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VOL.201 MARCH 2025
Traditional knowledge and skills of sake-making with koji mold in Japan 伝統的なみりんの歴史と特徴


調理に用いられるみりんの例。
Photo: 九重味淋

現代の日本では料理する際の調味料として使われることが多いみりん。みりん1の発生起源については諸説あるが、17世紀には甘いお酒として親しまれていたという。みりんの歴史や特徴について製造メーカーに話を聴いた。


みりんの原料であるもち米(写真手前)、米こうじ(写真右)、焼酎(写真の左上)の例。
Photo: 九重味淋ここのえみりん

みりんの製法について、1772年創業のみりんの製造メーカーである九重味淋ここのえみりんで広報を務める足立あだちゆかりさんはこう話す。「みりんはもち米2、米こうじ3焼酎しょうちゅう(「甘く芳醇な香りとまろやかなコクを生む鹿児島県の焼酎しょうちゅう造り」参照)が原料です。もち米を蒸してから、米こうじと焼酎をまぜて(仕込み)「もろみ」をつくります。その後、約二か月かけて熟成する間に、こうじのもつ酵素の力でもち米のデンプンはブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸へと分解されて、甘味と旨みを生み出します。そして、できたもろみを圧搾してみりんとみりんかすに分けると、みりんができ上がります」。


もち米を蒸している工程の様子。
Photo: 九重味淋

もろみを熟成するみりん蔵。熟成を均一にするために時折もろみを混ぜる、かいれという作業をする。
Photo: 九重味淋

現在では和食の調味料として日本国内では広く使われているが、みりんの歴史をひも解くとその起源は中国の明、清の時代に伝わったという説や、15世紀には日本でも甘いお酒が九州にあり、それがもとだという説があるという。「この二つの説がよく言われています。17世紀にはお酒が苦手な人や女性が楽しんで飲む甘いお酒として親しまれていたと和漢わかんさんさい図会ずえ4に記載があります。18世紀になると、江戸(現在の東京)でうなぎ屋や蕎麦そば屋が繁盛し始め、店同士がおいしさを競う中で、当時入手困難だった砂糖の代わりに、甘い酒だったみりんを調味料として使うようになりました。鰻のたれ5やそばつゆ6にみりんを使ったと書物にも記載があります。つまり、歴史的にみりんは、当初はお酒として親しまれ、その後に料理のコクや旨味を引き出す調味料として使われるようになっていったのです」と足立さんは語る。調味料としてのみりんの役割には主に、甘みを足す、ツヤを出す、においを消すことなどが挙げられる。

近年、調味料として和食以外の料理へ幅広く用いる使い方などの新たな提案をしていると足立さんは語る。「みりんの上品な甘さが活きるお菓子を作ったり、みりんにほうじ茶7や、コ―ヒー豆、紅茶を漬け込んだ新しいリキュールとしての商品など、みりんの楽しみ方も提案しています」。また、和食ブームに伴って、調味料として海外への輸出も好調だ。「実は1900年に行われた第5回パリ万国博覧会8で初めて海外にみりんを出品しています。当時はリキュールとして輸出していました。みりんの海外輸出の歴史は長いです」と足立さん。日本の伝統的な製法で造られた、みりんにも注目してみてはいかがだろうか。


18世紀初頭に刊行された、今の百科事典にあたる「和漢わかんさんさい図会ずえ」の一冊。みりんの記載がある。
Photo: 九重味淋

お酒として飲まれていた頃のみりんを復刻した商品の一例。米本来の甘みが感じられるリキュールになっているという。
Photo: 九重味淋
  • 1. 本記事では、日本の酒税法上酒類として分類される「ほんみりん」について取り上げる。なお、みりん類似調味料には、酒類ではない発酵調味料や、本みりんと違いアルコール分が1パーセント未満のみりん風調味料もある。
  • 2. 米の品種のうち、強い粘り気を示し、糖に分解しやすいデンプン構造を持つもの。
  • 3. 蒸した米にこうじ菌を種付けし、繁殖・発酵させたもの。
  • 4. 1712年に成立した105巻からなる今日の百科事典。漢文と絵を用いて解説されている。
  • 5. うなぎを焼く際につける調味料のこと。主にみりんと醤油を混ぜて加熱したものを使用する。
  • 6. そばを食べる際につけたり、かけたりする汁のこと。
  • 7. 日本茶の一種で、茶葉を強火で焙煎して作られる茶。苦味も少なく、香ばしい香りが特徴。
  • 8. 1900年4月から11月フランスのパリで行われた国際博覧会。5,000万人以上の入場者数を数えた。
By TANAKA Nozomi
Photo: KOKONOE MIRIN Co., Ltd.
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