このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にしてご覧ください。

東洋史学専攻と中東・イスラーム世界史

慶應義塾大学文学部の東洋史学専攻は、東アジア史と中東・イスラーム世界史との二本の柱で構成されている点に大きな特徴があります。そうした地域の政治・経済・社会・文化について、多様な歴史研究が行われています。

商人と職人からみる近世イスタンブルの社会

私の専門分野は、近世オスマン帝国の都市社会史です。そのなかでも、都市民の多数を占める商人や職人といった庶民が、どのような生活を送り、いかなる社会を形成していたのかという点に特に関心を持っています。

現在は、17〜18世紀の首都イスタンブルを中心に、皮なめし職人や革商人といった「皮革」に携わる商人や職人に焦点を当てて研究を進めています。また、近年注目を集めている「慈善、救貧、相互扶助」といった問題についても、商人や職人の事例を中心に考察を続けています。

イスラーム法廷台帳の魅力

イスラーム法廷台帳には、裁判の記録だけでなく、結婚、改宗、物品の売買や賃貸借、遺産、商品の価格、店舗の分布など、都市やその人々に関するあらゆる情報が記されています。それらの解読と分析をとおして近世イスタンブルの社会を再構築することができないか、日々、試行錯誤を重ねています。

最近の研究では、18世紀後半に生きたイブラヒムという皮なめし職人の遺産に関する記録を分析しました。それによって彼の財産だけでなく、工房の経営、家族・親族関係、同業者との関係なども知ることができました。イスラーム法廷台帳の魅力は、他の史料では知ることが難しい庶民の生活の一端がわかることにあると言えるでしょう。

「全体像」の解明に向けて

近世イスタンブルにおける商人や職人の研究には、未だ多くの課題が残されています。彼らの生活や同職組合のあり方について、より多くの具体的な情報を集め、分析していかなければなりません。この課題にひとつずつ取り組むことで、商人・職人の生活や同職組合の全体像、さらには都市社会の全体像を明らかにしていきたいと考えています。


(注記)所属・職名等は取材時のものです。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /