国土地理院技術資料 D1-No.932
1:25,000 活断層図
牛首断層帯、跡津川断層帯及び庄川断層帯とその周辺
「白川村」 解説書
後藤 秀昭
令和元年 7 月
編集 国土地理院 1目 次
1:25,000 活断層図 「白川村」の解説
1 . 牛首
う し く び
断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2
2 . 跡津川
あ と つ が わ
断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3
3 . 加須良
か ず ら
断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3
4 . 白川
しらかわ
断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
5 . 森茂
も り も
断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6
6 . 稲越
いなごえ
断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6
7 . 高 山 市 栗 ヶ 岳 南 方 の 断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7
8 . 白 川 村 帰 雲 山 北 方 の 断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7
9 . 馬 狩 谷 付 近 の 断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8
1 0 . 白 川 村 妙 法 山 南 東 の 断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8
1 1 . 白 川 村 三 方 崩 山 北 東 の 断 層 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8
引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9
使 用 空 中 写 真 、 使 用 航 空 レ ー ザ 測 量 デ ー タ 及 び 検 討 委 員 会 等 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9
付 図 ( 断 層 索 引 図 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1
1:25,000 活断層図 牛首断層帯、跡津川断層帯及び庄川断層帯作成地域図
調査図郭 21:25,000 活断層図 「白川村」の解説
牛首
うしくび
断層帯は,飛騨高地の北部の富山県上新川
かみにいかわ
郡大山町から,同郡大沢野町(現富山市)
,婦負
ね い
郡細入
村(現富山市)
,岐阜県飛騨市,富山県南砺
な ん と
市を経て,岐阜県大野郡白川村に至る断層帯である.長さは
約 54 km で,ほぼ北東-南西方向に延びており,右横ずれを主体とする断層帯である(地震調査研究推
進本部地震調査委員会,2005)
.牛首断層帯は,牛首断層,東北東-西南西方向に派生する万 波 峠
まんなみとうげ-茂住祐延
も ずみ すけの ぶ
断層及び早乙女岳
さ お と め だ け
断層により構成される.
跡津川
あ と つ が わ
断層帯は,飛騨高地北部の富山県中新川郡立山町から同県上新川郡大山町(現富山市)
,岐阜県
飛騨市を経て同県大根郡白川村に至る断層帯である.全体の長さは約 69 km で,ほぼ東北東-西南西方
向に延びる.本断層帯は,右横ずれを主体とする断層帯で,北西側隆起成分を伴う(地震調査研究推進本
部地震調査委員会,2004a)
.跡津川断層帯は,跡津川断層及びその北東延長方向に分布する弥陀ヶ原
み だ が は ら
断層
からなる.
庄 川
しょうかわ
断層帯は,石川県金沢市東部から,富山県西砺波郡福光町
ふくみつまち
(現南砺市
な ん と し),同県東砺波郡
ひがしとなみぐん
上平村(現
南砺市)
,岐阜県大野郡白川村,荘 川 村
しょうかわむら
(現高山市)を経て,同県郡上市
ぐ じ ょ う し
北部に至る断層帯で,加須良
か ず ら断層,白川
しらかわ
断層,三尾河
み お ご
断層及び森茂
も り も
断層から構成される.全体の長さは約 67 km で,ほぼ北北西-南南東
に延びる.
本断層帯は左横ずれを主体とし,
加須良断層では東側隆起成分,
白川断層と三尾河断層では西
側隆起成分を伴う.加須良,白川,三尾河の各断層は概ね直線状に分布するが,加須良断層と白川断層の
間には小規模のステップを有する.また,森茂断層は白川断層の東方に 2-5 km 程度の間隔をとって分
布する(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2004b).本図には,牛首断層帯を構成する牛首断層,跡津川断層帯を構成する跡津川断層,庄川断層帯を構成す
る加須良断層,白川断層及び森茂断層と,その他の活断層(稲越
いなごえ
断層,高山市栗ヶ岳南方の断層)及び推
定活断層が記載されている.
