Science誌に掲載された2024年8月8日の日向灘の地震に関する研究論文
2024年8月8日の日向灘の地震に関する研究論文作成:2025年6月27日 国土地理院では、2024年8月8日の日向灘の地震についてGEONETによって観測された地殻変動から、プレート境界で地震の前後にどのようなすべりが起こったのかを詳細に明らかにしました。このたび、研究成果をまとめた学術論文が6月27日発行のScience誌に掲載されました。この論文のタイトル、著者及び概要等は以下の通りです。
著者及び論文名: Ozawa, S., H. Munekane, H. Suito, and H. Yarai (2025) Interplate slip before, during, and after the 2024 Mw7 Hyuga-nada earthquake, southwest Japan, Science, 388, doi:10.1126/science.adu7076. (和訳) 小沢慎三郎・宗包浩志・水藤尚・矢来博司: 2024年8月8日日向灘の地震(Mw7)の地震前、地震時、地震後に観測されたプレート間すべり [JPG: 4MB] 図.(A)日本域のプレート配置と解析領域(黒枠)。2024年8月8日の地震は、九州地方南部の日向灘沖の、フィリピン海プレートとアムールプレートのプレート境界面で発生した。(B)地震に先行して発生したゆっくりすべり。2024年8月8日の震源域の深部延長のプレート境界面(深さ40km付近)ですべりが見られる。(C)(B)図破線矩形領域におけるゆっくりすべりの累積の大きさ(累積地震モーメント)。(D) すべり分布の比較。2024年8月8日の地震前のゆっくりすべり(緑実線)、地震時すべり(青実線)、地震後の余効すべり(黒実線)。1996年10月(青破線)と12月(緑破線)の地震時のすべり分布 (Yagi et al. 1999より)。 論文の背景と意義(和訳)2024年8月8日、九州地方南部の日向灘でマグニチュード7.1(モーメントマグニチュード7.0)の地震が発生しました(図A)。地震前の地殻変動を分析した結果、この地震の震源域の深部延長のプレート境界面で、地震の前にゆっくりすべりが発生していたことが分かりました(図B)。過去30年の電子基準点の観測データから、この場所では概ね2年おきに繰り返しゆっくりすべりが発生することが知られています(例えばOzawa et al. 2024)。図Bの破線矩形領域におけるゆっくりすべりの累積の大きさ(累積地震モーメント)の時間変化を見ると(図C)、ゆっくりすべりは、前々回は1.8年間隔、前回は2.5年間隔と、概ね2年毎に発生していましたが、この地震の直前に2023年末から発生したゆっくりすべりは、それ以前のゆっくりすべりからまだ0.9年しか経過していませんでした。大きな地震の前にゆっくりすべりの発生間隔が短くなり地震に至る現象は、シミュレーションでは予想されていましたが、実際に観測された例はほとんどありませんでした。
また、2024年の地震は1996年の2回の地震のすべり域に隣接した領域で発生し、プレート境界で発生する地震がすみ分けて発生していることを示唆しています(図D)。さらに、地震後の余効すべりは地震時のすべり域と深部延長域において、1996年の地震のすべり域を囲むような領域で発生しており、これらのすべりにより、1996年の地震のすべり域近傍で、地震発生を促進する応力変化が生じたことが明らかになりました。その後、この領域で2025年1月13日にマグニチュード6.6の地震が発生しました。 これらの成果は、地震発生メカニズムの理解に貢献するとともに、プレート境界で発生するゆっくりすべりを含むさまざまなすべり現象をモニタリングする重要性を示すものです。 論文本文の概要
このページの内容・画像を引用・転載される方へリンク・引用・転載は自由ですが,出典を明記してください.引用・転載の場合には,速やかに,引用先・転載先をお知らせください. 問い合わせ先研究管理課 小沢 慎三郎(OZAWA Shinzaburo) 029-864-1111 (代表)
地殻変動研究室長 宗包 浩志 (MUNEKANE Hiroshi) 029-864-6925 (直通)
問い合わせ先
関連リンク参考情報
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。 |