IGCCとは
石炭をガス化し、ガスタービンと蒸気タービンで構成される複合発電設備(コンバインドサイクル)によって、一般的な石炭火力発電よりも効率よく発電するシステムのことです。
一般的な石炭火力発電との違い
一般的な石炭火力発電
ボイラー内で石炭を燃焼したときに発生する熱を利用して、水を蒸気に変え、この蒸気の膨張力によって蒸気タービンを回転し、発電します。
IGCC(石炭ガス化複合発電)
ガス化炉内で石炭をガス化します。この石炭ガスをガスタービンに導き燃焼させることにより、ガスタービンを回転させ発電します。さらにガスタービンに残った高温の排ガスをボイラーに導いて、その熱で蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させ発電します。
IGCCの仕組み
「ガス化炉設備」で石炭をガス化し、「ガス精製設備」で石炭ガスをクリーンにした後、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「複合発電設備」で発電します。
※(注記)各設備名をクリックすると設備の説明が表示されます。
(ガス化炉設備、ガス精製設備、複合発電設備)
ガス化炉設備
- 石炭を微粉炭機で細かく砕いて、ガス化炉へ窒素とともに送ります(ドライフィード)。
- ガス化炉は下部のコンバスタ(燃焼室)と上部のリダクタ(反応室)から構成される二室二段噴流床方式を採用しています。
- コンバスタでは微粉炭を高温燃焼し、リダクタでのガス化反応に必要な高温熱源を発生させます。
- リダクタではコンバスタからの上昇した熱を利用して微粉炭をガス化反応させ、高温の石炭ガス(シンガス)を発生させます。
- SGC(シンガスクーラー)熱交換器では石炭ガスの熱を利用し、蒸気を発生させます。
この蒸気は蒸気タービンへと送られます。 - ガス化炉の出口ではガス化しきれなかった未燃物(チャー)をチャー回収装置で回収して、再びコンバスタに投入します。
チャーは完全にガス化するまで繰り返しガス化炉へ送られます。
ガス精製設備
- ガス精製設備は石炭ガス中の硫黄化合物(H2S※(注記)1、COS※(注記)2)などの不純物を水や薬液を使用して段階的に取り除きます(湿式)。
- 石炭ガス中のCOSを変換器(触媒)でH2Sへ変換します。
- ハロゲン、アンモニアなどの微量成分はスクラバや冷却塔で水洗いして除去します。
- H2SはH2S吸収塔でアミン溶液という薬液に吸収させて取り除きます。
- H2Sを吸収したアミン溶液は吸収液再生塔にてH2Sを分離させます。分離したH2Sは燃焼させたのち、排煙脱硫装置で石膏として回収します。
※(注記)1 H2S:硫化水素 ※(注記)2 COS:硫化カルボニル
複合発電設備
- 燃焼温度1,400°C級ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合発電設備を採用することで、高い発電効率を実現するとともに、ガスタービン・蒸気タービン・発電機を同軸上に配置する「一軸方式」を採用し、省スペース化を図っています。
- ガス精製設備でクリーンになった石炭ガスを燃焼させ、ガスタービンを回転して発電します。
- 燃焼後の高温の排ガスを排熱回収ボイラー(HRSG)へ送り、熱を回収して蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転して発電します。
- ガス化炉のSGC(シンガスクーラー)熱交換器でも蒸気の回収を行うため、天然ガスの複合発電設備よりも蒸気タービンの発電量が増加します。(ガスタービンと蒸気タービンの出力比は約3:2)
- ガス化に必要な空気はガスタービンの空気圧縮機から抽気することで、所内動力を低減しています。
- 排熱回収ボイラー内に脱硝装置を組み込むことで、NOx(窒素酸化物)の排出量を低減しています。