムとシリコンを含む化合物で耐熱性や化学的安定性に優れる。))を添加した二酸化ウランペレットで、さらに高い信頼性を実現。このほかGNF4では、GNF独自のNSF(Zr-Nb-Sn-Fe合金)チャンネルボックスおよびDefender+異物除去フィルターも採用している。GNF4は、ノースカロライナ州ウィルミントンのGNF製造施設で製造。性能と信頼性の向上により、メガワット時あたりの燃料コストを低減できるよう設計されている。先行使用の燃料集合体は2026年に配備予定で、2030年には全面的に利用可能になる予定であるという。
15 Oct 2025
853
インドのN. モディ首相は9月25日、ラジャスタン州のバンスワラで、アヌシャクティ・ヴィデュット・ニガム(Anushakti Vidhyut Nigam Ltd = ASHVINI)社のマヒ・バンスワラ原子力発電所建設プロジェクトの定礎式のほか、太陽光発電、送電プロジェクトなどを含む、総額1兆2210億インドルピー(約2.1兆円)以上のインフラ開発プロジェクトの開始を記念する式典を開催した。ASHVINIは、原子力発電所を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)とインド国営火力発電会社(NTPC)による合弁会社(NPCIL: 51%、NTPC: 49%)。両社の財務、技術、プロジェクトの専門知識を統合し、原子力発電所を建設、所有、運転することを目的に設立され、2024年9月に政府が承認。政府はPHWR技術に基づくマヒ・バンスワラ建設プロジェクトの実施権を、NPCILからASHVINIへの移転することも承認した。2025年5月には、原子力規制委員会(AERB)から同発電所のサイト許可が発給されている。ASHVINI社は今後、国内の様々な地域で他の原子力プロジェクトも推進していくとしている。マヒ・バンスワラ発電所建設プロジェクトは、雇用と投資の機会を提供し、ラジャスタン州内の電力不足を緩和し、地域を活性化することを目的としている。同プロジェクトには約4,200億インドルピー(約7,140億円)が投資され、国内最大級の原子力発電所の1つとなる。同発電所は、原子力発電所を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)が設計・開発した70万kWe級加圧重水炉(PHWR)4基で構成。いずれも2031〜2032年にかけて稼働させる予定である。サイト面積は約600 ha×ばつ7基(計188万kWe)が運転中で、1基(PHWR、70万kWe)が建設中である。マヒ・バンスワラ建設プロジェクトは、インド全土に70万kWe級PHWRを10基建設する計画の一環。マヒ・バンスワラのほか、カイガ5-6号機(カルナータカ州)、ゴラクプール3-4号機(ハリヤナ州)、チャッカ1-2号機(マディヤ・プラデシュ州)が計画されている。これらシリーズ建設により、コスト効率の向上、迅速な導入、運用ノウハウの習得を目指している。現在のインド国内の原子力発電設備容量は、25基の計888万kWe。総発電電力量に原子力が占める割合はわずか3.3%である。政府は戦略的な政策介入とインフラ投資を実施、特に国産原子力技術の開発・導入と官民連携に重点を置き、2047年までに原子力発電設備容量を1億kWeに拡大、2070年までに排出量ネットゼロの達成を目指している。
15 Oct 2025
446
スウェーデンのブリカラ(Blykalla)社、Evroc社、スタズビック(Studsvik)社の3社は10月6日、同国初となる原子力発電を利用したデータセンターの開発を検討するため、覚書(MOU)を締結した。これら3社の技術、インフラ、サイト運営の専門知識を組み合わせ、原子力発電所を併設したデータセンターの導入を目指している。本プロジェクトは、スタズビック社がスウェーデン南部バルト海沿岸ニショーピング(Nyköping)に所有する原子力施設の認可済みサイトを活用して進められる。サイトには原子力に適したインフラがあり、2005年まで研究炉が稼働していた。MOUにより、同サイトにデータセンターと小型モジュール炉(SMR)を併設する商業的・技術的な実現可能性を評価、自治体や土地所有者との協議を行い、将来的な電力購入契約(PPA)の枠組みを定義。共同運営委員会を設立し、サイトおよびビジネスモデルを評価、年内に正式なパートナーシップ交渉に入ることを目標としている。ブリカラ社は、SMRの鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)を開発中。出力拡大が可能なコンパクトなモジュール設計を特徴とし、2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)のSMR年次ダッシュボードでは、同社は欧州で最も成熟した先進炉コンセプトを有する企業として評価されている。今年9月には、米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社と共同技術開発、材料、コンポーネント、非原子力サプライチェーンの構築や許認可のベストプラクティスに関する知見を共有し、高度な原子力の商業化を加速するための戦略的パートナーシップを締結。オクロ社は米国のサイトへの展開に重点を置き、最大出力7.5万kWeのナトリウム冷却高速炉のオーロラ発電所を開発中だ。Evroc社は、ヨーロッパのハイパースケールクラウドおよび重要AIインフラ構築を手掛けており、2030年までに欧州各地で10のハイパースケールデータセンターを運営し、数千人規模の雇用を創出することを目指している。スタズビック社は、世界の原子力発電業界向けに、燃料・材料技術、炉解析ソフトウェア、除染および放射線防護、そして放射性廃棄物の処理・減容化などの技術サービスを提供している。AI利用と電化による需要拡大で、原子力発電を活用したデータセンターへの関心が国際的に高まる中、これら3社は、スタズビック社のライセンスサイト、Evroc社のデジタルインフラ、ブリカラ社の先進的SMR技術を活用して、スウェーデンをデジタルインフラ分野の世界的リーダーに押し上げることを目指している。ブリカラ社のJ. ステッドマンCEOはMOU締結に際し、「3社の連携は、スウェーデンがデジタルインフラ分野のリーダーとなるための大きなチャンス。SMRがAI革命に必要な安定した化石燃料フリーのエネルギーを提供できることを実証できる。スタズビック社のサイトとEvroc社のビジョンは、画期的なプロジェクトを実現するための理想的な条件を備えている」と語った。
14 Oct 2025
575
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は9月30日、2024年のウラン市況年次報告書(Uranium Marketing Annual Report)を公表した。報告書によると、米国の民間原子力発電事業者によるウランの調達量と価格はともに上昇傾向にあり、価格は2012年以来の高値を記録した。海外依存は依然として高いが、国内供給の割合がやや回復している。2024年に米国の民間原子力発電事業者が購入したウランは、U3O8換算で5,590万ポンド(約2万5000トン)。前年の5,160万ポンド(約2万3000トン)から約8%増加した。平均購入価格は1ポンドあたり52.71ドル(約7,996円)と、前年の43.8ドル(約6,644円)から約20%上昇し、2012年以来の最高水準となった。ウランの最大の調達先はカナダで、全体の36%を占めている。次いでカザフスタン24%、オーストラリアが17%。2024年の総供給量に占める米国産の割合は8%で、前年の5%から増加した。依然として海外依存が高いものの、国内生産の回復傾向が見られる。ウラン燃料の製造過程で必要な濃縮役務については、全体の81%が海外起源だった。このうちロシアが20%を占め、304万SWUを供給。米国内の濃縮量(289万SWU)を上回り、ロシア依存が依然として続いている。2024年、米国の民間原子力発電事業者が結んだ新規ウラン購入契約は21件だった。実際に納入されたウラン量は300万ポンド(約1,361トン)で、加重平均価格は1ポンドあたり86.20ドル(約1万3,000円)に上った。2023年は契約数26件、納入量549万ポンド(約2,490トン)、平均価格61.93ドル(約9,400円)だったことから、価格が上昇傾向にあることがうかがえる。また、報告書では今後10年間に見込まれる潜在的なウラン需要も示されており、2025年から2034年までの最大総需要は約4億1,800万ポンド(約19万トン)に達すると推計している。
14 Oct 2025
453
米国の先進原子力エネルギー企業であるナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)社は10月7日、イリノイ州商務省経済機会局(DCEO)と連携し、米イリノイ州に製造・研究開発施設を新設すると発表した。イリノイ州のクリーンエネルギー政策支援プログラムより680万ドル(約10億円)の支援を受け、総額1,200万ドル(約18億3,000万円)以上を投資する計画だ。同社は7月にシカゴ近郊に約2万3,500平方フィート(約2,200平方メートル)の実証施設とオフィスを取得している。新施設では約50人のフルタイム雇用が新たに創出される見通しで、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)と共同で進める小型モジュール炉「KRONOS MMR」の構築・実証・商業化に向けた拠点として機能する。また、原子力技術者をはじめ部品メーカー、研究者らの人材育成・技術支援にも活用される見込みとなっている。今回のプロジェクトは、イリノイ州が推進する「REVイリノイ法(Reimagining Energy and Vehicles in Illinois)」プログラムの一環。ナノ・ニュークリア・エナジー社は対象企業に選定されており、制度を通じて680万ドル(約10億円)の奨励金を受ける見込みとなっている。なお、REVイリノイ法は、電気自動車や再生可能エネルギーなど次世代クリーンエネルギー産業のサプライチェーン強化を目的としている。同社のジェームズ・ウォーカーCEOは、「本施設を活用して全米から優秀な人材を惹きつけ、目標達成に向けて全力を尽くしていきたい」とコメントした。また、イリノイ州のJ.B.プリツカー知事は、「イリノイ州はクリーンエネルギー生産への投資企業にとって最適な州である。この重要な投資は、州民に新たな雇用を創出し、クリーンエネルギー産業における革新的な進歩を促進するだろう」と述べ、歓迎の意を示した。
10 Oct 2025
667
カザフスタン原子力庁(KAEA)のA. サトカリエフ長官は10月1日、アルマティ州の2サイトで原子力発電所の建設が計画されていることを明らかにした。同長官によると、原子力産業の発展に関する省庁間委員会において、2番目の建設候補サイトが特定され、第1発電所と同じく、アルマティ州のジャンブール地区に決定されたという。同国南部に2サイトを設置し、電力不足に対応する方針。現在は国際南北連系線を介して同地域に電力が送電されているが、これにより、エネルギー供給の信頼性と安定性が生まれる、と記者会見で述べた。長官は、競争に参加するすべてのベンダー候補者との交渉が現在進行中であると述べる一方で、「最終決定ではないが、提出された提案に基づいて、我々は中国核工業集団公司(CNNC)を優先契約者と考えている」と語った。ロシアの国営原子力企業ロスアトムが建設プロジェクトを進める、同地区の第1発電所サイトでは今年8月、エンジニアリング調査が開始されている。K.-J. トカーエフ大統領は今年3月の国民会議における演説で3サイトでの原子力発電所の建設について言及。先のベンダー選定作業における潜在的な候補には、露ロスアトム、CNNC、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力(KHNP)が含まれており、KAEAはロスアトムの提案の採用に次いで、CNNCの提案を2番手とした。サトカリエフ長官は、「中国は間違いなく必要な技術をすべて備えており、完全な産業基盤を持っているため、次の優先事項は中国との協力だ」と述べ、中国側との交渉が行われることを強調。カザフスタンのR. スクリャル第一副首相は今年7月末の合同記者会見で、第2および第3発電所のサイト候補を評価中であり、今年後半にも評価結果が明らかになるとし、CNNCが第2発電所に続き、第3発電所も建設するだろうと述べている。
10 Oct 2025
560
