[フレーム]
このページの本文に移動
2025年11月28日

水害から暮らしを守る水防活動。日頃からの備えで被害を防ぐ

洪水の際に、協力して河川の堤防に土のうを積み上げ、堤防からの越水を防ぐ水防団員たちのイラスト。

POINT

台風や集中豪雨などにより、毎年のように水害に見舞われる我が国では、国や地方自治体などが行う治水事業とともに、市町村・住民による水防活動が「車の両輪」となり水害からの被害拡大を防いでいます。ここでは水防の中心を担う水防団の活動や、家庭で取り組める水害への備えなどを紹介します。

1水防活動とは

近年の水害の状況と水防の必要性

日本では、毎年6月から7月頃には梅雨前線が停滞し、8月から9月頃には台風の発生により水害が頻発し、過去10年間に約97%の市町村で水害・土砂災害が発生しています(令和7年(2025年)9月現在)。さらに近年ではゲリラ豪雨や局地的大雨も多発し、これまでに想定できないような雨が降っています。水害により人命が失われるとともに、経済的損失も発生し、令和5年(2023年)における被害額は、全国で約7,100億円もの額に達しています。

このような水害の発生を警戒したり、土のうなどで水が溢れるのを防いだりすることを「水防」といいます。大雨や台風時には、洪水・高潮などによる命や財産への被害を防ぐため、市町村・水防団が中心となり水防活動を行い、国や都道府県も、気象情報や河川情報の提供、排水ポンプ車などの水防に関する資機材の貸与などを通じて水防活動を支援しています。

地域を守る水防団

水防団は、平時には、河川の水が堤防を越えるのを防ぐため、土のうを積むなどして堤防を守る「水防工法」の訓練、堤防の巡視、通信の点検などを行い、いざというときに備えています。

洪水のおそれが生じた際には、水防団は危険箇所のパトロールや立入り制限、住民の避難誘導、水防工法の実施、救助活動などに当たります。例えば、令和4年(2022年)8月3日から東北地方を中心に発生した大雨では、青森県鶴田町の岩木川において、最高水位が一時堤防を超える高さまで達しましたが、地元の水防団が事前に土のうを積み上げたことにより、氾濫を防ぐことができました

[画像:青森県鶴田町の岩木川で鶴田町水防団が実施した積み土のうの断面図。堤防の上に3段、高さ30センチメートルの土のうを配置した。最高水位時には堤防の高さを15センチメートル超え、土のうの上端15センチメートルまで水が達した。]

水防団員の待遇と推移は?

水防団員(多くの場合、消防団員が兼務)は全国に約74万人おり、団員の活躍なくして水防活動を迅速かつ的確に実施することはできません。そのため、水防団(消防団)員の確保は非常に重要です。

水防団(消防団)員の待遇は以下のとおりです。

  • 特別職の地方公務員
  • 自治体から年額報酬や出動報酬が支給

しかし、水防団(消防団)員の数は年々減少しており、水防技術の伝承や地域の防災力の低下が懸念されています。令和7年(2025年)の水防団(消防団)員数は735,357人で、平成15年(2003年)の940,444人から205,087人(21.8%)減少しています。また、団員全体に占める60歳以上の比率は、平成15年(2003年)の2.8%から令和7年(2025年)は10.6%へ上昇し、30歳未満の若い世代の入団が減少するとともに高齢化が進んでいます。

[画像:水防団員・消防団員の人数と年齢構成の推移を示すグラフ。昭和46年の1,224,403人から、令和7年には735,357人と人数は減少傾向にある。年齢構成を見ると昭和46年は60歳以上が0.6%、30歳未満が39.3%であったが、令和7年は60歳以上が10.6%、30歳未満が9.2%となっている。]

資料:国土交通省「水防体制及び活動の実態調査」から政府広報室作成

水防団(消防団)員は、多くの団員が会社などに勤めながら活動しています。また、女性団員数は年々増加しており、水防工法だけでなく、発災時の通信対応など幅広く活躍しています。水防団・消防団について詳しく知りたいかたは、お住まいの市町村にお問い合わせください。

デジタル水防で迅速に対応

悪天候のもとで水防活動を迅速に実施するためには、気象情報や河川情報、避難情報などの様々な情報を水防団員同士で効率的に伝達・共有することが重要となります。多くの水防団では活動時の情報伝達手段に電話・無線を利用していますが、音声だけでは現場状況が正確に伝わりづらかったり、気象情報や避難情報など、水防活動に必要な情報の確認に時間を要したりするといった課題がありました。

このため、愛媛県大洲市・西予市・内子町の各水防団と国土交通省が連携し、一般財団法人河川情報センターの協力のもと、水防活動時の情報伝達・共有支援ツールである「デジタル水防」を開発し、令和7年(2025年)から実証実験を行っています。デジタル水防は、LINEアプリを活用し、ワンプッシュで当該地域の河川情報や避難情報を取得できたり、団員が撮影した写真や今いる現在地を地図上に簡単に登録できたりするシステムです。今後、他の地域でもこうした機能を活用することを検討しており、洪水などによる被害の防止・軽減に取り組んでいます。

「デジタル水防」のイメージ画面。LINEアプリのトーク画面から、河川情報や気象情報など地域に特化した洪水時に役立つ情報がワンタッチで取得できるほか、現場の写真を位置情報付きで共有できるなどの機能がある。
(写真提供:国土交通省)

コラム1:総合水防演習

国土交通省では、梅雨や台風の時期を迎えるに当たり、国民一人ひとりが水防の意義や重要性について理解を深められるよう、毎年5月(北海道は6月)を「水防月間」と定めています。水防月間の取組の一つとして、国、都道府県、水防管理団体(市町村等)が連携して全国各地で「総合水防演習」が実施されています。

令和7年(2025年)5月24日に大阪市の淀川河川敷で実施された「淀川水防・大阪府地域防災総合演習」(主催:国土交通省、大阪府、大阪市)では、水防団によるアシストスーツを活用した水防工法や、国土交通省のTEC-FORCE隊員によるTECアプリなどを活用した被災地調査など、新技術やデジタル技術を活用した訓練が行われました。

「令和7年度淀川水防・大阪府地域防災総合演習」で行われた訓練の様子

[画像:「淀川水防・大阪府地域防災総合演習」で、TECアプリを使用し、河川堤防の被災状況を画像取得して、三次元データ化された情報を関係者に共有している様子。]

TECアプリを使用し、河川堤防の被災状況を画像取得して、三次元データ化された情報を関係者に共有している様子(写真提供:国土交通省)

[画像:「淀川水防・大阪府地域防災総合演習」で、土のうづくり体験をするこどもたちの写真。]

土のうづくり体験をするこどもたち(写真提供:国土交通省)

2家庭で水害に備える

「マイ・タイムライン」を作成する

マイ・タイムラインとは、洪水のような進行型災害に対し、一人ひとりの家族構成や地域環境に合わせて、「いつ」・「何をするのか」をあらかじめ時系列で整理した自分自身の行動計画です。

マイ・タイムラインは、以下の手順で作成します。

ステップ1 「知る」

洪水ハザードマップなどを確認して、お住まいの地域の水害リスクをチェックしましょう。洪水ハザードマップとは、想定される最大規模の降雨による浸水範囲や深さ、避難所などを地図上に記載したものです。国土交通省「ハザードマップポータルサイト」から確認することができます。

ステップ2 「気づく」

洪水時に得られる様々な防災情報の種類と内容を理解し、それらの情報の取得方法を知りましょう。突発的に発生する地震とは異なり、水害は刻一刻と状況が変化していく進行型災害です。河川の水位や雨量のデータ、防災気象情報、避難情報など様々な情報をもとに、時間軸で防災行動を考えることが大切です。

ステップ3 「考える」

洪水時の具体的な避難行動をシミュレーションし、マイ・タイムラインに落とし込みましょう。安全に避難するためにはどのような順序で行動するべきか、防災情報が発表されるタイミングに合わせて考えていきましょう。こどもや高齢者のいるご家庭では早めの避難を心がけるなど、それぞれの環境に応じてプランニングすることが大切です。

作成したマイ・タイムラインは家族と一緒にアップデートを繰り返すことで、もしもの際に正しい判断のもと的確な行動をとることができるようになります。国土交通省「マイ・タイムライン」では、マイ・タイムラインの作成を支援するツールを提供しています。

[画像:祖父母、父母、こどもの5人家族が、作成したマイ・タイムラインを見ながら避難行動などについて話し合うイラスト。]

コラム2:必要な情報に簡単にアクセスできる防災支援システムを開発

防災に関する情報は、様々な機関から多様な情報が発信されていますが、その一方で、自分にとって有用な情報を見つけ出すのは難しくなっています。そこで、国土交通省では、自らがいる場所の災害の危険性を簡単に把握し、日頃の準備や緊急時の適切な避難行動につなげることができるシステムを開発しました。令和7年(2025年)6月から、能登半島地震や奥能登豪雨で被災した石川県珠洲市で運用を開始し、今後、このシステムをモデルケースとして全国に普及させていくための方策を検討しています。

主な機能は次のとおりです。

  • 携帯電話の位置情報を活用し、現在地の水害リスク(津波、洪水、土砂災害)を表示
  • 洪水キキクル、土砂キキクルの情報をリアルタイムで提供
  • 河川の水位、河川カメラの映像をリアルタイムで提供
  • 避難行動などをクイズ形式で学ぶことができるコンテンツの提供

3激甚化・頻発化する水害への対応

ハザードマップの作成対象を拡大

令和元年(2019年)に発生した台風19号(令和元年東日本台風)では、堤防が決壊した71河川の約6割に当たる43河川が洪水浸水想定区域の指定義務がない中小河川でした。これらの流域では、ハザードマップに洪水浸水想定区域が示されておらず、水害リスク情報の空白域解消が課題とされました。

これを踏まえ、令和3年(2021年)7月の水防法改正により、洪水浸水想定区域の指定及びハザードマップの作成・公表の対象が、全ての一級河川・二級河川に拡大されました。これにより、令和2年度(2020年度)時点で約2,000河川だった洪水浸水想定区域の指定対象は、約17,000河川まで拡大しました。追加された約15,000河川については、令和7年度(2025年度)末までに、洪水浸水想定区域図の公表が完了する予定です。これを受け、市町村によりハザードマップが整備されます。水害リスク情報の空白域を解消するため、国・地方自治体において取組が進められています。

まとめ

近年、想定を上回る豪雨などにより、前例のないレベルの水害に見舞われるケースが全国各地で相次いでいます。国や地方自治体によって河川改修などの治水事業が行われていますが、これには莫大な費用と長い年月が必要になります。異常気象が日常となりつつある今、水防団など共助の活動に加え、いざというときは、自らの命と家族の命を自ら守れるよう、自助として日頃からの備えと早めの避難行動が重要となります。

(取材協力:国土交通省 文責:内閣府政府広報室)

関連リンク

このコンテンツは役に立ちましたか?
このコンテンツは分かりやすかったですか?
このコンテンツで取り上げたテーマについて関心が深まりましたか?

ご意見・ご感想

送信中です

ランキング

関連サイト

外部のウェブサイトに移動しますが、よろしいですか。
よろしければ以下をクリックしてください。

Link
ご注意
  • リンク先のウェブサイトは、内閣府政府広報室のサイトではありません。
  • この告知で掲載しているウェブサイトのURLについては、2023年11月21日時点のものです。
  • ウェブサイトのURLについては廃止や変更されることがあります。最新のURLについては、ご自身でご確認ください。
Top

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /