被災したときの生計の維持
[画像:父親は住宅ローン、母親は生活費、男児は学校の授業料を各々想像し困った様子のイラスト]
POINT
被災しても生活は続きます。災害から立ち直るためには生計を維持していかなければなりません。そんなときのために、生活費の貸付制度があります。また、見舞金・弔慰金も、今後の暮らしの礎になることでしょう。税と社会保険料にも被災者への特別措置が用意されており、こどもに必要になるお金にも支援の措置があります。
1生活費の貸付
1. 災害援護資金
災害で負傷したり住居や家財に損害を受けたりした人に対して、「災害弔慰金法(災害弔慰金の支給等に関する法律)」に基づいた、生活の再建に必要な資金の貸付が行われます。貸付限度額は、世帯主の負傷、住居や家財の損害に応じて、150万円から350万円までとなっています。貸付には世帯人数による所得制限があります。
利用できるかた
以下のいずれかの被害を受けた世帯の世帯主
- 世帯主が災害により負傷し、その療養に要する期間が概ね1か月以上
- 家財の3分の1以上の損害がある
- 住居の半壊又は全壊・流出
所得制限があり、市町村民税における前年の総所得金額が次の額以下の場合が対象です
- 1人世帯:220万円
- 2人世帯:430万円
- 3人世帯:620万円
- 4人世帯:730万円
- 5人以上:1人増すごとに730万円に30万円を加えた額。
ただし、住居が減失した場合は1,270万円
(注)自然災害で都道府県において災害救助法が適用された市町村が1以上ある災害が対象です。
問合せ先
お住まいの市町村
2. 生活福祉資金制度による貸付(緊急小口資金・福祉費(災害援護資金))
金融機関などからの借り入れが難しい低所得世帯や障害者・高齢者のいる世帯は「生活福祉資金制度」による、無利子や低利での貸付を利用することができます。生活福祉資金には、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸付を受けられる「緊急小口資金」と、災害を受けたときに臨時に必要になる費用について貸付を受けられる「福祉費(災害援護資金)」があります。緊急小口資金は10万円、福祉費(災害援護資金)は150万円が限度額です。ただし、大規模災害時には対象や償還期間が拡大されることもあります。
利用できるかた
- 低所得世帯、障害者世帯又は高齢者世帯
- 災害援護資金については、災害弔慰金の支給等に関する法律の災害援護資金の対象となる世帯は適用除外となります。
問合せ先
お住まいの都道府県・市町村の社会福祉協議会
3. その他の貸付の制度
上記のほかにも、特定の方々を対象にした貸付の制度があります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
母子家庭や父子家庭、寡婦のかたに、経済的な自立と生活の安定を図るために必要な経費を貸し付けるものです。災害により被災した場合は、償還金の支払い猶予などの特別措置が講じられます。
利用できるかた
母子家庭、父子家庭、寡婦 など
問合せ先
お住まいの都道府県・市町村の福祉事務所
(注)年金担保貸付、労災年金担保貸付は、令和4年(2022年)3月末で申込受付を終了しました。
詳しくは、独立行政法人福祉医療機構「年金担保貸付については、令和4年3月末で申込受付を終了しました 」 をご覧ください。
(注)恩給・共済年金担保融資は、令和4年(2022年)3月末をもって軍人恩給や援護年金などを除き申込受付を終了しました。
詳しくは、日本政策金融公庫「恩給・共済年金担保融資」 をご覧ください。
2見舞金・弔慰金
1. 災害障害見舞金
災害による負傷や疾病で精神や身体に著しい障害が出たかたには、災害弔慰金法に基づいて、見舞金が支給されます。
利用できるかた
災害により、重い障害を受けたかた
(注)自然災害で1市町村において住居が5世帯以上減失した災害等が対象です。
支給額
- 生計維持者が重度の障害を受けた場合:市町村条例で定める額(250万円以下)
- その他の者が重度の障害を受けた場合:市町村条例で定める額(125万円以下)
問合せ先
お住まいの市町村
2. 災害弔慰金
災害により死亡されたかたのご遺族には、災害弔慰金法に基づき、弔慰金が支給されます。
利用できるかた
災害により死亡したかたのご遺族
- 配偶者、子、父母、孫、祖父母
- 上記の遺族がいずれも存在しない場合は、死亡した者の死亡当時における兄弟姉妹(死亡した者の死亡当時その者と同居し、又は生計を同じくしていた者に限る。)
(注)自然災害で1市町村内において住居が5世帯以上減失した災害等が対象です。
支給額
- 生計維持者が死亡した場合:市町村条例で定める額(500万円以下)
- その他のかたが死亡した場合:市町村条例で定める額(250万円以下)
問合せ先
お住まいの市町村
3税と社会保険料の軽減
1. 国税、地方税についての特別措置
所得税の軽減
災害により住宅や家財に損害を受けたかたは、確定申告で所得税の全部又は一部を軽減することができます。また、申告などの期限の延長、納税の猶予、予定納税の減額、源泉所得税の徴収猶予などの制度もあります。
対象となるかた
災害により住宅や家財などに損害を受けたかた
問合せ先
最寄りの税務署
→詳しくは、国税庁「災害関連情報」をご覧ください。
地方税の軽減
災害で被害を受けた場合には、個人住民税、固定資産税、自動車税などの減免を受けられる場合もあります。また、徴収の猶予、申告や納付の期限の延長の制度もあります。
対象となるかた
災害により被害を受けたかたのうち、一定の要件を満たすかた
問合せ先
お住まいの都道府県、市町村(税務課など)
2. 国民年金の保険料の免除
災害で財産に損害を受け国民年金の保険料を納付するのが難しいときは、支払い免除を受けることができます。
対象となるかた
災害により、住宅、家財その他の財産の被害金額がその価格のおおむね2分の1以上の損害を受けたかた
問合せ先
日本年金機構
- 【ナビダイヤル】0570年05月11日65(IP電話や利用できないかたは03-6700-1165)
- 【受付時間】
月曜日:8:30から19:00(祝日の場合は翌日以降開所日の初日)
火曜日から金曜日:8:30から17:15
第2土曜日:9:30から16:00
(土日祝日(第2土曜日を除く)、12月29日から1月3日を除く)
→国民年金保険料の免除について詳しくは、日本年金機構「被災したとき」をご覧ください。
4こどもに関する経済的な支援
1. 小・中学校の就学援助
経済的に就学が困難な小・中学生の保護者は、学用品費・新入学学用品費・修学旅行費・学校給食費などの援助を受けることができます。
利用できるかた
災害により経済的に就学が困難となった小・中学生の保護者
問合せ先
お住まいの市町村、各学校
2. 高等学校の授業料などの減免
災害による経済的理由で授業料などを納めることが難しくなった生徒は、授業料、入学料などの徴収猶予や減免、免除を受けられる場合があります。
利用できるかた
災害などの事情により、減免が必要であると地方公共団体の長が認めたかた
問合せ先
お住まいの都道府県、学校
3. 大学などの授業料などの減免
災害により家計が急変したなどの理由で授業料などを納めることが難しくなった、大学・短期大学・大学院・高等専門学校の学生は授業料などの減免が受けられます。
利用できるかた
具体的な基準や減免額などは学校ごとに異なります。
問合せ先
在籍する各学校(授業料担当窓口)
4. 奨学金の緊急採用、JASSO支援金
災害などにより家計が急変した、大学・短期大学・大学院・高等専門学校・専修学校(専門課程)の学生・生徒には、日本学生支援機構が貸与型奨学金の緊急採用を行います。また、通学のために居住する家が半壊以上等の被災をした学生・生徒には、10万円の支援金を支給します。
また、令和2年(2020年)4月から始まる高等教育の修学支援新制度においても、大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)の学生・生徒で災害などにより家計が急変し、緊急に支援の必要がある場合は、給付型奨学金の申込みを受け付ける予定としています。(新制度の対象となった学生・生徒は、併せて授業料等減免が受けられます。)
利用できるかた
大学・短期大学・大学院・高等専門学校、専修学校(専門課程)の学生・生徒で、被災したかた
大学・短期大学・高等専門学校、専修学校(専門課程)の学生・生徒で、高等教育の修学支援新制度の要件を満たすかた
問合せ先
在籍する各学校(奨学金担当窓口)
5. 奨学金の返還猶予、減額
日本学生支援機構の奨学金を返還中に被災したかたには、返還の猶予や減額の制度があります。
対象となるかた
日本学生支援機構の奨学金を返還中に被災したかた
問合せ先
日本学生支援機構
- 【ナビダイヤル】0570-666-301(IP電話や利用できないかたは03-6743-6100)
- 【受付】平日9:00から20:00(土日祝日・年末年始(12月29日から1月3日)を除く)
5損害保険と住宅ローンの軽減
災害によって住宅や家財が損害を受けたとき、助けになるのが火災保険や地震保険、車両保険(自動車保険)などの保険金です。ここでは一般的な補償内容について紹介します。詳しくは、ご契約の損害保険会社又は代理店にお問い合わせのうえ、ご自身の契約内容をご確認ください。
また、災害によって、住宅ローンの返済が難しくなった場合には返済の減免を受けられる制度もあります。
1. 損害保険の保険金請求
火災保険
火災保険は、火災だけでなく、台風や大雨、大雪、落雷などの風水害などによって建物や家財の損害があったとき、補償を受けられる保険です。保険の対象は、加入時に「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」の3つから選ぶことができます。
支払われる保険金は、契約内容や損害の状況によって異なりますので、被害を受けたときには、加入している損害保険会社又は代理店にお問い合わせください。
問合せ先
ご契約の損害保険会社又は代理店
地震保険
地震保険は、地震・噴火・津波を原因とする、火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。地震保険は必ず火災保険とセットで加入することになっており、地震保険だけに単独で加入することはできません(火災保険は単独での加入が可能です)。
支払われる保険金は、契約内容や損害の状況によって異なりますので、被害を受けたときには、加入している損害保険会社又は代理店にお問い合わせください。
問合せ先
ご契約の損害保険会社又は代理店
車両保険(自動車保険)
車両保険は、車の修理費などを補償する保険です。一般的には、事故や盗難による被害だけでなく、台風や大雨などの風水害で自動車が被害に遭ったときも車両保険による補償が受けられますが、地震や津波、噴火などによる被害は対象外です。
支払われる保険金は、契約内容や損害の状況によって異なりますので、被害を受けたときには、加入している損害保険会社又は代理店にお問い合わせください。
問合せ先
ご契約の損害保険会社又は代理店
- 災害救助法が適用された地域で、家屋等の損壊等により保険会社との保険契約に関する手掛かりを失ってしまったときの問合せ先
自然災害等損保契約照会センター(一般社団法人日本損害保険協会)
自然災害等損保契約照会センター
(日本損害保険協会)
0120-501331
- 【電話】0120-501331
- 【受付時間】平日9時15分から17時まで(土日祝日および12/30〜1/4を除く)
自然災害等損保契約照会センター(一般社団法人外国損害保険協会)
自然災害等損保契約照会センター
(外国損害保険協会)
03-5425-7850
- 【電話】03-5425-7850
- 【受付時間】平日9時〜17時まで(土日祝日および12/29日〜1/4日を除く)
2. 住宅ローンの免除・減額
自然災害により住宅ローンやリフォームローン、事業者ローンなどの返済ができなくなった場合は、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に基づいて免除・減額の申し出ができます。
自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン
住宅ローンや事業者ローンなどの返済が困難になったときには、破産手続と再生手続などの法的な手続きによって債務整理をする方法がありますが、それらを行うと官報に債務者の名前が記載され、個人信用情報として登録されてしまうため、新たに借入れをしたり、クレジットカードをつくったりすることができなくなります。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」は、そうしたデメリットを回避しながら、裁判所の特定調停を利用して債務整理をする方法で、次のようなメリットがあります。
- 個人信用情報として登録されないため、新たな借入れに影響が及ばない
- 国の補助により弁護士などの「登録支援専門家」が無料で手続を支援してくれる
- 財産の一部をローンの支払いに充てずに手元に残すことができる
自然災害債務整理ガイドラインによる債務整理を希望する場合は、ローンの借入先の金融機関にお問い合わせください。
問合せ先
ローン借入先の金融機関
(取材協力:内閣府、金融庁、総務省、国税庁、文部科学省、厚生労働省 文責:内閣府政府広報室)