米国の新興企業ディープ・フィッション(Deep Fission)社は9月18日、自社が開発する小型モジュール炉(SMR)を地下1マイル(約1.6km)、幅30インチ(約76cm)のボーリング孔に設置する最初の3サイトとして、テキサス州、ユタ州、カンザス州を選定。共同開発プロジェクトを推進するために各拠点のパートナーと基本合意書(LOI)を締結したことを明らかにした。ディープ・フィッション社の開発する原子炉「DFBR-1」(PWR、1.5万kWe)は、原子力、石油・ガス、地熱分野での実証をベースに設計。発生した熱は地下深部にある蒸気発生器に伝わり水を沸騰させ、非放射性の蒸気が急速に地表に上昇、そこで標準的な蒸気タービンを回して発電する。検査が必要と判断された場合、原子炉に取り付けられたケーブルにより、原子炉を地表に持ち上げることが可能。モジュール設計により、出力を最大150万kWeまで拡張可能で、産業現場、データセンター、遠隔送電網、成長する商業ハブ全体を対象に柔軟に展開できるという。また既製部品と低濃縮ウラン(LEU)を利用し、サプライチェーンの合理化を追及。原子炉は地下1マイルに設置され、地下深部の地質が自然封じ込めの役目を果たす、革新的な立地アプローチにより、安全性とセキュリティを強化、地表フットプリントを最小限に抑え、コストの削減をねらう。同社のコストモデルでは、オーバーナイトコスト(金利負担を含まない建設費)の比較で、従来の原子力技術の70〜80%減となり、発電コスト(LCOE)はkWhあたり5〜7セントと見込んでいる。2026年にはライセンスを申請予定。2028年には取得し、想定6か月の建設期間を経て、2029年秋には営業運転の開始を予定している。ディープ・フィッション社は今年8月、米エネルギー省(DOE)の先進炉の実用化に向けた「原子炉パイロットプログラム」の対象に選定され、DFBR-1の2026年7月4日(独立記念日)までの臨界達成を目指している。なお同社は、現CEOのエリザベス・ミュラー氏とリチャード・ミュラー氏の父娘が共同で2023年に設立。E. ミュラーCEOは以前、深部ボアホール放射性廃棄物処理事業を手掛けるディープ・アイソレーション(Deep Isolation)社の共同創設者兼元CEOを務めていた。ディープ・フィッション社はディープ・アイソレーション社と今年4月、先進的な地下原子炉の使用済み燃料と放射性廃棄物の管理で協力するための覚書(MOU)を締結。ディープ・アイソレーション社が特許取得済みの地下処分技術の使用許諾などについて検討する。両社は、ディープ・アイソレーション社の革新的な深部ボアホール処分技術をディープ・フィッション社の最先端の原子炉技術と統合し、顧客に長期的に実用的かつ拡張性のある廃棄物ソリューションを提供したい考え。ミュラーCEOは、「深地層処分は世界的に好まれるアプローチで、海外諸国は地下処分場の計画を進めているが、米国はこの方向でさらなる進展を図る」と指摘。ディープ・アイソレーション社のR. バルツァーCEOは、「新たな原子力技術が登場する中、廃棄物処理に対する先見的なアプローチが不可欠。原子力発電設備容量は2050年までに3億kWe以上増加すると予測されているが、過去70年間に発生した使用済み燃料を未だ永久処分していない。信頼性が高く恒久的な放射性廃棄物の処分方法の確立は、業界の長期的な成功に必要」と強調し、放射性廃棄物を地下深くに安全かつ永久に処分する深部ボアホール技術がソリューションとなるとの考えを示した。
10 Oct 2025
626
米GEベルノバと日立製作所の共同出資会社である米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)と、韓国の建設大手サムスンC&T社(サムスン物産)は10月7日、北米を除くグローバル市場での「BWRX-300」(BWR、出力30万kWe)の導入推進に向けた戦略的提携を発表した。GVHによると、両社は小型モジュール炉(SMR)であるBWRX-300のサプライチェーンの構築や、プロジェクト実施に向けたソリューションなどの共同開発に取り組む。GVHは今年4月、カナダ・オンタリオ州のダーリントン原子力発電所でBWRX-300初号機についてカナダ原子力安全委員会(CNSC)から建設許可を取得しており、2030年末までの運転開始を目指している。一方、サムスンC&T社も今年4月、エストニアの新興エネルギー企業フェルミ・エネルギア社とSMR導入で提携し、同国でのSMR2基の配備に協力するなど、欧州での小型原子炉導入事業を加速させている。GVHの電力部門CEO、M.ジンゴーニ氏は、「当社はカナダでBWRX-300の初号機を建設中であり、SMR産業の展開と規模拡大をリードする立場にある」と述べた。サムスンC&T社の原子力分野とインフラ建設プロジェクトにおける豊富なプロジェクト実施経験を活かし、両社はSMR産業分野での世界的な地位確立を目指すという。両社はスウェーデンで計画されている5基のBWRX-300導入計画についても協力することになっている。
09 Oct 2025
955
米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は9月25日、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)の大規模拡張計画を明らかにした。低濃縮ウラン(LEU)ならびに高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の生産を増強し、濃縮分野での米国のリーダーシップを取り戻す考えだ。拡張計画には、連邦政府からの資金提供を含めて数十億ドル規模の官民投資が必要。同社は最近、既存炉向けのLEUならびに次世代炉向けHALEUの国内生産拡大に向けた米エネルギー省(DOE)の資金提供対象の選定プロセスに提案書を提出した。連邦政府による資金提供の決定を条件に、ACPに数千台の遠心分離機を追加導入する計画だ。この拡張を見据え、セントラス社は過去12か月間に2回の転換社債取引で10億ドル以上を調達し、国内外の電力会社顧客から20億ドル以上の条件付き購入契約を締結している。この他、韓国の韓国水力・原子力ならびにPOSCOインターナショナル社による投資協力の可能性も示した。またセントラス社は、官民パートナーシップを見越して、連邦政府による選定に先立ち、採用活動を開始。建設段階で1,000人の雇用と操業段階で300人の新規雇用の創出を見込んでいる。さらに、同社がテネシー州オークリッジに有する遠心分離機製造工場における数百の雇用に加え、全米の製造サプライチェーン全体で数千の間接雇用を生み出すと予想されている。同社のA. ベクスラーCEOは、「米国がウランを大規模に濃縮する能力を回復する時が来た。今まさにその目的のため、オハイオ州で数十億ドル規模の歴史的投資を計画している。外国の国有企業への依存をやめ、米国人労働者によって構築された米国技術への投資が始まる」と強調した。オハイオ州のM. デウィン知事は、「パイクトンの施設の拡張・更新への取組みは、米国経済と国家安全保障を支える、オハイオ州の重要性を強調している。パイクトンにおけるウラン濃縮事業は冷戦初期から国防に重要な役割を果たしてきた。セントラス社の施設は、産業規模での国内濃縮体制を構築できる、現時点で唯一の技術を提供している」と拡張計画に期待を寄せた。世界の濃縮能力のほぼ100%が外国の国有企業に属しており、それらの企業は海外で独占的に製造された遠心分離技術を使用している。パイクトンの濃縮施設は、国内製造の遠心分離機と関連機器を用いて稼働する唯一の米国施設。セントラス社の遠心分離機は、オークリッジにある敷地約4万m2の技術製造センターで独占的に製造されており、13州の米企業14社の主要サプライヤーと数十の小規模サプライヤーが製造を支えている。製造された遠心分離機と関連機器は最終組立て、設置のためにパイクトンに送られている。連邦資金拠出の選定先となった場合、その資金は海外製造ではなく国内製造に向けられることになる。
09 Oct 2025
579
量子科学技術研究開発機構(QST)と欧州のフュージョンフォーエナジー(F4E)は10月11日、米国のジェネラル・アトミクス(GA)と、那珂フュージョン科学技術研究所にあるトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」への先進計測器提供に関する協力取決めを締結したことを発表した。また、QSTとF4Eは同日、同じく米国のプリンストン・プラズマ物理研究所(PPPL)とも同様に先進計測器提供に関する協力取決めを締結したことを発表した。JT-60SAは核融合の実験装置で、茨城県那珂市の那珂フュージョン科学技術研究所にある。2023年10月に初プラズマ(運転開始)を達成した同装置は、約マイナス269°Cに冷却された強力な超伝導コイルを使用して1億°Cに達するプラズマを閉じ込めることが可能だ。現在、ITERでは実現が難しい高圧のプラズマを100秒ほど維持する運転や制御方法の確立を目指している。なお、同装置とITERは同じトカマク型である。この度の協力取決めでは、米GAから先進プラズマ研究に不可欠な先進計測器を、PPPLからプラズマ不純物を計測する先進計測器の提供が決まった。米GAが開発した最先端の計測器は、高速イオン重水素の光放出を測定し、プラズマ中の高エネルギー粒子の振る舞いを解析するための重要なデータを取得する。これにより、プラズマ加熱や電流駆動など、核融合反応の性能向上に不可欠な要素の理解が進むことが期待されている。PPPLが開発したX線イメージング結晶分光器は、不純物の発光を高精度・高速に測定し、イオン密度や温度、流速などの詳細なデータを取得できる。トカマク型の核融合炉では、プラズマを安定に維持するために不純物の挙動を正確に把握することが重要であるが、これにより、プラズマ中で不純物が輸送する物理の理解とプラズマ制御の最適化が一層進むと期待されている。QSTは、2026年に同装置の本格的なプラズマ加熱実験を始める予定だ。この度の協力取決めを受けて、城内実科学技術政策担当相は14日の会見で「米国の研究機関らが、QSTの進めるプロジェクトに参画を決めたことを大いに歓迎する」と述べ、フュージョンエネルギーの社会実装に向けて、今後のQSTの取り組みに期待を寄せた。
17 Oct 2025
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は9月26日、高温工学試験研究炉 (HTTR、熱出力3万kW)への水素製造施設の接続に係る原子炉設置変更許可申請書の補正書を、原子力規制委員会へ提出した。 JAEAは、今年3月、HTTRと水素製造施設の接続に必要な許可を得るため、原子炉設置変更許可申請を原子力規制委員会に提出していた。提出後の審査会合では、(今年5月・7月)、原子炉等規制法の適用範囲に関する議論が行われ、その結果、水素製造施設は同法の範囲外とされ、今後の審査を進めることで合意した。水素製造施設が一般産業法規の適用範囲へと認定されたことで、設計・調達の柔軟性が高まり、産業界の参入が促進されることが期待されている。 HTTRは、日本初かつ唯一の高温ガス炉であり、高温工学試験研究の中核を担う原子炉として、大洗原子力工学研究所(茨城県)内に1987年に建設された。以来、高温ガス炉の技術基盤を確立するとともに、原子力エネルギーを利用した水素社会の実現に向けて貴重なデータを取得・蓄積している。高温ガス炉は二酸化炭素を排出することなく高温熱を供給可能であることから、安定的に大量の水素を製造することが可能である。 政府は、2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」の参考資料において、2030年代の運転開始を目標とする高温ガス炉実証炉開発工程が示されるとともに、経済産業省の革新炉ワーキンググループは実証炉建設に向けた技術ロードマップにおいて、HTTRを活用し、2030年までに高温ガス炉を用いた水素製造を行う計画が示されている。 この、HTTRの核となる技術は国産技術であり、例えば、原子力用構造材として世界最高温度の950°Cで使用できる金属材料は日本メーカーによるもの。水の熱分解反応による水素製造「ISプロセス」は、水素の製造過程で化石燃料を使用せず、多様な産業利用に期待が寄せられている。 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、製鉄、化学工業等の脱炭素が難しい分野における脱炭素化のためには、水素の利活用が不可欠とされている。
16 Oct 2025
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原子力AI学シンポジウムが10月6日、東京大学にて開催された。当日は、200名以上が参加した(オンラインを含む)。同シンポジウムは、東京大学大学院工学系研究科と日立GEベルノバニュークリアエナジーの共同研究として、2025年7月から3年間の計画で「原子力AI学講座」が設置されたことを受け、その具体的な研究内容について、幅広く意見を聴くことを目的に開催された。東京大学大学院工学系研究科原子力専攻の学生向け講座として実施される同講座は、原子力分野における「3S」(Safety, Security, Safeguards)を対象に、AI応用技術を俯瞰的にとらえた教育・研究を進め、最新の原子力AI技術を開発・実現する人材の育成と輩出を目指している。同研究科の岡本孝司教授によると、同講座の教育は机上の学習にとどまらず、原子力産業の現場を実際に訪問し、産業界が求めるAI活用の方向性を理解した上で、原子力への活用方法を自ら見出し、かつ道筋を立てられる人材の育成を目指すという。冒頭挨拶にて、同研究科の津本浩平副研究科長は「原子力分野では、長年にわたり蓄積されてきた運転・保守に関する膨大なデータや、熟練技術者の知見をいかに継承していくかが重要な課題となっている」と述べた上で、「AI技術の活用はこれらの課題解決に向けて有効な手段であり、そうした社会的要請に応えるべく同講座を設置した」と語った。また、「本講座が原子力の安全・安心を支える新たな知の創出と、未来を担う人材の育成に寄与すること」に期待を示した。続いて登壇した、日立GEベルノバニュークリアエナジーの久持康平取締役社長は「私たちがこれまで築いてきた原子力技術の土台は、丁寧な検証と長年の積み重ねの上に成り立っているが、今後はAIの力を借りて、より効率的かつ高度な設計・評価を進め、新たな進化へとつなげていきたい」と述べた。また、同社が開発した小型モジュール炉BWRX-300や原子力メタバースプラットフォームを例に挙げ、「グループの総合力を活かし、原子力関連の技術革新とスピードアップに取り組んでいきたい」と意欲を示した。原子力へのAI適用を紹介するセッションでは、東京大学の岡本孝司教授、出町和之特任教授、三輪修一郎准教授が登壇。原子力産業にAI技術を応用することで、核セキュリティのための物理的防護力の強化、運転・保守の合理化及び高度化による安全性と経済性の向上、過酷事故時におけるレジリエンス力の強化などが期待されることや、すでに米国では、AIを用いたオンラインメンテナンスが導入され、プラントの安全性が大幅に向上している実例が紹介された。シンポジウムの後半には、複数のパネリストが登壇し、「原子力AI学の展開、今後の教育・研究の方向性」をテーマに討論形式で活発な意見交換が行われた。
15 Oct 2025
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首都圏に電力を供給する新潟県と首都圏との交流を図るイベント「電力の産地を応援!にいがた魅力発信フェア」が15日、東京都千代田区の東京商工会議所1階多目的スペースで始まり、多くの来場者でにぎわっている。会場では、新潟県産の米や日本酒、菓子など約130品目の特産品を販売。特に「笹団子」や「柿の種のオイル漬け」が人気を集め、訪れた人からは「東京で新潟の味を楽しめるのがうれしい」といった声が聞かれた。また、エネルギーの生産地としての新潟の役割を発信しようと、東京電力によるパネル展示やVR映像の体験コーナーも設けられている。柏崎刈羽原子力発電所の内部をVRで見学できるほか、新潟県内での発電事業や原子力発電所の安全対策への取り組みなどが紹介されている。イベントは、東京商工会議所が今年から始めた「電力の産地と消費地を結ぶ交流事業」の一環。新潟県内の商工会議所と連携し、地域間の交流促進や地元企業の販路拡大、ビジネスマッチングの機会創出を目指している。東京商工会議所の担当者は「今後もこのようなイベントを通じて電力産地との交流を深めていきたい」と話している。開催は10月16日(木)まで。時間は午前11時から午後6時までで、入場は無料。キャッシュレス決済にも対応している。https://myevent.tokyo-cci.or.jp/detail.php?event_kanri_id=206131
15 Oct 2025
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日本原子力産業協会は9月25日、中国核能行業協会(CNEA)と共催で「第2回日中原子力産業セミナー」を7年ぶりに対面で開催した。中国からは、CNEA、中国核工業集団有限公司、中国広核集団有限公司、中国華能集団有限公司、香港核電投資有限公司、清華大学など関連企業・機関から16名が参加。日本からは、日本原子力産業協会、日本原子力発電、電気事業連合会など、関連企業・機関から43名(オンライン傍聴を含む)が参加した。同セミナーでは「原子力発電所の運転および新規建設」をテーマに、両国の原子力産業界がそれぞれ知見を共有し、対話を通じて一層の交流促進と協業の可能性を探った。特に、中国で次々と進められる新規建設プロジェクトに関する実践的な知見について、日本側の参加者から「多くの学びを得られた」との声が上がった。また、中国の訪問団一行は、日本滞在中に、福島県および茨城県内にある複数の原子力関連機関・施設を訪問した。福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館への視察では、東日本大震災の発生から今日に至る復興への取り組みについて、映像や展示物を通じて説明があり、関係者との質疑を通じて現状理解を深める場が設けられた。東京電力福島第一原子力発電所構内の視察では、バスから乾式キャスク仮保管設備や多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水を保管するタンクなどを見学し、その後、展望デッキにて1〜4号機の廃炉作業、さらに、ALPS処理水のサンプルを用いた海洋放出に関する説明が行われた。参加者からは、発電所構内での作業員の安全確保や放射線管理、今後の解体工程などに関する質問が多く寄せられ、現場の細部に至るまで強い関心が示された。福島県の日本原子力研究開発機構(JAEA)楢葉遠隔技術開発センターへの視察では、同センターの設立の経緯や役割、国内外の機関との連携実績や技術実証事例についての紹介があった。そして、VR/AR技術を活用したシステムのデモンストレーションの実施、施設内の試験棟の視察が行われ、関係者との質疑応答の時間には、将来的な技術交流の可能性に関する話があがった。茨城県のJAEA原子力科学研究所の視察では、世界最大級の加速器施設として幅広い研究に利用されているJ-PARCの見学、また、中性子利用研究の中核拠点であるJRR-3の見学が実施された。それぞれの施設の運用体制や、各分野への活用・応用事例が示され、中国出身の研究者による中国語での解説を交えた活発な質疑応答が行われた。〈詳細はこちら〉
14 Oct 2025
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環境省が手掛ける放射線に関する正しい情報を発信する「ぐぐるプロジェクト」では、今年度の作品コンテストの募集を10月1日より開始した。締め切りは12月25日まで。同プロジェクトは、放射線の健康影響に関する誤解や風評、差別、偏見の解消を目指し、メディア向け公開講座や、全国の企業や学校でのセミナーの開催、作品コンテストの実施など、幅広い活動を手掛けている。中でも、セミナーで学んだ知識を作品として世に発信していく一連の流れを「ラジエーションカレッジ」と称し、同プロジェクトの要に位置づけている。今回募集の作品コンテストとは、このラジエーションカレッジの一環であり、放射線の健康影響について学び、それを多くの人に広く伝えることが目的だ。公募テーマは「学び感じたあなたの想いを広く届ける。」で、募集部門は、「キャッチコピー部門」、「グラフィックアーツ部門」「ショート動画部門」の3部門。詳細はウェブサイトへ。
10 Oct 2025
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10月7日に横浜市で開かれたOECD/NEA主催の国際シンポジウム「Information, Data and Knowledge Management for Radioactive Waste」では、関西大学の鷲尾隆教授が「AI技術 および原子力産業への その適用可能性」と題して講演を行った。鷲尾教授は長年にわたり原子力分野でAI研究を続ける第一人者であり、講演とその後の議論は会場を大いに沸かせた。冒頭、鷲尾教授は機械学習やディープラーニングなどAIの代表的手法を紹介し、「AIはデータが豊富な領域では優れた補間能力を発揮するが、未知の状況に当てはめて正しく判断することはできない」と強調した。「AIは与えられたデータの中で最適解を見つけるが、データが存在しない事象には無力だ。したがって、AIによる完全自動化を目指すべきではなく、あくまでも人間が監視・評価する"協働的ツール"として位置づけるべきだ」と述べた。続いて、ChatGPTなどに代表される生成AIの仕組みを解説。「生成AIは巨大な確率モデルであり、人間のような創造的思考をしているわけではない」と述べ、「文章をもっともらしく生成しても、未知の領域に当てはめて判断すると誤りが生じる可能性がある」と警告した。さらに、「AIの"答え"は、確率的に最も出現しやすい単語列の延長にすぎない。本質を理解して使わなければ、誤用によって安全文化そのものを損なうリスクがある」と語った。鷲尾教授はAIの応用例として、産業技術総合研究所(産総研)・日本電気株式会社(NEC)と共同で進めた人工衛星望遠鏡の迷光(stray light)分析を紹介。AIがリスク条件を自動的に探索するアルゴリズムを用い、従来のランダム探索より10万倍の効率で危険シナリオを発見できたという。そして、「この手法は、原子力発電所における想定外事故シナリオの自動抽出にも応用できる」と説明した。さらに、大阪大学との共同研究では、化学反応条件をAIが最適化することで、少数の実験データから高収率条件を導出。また、日産自動車などとのプロジェクトでは、工場の運転データをAIが解析し、シミュレーションモデルを自動補正して現場との整合性を高めたという。鷲尾教授は、「AIによるプロセス最適化や運転計画の高精度化は、原子力施設の安全運転支援にもつながる」と述べた。講演後の質疑応答では、スウェーデンの研究者から「AIは人間のCompetence(能力)を将来的に継承できるだろうか?」との質問が寄せられた。これに対し鷲尾教授は、「AIは知識やデータを扱えるが、人間の判断力や洞察力を直接再現することはできない」と明言。「重要なのはAIの出す解を"どう設計し、人間社会の意思決定に結びつけるか"であり、それは技術よりも組織や社会制度、そして人間同士の対話にかかっている」と答えた。会場からは「AIが"教育や会議を通じて能力を育てる存在"になれるのでは」という追加意見もあがったが、教授は「それは今後の哲学的・倫理的テーマ」として議論を未来に託した。米国の技術者からは、「フロッピーディスクやCD-ROMなど、古いデータ媒体が読み取れなくなった現状をどう考えるか?」との現実的な問いもあった。これに対して鷲尾教授は、「AIやデータベースの維持管理は、企業の自己責任だけに任せてはならない。将来的には政府による公的管理が必要になる」と指摘。「情報やAIモデルは"社会的インフラ"として保全されるべきだ」との見解を示した。最後に参加者から、「AIは未知領域を探索できるのか?」という質問が寄せられた。鷲尾教授は、「AIの根本的な限界は"未知を定量的に評価できない"ことにある」と説明。「AIは未知の発見を支援するが、自ら未知を創造することはできない。だからこそ、人間の科学的直感とAIの分析能力を組み合わせることが重要だ」と述べた。講演の締めくくりに鷲尾教授は、「原子力業界は安全を最優先するあまり、新技術導入に慎重すぎる傾向がある。しかし、安全性を高めるためにも、技術を"保守的に探求"する姿勢が必要だ」と述べた。そして、「AIの限界を理解したうえで、その強みを人間の判断力と結合することが、次世代の安全文化の形成につながる」と結び、会場は大きな拍手に包まれた。
10 Oct 2025
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日本原燃は10月7日、青森県六ヶ所村のウラン濃縮工場に、2014年以来、11年ぶりに濃縮ウランの原料となる六フッ化ウランを運び入れたと発表した。同日、青森県六ヶ所村のむつ小川原港に運びこまれたシリンダ(金属製の容器)を、輸送船から輸送車両にクレーンで陸揚げし、国土交通省の立ち合いのもと、放射線量の測定や外観確認を実施。その後、専用道路にて陸上輸送され、ウラン濃縮工場内でシリンダの受け入れ作業が行われた。同ウラン濃縮工場は1992年に操業を開始したが、2017年9月に一時生産を停止。2023年8月から運転を再開し、現在、112.5トンSWU/年の生産能力を誇る。同社は、2028年度中に450トンSWU/年の生産体制を目指しており、すでに事業変更許可を取得した2号カスケード設備(150トンSWU/年の処理能力)では、新型の遠心分離機などへ設備更新が進み、安全性と効率の向上を図っているところだ。また、ウラン化合物を取り扱う六フッ化ウラン処理設備や高周波電源設備、放射線監視設備、非常用設備についても同様に設備更新が行われ、順調に設備更新が進んでいることから、この度、ウランの受け入れが決定した。今回の受け入れでは、カナダのCameco(カメコ)社から、シリンダ50本分、最大625トンを受け入れる。同社はこれまで、1991年から2014年までの間に計41回、シリンダ1,299本分のウランを搬入してきた実績がある。同社はWEBサイト上で「国内に唯一のウラン濃縮工場を安全に運転し続け、日本のエネルギーセキュリティに貢献できるよう事業に取り組んでまいります。そして、長年にわたって支えていただいている地域の皆さまへの感謝の気持ちを忘れることなく、これからも地域とともに歩み続け、地域の発展に貢献してまいります」とコメントしている。