以下に,
各断層の概要と判読した根拠を記載する
(下記の断層ごとの番号及
び記号は,巻末の付図(断層索引図)に記載した番号及び記号に対応).1.牛首
う し く び
断層
・走向 : 北東-南西
・長さ(図葉内)
: 約 11 km
・断層種別 : 活断層(一部右横ずれ及び縦ずれを含む)
(1)概要
牛首断層は,
「有峰湖」図葉の富山市本宮付近から,岐阜県飛騨市,富山県南砺市を経て本図葉の
白川村のゾウゾウ山の東まで,概ね北東-南西方向に延びる右横ずれを主体とする活断層である.
本図には,南砺市の利賀川ダム(図郭東端)から白川村のゾウゾウ山の東まで,北東-南西方向に
延びる長さ約 11 km の区間が記載されている.本断層には,一部区間に右横ずれ及び縦ずれが確認
される.
(2)判読根拠
全体的に直線状の谷が延びており,
それに沿って小河谷の右屈曲や段丘面の変位など,
変位地形が
連続する.
この断層の南西端は,
庄川の谷底平野の西側に分布する下位段丘面に変位が確認できない 3ことから,庄川左岸の谷底平野の沖積面と山地の境界付近までとした.なお,この西延長の卒塔婆峠
付近に北東-南西方向のリニアメントがあり,推定活断層として記載している.
主な地点ごとの判読根拠は,次のとおりである.
a:利賀川ダム南の下位段丘面に南側落ちの低崖が認められ,トレンチ調査によって活断層であるこ
とが確かめられている(宮下ほか,2003,2004)
.低崖は逆向きの低断層崖である.
b:この付近では沖積錐が段丘化した地形に南向きの逆向き低断層崖が認められる.トレンチ調査に
よって,活断層であることが確認されている(宮下ほか,2003,2004).2.跡津川
あ と つ が わ
断層
・走向 : 東北東-西南西
・長さ(図葉内)
: 約 6 km
・断層種別 : 活断層,推定活断層
(1)概要
跡津川断層は,
「立山」図葉の富山県中新川郡立山町から,本図葉の岐阜県飛騨市・大野郡白川村
境の籾糠山北方付近まで,
概ね北東-南西方向に延びる右横ずれを主体とする活断層である.
本図に
は,飛騨市の金山谷の北東(図郭東端)から籾糠山の北まで,東北東-西南西方向に延びる長さ約 6
km の区間が記載されている.図郭東端から長さ約 3 km の活断層が延び,活断層の西端部及び金山
谷付近からは,ほぼ東西方向に並行して延びる長さ約 1 km から約 3 km の数条の推定活断層が記載
されている.
(2)判読根拠
跡津川断層の南西端付近にあたる本図葉内では明瞭な変位地形は乏しく,断層線が図郭東端付近
から西に向かって分岐しながら延びており,
跡津川断層の末端を示すと考えられる.
天生峠周辺の小
起伏の山地では,山地の頂面の高さがリニアメントの両側で異なる場所や谷の閉塞に伴う堰き止め
湖と思われる湿地の連続が確認でき,
最近の地質時代の確実な断層活動を確認できないが,
断層変位
の可能性があるため,推定活断層とした.
3.加須良
か ず ら
断層
・走向 : 北北西-南南東
・長さ(図葉内)
: 約 9 km
・断層種別 : 活断層(一部左横ずれ及び縦ずれを含む)
(1)概要
本図には,富山県南砺市と岐阜県白川村の境界に位置する桂湖(図郭北端)から白川村馬狩
ま が り
まで,
北北西-南南東方向に延びる長さ約 9 km の区間が記載されている.本断層には,一部区間に左横ず
れ及び縦ずれの変位が確認される.
(2)判読根拠
北西端付近では,
北北西方向のリニアメントに沿って,
加須良川の谷底が左にずれているように見
える.このリニアメントは加須良川右岸では西向きの山腹斜面に連続しており,鞍部や直線状の低崖
として認められる.
蓮如岩以南では,南南東に延びるリニアメントと南東に延びるリニアメントに分岐するように見
えるが,より連続的に見える南東のリニアメントのみ確実な断層とした.一方,南南東のものはリニ
アメントとしての表現が弱いものの,空中写真等の判読及び現地確認により,馬狩の扇状地面上に高 4度の不連続が認められ,断層地形の可能性があり,推定活断層とした.
4.白川
し ら か わ
断層
・走向 : ほぼ南北
・長さ(図葉内)
: 約 14 km
・断層種別 : 活断層(一部縦ずれを含む)
(1)概要
本図には,白川村のゾウゾウ山の北の庄川左岸付近から同村の平瀬(図郭南端)まで,ほぼ南北方
向に延びる長さ約 14 km の区間が記載されている.本断層には,一部区間に縦ずれの変位が確認さ
れる.
(2)判読根拠
白川断層の主な地点ごとの判読根拠は,次のとおりである.
a:平瀬付近では下位段丘面が発達しており,南北 2 面に細分される.これを横切って北北西方向の
崖が延びており,逆向き(西落ち)の低断層崖と考えられる.2 面ある下位段丘面のうち,低位
面より神社のある高位面に見られる低断層崖(写真1)の方が変位量が大きく,変位は累積的で
ある.また,これらの間の段丘崖は数 m 左側に食い違っているのが確認できる(写真2).b:木谷付近には下位段丘面が発達しており,2 面に細分される.これらを跨いで東側落ちの低崖が
延びており,低断層崖と考えられている(写真3)
.この低断層崖を横断するトレンチ調査が行
われており,活断層であることが確認された(杉山ほか,1993)
.また,この低断層崖の西側に
沿って細長い高まりが南北に延びている.この高まりの西側の平坦面は川の流下方向(北向き)
に傾斜していないため,
河川の侵食によってできた崖でない可能があり,
図には記載していない
が,高まりの西側にも断層が存在している可能性がある.
c:鳩谷ダム左岸には下位段丘面が断片的に分布しており,本断層の通過する両側の下位段丘面どう
しの高さが不連続となっており,断層運動による西側落ちの縦ずれ変位が示唆される.
d:鳩谷ダム左岸から鞍部を挟んで北には,馬狩から北に細長い谷底平野が延びており,馬狩谷の川
は北流させられている.この谷底の東側は緩やかに湾曲した山麓線をなしており,本断層は,こ
れに沿って延びていると判断した. 5写真 1 白川断層の白川村平瀬における下位段丘面の高位面の西側低下の低断層崖.
白矢印は低断層崖を示す(2018 年 11 月 19 日後藤撮影).写真 2 白川断層の平瀬における下位段丘面の高位面と低位面の間の段丘崖の左横ずれ.
段丘崖の横ずれを正面から(西から東に)望む.白矢印は断層の位置を示し,
黄色破線は段丘崖の形態を示す(2018 年 11 月 19 日後藤撮影). 6
写真 3 白川断層の白川村木谷における東側低下の低断層崖.
白矢印は低断層崖を示し,緑矢印はその北の断層鞍部を示す(2018 年 11 月 19 日後藤撮影).5.森茂
も り も
断層
・走向 : 北西-南東
・長さ : 約 6 km
・断層種別 : 活断層(一部右横ずれ・縦ずれを含む)
(1)概要
森茂断層は,白川村の帰 雲 山
かえりくもやま
の南東から高山市の一ノ谷の東付近まで,北西-南東方向に延びる
長さ約 6 km の活断層である.
(2)判読根拠
一ノ谷,
二ノ谷,
三ノ谷付近で鞍部の連続するリニアメントが認められる.
リニアメントに沿って,
南西に流れる小河川に左屈曲が認められる.
屈曲の認められる河谷付近では,
南西に傾く斜面の一部
に北東側落ちの逆向きの小崖が認められ,逆向き低断層崖と考えられる.
本断層は,
後述する白川村帰雲山北方の断層
(1.8)
へ連続するように見えるが,
本断層の北端と,
白川村帰雲山北方の断層の南端との約 2 km の区間には断層地形やリニアメントが認められないた
め,白川村帰雲山北方の断層とは直接連続しない断層と判断した.
6.稲越
い な ご え
断層
・走向 : 北東-南西
・長さ(図葉内)
: 約 2 km
・断層種別 : 活断層(右横ずれが主体)
(1)概要
稲越断層は,
「飛騨古川」図葉の飛騨市古川町谷の西から本図葉の栗ヶ谷
く り が だ に
川付近(図郭東端付近)
まで,東北東-西南西方向に延びる右横ずれを主体とする活断層である.本図においては,栗ヶ谷川
に沿って北東-南西方向に延びる長さ約 2 km の区間が記載されている. 7地震調査研究推進本部による主要活断層帯の長期評価の対象とはなっていない(地震調査研究推
進本部 HP(2019 年 2 月 28 日閲覧)による).(2)判読根拠
本図葉内ではリニアメントに沿って河谷の右屈曲が 1 本認められるのみであるが,上流方向に屈
曲しており,断層活動を示していると考えられる.
7.高山市栗ヶ岳南方の断層
・走向 : 北東-南西
・長さ(図葉内)
: 約 1 km
・断層種別 : 活断層
(1)概要
高山市栗ヶ岳南方の断層は,栗ヶ岳南方(本図の南東端部分)に位置し,北東から南西方向に延び
る長さ約 1 km の活断層である.全体が位置やや不明確となっており,東端部には河谷の右屈曲が認
められる.
地震調査研究推進本部による主要活断層帯の長期評価の対象となっていない(
(地震調査研究推進
本部 HP(2019 年 2 月 28 日閲覧)による).(2)判読根拠
明瞭なリニアメントが延びており,それに沿って大きく右に屈曲する河谷が認められる.
その他に推定活断層として,以下の断層が記載されている.
8.白川村帰雲山北方の断層
・走向 : ほぼ南北
・長さ : 約 7 km
・断層種別 : 推定活断層
(1)概要
白川村の庄川右岸の戸ヶ野付近から帰雲山の山頂付近まで,ほぼ南北方向に延びる長さ約 7 km の
推定活断層である.
(2)判読根拠
今回の現地調査において宮谷の現河床左岸で断層破砕帯が確認でき,地質断層に一致するように
南北方向に延びるリニアメントが認められる.
南端付近の帰雲山の西の山腹に西向きの小崖地形,宮谷左岸の山腹には直線状の鞍部が認められ,
これらは,
さらに北の荻町合掌造り集落の東の南北のリニアメントに連続するように見える.
宮谷の
支谷には断層のずれに起因する可能性のある河谷の左屈曲が確認できる.南端は,1586 年の天正地
震に伴って帰雲城を埋めたとする地すべりの崩壊場所よりも前から存在していたとされる地すべり
地形(井口・八木,2014)によって断たれる.
また,
宮谷の河床近くで確認した破砕帯のすぐ南の下位段丘面上に変位が確認できず,
その南に分
布する数段の下位段丘面の一部には上下変位を示す可能性のある高度差が認められるものの,人工
改変により失われている.
これらの理由から新期の断層活動について判断できないため推定活断層とした. 89.馬狩谷付近の断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 2 km
・断層種別 : 推定活断層
(1)概要
加須良断層の南に位置し,白川村の馬狩谷の沖積低地の東縁をほぼ南北方向に延びる長さ約 2 km
の推定活断層である.
(2)判読根拠
山地中に細長い谷底平野が南北に延びており,そのうち,東側のみが直線状の山麓線をなす.先入
蛇行の様相を示す庄川流域にあって,異常に直線性が高く,白川断層とほぼ平行して延びており,白
川断層の馬狩の東の山麓線同様に,
断層に影響を受けた地形の可能性があると考え,
推定活断層とし
た.谷底は北に排水する一般傾向を持つものの,西の山腹から流れ出る河谷の形成した沖積錐により,排水不良地となっている.
この谷底平野の南端は風隙地形をなし,
荒谷の河川争奪が推定される.
10.白川村妙法山南東の断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 6 km
・断層種別 : 推定活断層
(1)概要
岐阜県白川村と石川県白山市の境界に位置する妙法山の南東に位置し,白山市の三俣峠から白川
村の小谷の北東まで,北東から南西方向に延びる長さ約 6 km の推定活断層である.
(2)判読根拠
三俣峠から北東に,
北東-南西方向の直線状の谷とリニアメントが認められ,
リニアメントに沿っ
て鞍部と河谷の右屈曲が認められる.右屈曲する河谷は,上流方向に向きを変えており,断層活動を
強く示唆するが,
二本のみであることや,
屈曲がリニアメント付近で湾曲するにとどまることから推
定活断層とした.
11.白川村三方崩山北東の断層
・走向 : 北北西-南南東
・長さ : 約 4 km
・断層種別 : 推定活断層
(1)概要
白川村の三方崩山の北東に位置し,北北西から南南東方向に延びる長さ約 4 km と約 1 km の二条
の推定活断層である.
(2)判読根拠
山地の峰を跨ぐようにリニアメントが北北西から南南東方向に延びている.リニアメントに沿っ
て鞍部が連続しており直線性が高く,これに沿って山地の頂部の高さが異なるように見えるため推
定活断層と判断した.
(広島大学准教授 後藤 秀昭) 9引用文献
井口 隆・八木浩司(2014)
:空から見る日本の地すべり地形シリーズ-33- 天正地震(1586 年)で
発生した帰雲山の大規模崩壊.日本地すべり学会誌,51,29—30.
地震調査研究推進本部:主要活断層帯の長期評価.
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/major_active_fault/(2019 年 2 月 28 日閲覧)
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2004a):跡津川断層帯の長期評価について.28p.
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/47_atotsugawa.pdf(2019 年 2 月 28 日)
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2004b):庄川断層帯の長期評価について.23p.
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/50_shogawa.pdf(2019 年 2 月 28 日)
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2005):牛首断層帯の長期評価について.23p.
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/49_ushikubi.pdf(2019 年 2 月 28 日)
地震調査研究推進本部:主要活断層帯の長期評価.
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/major_active_fault/(2019 年 2 月 28 日閲覧)
杉山雄一・粟田泰夫・佃 栄吉(1993)
:1990 年御母衣断層系・白川断層(木谷地区)トレンチ調査.
活断層研究,11,65—70.
宮下由香里・吉岡敏和・桑原拓一郎・苅谷愛彦・藤田浩司・千葉達朗(2003)
:牛首断層南西部地域の
活動履歴調査(2)-トレンチ調査結果(速報)-.活断層・古地震研究報告,3,63—71.
宮下由香里・吉岡敏和・桑原拓一郎・斉藤 勝・小林健太・苅谷愛彦・藤田浩司・千葉達朗(2004):牛首断層南西部地域の活動履歴調査(3)-牛首・水無トレンチ調査結果-.活断層・古地震研究報
告,4,113—130.
使用空中写真、使用航空レーザ測量データ及び検討委員会等
1)使用空中写真
米軍 4 万:M407,M626-B, M1216N
国土地理院 1 万(カラー)
:CCB-77-7,CCB-77-8
林野庁 2 万:山 375
2)使用航空レーザ測量データ
国土地理院が管理する航空レーザ測量データを使用(5mDEM,10mDEM)
3)全国活断層帯情報整備検討委員会
a.委員会の開催
第 1 回委員会 平成 30 年 7 月 31 日(火) 越前屋ビル 4F イオンコンパス東京八重洲会議室
地域部会 平成 30 年 10 月 1 日(月) TKP 岡山会議室 カンファレンスルーム
第 2 回委員会 平成 30 年 12 月 22 日(土) 新槇町ビル 12F TKP 東京駅セントラルカンファレンスセ
ンター
b.牛首断層帯、跡津川断層帯及び庄川断層帯とその周辺「白川村」の作成委員(平成 30 年度)
4)連絡先
国土地理院応用地理部地理情報処理課
〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
電話:029(864)1111(代表)
図 名 氏 名 所 属
白川村 しろまる後藤 秀昭 広島大学准教授
岡田 篤正 京都大学名誉教授
熊原 康博 広島大学准教授
堤 浩之 同志社大学教授
山中 崇希 国土地理院応用地理部地理情報処理課技官
しろまる印は,全体のとりまとめを担当した委員,その他の委員は五十音順 105)引用する場合の記載例
a.図を引用する場合
後藤秀昭・岡田篤正・熊原康博・堤 浩之・山中崇希
(2019)
:1:25,000 活断層図
「白川村」,国土地理院.
b.解説書を引用する場合
後藤秀昭(2019)
:1:25,000 活断層図 牛首断層帯、跡津川断層帯及び庄川断層帯とその周辺「白川村」
解説書.国土地理院技術資料 D1-No.932,11p.
<白川村妙法山南東の断層>
<高山市栗ヶ岳南方の断層>
<加須良断層>
<白川断層>
<白川村三方崩山北東の断層>
しらかわ
か ず ら10348ab
<馬狩谷付近の断層>11<白川村帰雲山北方の断層>9cbad7
【 付図(断層索引図)】 ((注記)) 断層毎の枠線は、断層の範囲を目安として囲んだものです。
- 11 -

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /