有事・災害などの際、国を支える力になる!「予備自衛官等制度」
[画像:ふだんは本業を持ちながら緊急時に活躍する予備自衛官]
「有事に自分の技能や経験をいかして、国を守り、人の役に立ちたい」「地震などの災害時に救助・救援活動に参加したい」。そのような志を持っているかたも多いのではないでしょうか。我が国では、いざという時に、必要となる人員を急速に集めることができる「予備自衛官等制度」を設けています。ここでは「予備自衛官等制度」について紹介します。
1「予備自衛官等制度」ってなに?
国家の緊急事態に当たっては、大きな防衛力が必要です。しかし、その防衛力を日頃から保持することは効率的ではありません。このため、ふだんは必要最小限の防衛力で対応し、いざという時に、必要となる人員を急速に集めることができる予備の防衛力が必要となります。世界の多くの国でも、いざという時に急速に戦力を増強するシステムを取り入れています。我が国においては、これに相当するものとして、予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補からなる「予備自衛官等制度」が設けられています。
予備自衛官等は、ふだんは会社員や自営業、学生などそれぞれの本業を持ちながら、有事や災害などの際に招集され、自衛官となって活動する非常勤の特別職国家公務員です。
2自衛官未経験者でも応募できる「予備自衛官補」とは?
予備自衛官補は、自衛官の経験がないかたが予備自衛官になるための教育訓練を受ける制度で、有事の際に、駐屯地・基地の警備や後方支援等の任務を担う予備自衛官になる「一般コース」と、技能・資格をいかして医療従事者や語学要員等の予備自衛官になる「技能コース」の2つのコースがあります。
予備自衛官として必要な基礎的知識及び技能を修得するための教育訓練を修了した後に予備自衛官へ任用されます。
応募資格については、「一般コース」が18歳以上52歳未満、「技能コース」は18歳以上で、保有する技能・資格に応じて53歳から55歳未満となっています。「技能コース」の対象となる技能・資格には、医師、看護師、自動車整備士、システムアナリスト、海技士のほか、外国語の知識・技能を有するかたや弁護士、司法書士、保育士などがあります。
予備自衛官の多くは元自衛官ですが、予備自衛官全体のうち約1割が予備自衛官補から予備自衛官に任用された自衛官未経験者です。また、予備自衛官補の「一般コース」から予備自衛官となったかたが、所定の教育訓練を修了した場合、予備自衛官から更に即応予備自衛官になることも可能です。
予備自衛官等制度の概要
予備自衛官
- 1.有事の際の役割
- 駐屯地・基地の警備、後方支援等の任務に就きます。
- 2.応募資格
- 自衛隊の勤務期間が1年以上の元陸・海・空自衛官。階級に応じて55歳未満から59歳未満の間で年齢制限あり。
- 3.訓練・教育訓練の日数
- 5日/年
- 4.処遇(手当総額)
- 約27万円/3年(※(注記)1)
即応予備自衛官
- 1.有事の際の役割
- 第一線部隊の一員として、任務に就きます。
- 2.応募資格
- 自衛隊勤務期間が1年以上で、退職後1年未満の元陸上自衛官等。階級に応じて50歳未満から53歳未満の間で年齢制限あり。
- 3.訓練・教育訓練の日数
- 30日/年
- 4.処遇(手当総額)
- 約163万円から197万円/3年(※(注記)1)
予備自衛官補
- 1.有事の際の役割
- 専ら予備自衛官になるための教育訓練を受けるため、任務には就きません。
- 2.応募資格
- 一般コースは、18歳以上52歳未満の者(※(注記)2)。技能コースは18歳以上で、技能に応じて53歳未満から55歳未満の間で年齢制限あり。
- 3.訓練・教育訓練の日数
- 一般コースは50日/3年以内、技能コースは10日/2年以内
- 4.処遇(手当総額)
- 一般コースは44万円/3年、技能コースは8万8千円/2年
注:令和6年(2024年)4月1日現在
※(注記)1:防衛招集や災害招集等により自衛官になった場合は、現役の自衛官と同様の給与が支給されます。
※(注記)2:令和6年度(2024年度)の採用から、予備自衛官補の「一般コース」における採用時の年齢要件が「18歳以上34歳未満」から「18歳以上52歳未満」へ引き上げられました。
3これまでに、どんな場面で活動したの?