09 Oct 2025
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経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)主催の国際シンポジウムで来日したW.D.マグウッド事務局長は10月7日、記者会見に臨み、放射性廃棄物処分をめぐる知識・データ管理(Information, Data and Knowledge Management=IDKM)の重要性と、国際的な協力の方向性について語った。日本では2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定され、2002年にNUMOが文献調査の公募を開始。実際の文献調査は、2020年に北海道の寿都町・神恵内村で始まっているとはいえ、すでに公募開始から四半世紀が経過している。この点についてマグウッド事務局長は、「国ごとの文化や制度、社会的背景を踏まえ、社会的合意を得るための時間を十分に取ることが不可欠だ」と強調。「20年、30年、あるいはそれ以上をかけてでも、拙速な決定で失敗するよりははるかに良い」と述べた。さらに、事務局長は過去の失敗事例として米国のマクシーフラッツ(Maxey Flats)低レベル処分場を挙げ、「記録や知識の欠如が、地域住民の不安や巨額の除染費用を招いた」と指摘。記録と知識の管理が、いかに将来の社会的信頼の基盤となるかを強調した上で、「私たちは未来の世代に、問題だけを残すのではなく、それを管理するための知識を伝える責任がある」と語った。原子力産業新聞は、NEAが公表した『SMRダッシュボード』に関連して、長期にわたり燃料交換不要や、密閉炉心を謳うSMR(小型モジュール炉)であっても、最終的には廃棄物が発生することから、NEAはどのように世界規模での廃棄物管理対策を検討しているのか質問。事務局長は、「NEAは、新型炉による廃棄物の発生量と性状を正確に把握し、対応策を準備することを最優先課題としている」と説明。「新しい技術を導入しても、処分経路が確立していないのでは本末転倒だ。各国の制度や環境は異なるため、廃棄物処理基準の『国際的な調和(harmonization)』は容易ではないが、今こそ将来に向けた共通基盤づくりを始める好機である」との認識を示した。 また、デジタル技術の採用について本紙が、NEAが以前指摘していた「原子力分野はデジタル技術の採用で取り残されてはならない」との考え方を踏まえ、AIは知識管理だけでなく安全文化、意思決定をどのように改善しうるか、事務局長の見解を求めたところ、事務局長は「AIは今後、情報整理や検索機能などで極めて大きな役割を果たすだろう」としつつも、「長期的な影響や応用範囲についてはまだ見通せない部分が多い」と慎重な見方を示した。そして「AIは強力なツールであると同時に、文脈や人間的判断を失わせる危険もある。長期的な知識の継承と信頼性確保の観点から、慎重に統合していく必要がある」と述べた。 そのほか質疑では、「データとは何か」との問いに対し、数値やテキスト等の事実情報に限らず、公開対話や協議の記録、当時の社会状況や意思決定の経緯といった文脈や暗黙知も含めて捉えるべきだとし、将来世代が全体像を理解できるよう記録の幅と質を確保する重要性を強調した。NUMOについては、「NUMOの技術的能力は世界のいかなる処分機関にも劣らない」と評価。スウェーデンやフィンランドなど先行国の知見を吸収しながら、段階的で慎重なプロセスを進めているとし、「NUMOの公開・レビュー活動は国際的にも透明性の高い取り組み」であり、今後もNEAが継続的に支援していく考えを示した。会見とシンポジウムを通じて、技術・制度の整備だけでなく、「記録・知識・記憶」の継承こそが社会的信頼を築く鍵であるという趣旨が、繰り返し強調されていた。NEAが提唱する情報・データ・知識管理(IDKM)は、NUMOが進める地層処分の長期的な安全性と社会的合意形成の双方を支える基盤となるだろう。
09 Oct 2025
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経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は10月7日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、「放射性廃棄物管理に関する情報・データおよび知識マネジメント」をテーマにシンポジウムを開催した。国内外から技術者、研究者、規制当局、政策決定者など約100名が参加。高レベル放射性廃棄物の地層処分をめぐる長期的な情報管理の重要性や、各国の取り組みについて議論が行われた。OECD/NEAは2019年に「情報・データ・知識管理(Information, Data and Knowledge Management=IDKM)」作業部会と専門家グループを設立し、活動を開始。放射性廃棄物の処分にあたっては、処分技術や施設の安全性に加え、記録・知識・記憶の世代間継承を重視している。アジアで同テーマのシンポジウムを開催するのは今回が初めて。日本を代表して、原子力発電環境整備機構(NUMO)がホストを務めた。開会にあたり、OECD/NEAのW.D.マグウッド事務局長は、「気候変動への対応やロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機を背景に、加盟国では原子力発電の再評価が進んでいる」と述べ、従来とは異なる新たな局面にあるとの認識を示した。また、新型炉の開発も進む中、放射性廃棄物に関して世代を超えた長期にわたる情報管理を徹底することは、放射性廃棄物の処分について人々の理解を得るうえで極めて重要であると強調した。NUMOの山口彰理事長は、単に情報を保存するだけでなく将来の関係者が理解し実際に活用できる形で情報を維持することの重要性を指摘。そのうえで、シンポジウムで得られた各国の知見や協力関係が、具体的な行動につながるよう期待を示した。本セッションでは、NEAによる国際的な取組状況に加え、日本国内における放射性廃棄物管理および関連研究開発の現状が紹介された。また、関西大学ビジネスデータサイエンス学部長の鷲尾隆教授からはAI技術の原子力産業への応用可能性に関する講演が行われた。シンポジウムは10月9日まで、3日間にわたり開催される。
08 Oct 2025
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中部電力は10月7日、浜岡原子力発電所1号機(BWR、54.0万kWe)の建屋内にある原子炉圧力容器の上蓋(直径約5m、高さ約3m)をクレーンで取り外し、原子炉領域の解体撤去工事を開始したと発表した。原子炉領域とは、原子炉圧力容器および炉内構造物、原子炉圧力容器を取り囲む放射線遮へい体を含む領域を指す。同1号機の使用済み燃料はすでに取り出されており、今後、切断装置(大型バンドソー)等を用いて圧力容器や格納容器の解体作業に入る。同社によると、その際発生する廃棄物は、廃棄先が決まるまで建屋内にて安全に保管されるという。今年3月、すでに同発電所の2号機(BWR、84.0 万 kWe)の解体撤去工事が開始されており、日本国内における商業用原子力発電所の原子炉領域における解体撤去は、同1号機が2例目となった。同1、2号機は、2009年1月に運転を終了し、同年11月、廃止措置計画認可を受けた。その後、複数回の廃止措置計画の変更を経て、この度、原子炉領域の解体作業に着手する。原子炉の廃止措置計画は4段階に分かれ、この度の作業は、その第3段階目にあたる。同計画では、2035年度までに原子炉領域の解体撤去工事を終え、2042年度までにすべての廃炉を完了させる予定だ。また、使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)は10月3日、原子炉本体の解体に向けたパイロットプロジェクトを立ち上げた。これを受けて、同社は1・2号機を実証プラントとして提供し、プロジェクトに参画することを表明した。このプロジェクトは、NuRO、電力10社、電気事業連合会、原子力エネルギー協議会(ATENA)が連携し、安全性を最優先に、原子炉本体の円滑かつ合理的な解体工法の確立を目指すもの。NuROは、実証を通じて原子炉領域の解体工事に伴うさまざまな課題を検証し、その成果を今後の他プラントの廃止措置に活かす考えを示している。同社はWEBサイト上で、「同プロジェクトを牽引し、引き続きトップランナーとして原子炉本体の解体を進めることで、日本の廃止措置に貢献できるものと考える」と意欲を示した。
08 Oct 2025
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総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(以下WG、座長=斉藤拓巳・東京大学大学院工学系研究科教授)が10月3日、約1年ぶりに開催され、次世代革新炉の開発の道筋の具体化に向けた議論が行われた。前回のWG開催後に策定された第7次エネルギー基本計画では、原子力を脱炭素電源として活用することが明記され、次世代革新炉(革新軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合)の研究開発を進める必要性が示された。今回のWGでは、実用化が間もなく見込まれる革新軽水炉と小型軽水炉に焦点を当てた議論が行われ、開発を進める各メーカー(三菱重工・日立GEベルノバニュークリアエナジー・東芝エネルギーシステムズ・日揮グローバル・IHI)から、安全性への取り組み、技術の進捗、今後の見通しなどの説明があった。三菱重工のSRZ-1200は、基本設計がおおむね完了しており、立地サイトが決まれば詳細設計に進む段階で、すでに原子力規制庁との意見交換も5回実施済み。規制の予見性向上に取り組んでいるとの報告があった。日立GEベルノバニュークリアエナジーからは、開発中の大型革新軽水炉HI-ABWRや小型軽水炉BWRX-300の説明があり、特にBWRX-300はカナダのオンタリオ州で建設が決定しているほか、米国やヨーロッパでも導入・許認可取得に向けた動きがあると述べた。東芝エネルギーシステムズは、開発中の革新軽水炉iBRに関して、頑健な建屋と静的安全システムの採用で更なる安全性向上を進めながら、設備・建屋の合理化を進め早期建設の実現を目指すと強調した。IHIと日揮ホールディングスは、米国のNuScale社が開発中の小型モジュール炉(SMR)について、米国では設計認証を取得し、ルーマニアで建設に向けた基本設計業務が進められていると伝えられた。両社は、経済産業省の補助事業を活用し、原子炉建屋のモジュール化や要求事項管理、大型機器の溶接技術、耐震化などの技術開発に取り組んでいるという。その後、参加した委員から多くの期待感が示されたが、同時に課題点の指摘があった。例えば、革新炉開発の技術ロードマップの定期的な見直しの必要性や、日本特有の自然条件への適合に関する議論の進展、また、各社が進める新型炉の開発状況に応じた規制要件や許認可プロセスの予見性向上の必要性など挙げられた。また、エネルギー安全保障の観点や立地地域との信頼の醸成など技術開発以外で取り組むべき事項についても意見があった。産業界の立場から参加している大野薫専門委員(日本原子力産業協会)は、ロードマップには技術開発だけでなく、投資判断の際に重視される事業環境整備やサプライチェーン、人材の維持・強化についても明示的に盛り込むよう要望。また、環境影響評価や設置許可などの行政手続きについては、標準的なタイムラインの提示が必要だと指摘した。 小型軽水炉のロードマップに関しては、国内での開発動向や新たな知見を反映したアップデートに加え、日本企業が参画する海外の小型軽水炉プロジェクトの導入可能性も視野に、ロードマップで取り上げることを提案。またGX関連支援では、革新技術だけでなく、サプライチェーンを支える製造基盤の維持に対する支援継続も不可欠と訴えた。
07 Oct 2025
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