環境省 Ministry of the Environment

報道発表資料

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2001年05月18日
  • 大気環境

ディーゼル車対策技術評価検討会とりまとめについて

大都市を中心に二酸化窒素及び浮遊粒子状物質等による大気汚染が依然として厳しい状況にあることから、新たに新車の排出ガス規制の前倒し実施や、軽油の低硫黄化、自動車NOx法への粒子状物質(PM)の追加等を実施することとしたところである。
このような新たな対策の一環として、環境省、経済産業省及び国土交通省は、平成12年3月、「ディーゼル車対策技術評価検討会」(座長 齋藤 孟 早稲田大学名誉教授)を設置し、使用過程にあるディーゼル車からの排出ガス対策、特にディーゼル微粒子除去装置(DPF)等の粒子状物質低減対策技術について適用可能性、効果等を総合的に検討してきた。今般、昨年7月の中間とりまとめ以降に行ったDPFの耐久性やDPF以外の排出ガス低減技術等についてメーカーヒアリングや実証試験等により検討した結果等から、ディーゼル車対策技術評価検討会としてのとりまとめを行った。

とりまとめにあたっては、耐久性の実証試験としてDPFに関して実走行試験等を行った。その結果、走行条件によっては、PMの低減効果が低下したものやDPFが溶損したものがあった。しかし、負荷の高い走行条件で使用される車両については比較的長期間使用可能であるものもあった。
また、酸化触媒や水エマルジョン燃料システムのようなDPF以外の排出ガス低減技術については、DPFに比べPMの低減効果が低い等の課題があり、一層の改善が必要であることがわかった。
これらの結果から、[1]基本的に最新規制適合車への代替を促進することが適当、[2]DPFについては、現時点においては、全ての使用過程のディーゼル車に使用可能な状況にはないため一律の義務付けは困難であるが、[3]一定以上の効果のあるDPFに対して装着のインセンティブを付与することは有効、との結論を得た。
なお、この結論は、昨年7月にまとめた中間とりまとめと同様である。

環境省、経済産業省及び国土交通省は、今後、とりまとめの知見を活かし、新車の排出ガス規制や自動車NOx法の使用車種規制の強化等を実施していくとともに、DPFの装着への補助、点検整備の励行等の使用過程ディーゼル車対策を進めていくこととしている。

ディーゼル車対策技術評価検討会とりまとめ
(概 要)


1.ディーゼル微粒子除去装置(DPF)等の技術評価
(1) DPFの技術評価
・ 本検討会では、主に4つの方式のDPFについて、メーカーヒアリングや実証試験の結果を踏まえ、技術評価を行った。
・ 国内外の自動車メーカーやDPFメーカーを対象としてメーカーヒアリングを行い、また、実証試験については、各規制年次別の車両又はエンジンを用いて、排出ガス性能や耐久性能の確認、路上走行試験等を行った。
・ その結果、いずれのDPFについても、PMの除去に一定の効果がみられるものの、現時点においては、技術的な課題があり、全ての使用過程のディーゼル車に使用可能な状況にはないと判断された。
・ 各方式別の評価結果は以下のとおり。
[1] 交互再生式DPF
・ 走行条件の制約はなく、現行軽油の使用が可能である。
・ 取付けスペースの確保や高性能発電機への交換等の車両構造上の制約がある。
・ 従って、構造条件を満たす一部の車種に適用できると考えられる。
[2] 連続再生式DPF(NO2による酸化方式)
・ 低硫黄軽油の使用が必要であり、排出ガス中のNOx/PM比の制約から短期規制以前車には適用が困難である。
・ 排気温度が一定以上となる走行が一定比率以上の走行条件を満たすことが必要である。この条件を満たさない場合には溶損するおそれがある。
・ 従って、軽油の低硫黄化後に、走行条件を満たす一部の自動車に適用できると考えられる。
[3] 連続再生式DPF(触媒による酸化方式)
・ 現行軽油を使用可能であるが低硫黄軽油の使用が望ましい。
・ 排気温度が一定以上となる走行が一定比率以上の走行条件を満たすことが必要である。この条件を満たさない場合には溶損するおそれがある。
・ 従って、走行条件を満たす一部の自動車に適用できると考えられる。
[4] 間欠再生(バッチ)式DPF
・ 原理的には車種を選ばないが、1回の捕集量に限界があるため、一度に長距離を走行する自動車には適用が困難である。
・ 1回の走行距離の短い一部の車種に適用できるが、使用者が管理を十分に担保できることが条件となる。
(2) DPF以外の排出ガス低減装置の技術評価
・ DPF以外の排出ガス低減装置について、メーカーヒアリングの結果等を踏まえ、技術評価を行った。
[1] 酸化触媒
・ PM低減効果はDPFに比べ低く、黒煙は低減しない。
・ 原理的には車種を選ばないが、EGR付き車両の場合には、エンジン調整が必要となり装着は困難である。
・ 低硫黄軽油が必要である。
[2] 吸蔵還元型NOx触媒を利用した技術
・ 新車対応の技術であり、使用過程車への適用は困難である。
・ 低硫黄軽油が必要である。
[3] DPF付き水エマルジョン燃料システム
・ NOxに対して低減効果がみられたが、PM及びHCについて低減を図る必要がある。

2.今後取るべき具体的施策
・ 二酸化窒素(NO2)及び浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準の達成率は厳しい状況にあり、使用過程のディーゼル車へのDPFの装着はNOxの低減にはほとんど寄与しないため、基本的には最新規制適合車への代替を促進することが適当である。
・ DPFは、現時点においては、全ての使用過程のディーゼル車に使用可能な状況にはないため、一律の義務付けは困難である。しかしながら、特に大気汚染の深刻な地域について、一定以上の効果のあるDPFに対して装着のインセンティブを付与することが環境改善に有効である。
・ DPFを装着する自動車としては、平均使用年数が比較的長く、走行実態を事前に把握でき、かつ管理を行い易い使用形態の車両が、インセンティブの対象として優先度が高い。
・ DPF装着に対する考え方を排出ガス規制年別に整理すれば次のとおりである。
[1] 平成元年規制以前の規制車については、初度登録からかなりの年数が経過しており、インセンティブを付与し装着を促進させるような施策の必要性は高くない。
[2] 平成5〜6年規制車(短期規制車)については、DPF装着が可能な自動車について、インセンティブを付与し装着を促進する施策は有効である。
[3] 平成9〜11年規制車(長期規制車)については、排出ガス規制が大幅に強化されており、特段の施策をとる必要性が高いとはいえない。
・ 使用過程車用のDPFの開発や装着にあたっては、耐久性に十分配慮する必要がある。国は、DPFの低減効果、耐久性等を評価する手法・基準を早急に示すことにより、その開発を促すことが重要である。
・ 低硫黄軽油の使用を前提としたDPFが多数あることから、低硫黄軽油の供給体制を整備することが望ましい。
・ 自動車使用者に対し、点検、整備を励行する等の一層の努力を行うよう促すべき。

3.今後の課題
・ DPFの技術的事項についての、国、自治体等による調査の継続。
・ 本検討会で得た課題等を活かしたディーゼル車対策技術の開発及び早期市場投入。
・ DPFを装着した自動車の販売に対応した硫黄分の少ない軽油の供給。
・ 海外を含めた多方面の情報収集、関係機関との情報交換による使用過程車用DPFの活用方策の検討。

(参考) DPFの耐久性の実証試験結果

1. 連続再生式DPF(NO2による酸化方式)
・ 一定の走行モードで13000kmの実走行試験を実施。
・ DPF前後の差圧が上昇し、詰まりを観察。
・ 走行後に実施したD13モード試験においてDPFが溶損。
2. 連続再生式DPF(触媒による酸化方式)
(試験1)
・ 一定の走行モードで約1000kmの台上試験を実施。
・ DPF前後の差圧が上昇し、詰まりを観察。
・ 走行試験後の高負荷モードでの運転においてDPF前後の差圧が回復。
(試験2)
・ 実走行試験を実施。
・ 8000km〜9000km走行時点で、黒煙濃度が装着前と同じレベルとなり、DPFが機能を喪失。
(試験3)
・ 市街地走行や高速道路走行を主体とした実走行試験を実施。
・ 市街地走行を主とする車両では、約23000km走行後の排出ガス試験で、PM低減率が走行試験前の9割程度から2割程度に悪化。
・ 約84000km走行している高速道路走行を主とする車両では、特に不具合は見られていない。

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添付資料

連絡先
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(連絡先)(内線6552)
室 長 安藤 憲一
室長補佐 酒井 雅彦

経済産業省製造産業局自動車課
(連絡先)03(3501)1511(内3351)
課 長 立岡 恒良
課長補佐 山本 和徳
資源エネルギー庁資源・燃料部石油精製備蓄課
(連絡先)03(3501)1511(内4651)
課 長 村田 光司
課長補佐 湯本 啓市

国土交通省自動車交通局技術安全部環境課
(連絡先)03(5253)8111(内42-522)
課 長 四倉 清裕
専 門 官 西本 俊幸

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