予備自衛官や即応予備自衛官は、災害が発生し、被災者の救助・救援活動が必要になった時などにも招集されます。平成23年(2011年)の東日本大震災を始め、これまでに8回招集され、令和6年(2024年)の能登半島地震においても予備自衛官や即応予備自衛官が招集され現役の自衛官とともに災害救助活動などにあたりました。
例えば、平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災では、発生当日に約8,400人の自衛官が動員されました。同年3月13日には動員数が約5万人に上り、最も多いときは全自衛官約22万人のほぼ半数に当たる約10万7千人もの自衛官が、人命救助や輸送支援、給水・給食などの生活支援そして原子力災害への対応などにあたりました。
即応予備自衛官は、主に被災三県の沿岸地域に派遣され、給水支援や入浴支援、物資輸送などの生活支援活動にあたるとともに、行方不明者の捜索活動にもあたりました。予備自衛官は、救援活動に携わる米軍の通訳、医療、そして部隊の活動の拠点となった駐屯地における業務などにあたりました。
東日本大震災では、即応予備自衛官が延べ2,179人(実人数1,369人)、予備自衛官が陸海空自衛隊合わせて延べ469人(実人数293人)招集されました。
東日本大震災のほかにも、平成28年(2016年)熊本地震、平成30年(2018年)7月豪雨、平成30年(2018年)北海道胆振東部地震で即応予備自衛官が、令和元年(2019年)東日本台風(台風第19号)、令和2年(2020年)7月豪雨、令和6年(2024年)能登半島地震で即応予備自衛官及び予備自衛官が招集され、物資輸送や生活支援などにあたりました。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のための災害派遣(令和2年(2020年)2月から3月)では、医師や看護師の資格を有する予備自衛官が招集され、自衛隊病院などにおける医療支援などにあたりました。
写真提供:防衛省
写真提供:防衛省
コラム
令和6年能登半島地震の被災地支援活動でも予備自衛官等が活躍
令和6年(2024年)の能登半島地震に際し、予備自衛官及び即応予備自衛官が招集されました。交代要員を含めると、医師・看護師の資格を有する予備自衛官約20人が巡回診療にあたり、即応予備自衛官約180人が物資輸送にあたりました。招集に応じた予備自衛官のうち16人、即応予備自衛官のうち21人は、予備自衛官補から任用された方々であり、現役の自衛官と共に被災地において支援活動を行いました。
写真提供:防衛省
4予備自衛官等を雇用している企業に対する取組
予備自衛官又は即応予備自衛官が、有事や災害などで招集された際や訓練に参加する際には、勤務先を離れることとなります。この際の企業の負担を考慮して、予備自衛官等を雇用する企業に対する3種類の給付金制度を設けています
雇用企業協力確保給付金
予備自衛官又は即応予備自衛官が、招集に伴い、あるいは招集中における負傷又は疾病により、勤務先を離れた場合、日額34,000円が雇用主に給付されます(上限90日。就業規則における休日は除く。)。
即応予備自衛官雇用企業給付金
即応予備自衛官は、年間の訓練日数が多いことから、勤務先の理解を得ることが重要になります。即応予備自衛官を雇用する企業などの負担に報いるとともに、即応予備自衛官本人が訓練などに応じやすい環境を整えるため、1人当たり月額42,500円が雇用主に給付されます。
防衛省・自衛隊「予備自衛官等の各種制度 即応予備自衛官雇用企業給付金制度」
即応予備自衛官育成協力企業給付金
自衛官経験のない予備自衛官が即応予備自衛官になるためには、約40日間の教育訓練が必要になります。この際、予備自衛官の雇用主の理解と協力を得ることが重要になります。予備自衛官が教育訓練を終えて即応予備自衛官に任用された場合に、1人当たり56万円が雇用主に給付されます。
まとめ
「予備自衛官等制度」は、これまでの経験や自らの技能を、国を守り人々を助けるためにいかすことができる制度です。自衛官として勤務した経験がないかたも、「予備自衛官補」として所定の教育訓練を受けることで、予備自衛官になることができます。
(取材協力:防衛省 文責:政府広報オンライン)