(記事公開日:2024年10月4日)
電子文書の普及が加速する中、その真正性を担保するためのキーテクノロジーとして注目を集めているのがタイムスタンプです。しかし、タイムスタンプの具体的な仕組みや、電子文書での活用方法については、まだ十分に理解されていないのが現状ではないでしょうか。
本記事では、タイムスタンプの基本概念から、設備点検記録などへの具体的な活用方法、サービスの選定と導入のポイントまで、実務に役立つ情報を詳しく解説していきます。電子文書の信頼性を高め、業務の効率化を図るためにも、タイムスタンプについて理解を深めておくことが重要です。
タイムスタンプは、電子文書の存在時刻と内容の完全性を証明する重要な技術です。ここでは、タイムスタンプの定義や役割、技術的な仕組み、そして電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの位置づけについて解説します。
タイムスタンプがどのように機能し、電子文書の信頼性を担保するのか、また法改正によってタイムスタンプ要件がどう変わったのかを見ていきましょう。
タイムスタンプとは、電子文書が特定の時点で存在し、その内容が改ざんされていないことを証明する技術です。
電子文書は、紙の文書と違って簡単に改ざんできてしまうため、その信頼性を担保するのが難しいという課題がありました。そこで登場したのがタイムスタンプです。
タイムスタンプを使えば、電子文書の存在時刻と内容の完全性を証明できるため、電子文書の法的な効力を高めることができます。
たとえば、契約書や領収書など、改ざんされては困る重要な電子文書には、タイムスタンプを活用することで、万が一の紛争の際にも、電子文書の信頼性を裏付ける強力な証拠となります。
電子文書の利用が急速に広がる中、タイムスタンプは、ビジネスにおける電子文書の信頼性を高める上で、欠かせない技術となっています。
タイムスタンプの技術的な仕組みを説明すると、まず電子文書から特殊な計算式で「ハッシュ値」と呼ばれる値を生成します。このハッシュ値は、元の文書が同じなら必ず同じ値になりますが、ほんの1文字でも変更があれば全く別の値になる性質があります。
そのハッシュ値を第三者機関の「時刻認証局」に送ると、その時刻情報を付与して「タイムスタンプ」として発行してくれます。
電子文書を受け取った側は、その文書からハッシュ値を計算し、タイムスタンプに記録された値と照合することで、文書が改ざんされていないことを確認できます。こうした仕組みにより、タイムスタンプは電子文書の存在時刻と内容の完全性を証明しています。
電子帳簿保存法では、電子取引データの保存にタイムスタンプの付与が義務付けられていましたが、令和4年1月の改正により、その要件が大幅に緩和されました。
具体的には、改正前はタイムスタンプの付与期限が「受領後速やか(おおむね3営業日以内)」とされていましたが、改正後は最長約2か月とおおむね7営業日以内に延長されました。これにより、企業の事務負担が軽減されることが期待されています。
さらに、クラウドなどの改ざん防止機能を備えたシステムにデータを保存した場合は、タイムスタンプの付与を省略できるようにもなりました。
電子帳簿保存法の改正は、電子文書の活用をより促進するものといえるでしょう。
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設備点検記録の電子化にタイムスタンプを活用することで、点検の実施時期や実施者を明確に証明でき、記録の信頼性を大幅に高められます。
ここでは、タイムスタンプの具体的な付与方法と、付与後の電子文書の適切な保存・管理方法について詳しく解説します。タイムスタンプを効果的に運用し、設備管理の高度化と業務効率化を実現しましょう。
設備点検記録の電子化は、ペーパーレス化による業務効率化だけでなく、データの信頼性向上にも大きく貢献します。
特に、電子化された点検記録にタイムスタンプを付与することで、いつ、誰が点検を実施したのかを明確に証明できるようになります。これにより、点検記録の改ざんを防止し、設備の安全性と品質を担保できます。
また、タイムスタンプ付きの電子記録は、法的な証拠能力も認められるため、トラブル発生時の原因究明にも役立ちます。設備管理の高度化を目指すなら、タイムスタンプの活用は欠かせません。
設備点検記録にタイムスタンプを付与する際は、まず対象となる電子文書を用意します。そして、信頼できるタイムスタンプサービスを選択し、そのサービスが指定する手順にしたがって、電子文書にタイムスタンプを付与していきます。
注意点としては、電子文書のフォーマットがタイムスタンプサービスに対応しているかを確認することです。また、タイムスタンプを付与する前に、電子文書の内容を十分にチェックし、誤りがないことを確認しておくことも重要です。
付与されたタイムスタンプは、電子文書と一緒に保存・管理します。万が一、電子文書の内容に疑義が生じた場合、タイムスタンプを検証することで、その文書が改ざんされていないことを証明できます。
タイムスタンプを付与した電子文書は、適切な方法で保存・管理することが重要です。具体的には、アクセス制限によって改ざんを防止したり、定期的なバックアップを実施したりすることが求められます。
また、電子文書の保存期間や廃棄ルールを定め、管理責任者を明確にするなど、社内の管理体制を整備することも重要なポイントです。
タイムスタンプは電子文書の信頼性を高める強力なツールですが、それを最大限に活用するためには、利用者側の適切な管理体制が不可欠です。
タイムスタンプサービスの選び方や費用体系、導入手順について解説します。
最適なサービスを選択し、スムーズに運用を開始するためのポイントを押さえましょう。
タイムスタンプサービスを選ぶ際は、機能面、料金体系、セキュリティ対策の3点を重視することが大切です。たとえば、純粋にタイムスタンプのみを行うサービスもあれば、電子契約のように関連機能が充実したサービスもあります。自社のニーズに合わせて最適なサービスを選びましょう。
料金形態は定額制と従量課金制の2種類が一般的です。毎月のタイムスタンプ発行数を試算し、コストメリットを比較検討するとよいでしょう。セキュリティ面では、2要素認証やIPアドレス制限、SSLなどの対策が十分に施されているかチェックが必要です。
タイムスタンプサービスの費用は、前述のとおり主に定額制と従量制の2種類の価格体系があります。
定額制は、月額料金が固定で使用量にかかわらず一定の料金を支払います。従量制は、1件ごとにタイムスタンプを発行する都度課金される仕組みで、月々の使用量に応じて料金が変動します。
たとえば、あるサービスでは、従量制の場合は月額8,000円で1,000件までのタイムスタンプが利用可能で、超過分は1件8円の従量課金となります。一方、定額制では、秒間あたりのタイムスタンプ数制限により料金が異なります。
自社のタイムスタンプ発行数を予測し、コストメリットを比較して、最適な価格体系を選ぶことが重要です。
タイムスタンプサービスを導入する際は、まず自社の要件に合わせて適切なサービスを選定することが重要です。次に、サービス提供事業者への会員登録や初期設定を行います。具体的には、タイムスタンプを付与する対象となる電子文書を準備し、スキャナーやスマートフォンで電子化します。
電子化した文書をタイムスタンプサービスのシステムにアップロードすると、タイムスタンプが付与されます。ただし、電子帳簿保存法の要件を満たすためには、タイムスタンプの付与だけでなく、適切なデータ管理体制の構築が不可欠です。
運用開始後も、定期的にタイムスタンプの有効性を確認し、必要に応じて更新作業を行うことが求められます。
タイムスタンプの有効性を維持し、電子文書の真正性を長期的に担保するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、タイムスタンプの有効期限と更新の必要性、不適格となるケースとその対策、そして今後の電子文書の普及に伴うタイムスタンプの重要性について解説します。
タイムスタンプには有効期限があります。電子署名に用いられる電子証明書の有効期限は、電子署名法施行規則により5年以内と定められており、一般的には2年〜3年となっています。この有効期限が切れてしまうと、電子署名の信頼性が失われてしまうのです。
そこで重要となるのが、タイムスタンプの更新です。有効期限切れ前に新しいタイムスタンプを付与することで、電子署名の有効性を延長できます。この仕組みを「長期署名」と呼びます。
タイムスタンプが不適格となるケースとしては、まず、タイムスタンプの有効期限が切れてしまった場合が挙げられます。
また、タイムスタンプを付与する時刻認証局(TSA)の認定が取り消されたり、TSAのシステムに不具合が生じたりした場合も、タイムスタンプが不適格となる可能性があります。
これらのリスクに対応するには、「長期署名」の仕組みを活用し、計画的に更新作業を行うことをおすすめします。また、信頼できる認定TSAを選定し、システムの安定性も確認しておくことが賢明でしょう。
電子文書の普及が加速する中、タイムスタンプの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。電子契約や電子帳簿保存など、ビジネスのあらゆる場面でデジタル化が進む今、電子文書の真正性を担保する技術は欠かせません。
実際、電子契約サービス市場は2026年に2020年比4倍以上の453億円に達すると予測されています。こうした状況下、いつ、誰が、どの文書を作成・承認したのかを証明するタイムスタンプの役割はこれからますます重要になっていくはずです。
改ざんや不正アクセスを防ぎ、法的な効力を与えてくれるタイムスタンプは、電子文書の信頼性を支えるインフラとして、今後さらなる活用が期待されています。
「タイムスタンプ」で始める!情報資産のリスク管理
タイムスタンプによる書類の真正性担保をローコストに実現するためには、アイ・オー・データのソリューションがおすすめです。医療文書や設計図書の電子保存にも利用可能で、大量の書類データを安全に守ります。
アイ・オー・データのタイムスタンプNASと電子署名オプションを組み合わせると、電子データの「原本性」と「非改ざん性」を長期にわたって証明できます。
また、5年間タイムスタンプ押し放題で追加料金がかからないので、大量の書類を扱う場合に適しています。
アイ・オー・データの長期署名ソリューションを使えば、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠でき、紙で保存するコストを削減できます。
設計図書についても、「建築設計業務における設計図書の電磁的記録による作成と長期保存のガイドライン」により電子保存が認められています。保管や郵送・書類の検索にかかるコストを大幅に削減できる点がメリットです。
電子データの存在時刻を証明するタイムスタンプは、電子帳簿保存法などで法的に重要な役割を担っています。設備点検記録などへの活用が広がる一方、サービス選定時は費用や互換性に注意が必要です。
具体的な取得方法や不適格になるケースについても理解を深めましょう。電子化の進展とともに、今後ますます利用が拡大していくでしょう。
アイ・オー・データでは、タイムスタンプ端末と電子署名オプションの組み合わせで電子データを安全に保護するソリューションを提供しています。ぜひご検討ください。
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