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私はこれまで、公共図書館を中心に、制度、経営、サービスなど多様な観点から研究を行ってきました。最近では、戦前の図書館制度や、近年話題になることの多い指定管理者制度についても研究しています。指定管理者制度は、民間企業などによる図書館運営を可能とする制度であり課題も多くあります。また、図書館が効果的に機能するには、施設やコレクションに加えてそこで働く「人」が重要です。そのため、人材育成や専門職の認定制度にも関心を持って研究しています。これらの研究に加えて、自治体に設置されている図書館協議会などの委員として実践にも携わってきました。

図書館は、社会の中で知識、情報、データを収集し、組織化し、蓄積・保管し、提供する重要な機関です。そうした機関は、民主主義社会を機能させる上で不可欠です。このことは、誤情報や偽情報に代表されるような情報を考えれば当然ですよね。そして、社会がデジタル化しネットワーク化する中でも、図書館やアーカイブズ(文書館)などの機関がデジタル情報を適切に組織化し、蓄積・保管し、継承していくことの重要性は変わりません。私は、このような役割を果たす機関の一つである図書館に焦点を当て、その制度や経営について研究してきました。

図書館・情報学の歴史と可能性

図書館は歴史的に古くから存在してきましたが、「図書館学」として図書館自体を学問的な対象とするようになったのは19世紀以降です。バイエルンの図書館員、マルティン・シュレティンガーやコロンビア大学のメルヴィル・デューイなどが経営の効率化という観点から研究に取り組むようになりました。その後、専門的・科学的な情報に焦点を当てたドキュメンテーション運動が進展するとともに、人々の情報行動を研究対象に含めた「情報学」と呼ばれる学問が形成されました。そして、「図書館学」と「情報学」が結びつき、「図書館・情報学」という学問として欧米を中心に発展してきました。

図書館・情報学専攻は、1951年にジャパン・ライブラリー・スクールとして設置されました。これは、図書館学を学ぶことのできる日本で最初の学科でした。その後、長く図書館・情報学を学問・研究両面で牽引してきました。日本国内で図書館・情報学を本格的に学べる場は限られており、本専攻はその数少ない選択肢の一つです。図書館・情報学の領域は多岐にわたり、図書館以外にも情報検索、情報行動、メタデータ、学術コミュニケーション、デジタルアーカイブ、書物学などの幅広い領域が含まれています。そして、図書館・情報学専攻は、文学部にありつつも、文理両面からのアプローチが可能な専攻です。今後の可能性に満ちた学問と言えるでしょう。


(注記)所属・職名等は取材時のものです。

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