国土地理院技術資料 D1-No.914
1:25,000 活断層図
布田川・日奈久断層帯とその周辺
「八代 改訂版」
「日奈久」
解説書
後藤秀昭・千田 昇
平成 30 年 7 月
編集 国土地理院
阿蘇
熊本 改訂版
八代 改訂版
日奈久1目 次
1.布田川・日奈久断層帯の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.平成28年(2016)熊本地震と布田川・日奈久断層帯との関係・・・・・・・・・・・・・・23.「八代 改訂版」図葉の解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.「日奈久」図葉の解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
5.引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
6.使用空中写真および作成委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
1:25,000 活断層図作成地域図
調査図郭
八代 改訂版
日奈久
宇 土 半 島
八 代 海
熊本平野21. 布田川・日奈久断層帯の概要
布田川断層帯は,熊本県阿蘇郡南阿蘇村から上益城郡益城町木山付近を経て,宇土半島
の先端に至る断層帯である.日奈久断層帯は,上益城郡益城町木山付近から葦北郡芦北町
を経て,
八代海南部に至る断層帯である
(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2013b).布田川断層帯・日奈久断層帯については,地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002)
により,それまでに行われた調査研究に基づき,布田川・日奈久断層帯として長期評価が
行われていたが,平成 18 年度に産業技術総合研究所により行われた調査及び平成 22 年度
に産業技術総合研究所・地域地盤環境研究所・東海大学の調査により,断層帯を構成する
断層やそれらの位置・形状や活動履歴に関する新たな知見が得られた.こうした知見に基
づき,平成 25 年度に地震調査研究推進本部地震調査委員会において断層帯を布田川断層
帯・日奈久断層帯に二分し,両断層帯の再評価が行われ,公表されている(地震調査研究
推進本部地震調査委員会,2013b)
.評価の内容については,地震調査研究推進本部のホー
ムページを参照されたい.
2. 平成28年(2016年)熊本地震と布田川・日奈久断層帯との関係
4 月 14 日 21 時 26 分に熊本県熊本地方の深さ約 10 km でマグニチュード(M)6.5 の地
震が発生した.また,4 月 16 日 1 時 25 分に同地方の深さ約 10 km で M7.3 の地震が発生
した.これらの地震により熊本県で最大震度 7 を観測し,被害を生じた.一連の地震活動
は熊本県熊本地方から大分県中部にわたる.熊本県熊本地方では,北東-南西方向に延び
る長さ約 50 km の領域で地震活動が活発であった.また,熊本県阿蘇地方では 4 月 16 日
の M5.8 の地震により熊本県で最大震度 6 強を観測したほか,大分県中部では 4 月 16 日の
M7.3 の地震発生直後に別の地震が発生し,最大震度 6 弱を観測するなど,M7.3 の地震発
生直後から地震活動が見られた.
この一連の地震のうち,4 月 14 日の M6.5 の地震及び 4 月 15 日の M6.4 の地震の震源域
付近には日奈久断層帯が存在している.これらの地震は,その高野-白旗区間の活動によ
ると考えられる.4 月 16 日の M7.3 の地震の震源域付近には布田川断層帯が存在してい
る.この地震は,主に布田川断層帯の布田川区間の活動によると考えられる.現地調査の
結果によると,布田川断層帯の布田川区間沿いなどで長さ約 28 km,及び,日奈久断層帯
の高野-白旗区間沿いで長さ約 6 km にわたって地表地震断層が見つかっており,益城町
堂園付近では最大約 2.2 m の右横ずれ変位が生じた.一部の区間では,北側低下の正断層
成分を伴う地表地震断層も見つかっている.(地震調査研究推進本部ホームページ"20
16年の主な地震活動の評価"より)
1:25,000 活断層図「八代 改訂版」
「日奈久」においては,日奈久断層帯およびその周辺域
の断層について調査し,電子地形図 25000 上にその位置・形状を記載している.なお,両
図の調査範囲内において,平成 28 年(2016 年)熊本地震の際に出現した地震断層は確認
されていない.33. 「八代 改訂版」図葉の解説
日奈久
ひ な ぐ
断層帯は,上益城
か み ま し き
郡益城
ま し き
町付近から葦北
あしきた
郡芦北
あしきた
町を経て,八代海南部に至る,概
ね北東-南西方向に延びる全長約 81 km の可能性がある断層帯である
(地震調査研究推進
本部地震調査委員会,2013b)
.本図には,日奈久断層をはじめとし, 両
りょう仲なか間ま
断層,糸
いと石いし断層, 蕨
わらび野の-出で春はる
断層,新
しん開がい
-坂谷
さかだに
断層,小こ浦
うら-今いま泉いずみ
断層,鶴
つる木き場ば
断層, 緑
みどり川かわ
断層帯を構
成する緑川断層が記載されている.
日奈久断層
本図の日奈久断層は,宇城
う き
市豊
とよ野の町まち
山崎
やまさき
から芦北町の御お立
たち岬みさき
付近まで全長約40 kmであ
るとされる日奈久断層帯(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2013b)の日奈久区間の
一部にあたる.本図では,宇城市豊野町安
やす見み
付近から八代市上片町
かみかたまち
付近まで,北東-南西
走向に延びる長さ約21 kmの右横ずれ断層であり,北東部で南東落ち,南西部で北西落ちの
上下変位を伴う(千田,1979)
.この断層に沿っては,主に河谷の系統的な右横ずれ地形が
認められる.以下に,北から順に断層地形について記載する.
北東部,熊本市南区 城
じょう南なん町まち鰐わに瀬ぜ
の北隣の「熊本 改訂版」図葉との接合部付近は,断層に
沿って幅100 mの細長い背斜変形が認められる.また,熊本市と宇城市との境界をなす東流
する小河川の南に分布する中位段丘面上に背斜状の変形が確認される(図1)
.この西の山
麓付近にはAso-4の堆積段丘が発達し,その東縁は凸型斜面をなしており,撓
とう曲きょく崖がい
と考え
られる(図1)
.さらにその西には,Aso-4の堆積段丘上に南北方向の浅い谷が見られ,それ
を挟んでわずかに西側が高く,断層変位の可能性がある.
宇城市豊野町山崎付近では,小お熊
ぐま野の川がわ
を挟んでAso-4の堆積段丘面に10 m程度の上下差が
あり,北東側が高い.これらの段丘のうち,隆起側を開析する谷は東に開いた風
ふう隙げき
地形を
なしているものが複数認められる.現在では,国道218号が通る谷が最も大きく,典型的で
ある.
西流していた開析谷の上流が断層によって切断されて形成されたものと考えられる.
白岩山
しらいわやま
の南東には,段丘面の変位や変形,段丘開析谷の右横ずれが認められ,典型的な
横ずれ地形をなす(千田,1979)
.Aso-4に覆われる段丘の開析谷には50‒100 m程度の右横
ずれが確認できる.
断層の南西部の宇城市小お川
がわ町まち
小野
お の
から南では,山地と沖積低地との境界である山麓線が
直線状をなしており,これに沿って断層が延びる(千田,1979)
.同市小川町北
きた部べ田た
から 南
みなみ部べ田た
では,山地から北西方向に流れ下る小河川が形成した沖積錘上に北東-南西方向の小
崖が断続的に発達しており,沖積錘の開析谷にはリニアメントに沿って右横ずれが認めら
れるものもある(千田,1979).宇城市小川町南部田付近には,沖積錘と沖積低地との境界付近にも,山麓と並走するよ
うにリニアメントが認められ,一部では高度の不連続が認められる.南部田では,このリ
ニアメントを横切るトレンチ調査が行われ,南東傾斜の逆断層が確認されている(吉岡ほ
か,2007;宮下ほか,2017).砂川
すながわ
北岸の宇城市小川町小お川
がわ
付近では,新旧の河成段丘面が変位を受けたと考えられる4低断層崖が分布し,変位量は累積的である.
八代市岡町
おかまち
の山麓には,新旧の沖積錘を横切る崖が連続的に認められ(千田,1979),この崖より上流は離水している様子が確認できる.この北延長にあたる氷ひ川
かわ
町の 栫
かこい
地区では,
トレンチ調査が行われており,明瞭な活断層が確認された(下川・衣笠,1999).ここでは,
最新活動は,3層堆積以後,5層上部堆積中(約8千年前以後-約2千年前以前)にあったと
されている.
八代市岡町の山麓の断層から約300 m西に幅約100 mの細長い丘が認められる.丘の北西
側は凸型斜面をなしている.また,この丘の東で丘に沿って延びる開析谷と,丘の西の沖
積低地との間に高度差が認められる.これらの地形的特徴から,この細長い丘は断層変位
地形である可能性がある.
八代市岡町付近より南西の同市川
かわ田た町まち
, 東
ひがし片かた町まち
付近では,低平な沖積低地と山地を境す
る直線状の山麓線が延び,それに沿って一部の谷口で谷底平野に高度不連続が認められ,
断層変位によるものと考えられる(図2).図1 本図郭北端付近の日奈久断層による変動地形.白矢印は断層線の
推定位置を示し,黒矢印は中位段丘面の逆傾斜を示す.奥の黄色矢印
はAso-4堆積段丘の撓曲崖.5図2 東片町付近の日奈久断層による地形.日奈久断層は白矢印付近に
挟まれる付近を通る.
両仲間断層
本図の北西部に分布する両仲間断層は本調査で新たに見出した断層であり,新称したも
のである.両仲間断層は,宇城市堀切
ほりきり
から同市松
まつ橋ばせ町まち両りょう仲なか間ま
にかけてほぼ南北方向に約
3 kmにわたって認められる.この断層が分布する付近には,西に緩く傾斜する中位段丘
面と下位段丘面の2面が分布し(図3)
,これらの段丘面を横切るように南北方向に2列の撓
曲崖が認められる(図4)
.凸型斜面をなす撓曲崖は段丘面の傾斜方向に直交する向きに延
びており,河川の浸食などの外的作用ではその形成を説明することは難しい.2列の撓曲崖
のうち,西の撓曲崖の東近傍では段丘面状に背斜状の変形が認められ,段丘開析谷はこの
変形に規制されるように屈曲する.また,東の撓曲崖の東側に分布する中位段丘面は東に
傾斜しており,断層運動による傾動運動と考えられる(図3).6
図3 両仲間断層による地形
地形断面測線の位置はXの地図を参照.Yは現地での
GNSSによる地形測量による.
図4 両仲間断層の撓曲崖
白矢印は撓曲崖を示す.図3の測線A-A'で撮影.
200 m7糸石断層
本図の北部中央に延びる糸石断層は,本調査で新たに認められた断層であり,新称した
ものである.
下益城郡美里町中
なか小しょう路じ
付近から宇城市 暁
あかつき
付近まで水
すい昌しょう山ざん
の北麓をほぼ東西
方向に延びる長さ約3 kmの右横ずれの変位を伴う断層である.水昌山の北山麓の山麓線は
直線的であり,明瞭な地形境界をなす.水昌山から北に流れ下る小河川の河谷が複数,上
流方向である東(右)に山麓線付近で屈曲しており,断層変位によるものと考えられる.
また,山麓線の北には,Aso-4火砕流に関連した北に傾いた地形面が広がっており,これを
横切るように東西方向に地形面の一般傾斜よりも急な凸型斜面を有する崖が連続的に延び
ている(図5)
.河川の作用や火砕流の堆積では説明が困難であり,断層変位に伴う撓曲崖
と考えられる.
図5 Aso-4堆積段丘を変位させる糸石断層の断層崖
白矢印は断層崖の基部を示す.
蕨野─出春断層
蕨野-出春断層は,
美里町古米
ふるよね
付近から宇城市蕨野,
出春を経て,
八代市東陽町
とうようまち北きた
まで,
北東-南西方向に延びる長さ約9 kmの右横ずれの変位を伴う断層である.この断層は,活
断層研究会編(1991)では確実度IIの活断層とされていたが,以下の地形的特徴から確実
な活断層と考えられる.断層の中央部付近は,山地と丘陵を境にする直線状山麓線に沿っ
ており,これに沿って多数の河谷が右屈曲している.宇城市二ツ野付近では谷底を埋める
ように分布する段丘面上に,山麓付近で高度差が認められ,最近の地質時代の断層変位の8証拠と考えられる.
蕨野北東の峠から白石野付近には複数の河谷が系統的に右屈曲しているのが認められる.
また,白石野越付近には,上流方向に屈曲する河谷が認められ,断層は一部で並走するも
のと考えられる.
新開-坂谷断層
新開-坂谷断層は,八代市杉
すぎノの本もと
付近から同市坂谷付近まで小こ浦
うら川がわ
の左岸に延びる断層
で,北東-南西方向の長さ約5 kmの右横ずれ断層である.リニアメントとしての表現はや
や弱いが,小浦川に注ぐように南東流する複数の小河川の流れる河谷が上流方向である右
方向に系統的に屈曲している.活断層研究会編(1991)では確実度IIの活断層,九州活構造
研究会編(1989)では確実度IIIの活断層とされてきたが,これらの地形的特徴から確実な
活断層と判断した.
小浦-今泉断層
小浦-今泉断層は,本図の南西部から南隣の「日奈久」図葉にかけて延びる全長約14 km
の断層である.本図における小浦-今泉断層は,小浦川の右岸の八代市 畑
はたけ中なか
付近から同市
東町朴ふの木き付近まで,北東-南西方向に延びる長さ約6 kmの右横ずれ断層である.リニア
メントに沿って複数の河谷で系統的な右屈曲が認められる.また,Aso-4によると思われる
火砕流台地上に高度差があり,最近の地質時代に変位していると考えられる.活断層研究
会編(1991)では確実度IIの活断層,九州活構造研究会編(1989)では確実度IIIの活断層と
されてきたが,これらの地形的特徴から確実な活断層と判断した.
鶴木場断層
鶴木場断層は,本図の南東部から南隣の「日奈久」図葉にかけて延びる全長約16 km の
断層である.本図における鶴木場断層は断層全体の北部にあたり,八代市古園
ふるぞの
から馬
うま石いし峠とうげ
付近まで北東-南西方向に延びる長さ約3 kmの右横ずれ断層である.鞍部列からなるリニ
アメントに沿って,一部の河谷で右屈曲が認められる.活断層研究会編(1991)では確実
度IIの活断層とされてきたが,
これらの地形的特徴から確実な活断層と判断した.ただし,
植生に覆われること,
リニアメントがシャープでないことから,
「位置やや不明確の活断層」
と表現した.なお,本断層は地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013a)により実施さ
れた「九州地域の地域評価」では,
「簡便な評価の対象とする断層」として取り扱われている.緑川断層
本図の北東部から中央部にかけて分布する緑川断層は,熊本県上益城郡山
やま都と
町滝上
たきがみ
付近
から熊本県下益城郡美里町 払
はらい川かわ
付近にかけて分布する全長約34 kmの緑川断層帯(地震調
査研究推進本部地震調査委員会,2013b)の緑川断層区間西部にあたる.美里町川原
か わ ら畑ばたけ
付近
から同町管
くだ
の谷
たに
付近および,八代市広
ひろ平だいら
から犬山
いぬやま
付近までの間で,東西-北東-南西方向9に延びる長さ約11 kmの断層である.それぞれの区間において,リニアメントは認められる
が断続的であり,それに沿って認められる右屈曲した河谷の数は少なく,屈曲は必ずしも
系統的とは言えない.また,リニアメントの延長上にある火砕流台地には高度の不連続や
屈曲は認められない.これらを踏まえ,この図葉に延びる緑川断層は活断層の可能性はあ
るが,現時点では確実な活断層とは言えないと判断した.104. 「日奈久」図葉の解説
本図における日奈久
ひ な ぐ
断層は,八代市宮
みや地じ町まち
付近から同市日奈久
ひ な ぐ
馬越
ま ご し町まち
にかけて北東-南西方向に
延びる長さ約 11 km の相対的に南東側隆起(北西落ち)の特徴を持つ右横ずれ断層である.これは
地震調査研究推進本部が評価する宇城市豊
とよ野の町まち山やま崎さき
から芦北
あしきた
町の御立
お た ち岬みさき
付近に分布する全長約 40
km の日奈久断層帯の日奈久区間
(地震調査研究推進本部地震調査委員会,
2013b)
の一部と重なる.
八代市宮地町付近から肥薩おれんじ鉄道の肥後高田駅にかけて北西落ちの急崖
(断層崖)
が発達し,
谷の右屈曲が多数確認できる.また,球磨
く ま川がわ
左岸から南九州西回り自動車道八代南 IC 付近にかけて
は系統的な谷の右屈曲が連続する長さ約 3 km の活断層が並走する.
本図の北側にはいずれも北東-南西-東西方向の走向を持つ鶴
つる木き場ば
断層,小こ浦
うら-今いま泉いずみ
断層,九折
つ づ ら
付近の断層,日光
にちこう
付近の断層が分布する.鶴木場断層は,北に隣接する「八代 改訂版」図葉から本
図葉に延びる全長約 16 km の断層である.本図における鶴木場断層は,図葉北端から八代市鶴木場
を経て球磨川右岸(同市坂本町
さかもとまち
中谷
なかたに
付近)まで北東-南西-東西方向へ延びる長さ約 13 km の右横
ずれを伴う断層で,九州地域の地域評価(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2013a)により新
たに簡便な評価の対象となった断層である. 登
のぼり尾お谷だに
付近から 走
はしり水みず川がわ
の区間では断層運動による変
位によって谷の右屈曲が連続して確認できる.小浦-今泉断層は,北に隣接する「八代 改訂版」図
葉から本図葉に延びる全長約 14 km の断層である.本図における小浦-今泉断層は,八代市年
としノの神かみ
付近から球磨川左岸の同市上
かみ今いま泉いずみ
の南方を経て今泉川を渡る九州新幹線付近まで北東-南西方向
に延びる長さ約 8 km の右横ずれを伴う断層で,断層運動による変位によって断層全体に谷の右屈曲
が連続している.鶴木場断層を挟んで北側には同市九折集落を中心にほぼ東西方向に延びる断層が,
南側には同市日光集落付近を北東-南西方向に延びる断層が分布する.これらの断層は,長さは短
いが明瞭で系統的な谷の右屈曲が連続することから活断層とした.
本図の南西部には,内うち野の
断層,波は田た島とう-外そと平ひら
断層,小こ藪やぶ
付近の断層と推定活断層が分布している.
内野断層は,八代市内野付近から芦北町黒崎
くろさき
付近まで東-西〜南西方向に延びる長さ約 10 km の右
横ずれを伴う断層で,同市西
にし区く
付近で北東に延びる断層と分岐している.断層全体にわたって断層
運動による変位に伴う谷の右屈曲が連続する.
この断層は,
瀬高-内野断層
(活断層研究会編,
1991)
とされる断層と一部重なるが,地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013b)には記載のない断層
である.波田島-外平断層は,芦北町波は多た島
とう
から同町杉
すぎ迫さこ
付近にかけて八代海に沿って北東-南西
方向に延びる長さ約 2 km の断層で,断層北東部に断層運動による変位によって谷の右屈曲の連続が
確認できる.
この断層は,
従前から波田島-外平断層
(地震調査研究推進本部地震調査委員会,
2013b)
と呼ばれている断層と概ね一致する.内野断層の南側の八代市小藪集落付近には,内野断層に並行
して北東-南西方向に断層が延びている.この断層は,長さは短いが系統的な谷の右屈曲が連続す
ることから活断層と認定される.
また,
内野断層南東側の北東-南西に延びる断層
(芦北町大
おお木こ場ばから同町河原
か わ ら
に至る断層)については,今回の調査により,谷の右屈曲が複数確認されたものの,地形
が不明瞭なため実線の推定活断層とした.115.引用文献
活断層研究会編(1991):「新編日本の活断層−分布図と資料」
.東京大学出版会,437p.
九州活構造研究会編(1989):「九州の活構造」
.東京大学出版会,553p.
地震調査研究推進本部:2016 年の主な地震活動の評価.
https://www.jishin.go.jp/evaluation/seismicity_annual/major_act_2016/(2018 年 7 月 4 日閲覧)
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002)
:布田川断層帯・日奈久断層帯の評価.
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/93_futagawa_hinagu.pdf(2018 年 7 月 4 日閲覧)
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013a)
:九州地域の活断層の長期評価(第一版).http://jishin.go.jp/main/chousa/13feb_chi_kyushu/k_honbun.pdf(2018 年 7 月 4 日閲覧)
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013b)
:布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂).http://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/93_futagawa_hinagu_2.pdf(2018 年 7 月 4 日閲覧)
下川浩一・衣笠善博(1999)
:日奈久断層系の活動履歴及び活動性調査.平成 10 年度活断層・古地震研究
調査概要報告書,地質調査所速報 no.EQ/99/3,253‒262.
千田昇(1979)
:日奈久断層の第四紀後期における断層運動.東北地理,31,172‒179.
宮下由香里,
東郷徹宏,
吾妻 崇,
白濱吉起,
亀高正男,
酒井 亨,
鈴木悠爾,
杉田匠平,
松浦一樹
(2017):熊本県日奈久断層帯の古地震履歴 -宇城市小川町南部田トレンチ調査結果-.
日本地質学会 第 124 年学
術大会(2017 愛媛)講演要旨,doi: 10.14863/geosocabst.2017.0_491.
吉岡敏和・新谷加代・家村克敏・宮脇理一郎(2007)
:布田川・日奈久断層帯の古地震調査.活断層・古
地震研究報告,7,241‒258.126.使用空中写真および作成委員会
1) 使用空中写真
米軍 4 万:M105,M107,M319,M660,M797-A,M826,M827,M877,M925-A,M1013
米軍 1 万:R50-1,R91-2,R95-1,R99-2,R153
国土地理院 2 万(モノクロ)
:KU-62-5X,KU-63-4X, KU-66-DX, KU-73-3X
国土地理院 1 万(カラー)
:CKU-74-18,CKU-76-4,CKU-76-6
2) 全国活断層帯情報整備検討委員会
a.委員会の開催
第 1 回委員会(1 日目) 平成 29 年 8 月 31 日(木) イオンコンパス東京駅前(東京都中央区)
第 1 回委員会(2 日目) 平成 29 年 9 月 15 日(金) イオンコンパス東京駅前(東京都中央区)
地域部会 平成 29 年 12 月 17 日(日) イオンコンパス東京駅前(東京都中央区)
第 2 回委員会・全体部会 平成 30 年 2 月 22 日(月) TKP 東京駅八重洲カンファレンスセンター
(東京都中央区)
b.「布田川・日奈久断層帯とその周辺」の作成委員(平成 29 年度)
3) 連絡先
国土地理院応用地理部地理情報処理課
〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
電話:029(864)1111(代表)
4) この解説書を引用する場合の記載例
後藤秀昭・千田 昇(2018)
:1:25,000 活断層図 布田川・日奈久断層帯とその周辺「八代 改訂版」
「日
奈久」解説書.国土地理院技術資料 D1-No.914,12p.
図 名 氏 名 所 属
八代 改訂版 ○しろまる 後藤 秀昭 広島大学准教授
楮原 京子 山口大学准教授
熊原 康博 広島大学准教授
小山 拓志 大分大学准教授
千田 昇 大分大学名誉教授
中田 高 広島大学名誉教授
日奈久 ○しろまる 千田 昇 大分大学名誉教授
楮原 京子 山口大学准教授
熊原 康博 広島大学准教授
後藤 秀昭 広島大学准教授
小山 拓志 大分大学准教授
熊木 洋太 専修大学教授
中田 高 広島大学名誉教授
○しろまる全体のとりまとめを担当した委員