「原野商法」再燃!「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意
[画像:不動産業者を名乗る通話相手から「あの土地高く買いますよ」と勧誘される高齢男性のイラスト]
「あなたの持っている原野を高値で買い取ります」――そんな勧誘を受けたかたはいませんか?「原野商法」とは、値上がりの見込みがほとんどないような山林や原野について「将来高値で売れる」などと勧誘して不当に買わせるもので、過去にその被害に遭ったかたが、更に再度被害に遭うケースが発生しています。実際の手口と予防策をご紹介します。
1原野商法の二次被害の状況は?二次被害トラブルの相談件数は年200件から300件で推移、被害額は今もなお高止まり。
「原野商法」は、値上がりの見込みがほとんどないような山林や原野について、実際には建設計画等はないにもかかわらず「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などとうその説明をしたり、「将来確実に値上がりする」などと問題勧誘を行ったりして販売をする商法です。1970年代から1980年代にかけて被害が多発しました。
この「原野商法」の二次被害が発生しています(図1)。特に、かつて原野商法の被害に遭ったかたが、「あなたの持っている土地を買い取ります」などといった勧誘をきっかけに巧妙な手口で売却額より高い新たな山林や原野を購入させられる二次被害が目立っています。
原野商法の二次被害に関する消費生活相談の件数は、平成30年度(2018年度)までは年間1,000件を超える範囲で推移していました。令和元年度(2019年度)以降は減少傾向にあるものの、依然として被害はなくなっていません(図2)。
資料:独立行政法人国民生活センター提供資料から政府広報室作成(令和7年(2025年)2月28日までのPIO-NET 登録分)
しかも1件当たりの平均支払額を見ると、令和元年度(2019年度)の約487万円をピークに減少へ転じ、令和5年度(2023年度)は約110万円となりましたが、令和6年度(2024年度)は約258万円となり、再び増加に転じています(図3)。
※(注記)平均支払額には、支払金額が0円及び無回答を含みません。
資料:独立行政法人国民生活センター提供資料から政府広報室作成(令和7年(2025年)2月28日までのPIO-NET 登録分)
また、平成26年度(2014年度)から令和6年度(2024年度)までの契約当事者を年代別にみると、約9割を60歳代以上の高齢者が占めています(図4)。
資料:独立行政法人国民生活センター提供資料から政府広報室作成
2どんなふうに勧誘されているの?不動産業者を名乗り、電話や訪問して「あなたの土地を高く買い取ります」などと勧誘。
実際にどのような原野商法トラブルが起きているのか、事例をご紹介します。
【事例1】雑木林を買い取ると勧誘され、節税対策と言われお金を支払ったが、実際は原野の購入と売却の契約だった
宅地建物取引業の免許を持つ見知らぬ業者から電話があり、相続した雑木林の売却話を持ちかけられた。この雑木林は両親が以前400万円で購入した土地である。最初は断っていたが、「オリンピックまでにこの土地一帯に複合レジャー施設を造る予定」「約5,000万円で買い取る」と何度も電話で勧誘され、根負けし喫茶店で話を聞いた。
その際、「他の土地を購入すれば節税になる」、「購入費用は税金対策処理後に返す」などと勧められた。よく分からなかったが、買い手のつかない雑木林が売れるならなどと思い約400万円を支払って契約書にサインした。
その後、期日になってもお金は支払われず業者は電話に出ない。改めて売買契約書を確認したところ、雑木林を約1,200万円で売り、原野を約1,600万円で購入する契約になっていた。(60歳代・女性)
【事例2】山林を購入したい人がいると説明され、調査と整地費用を払った
40年前に30坪と100坪の山林を購入し所有している。先日、「30坪の方の土地を欲しがっている人がいる」と不動産業者から電話があり、買いたい人がいるならと思い了解した。
その後、不動産業者から、売るに当たり調査や整地等が必要と言われ、請求されるままに合計190万円を支払った。
30坪の土地の売却代金が入ると思っていたが、今度は「同じ人が100坪の土地も欲しがっているので調査費を80万円払ってほしい」と言われた。
先に30坪の土地を売ってからにしたいと伝えたが、「まとめて売れば3か月以内にお金が入る」と言われた。子に相談したところ、原野商法の二次被害に手口が似ているという。どうすればよいか。(60歳代・男性)
【事例3】覚えのない管理業者から別荘地の管理費20年分を支払えとの通知が届いた
覚えのない管理業者から、約25年前に購入した別荘地について管理費を滞納しているので支払えとの通知が届いた。その後、その管理業者から電話があり、「購入した別荘地の管理を担当している。管理費用が20年前から滞納となっている」として、管理費約70万円と滞納金約50万円の合計約120万円を請求された。しかし、購入当初の管理サービスについてはすでに解約しているし、業者名も違う。あやしいので支払いたくない。(50歳代・男性)
(参考:国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-」)
[画像:不動産業者を名乗る男に「調査・整地費用が必要です」と言われお金を支払う高齢男性のイラスト]
特に「売却勧誘-下取り型」という巧妙で複雑な手口が非常に目立っています【事例1】。この手口では、「あなたの持っている土地を高値で買い取る」などといった電話勧誘がまず行われます(売却勧誘)。そしてその後、業者は契約内容の詳細を説明せずに「節税対策」などといった名目でお金を請求してきます。しかし、この説明は適切ではなく、実際は原野等の売却と同時により高い金額の新たな原野等の土地購入をセットで契約させています(下取り)。結果として消費者は契約内容を適切に認識できないままに売却する土地と購入する土地の差額分を支払う契約を結ばされてしまう、というものです。
また、「土地を買い取るに当たり調査や整地が必要なので、その費用を支払ってもらいたい」と勧誘して、お金を支払わせようとする手口「売却勧誘-サービス提供型」も見られます【事例2】。
また、根拠がはっきりしないにもかかわらず「あなたの持っている土地をずっと管理してきたので、その費用を支払ってもらいたい」と請求を受ける「管理費請求型」もあります【事例3】。
原野商法の二次被害における勧誘手口を整理すると、図5のとおりとなります。
資料:独立行政法人国民生活センター公表資料から政府広報室作成
そのほかの特徴として、かつて原野商法に巻き込まれ、価値の低い土地を長年保有し続けてきた高齢者が、「子に相続の負担をかけたくない」「自分が元気なうちに清算したい」と思っている気持ちにつけこんで、業者は勧誘を行っているものと考えられます。
また、親などから相続した原野や山林について、こども世代が狙われたケースもあります。
3原野商法に巻き込まれないためには?不審な勧誘を受けたら消費生活センターに相談を。
「原野商法の二次被害」トラブルでは、契約後は業者と連絡がつかなくなることがほとんどであり、一度お金を支払ってしまうと、そのお金を取り戻すことは非常に困難です。以前購入した原野等の買い取り話を不用意に聞いてしまうと、更なるトラブルに遭ってしまうおそれがありますので、「土地を買い取る」といった勧誘には、耳を貸さずきっぱりと断りましょう。
そもそも、購入した「原野」はこれまで値上がりもせず、開発することもできなかった土地です。「値上がりする」「買いたい人がいる」といったうまい話ほど、まずは疑ってかかりましょう。業者の説明に少しでも不審な点があったり、不安を感じることがあったりした場合は、決してすぐにお金を支払わず、お近くの消費生活センターなどに相談しましょう。
昔買った原野を処分したいと思っても、その場で話を聞いたり判断したりせず、家族など周囲の人に相談することが大事です。
また、70歳代、80歳代と特に高齢者が被害に遭いやすくなっていますので、ご本人が用心するだけでなく、ご家族や地域の方々が高齢者のかたを見守ることが重要です。
口数が減る、買い物をあまりしなくなる、借金を申し込んでくるなど、高齢者の生活に変化がないか気を配りましょう。不審な勧誘を受けている、お金を支払ってしまったなど、困っているときは、消費生活センターなどへ相談するよう勧めましょう。
資料:独立行政法人国民生活センター公表資料から政府広報室作成
【相談窓口】
消費者ホットライン 188(いやや)
全国共通の電話番号「188」で、地方公共団体が設置している身近な消費生活相談窓口をご案内いたします。
電話番号
- 188(局番なし)
相談は無料ですが、ナビダイヤルの通話料はかかります。
【受付時間】
平日:9時00分から17時00分
土曜・日曜・祝日:10時00分から16時00分
※(注記)相談窓口によって受付時間が異なります。
※(注記)年末年始(12月29日から1月3日まで)を除き、原則毎日利用できます。
※(注記)相談は無料です。なお、相談窓口につながった時点から通信料は発生します。
(取材協力:消費者庁 文責:内閣府政府広報室)